第29回(R3年)柔道整復師国家試験 解説【午後41~45】

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問題41 血尿の原因とならないのはどれか。

1.IgA腎症
2.尿路結石症
3.前立腺肥大症
4.急性糸球体腎炎

答え.3

解説
1.〇 IgA腎症
IgA腎症とは、検尿で血尿や蛋白尿を認め、腎臓の糸球体に免疫グロブリンのIgAという蛋白が沈着する病気である。多くは慢性の経過をたどる。

2.〇 尿路結石症
尿路結石症とは、尿路に、結石(尿に含まれるカルシウム・シュウ酸・リン酸・尿酸などが結晶化したもの)ができる病気である。結石のできる位置によって、腎結石(腎臓内にある結石) 、尿管結石、膀胱結石などと呼ばれる。結石ができる原因は明確に分かっていないが、リスク要因としては体質遺伝の他、生活習慣が大きく関わっているとされている。典型的な最初の症状は脇腹から下腹部にかけての突然の激痛である。尿検査で血尿が認められた場合には尿管結石が強く疑われる。また、結石によって閉塞した部位の中枢側の尿路が拡張し、腰背部の仙痛発作が起こる。治療としては、①体外衝撃波腎・尿管結石破砕術、②経尿道的尿路結石除去術、③経皮的尿路結石除去術(もしくは②と③を同時に併用する手術)などがあげられる。

3.× 前立腺肥大症は、血尿の原因とならない。
前立腺肥大症とは、男性の膀胱の隣にある前立腺という臓器が大きくなっている状態で、排尿症状や蓄尿症状、排尿後症状などが現れる。原因ははっきりと断定できていないが、男性ホルモンの関与が指摘されている。また、肥満や高血圧、高血糖、脂質異常症なども関係があるといわれている。

4.〇 急性糸球体腎炎
糸球体腎炎とは、糸球体腎炎のうちで数週から数カ月の短い期間に急速に腎機能が低下する病気である。糸球体が侵される病気である。原因として、急性上気道炎などの感染後、10日ほど経ってから血尿、むくみ、高血圧などで発症する。症状として、血尿、蛋白尿、貧血を認め、倦怠感や発熱、体重減少などがあげられる。

 

 

 

 

 

問題42 腎前性急性腎障害の原因となるのはどれか。

1.脱水
2.腎梗塞
3.前立腺癌
4.急性糸球体腎炎

答え.1

解説

腎前性急性腎障害

腎前性急性腎不全の原因は心不全である。腎前性とは、尿が腎臓を出る前にある場合をいう。主な原因は、腎臓に流れる血液量が減少することである。したがって、心不全のほかにも、外傷による大量出血、消化管出血、脱水、頻発する嘔吐・下痢などによる体液量の減少などである。

1.〇 正しい。脱水は、腎前性急性腎障害の原因となる。
腎前性急性腎不全の原因は心不全である。腎前性とは、尿が腎臓を出る前にある場合をいう。主な原因は、腎臓に流れる血液量が減少することである。したがって、心不全のほかにも、外傷による大量出血、消化管出血、脱水、頻発する嘔吐・下痢などによる体液量の減少などである。

2.× 腎梗塞
腎梗塞とは、何らかの理由で腎臓の太い動脈が詰まる病気である。腎梗塞では突然発症する腹痛や背部痛、吐き気などが生じる。したがって、腎梗塞は腎実質性または腎後性急性腎障害を引き起こす。腎後性とは、尿が腎臓を出た後にある場合をいう。尿の排出経路が閉塞することで発症し、前立腺がん、左右両側の尿路結石、子宮頸がんなどによる尿管の圧迫などが原因として挙げられる。ちなみに、急性腎障害の原因はさまざまで、①腎前性、②腎性、③腎後性の3種類の機序でそれぞれ異なる。②腎性は、腎臓そのものの障害により発症する。例えば、糸球体に障害が起こる糸球体腎炎、間質や尿細管に炎症が起こる間質性腎炎や腎盂腎炎などである。

3.× 前立腺癌
前立腺癌は、進行すると尿道を閉塞し、腎臓への尿の流れを妨げることがある。したがって、前立腺癌は腎後性急性腎障害を引き起こす。腎後性急性腎障害とは、尿の排出経路が閉塞することで発症するものをいう。例えば、著しい前立腺肥大、前立腺がん、左右両側の尿路結石、子宮頸がんなどによる尿管の圧迫などが原因としてあげられる。

4.× 急性糸球体腎炎
糸球体腎炎とは、糸球体腎炎のうちで数週から数カ月の短い期間に急速に腎機能が低下する病気である。糸球体が侵される病気である。原因として、急性上気道炎などの感染後、10日ほど経ってから血尿、むくみ、高血圧などで発症する。症状として、血尿、蛋白尿、貧血を認め、倦怠感や発熱、体重減少などがあげられる。

 

 

 

 

 

問題43 筋萎縮性側索硬化症で正しいのはどれか。

1.運動失調を呈する。
2.呼吸筋麻痺を呈する。
3.再発・寛解を繰り返す。
4.複視・眼瞼下垂を呈する。

答え.2

解説
1.× 運動失調を呈するのは、「脊髄小脳変性症」である。
脊髄小脳変性症とは、運動失調を主症状とし、原因が、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患等によらない疾患の総称である。遺伝性と孤発性に大別され、①純粋小脳型(小脳症状のみが目立つ)と、②多系統障害型(小脳以外の症状が目立つ)に大別される。脊髄小脳変性症の割合として、孤発性(67.2%)、常染色体優性遺伝性(27%)、が常染色体劣性遺伝性(1.8%)であった。孤発性のものの大多数は多系統萎縮症である。(※参考:「18 脊髄小脳変性症(多系統萎縮症を除く。)」厚生労働省様HPより)

2.〇 正しい。呼吸筋麻痺を呈する
筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。

3.× 再発・寛解を繰り返すのは、「多発性硬化症」である。
多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ。(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)

4.× 複視・眼瞼下垂を呈するのは、「重症筋無力症」である。
重症筋無力症とは、末梢神経と筋肉の接ぎ目(神経筋接合部)において、筋肉側の受容体が自己抗体により破壊される自己免疫疾患のこと。全身の筋力低下、易疲労性が出現し、特に眼瞼下垂、複視などの眼の症状をおこしやすいことが特徴(眼の症状だけの場合は眼筋型、全身の症状があるものを全身型と呼ぶ)。嚥下が上手く出来なくなる場合もある。重症化すると呼吸筋の麻痺をおこし、呼吸困難を来すこともある。日内変動が特徴で、午後に症状が悪化する。クリーゼとは、感染や過労、禁忌薬の投与、手術ストレスなどが誘因となって、急性増悪し急激な筋力低下、呼吸困難を呈する状態のことである。直ちに、気管内挿管・人工呼吸管理を行う。【診断】テンシロンテスト、反復誘発検査、抗ACh受容体抗体測定などが有用である。【治療】眼筋型と全身型にわかれ、眼筋型はコリンエステラーゼ阻害薬で経過を見る場合もあるが、非有効例にはステロイド療法が選択される。胸腺腫の合併は確認し、胸腺腫合併例は、原則、拡大胸腺摘除術を施行する。難治例や急性増悪時には、血液浄化療法や免疫グロブリン大量療法、ステロイド・パルス療法が併用される(※参考「11 重症筋無力症」厚生労働省HPより)。

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋委縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

問題44 70歳の男性。建築業で現在も喫煙している。左上肢痛を訴えている。整形外科では、頸椎症や肩関節症はないと診断されている。
 可能性が低いのはどれか。

1.肺癌の腕神経叢浸潤
2.帯状疱疹後神経痛
3.胸髄腫瘍
4.筋肉痛

答え.3

解説

本症例のポイント

70歳の男性(建築業)。
・現在:喫煙中
・訴え:左上肢痛
・整形外科の診断「頸椎症や肩関節症はない」と。
70歳の男性(建築業、喫煙者)の好発疾患や特徴を押さえておく必要がある。

1.〇 肺癌の腕神経叢浸潤
なぜなら、本症例は、建築業で働いており、喫煙もしているので、肺癌のリスクが高いため。肺癌は特に上葉にできると、隣接する腕神経叢を浸潤し、上肢痛を引き起こすことがある。

2.〇 帯状疱疹後神経痛
本症例は、特に帯状疱疹の発症を示す記述はないが、それでも高齢者であるため完全に除外はできない。ちなみに、帯状疱疹後神経痛とは、帯状疱疹の皮疹(水疱など)が消失し、帯状疱疹が治癒した後も続く痛みのことで、帯状疱疹の合併症としては最も頻度が高く、3ヵ月後で7~25%、6ヵ月後で5~13%の人が発症しているという報告である。帯状疱疹とは、身体の左右どちらか一方に、ピリピリと刺すような痛みと、これに続いて赤い斑点と小さな水ぶくれが帯状にあらわれる病気である。多くの人が子どものときに感染する水ぼうそうのウイルスが原因で起こる。

3.× 胸髄腫瘍の可能性は低い。
なぜなら、胸髄に障害を受けている場合、その部位よりも下の胸やおなかの感覚障害、下肢運動機能障害が起こるため。本症例の訴えは、左上肢痛であるため、胸髄より頚髄の障害が疑われる。

4.〇 筋肉痛
なぜなら、本症例は現在も建築業で働いているため。筋肉を酷使することによる筋肉痛が発生する可能性が考えられる。

 

 

 

 

 

 

問題45 26歳の女性。3日前から排尿時痛に気づいていたが、悪寒、発熱が出現したため受診した。体温39.4°Cで右肋骨脊柱角に叩打痛が認められた。血液検査で白血球数増多とCRP高値が認められ、尿は混濁しており、鏡検で多数の白血球が認められた。
 考えられるのはどれか。

1.胆嚢炎
2.虫垂炎
3.腎盂腎炎
4.慢性糸球体腎炎

答え.3

解説

本症例のポイント

・26歳の女性(3日前から排尿時痛)。
・悪寒、発熱が出現したため受診。
・体温39.4°C、右肋骨脊柱角に叩打痛あり。
・血液検査:白血球数増多、CRP高値、尿は混濁
・鏡検:多数の白血球あり
→排尿時痛や尿の混濁、尿中の白血球増多といった症状があり、尿路感染症を示唆する。

1.× 胆嚢炎
(急性)胆嚢炎とは、胆のうに炎症が生じた状態である。 胆のうがむくんで腫れ、炎症の進行とともに胆のうの壁が壊死していく。 症状は、初期には上腹部の不快感や鈍痛で、炎症の進行とともに右季肋部痛(右の肋骨の下あたり)になり、次第に激痛になる。原因の90%は、胆のうの中の胆石が胆嚢の出口に詰まることである。胆石は、脂質の多い食生活でみられやすい。

2.× 虫垂炎
虫垂炎とは、何らかの原因で虫垂に炎症が起こる病態を指し、一般的には「もうちょう」として知られている。典型的な初期症状は、吐気・嘔吐・食欲不振・心窩部痛であり、痛みは時間の経過とともに右下腹部に移行する。

3.〇 正しい。腎盂腎炎が考えられる。
(急性)腎盂腎炎とは、細菌が腎臓の中に入って、炎症が起きている状態である。 20~40歳代では、男女比は1対30である。なぜなら、膀胱炎からの逆行性感染によって生じることが多いため。したがって、解剖学的に尿道が短く膀胱炎になりやすい女性に多い。また、女性は男性よりも尿道が短く尿道口と肛門が近いため、細菌が膀胱へ侵入しやすいことが原因の一つとして挙げられる。症状が急に現れるが、治療が早くできると症状は3日~5日で落ち着く。 しかし、症状が悪くなれば入院する必要があるため、注意する必要がある。

4.× 慢性糸球体腎炎
慢性糸球体腎炎とは、腎臓の中の糸球体という、血液から尿を作る部分に持続的に炎症を生じている病態を指す。慢性糸球体腎炎は糸球体に炎症を生じる疾患の総称で、その中にIgA腎症、膜性腎症などが含まれる。血尿や蛋白尿を生じ、持続することで次第に腎機能が低下していく。

尿路感染症とは?

尿路感染症は、感染診断名としては、①腎盂腎炎と②膀胱炎とに分けられる。一方で、その病態による一般的分類法として尿路基礎疾患のある・なしで、複雑性と単純性とに分ける。頻度として多い女性の急性単純性膀胱炎は外来治療の対象である。急性単純性腎盂腎炎は高熱のある場合、入院が必要なこともある。複雑性尿路感染症は、膀胱炎、腎盂腎炎とも、症状軽微な場合、外来治療が原則であるが、複雑性腎盂腎炎で尿路閉塞機転が強く高熱が認められるものでは、入院の上、腎瘻造設などの外科的ドレナージを要することもある。それら病態を見極めるための検査として、画像診断(超音波断層、静脈性腎盂造影、X線CTなど)が必要となる。感染症としての診断には、適切な採尿法による検尿で膿尿を証明すること、尿培養にて原因菌を同定し薬剤感受性を検査することが基本である。

【疑うべき臨床症状】
尿路感染症の症状は、急性単純性膀胱炎では排尿痛、頻尿、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛が、急性単純性腎盂腎炎では発熱、悪寒、側腹部痛が、主たるものである。複雑性尿路感染症では膀胱炎、腎盂腎炎それぞれにおいて、単純性と同様の症状が見られるが、無症状に近いものから、強い症状を呈するものまで幅が広い。上部尿路閉塞に伴う膿腎症では高熱が続くこともある。

(※引用:「尿路感染症」総合南東北病院より)

 

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