第28回(R2年)柔道整復師国家試験 解説【午後76~80】

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問題76 骨折の治癒過程で正しいのはどれか。

1.炎症期には類骨に石灰塩が沈着する。
2.仮骨形成期には成熟した緻密質が作られる。
3.仮骨硬化期には線維素網が作られる。
4.リモデリング期には力学的に有利な形態に順応する。

答え.4

解説

MEMO

骨折の治癒過程において、「①炎症期→②仮骨形成期→③仮骨硬化期→④リモデリング期」となる。

①炎症期:骨折後2〜3日で活動のピークを迎える。骨折した人が経験する初期の痛みのほとんどがこの炎症によるものである。
②仮骨形成期:骨折後1週間が過ぎると骨芽細胞が活動し、1週間目から14週目ぐらいが仮骨が形成する時期である。仮骨とは、骨折した場合に折れたり欠損したりした骨の代わりに、新たにできる不完全な骨組織のことである。
③仮骨硬化期:8週間目から36週間目ぐらいにあたる。
④リモデリング期:硬化仮骨が患部の機能とともに回復に、本体の骨に吸収、添加作用していく時期である。これが20週目から52週目ぐらいにあたる。

1.× 類骨に石灰塩が沈着するのは、「炎症期」に限らず骨の形成で起こりえる。
類骨とは、 骨が形づくられる中で、石灰化する前の柔らかい状態の骨のことである。つまり、骨芽細胞により形成され、骨稜の表面にある石灰化していない骨基質のことである。類骨は、線維と基質により構成され、主な線維はコラーゲン1型である。コラーゲンが類骨の90%を構成する。 基質はコンドロイチン硫酸やオステオカルシンがほとんどである。

2.× 仮骨形成期には、「成熟」ではなく不完全な緻密質(仮骨)が作られる。
緻密質とは、「骨膜」に覆われた「骨質」のうち、より外側の緻密で硬い部分を指す。ちなみに、成熟な緻密質は、仮骨硬化期に作られる。

3.× 線維素網が作られるのは、「仮骨硬化期」ではなく炎症期である。
炎症期は、骨折時に骨や血管が損傷し、出血などにより血腫を作る時期位であり、その血腫の周りに線維素網を作り、それが肉芽組織の土台となる。

4.〇 正しい。リモデリング期には力学的に有利な形態に順応する
骨は力学的な荷重(運動)に応じて、骨吸収と骨形成を繰り返し、自らを再構築(リモデリング)する。つまり、運動が骨を強くし、骨粗鬆症の予防が見込める。

 

 

 

 

 

問題77 脱臼の病態と発生部位の組合せで正しいのはどれか。

1.反復性脱臼:膝関節
2.随意性脱臼:第2指MP関節
3.拡張性脱臼:股関節
4.恒久性脱臼:肘関節

答え.3

解説
1.× 反復性脱臼は、「膝関節」ではなく肩関節である。
反復性肩関節脱臼とは、一度大きなけがをして肩を脱臼した方が、その後脱臼を繰り返してしまうことである。膝関節も反復性脱臼する可能性はあるが、特に肩関節が最も一般的である。

2.× 随意性脱臼は、「第2指MP関節」ではなく肩関節である。
随意性脱臼とは、人によっては自らの意思で脱臼させることができる状態である。

3.〇 正しい。拡張性脱臼:股関節
拡張性脱臼とは、関節が拡張することで脱臼したものをさす。股関節結核、急性化膿性股関節炎などが原因として挙げられ、炎症による滲出液の貯留により、関節が拡張し起こりえる。

4.× 恒久性脱臼は、「肘関節」ではなく膝関節である。
恒久性脱臼とは、関節の動きに関係なく常に脱臼しているものをさす。したがって、恒久性膝蓋骨脱臼とは、膝関節のどの角度においても膝蓋骨の関節面が大腿骨の関節面と接触せず、膝蓋骨が常に脱臼位にあるものをさす。

膝蓋骨外側脱臼とは?

概要:膝蓋骨脱臼は、膝蓋骨(膝のお皿の骨)が外傷などにより外側にずれてしまい、関節から外れてしまった状態である。膝関節の形態的特徴により、10代の女性に生じることが多く、受傷者の20~50%の方が脱臼を繰り返す「反復性脱臼」へ移行する。【原因】ジャンプの着地などで、膝を伸ばす太ももの筋肉(大腿四頭筋)が強く収縮した時に起こる。【症状】炎症期は、膝関節の痛みや腫れが生じる。慢性期:脱臼を繰り返す(反復性脱臼)ようになると痛みや腫れなどは少なくなり、不安定感を強く訴える。
【治療】脱臼後、直ちに整復を行う。ほとんどの患者では鎮静や鎮痛は不要である。

 

 

 

 

 

問題78 関節部の損傷で正しいのはどれか。

1.大部分が直達外力によるものである。
2.関節円板障害は足関節にみられる。
3.捻挫は靱帯損傷として認識される。
4.顎関節脱臼は関節包断裂を認める。

答え.3

解説

靱帯損傷の程度(グレード)

グレードⅠ:靭帯が引き延ばされた状態
グレードⅡ:靭帯が部分断裂した状態
グレードⅢ:靭帯が完全断裂した状態
グレードⅢの「靭帯の完全断裂」の場合にはもっとも重傷で、外くるぶしが腫れて血腫が溜まり、痛みが強くなるので歩行は困難となる。

1.× 大部分が、「直達外力」ではなく介達外力によるものである。
介達外力とは、打撃や圧迫などの外力が加わった部位から離れた部位に体内組織を通じて外力が伝わることである。

2.× 関節円板障害は、「足関節」ではなく顎関節などにみられる。
なぜなら、足関節に関節円盤はみられないため。関節円板とは、帽子のように下顎頭にぶらさがっていて、顎が動くときに、骨と骨がこすれないように、クッションの役割をはたす組織である。ちなみに、関節円板を有する関節は、①顎関節、②胸鎖関節、③肩鎖関節、④下橈尺関節、⑤橈骨手根関節である。

3.〇 正しい。捻挫は靱帯損傷として認識される
なぜなら、捻挫は、靱帯損傷の程度(グレード)のグレードⅠ(靭帯が引き延ばされた状態)に該当するため。ちなみに、捻挫とは、外部から関節に強い力がかかることにより、関節を支えている靱帯や関節包、軟骨などが損傷することである。

4.× 顎関節脱臼は関節包断裂を「認めない」。
一般的な脱臼は、関節包を破って逸脱(関節包外脱臼)するが、肩関節や顎関節の脱臼の多くでは関節包を破ることなく逸脱(関節包内脱臼)する場合が多い。その結果、再発を繰り返す「反復性脱臼」に進展する例が多い。ちなみに、関節包とは、骨と骨があたる部分にはやわらかな軟骨があり、そのまわりは丈夫な袋のことをいう。関節包の内面は、滑膜でおおわれ、滑膜から潤滑油のように滑らかな液が分泌されて、関節の滑りをよくしている。

外側靭帯とは?

外側靭帯は、前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯を合わせていう。

【足関節靭帯損傷の受傷原因】
足関節の内反や外反が強い外力でかかる捻挫が最も多い。
内反捻挫は、足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)が損傷される。
外反捻挫は、足関節内側靭帯(三角靭帯)が損傷される。

【頻度】
外反捻挫より内反捻挫が多い。
足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)の中でも前距腓靭帯が多く損傷される。
なぜなら、足関節の可動域が、外反より内反の方が大きく、内反・底屈に過強制力がかかるため。

 

 

 

 

 

問題79 RICE処置でCの目的はどれか。

1.患部の安静
2.低酸素状態の抑制
3.循環の改善
4.浮腫の抑制

答え.4

解説

炎症の対応

炎症4徴候として、疼痛や腫脹、発赤、熱感があげられる。基本的に、RICE処置を実施する。RICE処置とは、疼痛を防ぐことを目的に患肢や患部を安静(Rest)にし、氷で冷却(Icing)し、弾性包帯やテーピングで圧迫(Compression)し、患肢を挙上すること(Elevation)である。頭文字をそれぞれ取り、RICE処置といわれる。

Rest(安静):患部の活動を制限し、さらなる損傷を防ぐ。
Ice(冷却):局所的な炎症反応を抑え、疼痛を軽減する。
Compression(圧迫):浮腫や出血、腫脹を抑える。
Elevation(挙上):重力を利用して浮腫や腫脹の減少、血行改善させる。

1.× 患部の安静は、そのままRest(安静)に該当する。

2~3.× 低酸素状態の抑制/循環の改善は、Elevation(挙上)に該当する。
Elevation(挙上)することで、患部への血流が改善し、結果として低酸素状態が改善する可能性が高い。

4.〇 正しい。浮腫の抑制は、RICE処置でCの目的である。
Compression(圧迫):浮腫や出血、腫脹を抑えることが目的である。

 

 

 

 

 

問題80 整復位が良肢位となるのはどれか。

1.上腕骨外科頸骨折
2.上腕骨外顆骨折
3.肘頭骨折
4.橈骨遠位端伸展型骨折

答え.1

解説

良肢位とは?

良肢位とは、機能肢位ともいい、身体が何らかの理由で麻痺しているなど、関節が上手く動かせない状態にある患者を、日常生活を送る上でより過ごしやすい・動きやすい状態に保たせておくことができる肢位のことをさす。関節の拘縮や変形が起こる可能性や麻痺がある場合に、その位置に固定することで、日常生活への支障を最小限にとどめられる体位である。

・肩関節:外転10~30度
・肘関節:屈曲90度
・前腕 : 回内・回外中間位
・手関節:背屈10~20度
・股関節:底屈10度、内旋・外旋中間位、外転0~10度
・膝関節:屈曲10度
・足関節:底屈0~10度

1.〇 正しい。上腕骨外科頸骨折は、整復位が良肢位となる。
上腕骨外科頸骨折とは、上腕骨の骨折の中で、特に高齢者に多く発生する骨折の一つであり、骨頭から結節部にかけての太い部分から骨幹部に移行する部位で発生する。老年期とは、一般的に65歳以上をいう。
・患者:背臥位、腋窩に手挙大より大きめの枕子を挿入しておく。
・第1助手:帯などで上内方に牽引、固定させる。
・第2助手:肘関節直角位で上腕下部及び前腕下部を把握する。末梢牽引させながら徐々に上腕を外転させ短縮転位を除去し両骨折端を離開させる。
・術者:両手で遠位骨片近位端を把握する(対向牽引が遠位骨片骨軸方向に正しく行う)。

2.× 上腕骨外顆骨折
上腕骨外顆骨折の固定は、肘関節80~90°屈曲位、手関節軽度伸展、前腕回外位である。ちなみに、上腕骨外顆骨折とは、①pull off型(肘伸展位で手掌を衝いて転倒し、肘に内転力が働き、前腕伸筋群の牽引作用により発生)と②push off型(肘伸展位または軽度屈曲位、前腕回内位で手を衝き転倒して発生)するタイプがある。

3.× 肘頭骨折
肘頭骨折の整復位は、肘関節20°屈曲位、前腕回外位である。ちなみに、通常は上腕三頭筋の牽引により2mm~3cm程度の離開を認め、1cm以上の離開や、軽度肘屈曲により離開が増大する場合は観血療法が適応となる。

4.× 橈骨遠位端伸展型骨折(コーレス骨折)
橈骨遠位端伸展型骨折の整復位は、【屈曲整復法】①肘関節:90°屈曲(助手:骨折部の近位部を把握固定)術者:母指を背側に他の4指を掌側にあてがい手根部とともに回内位で軽く牽引する。②回内位で軽く牽引し、橈側より遠位骨片を圧迫する(捻転転位、橈尺面の側方転位の除去、軸を合わせる)。術者:軽く牽引をしたまま、遠位骨片に手とともに過伸展を強制する。③その肢位のまま、両母指で遠位骨片近位端を遠位方向に引き出し、近位骨片遠位端に近づける(腕橈骨筋を弛緩させる、短縮転位を除去)。④両骨折端背側が接合したのを確認して徐々に遠位骨片を手部とともに掌屈する。その際、両示指で近位骨片端を掌側から両拇指で遠位骨片端を圧迫して整復する(背側転位の除去)。その後の固定は、肘関節90°、手関節軽度掌屈、尺屈、前腕回内位とする。

上腕骨外科頚骨折外転型について

発生機序:肩外転位で手掌、肘を衝いて転倒
鑑別疾患:肩関節前方脱臼
好発年齢層:高齢者
腱板損傷:棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋
整復前の確認:腋窩動脈(橈骨動脈)、腋窩神経の確認

【上腕骨外科頸外転型骨折の転位・変形】
・近位骨片は軽度内転
・遠位骨片は軽度外転
・遠位骨折端は前内上方へ転位
・骨折部は前内方凸の変形

 

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