第29回(R3年)柔道整復師国家試験 解説【午後1~5】

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問題1 集団検診を行うための条件で正しいのはどれか。2つ選べ。

1.最新の検査方法であること
2.早期発見の効果があること
3.検診前の対象疾患の死亡率が低いこと
4.対象疾患に有効な治療法が存在すること

答え.2・4

解説
1.× 最新の検査方法であること
なぜなら、最新の検査方法は、まだ広く実証されていない可能性があり、その有効性や信頼性がまだ不確かである可能性があるため。また、その設備や検査者の検査の未熟なこともあげられる。

2.〇 正しい。早期発見の効果があることは、集団検診を行うための条件である。
健康診断とは、診察および各種の検査で健康状態を評価することで健康の維持や疾患の予防・早期発見に役立てるものである。健診、健康診査とも呼ばれる。スクリーニングのひとつである。なお、特定の疾患の発見を目的としたものは、検診と具体的に呼ばれる。

3.× 検診前の対象疾患の死亡率が低いこと
なぜなら、死亡率が低い疾患でも、その疾患が引き起こす慢性的な健康問題や生活の質の低下など、他の重要な影響を持つ可能性があるため。したがって、集団検診の対象となる疾患を決定する際には、単に死亡率だけではなく、その疾患が個々の生活や公衆衛生全体に及ぼす影響も考慮する必要がある。

4.〇 正しい。対象疾患に有効な治療法が存在することは、集団検診を行うための条件である。
なぜなら、検診により早期に疾患を発見できたとしても、その疾患に対する有効な治療法が存在しない場合、早期発見はあまり意味を持たないため。

疾病予防の概念

疾病の進行段階に対応した予防方法を一次予防、二次予防、三次予防と呼ぶ。
一次予防:「生活習慣を改善して健康を増進し、生活習慣病等を予防すること」
二次予防:「健康診査等による早期発見・早期治療」
三次予防:「疾病が発症した後、必要な治療を受け、機能の維持・回復を図ること」と定義している。

(※健康日本21において)

 

 

 

 

 

問題2 疫学の組合せで正しいのはどれか。2つ選べ。

1.無作為化:交絡の制御
2.無作為抽出:選択バイアスの制御
3.記述疫学:症例対照研究
4.有病率:一定期間の病気のかかりやすさ

答え.1・2

解説

交絡とは?

交絡とは、ある危険因子の曝露と転帰結果の関連を考える際に、その危険因子に付随し表には現れていないその他の危険因子が直接転帰に関連し、観察している因子は直接的には関連していない場合があることをいう(例:喫煙と癌の関係を調べる時、実際には付随する他の因子が直接に癌の発生と関係あるような場合)。曝露と転帰に係わる因子を交絡因子という。曝露と転帰の因果関係の過程で生じるものではないこと、対象の選択や判定上で問題となるバイアスとも異なることに注意が必要である。観察的研究ではこの交絡が起こる可能性が常に存在するため、①研究デザインにおける交絡のコントロール、②データ分析における交絡のコントロールが必要になる。

①研究デザインにおける交絡のコントロール
限定:対象集団を制限すること。
マッチング:症例と対照の間で交絡因子となりそうな要因を一致させること。
無作為化:まったく交絡因子が不明の時に対象者を介入群、非介入群にランダムに割り付ける方法である。無作為化の目的は、比較する群の性別、年齢、重症度などの既知の交絡因子の分布を均等にするばかりでなく、未知の交絡因子の影響を低減させること。

②データ分析における交絡のコントロール
層化:対象者をひとまとめにして分析せずに、そのサブグループごとに分けて分析すること。
多変量解析:統計学的モデルを用いて交絡因子も変数として含めることで、それぞれの変数の影響を見ていく方法である。

1.〇 正しい。無作為化は、「交絡の制御」に寄与する。
無作為化は、実験の設計における重要な部分であり、交絡因子の効果を制御する主要な方法である。無作為化により、被験者はランダムに治療群と対照群に割り当てられ、交絡因子が均等に分布する。

2.〇 正しい。無作為抽出は、「選択バイアスの制御」に寄与する。
無作為抽出とは、母集団から標本を無作為に選び出す方法である。母集団に属するどの単位体または単位量も、等しい確率で標本に入るように標本を抽出することである。こうして得られた標本は母集団全体の傾向を忠実に表し、また確率の法則を適用できる。したがって、無作為抽出は、選択バイアスを制御する方法の1つであるといえる。

3.× 症例対照研究は、記述疫学ではなく分析疫学である。記述疫学とは、集団における疾病の頻度と分布を人・時間・場所の面から客観的に記述し、疾病の発生要因について仮説を立てる手法である。観察研究には、大きく「①記述疫学・②分析疫学」に大別され、①記述疫学には、横断研究・時系列研究などがある。②分析疫学には、生態学的研究・横断研究・症例対照研究・コホート研究などがある。一方、症例対照研究とは、時間軸:後ろ向き研究で、観察期間はない。信頼性は低いが費用・労力が小さい。

4.× 有病率は、「一定期間の病気のかかりやすさ」ではなく「ある一時点において、観察集団のなかで疾病を有している人の割合」である。
生涯有病率とは、一生のうちに一度はその病気にかかる人の割合をいう。ちなみに、「一定期間の病気のかかりやすさ」を表す指標は「発病率」である。

コホート研究と症例対照研究の比較

コホート研究とは、時間軸:前向き研究で、観察期間は長期間行う。信頼性は高いが費用・労力が大きい。

症例対照研究とは、時間軸:後ろ向き研究で、観察期間はない。信頼性は低いが費用・労力が小さい。

 

 

 

 

 

問題3 近年の我が国における傷病分類別の外来受療率が最も高いのはどれか。

1.筋骨格系
2.消化器系
3.循環器系
4.精神障害

答え.2

解説

(2) 傷病分類別

推計入院患者数を傷病分類別にみると、多い順に「Ⅴ 精神及び行動の障害」236.6 千人、「Ⅸ循環器系の疾患」198.2 千人、「ⅩⅨ 損傷,中毒及びその他の外因の影響」134.5 千人となっている。
推計外来患者数では、多い順に「ⅩⅠ 消化器系の疾患」1,270.8 千人、「ⅩⅩⅠ 健康状態に影響を及ぼす要因及び保健サービスの利用」1,001.3 千人、「ⅩⅢ 筋骨格系及び結合組織の疾患」906.0千人となっている。(表2、統計表2、3)

(※図引用:「令和2年(2020)患者調査の概況」厚生労働省HPより)

1.× 筋骨格系は、906.0千人である。

2.〇 正しい。消化器系は、近年の我が国における傷病分類別の外来受療率が最も高い。
消化器系は1270.8千人である。

3.× 循環器系は、822.8千人である。

4.× 精神障害は、266.6千人である。

 

 

 

 

 

問題4 母子健康手帳で正しいのはどれか。

1.健康保険証となる。
2.予防接種の記録を行う。
3.出生届により交付される。
4.大きさは統一されている。

答え.2

解説

母子健康手帳とは?

母子健康手帳とは、母子保健法に定められた市町村が交付する、妊娠、出産、育児の一貫した母子の健康状態を記録する手帳のことである。母子健康手帳の制度化は、母子保健法:昭和41年(1966年)である。

1.× 健康保険証とはならない
健康保険証とは、公的医療保険の被保険者に配布される、カード型の保険証のことである。保険者が提供する医療サービスを受けるための証明書である。

2.〇 正しい。予防接種の記録を行う
母子健康手帳は、子どもの予防接種のスケジュールと記録を管理するために使用される。認可された予防接種で健康被害が生じた場合は、補償制度がある。また、接種の記録として母子健康手帳へ記入されたり、予防接種済証が発行されたりする。また、就学時健康診断や海外渡航などの際に活用される。

3.× 出生届により交付されるわけではない
母子健康手帳は、女性が妊娠を確認した時点で、通常は彼女が居住する市区町村の役場から交付される。出生届は、子どもが生まれた後に提出される。出生届とは、生まれてきたお子さんの氏名等を戸籍に記載するための届出である。戸籍に記載されることで、生まれてきたお子さんの親族関係が公的に証明され、住民票が作成される。なお、外国人のお子さんであっても、日本国内で出生した場合は、出生届をしなければならない。

4.× 大きさは統一されていない
なぜなら、母子健康手帳の大きさは、発行する自治体(市町村が交付する)により異なるため。その内容やデザインも自治体により異なる。

予防接種法とは?

予防接種法とは、公衆衛生の観点から伝染のおそれがある疾病の発生・まん延を予防するためにワクチンの予防接種を行うとともに、予防接種による健康被害の迅速な救済を図ることを目的として制定された日本の法律である。予防接種法に基づく予防接種には、①定期予防接種と②臨時予防接種があり、定期予防接種の対象疾患には、①A類疾病と②B類疾病がある。さらに同法に基づかない任意接種もある。

A類疾病:主に集団予防、重篤な疾患の予防に重点を置き、国の積極的な勧奨があり、本人(保護者)に努力義務がある。
疾患:結核、ジフテリア、破傷風、百日咳、ポリオ、麻疹、風疹、日本脳炎、ヒブ(インフルエンザ菌b型)感染症、小児の肺炎球菌感染症、水痘、ヒトパピローマウイルス感染症、B型肝炎

B類疾病:主に個人予防に重点を置き、国の積極的な勧奨なく、本人(保護者)に努力義務はない。
疾患:季節性インフルエンザと高齢者の肺炎球菌感染症

(参考:「予防接種とは?」東京都医師会HPより)

 

 

 

 

 

問題5 虚血性心疾患の四大リスク要因で誤っているのはどれか。

1.肥満
2.高血圧症
3.高尿酸血症
4.脂質異常症

答え.3

解説

虚血性心疾患の四大リスク要因

①高血圧、②高脂血症(脂質異常症)、③肥満(BMI25以上)、④喫煙は、特に4大冠危険因子とされている。他にも、「加齢」「遺伝」「喫煙」「糖尿病」「運動不足」「ストレス」なども、危険因子として挙げられています。ちなみに、虚血性心疾患とは、心筋の酸素需要量を冠血流によってまかなうことができなくなり、心筋細胞が虚血を来す疾患群の総称である。虚血によって壊死が生じた場合を心筋梗塞、壊死のない状態を狭心症とよぶ。特に心筋梗塞では重症感があり、30分以上痛みが継続している場合、冷汗がみられる場合、硝酸薬の効果が少ない場合などは注意を要する。一般的に心筋梗塞では締めつけられるような激しい痛みが特徴的だが、基礎疾患として糖尿病に罹患している場合、重篤な痛みを訴えないこともある。

1.〇 肥満
肥満の定義として、脂肪組織に脂肪が過剰に蓄積した状態で、体格指数(BMI)25以上のものさす。

2.〇 高血圧症
高血圧症とは、くり返して測っても血圧が正常より高い場合をいい、①本態性高血圧(原因が生活習慣や環境、遺伝などはっきり特定できないもの:高血圧症全体の9割)と、②二次性高血圧(ホルモン分泌異常や臓器の奇形などで生じ原因が特定できるもの:腎血管性高血圧を含む)に分けられる。くり返しの測定で診察室血圧で最高血圧が140mmHg以上、あるいは、最低血圧が90mmHg以上であれば、高血圧と診断される。

3.× 高尿酸血症は、虚血性心疾患の四大リスク要因で誤っている。
高尿酸血症とは、血清尿酸値が7.0mg/dLを正常上限とし、これを超えるものと定義する。男性が圧倒的に多く男女比約20:1の割合である。

4.〇 脂質異常症
脂質異常症とは、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド(TG)血症を指し、動脈硬化の原因となる。その治療で重要なのは、薬物療法のほか、食事指導による適正体重の維持や内臓脂肪の減量である。まず食事指導の基本は、総摂取エネルギーと栄養素配分を適正化することである。

痛風とは?

 痛風とは、体内で尿酸が過剰になると、関節にたまって結晶化し、炎症を引き起こして腫れや痛みを生じる病気である。風が患部に吹きつけるだけで激しい痛みが走ることから痛風と名づけられたといわれている。男性に頻発する単関節炎で、下肢、特に第1中足跳関節に好発する。尿酸はプリン体の代謝の最終産物として産生され、代謝異常があると尿酸の産生過剰・排泄障害が生じ高尿酸血症となる。高尿酸血症は痛風や腎臓などの臓器障害を引き起こすほか、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣を合併しやすい。

 

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