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問題46 外科的感染症で正しいのはどれか。
1.ガス壊疽では痛みを伴わない。
2.挫滅創は切創に比べて感染しやすい。
3.抗菌薬を全身投与すれば感染は生じない。
4.破傷風トキソイドの接種歴があれば破傷風に罹患しない。
答え.2
解説
外科的感染症とは、2つの種類に分類される。①一次感染症:たとえば腹膜炎や膿瘍のように感染症自体が外科的治療の対象である。②術後感染症:感染の危険性は術前・術中・術後を通して存在している(周術期感染症)。
1.× ガス壊疽は、痛みを「伴う」。
ガス壊疽とは、ガス産生菌が傷口から侵入して感染し、筋肉が壊死に陥り、全身に中毒症を起こす致死性の感染症である。筋肉を中心としてメタンや二酸化炭素などのガスが発生することにより、感染が広がる。クロストリジウム属(ウェルシュ菌など)の菌により起こるクロストリジウム性ガス壊疽と、他の細菌で起こる非クロストリジウム性ガス壊疽の2つに大別される。深刻な感染症で、急速に進行し、強い痛みを伴い、皮膚の下にある組織が壊死し、ガスを生じることからこの名前が付けられている。
2.〇 正しい。挫滅創(※読み:ざめつそう)は切創(※読み:きりきず)に比べて感染しやすい。
挫滅創とは、硬いものにぶつかる、指をつめる(挟む)など、強い衝撃で皮膚や筋肉の組織が圧迫され、損傷を受けた状態をいう。交通事故や労働災害などで起こる。挫滅創は、神経や筋肉などの組織が複雑に破壊される場合が多く、体の外部からの細菌が深部組織に侵入しやすくなるため、感染が生じやすい。
3.× 抗菌薬を全身投与すれば感染は生じないと断定することはできない。
なぜなら、特に手術などの侵襲的な処置後には、適切な手術室の清潔さ、手術手技、手術後のケアなど、多くの要素が感染リスクに影響を与えるため。ちなみに、抗菌薬とは、細菌を壊したり、増えるのを抑えたりする薬のことである。細菌による感染症の治療に使用される医薬品である。
4.× 破傷風トキソイドの接種歴があれば破傷風に罹患しないとはいえない。
破傷風トキソイドのワクチンは、破傷風の予防に寄与するが、破傷風トキソイドを3~8週間の間隔で2回接種後、4週間で免疫を獲得できる。その後、 感染防御効果を持続するためには、さらに6~12ヵ月、あるいは1年半後に3回目のワクチン接種を行えば 約4~5年間は免疫状態が続く。つまり、過去に接種歴があったとはいえ、期間が大切となる。ちなみに、破傷風とは、破傷風菌により発生し、主に傷口に菌が入り込んで感染を起こし毒素を通して、さまざまな神経に作用する。感染して3日から3週間からの症状のない期間があった後、口を開けにくい、首筋が張る、体が痛いなどの症状があらわれる。その後、体のしびれや痛みが体全体に広がり、全身を弓なりに反らせる姿勢や呼吸困難が現れたのちに死亡する。
問題47 悪性腫瘍の病期分類を構成する因子で誤っているのはどれか。
1.癌性疼痛の有無
2.遠隔転移の有無
3.原発腫瘍の広がり
4.所属リンパ節転移の有無
答え.1
解説
病期の評価には、TNM分類と呼ばれる分類法を使用する。これは、がんの大きさと浸潤(T因子)、リンパ節転移(N因子)、遠隔転移の有無(M因子)の3つの因子について評価し、これらを総合的に組み合わせて病期を決定する。
1.× 癌性疼痛の有無は、悪性腫瘍の病期分類を構成する因子で誤っている。
がん疼痛(がん性疼痛)とは、がん患者に生じる痛みのすべてを含み、がん自体(腫瘍の浸潤や増大、転移など)が直接の原因となる痛み、がん治療に伴って生じる痛み(術後痛や術後の慢性疼痛、化学療法による神経障害に伴う疼痛など)、がんに関連した痛み(長期臥床に伴う腰痛、リンパ浮腫、褥創など)、がん患者に併発したがんに関連しない疾患による痛み(変形性脊椎症、片頭痛など)の4種類に分類される。
2.〇 正しい。遠隔転移の有無
TNM分類の(M因子:Metastasis)に該当する。
3.〇 正しい。原発腫瘍の広がり
TNM分類の(T因子:Tumor)に該当する。
4.〇 正しい。所属リンパ節転移の有無
TNM分類の(N因子:Nodes)に該当する。
問題48 ショックの原因と病態の組合せで正しいのはどれか。
1.緊張性気胸:閉塞性
2.アナフィラキシー:心原性
3.敗血症:循環血液量減少性
4.重度下痢:血液分布異常性
答え.1
解説
ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。頻度的に最も多いのは出血性ショックである。出血性ショックとは、外傷や、消化管などからの出血によって血液循環量の低下が原因で起こるショックのことである。術後出血が原因となることもある。
1.〇 正しい。緊張性気胸は、「閉塞性」である。
緊張性気胸とは、胸壁と肺との間に空気がたまることで胸部への圧力が高まり、心臓に戻る血液が減少することである。症状には、胸痛、息切れ、速い呼吸、心拍数の増加などがあり、ショックに至ることがある。
2.× アナフィラキシーは、「心原性」ではなく血液分布異常性である。
アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応で起こるショックのことである。主にⅠ型アレルギー反応の結果、血管拡張や血管透過性の亢進による血漿漏出が生じ、循環血液量の減少をきたすことで起こる。ショックとは、体液の喪失、心臓機能の低下(血圧低下)、血管系虚脱などにより組織への酸素供給が障害され、放置すれば進行性に全身の臓器還流障害から急速に死に至る重篤な病態である。
3.× 敗血症は、「循環血液量減少性」ではなく敗血症性である。
敗血症とは、感染症への反応が制御不能に陥ることで生命を脅かす臓器機能障害が生じる臨床症候群である。敗血症性ショックでは、組織灌流が危機的に減少する。肺・腎臓・肝臓をはじめとする急性多臓器不全が起こる場合もある。特に、新生児は免疫学的に未熟であるため重症化しやすく、肺炎や髄膜炎を併発することもある。そのため、早期診断、早期治療が極めて重要である。
4.× 重度下痢は、「血液分布異常性」ではなく循環血液量減少性である。
循環血液量減少性ショックとは、血管内容量の危機的な減少で起こるショックのことである。 静脈還流(前負荷)が減少すると、心室が充満せず、一回拍出量が減少する。 心拍数の増加によって代償されない限り、心拍出量は減少する。 一般的な原因は出血(出血性ショック)で、通常、外傷、外科手術、消化性潰瘍、食道静脈瘤、大動脈瘤破裂によって起こる。
問題49 新鮮凍結血漿の適応はどれか。
1.失血
2.肺水腫
3.低栄養
4.肝不全
答え.4
解説
新鮮凍結血漿は、新生児には先天性血栓性血小板減少性紫斑病や凝固因子の補充、赤血球濃厚液輸血時などに使用される。新鮮凍結血漿(FFP)は採血して4時間以内の全血を遠心分離して得た血漿を凍結したものである。
1.× 失血
失血とは、大量の血液が急速に失われることである。ショック状態を呈し、重度の場合は死亡する。全血量の約3分の1以上が急に失われると危険である。新鮮凍結血漿は、主に凝固因子の補給を目的として使用される。
2.× 肺水腫
肺水腫とは、肺静脈性肺高血圧と肺胞内の液貯留を伴った重度の急性左室不全である。肺水腫は通常、利尿薬や心不全の治療、時には人工呼吸などにより管理される。
3.× 低栄養
低栄養とは、栄養素の摂取が生体の必要量より少ないときに起こる体の状態である。健康的に生きるために必要な量の栄養素が摂れていない状態を指し、BMI値18.5未満は低栄養、21.5未満は低栄養リスクとされる。治療は、摂取するカロリー量を徐々に増やすことである。栄養価の高い食事を少量ずつ何回かに分けて食べるのが最もよい方法である。
4.〇 正しい。肝不全は、新鮮凍結血漿の適応である。なぜなら、肝不全の患者は、肝臓による凝固因子の産生が不足し、出血傾向になることがあるため。新鮮凍結血漿が、補充療法として使用され、血液の凝固能力を改善することが期待できる。ちなみに、肝不全とは、肝臓が機能不全を起こしている状態を指す。肝不全のタイプとして、①急性肝不全と②慢性肝不全がある。①急性肝不全は、急激な肝臓の機能低下が原因で、②慢性肝不全は、長期間にわたって肝臓が損傷を受けたことが原因で発生する。症状として、食欲不振や体重減少、消化器症状(悪心や嘔吐、下痢など)、肝臓の腫れによる腹部の膨満感や痛み、重篤な症状(発熱や意識障害、昏睡など)があげられる。治療として、薬物療法、食事療法、肝移植などがあげられる。予防には、アルコールや薬物の乱用を避け、肝臓の健康を維持する生活習慣を心がけることが大切である。
問題50 消毒あるいは滅菌の説明で誤っているのはどれか。
1.消毒薬自体が汚染されることがある。
2.アルコールは皮膚の消毒に使用できる。
3.高圧蒸気は光学機器の滅菌に有用である。
4.滅菌はすべての微生物を死滅させることである。
答え.3
解説
1.〇 正しい。消毒薬自体が汚染されることがある。
なぜなら、消毒薬は適切に管理されない場合が考えられるため。その場合は、微生物によって汚染される可能性がある。
2.〇 正しい。アルコールは皮膚の消毒に使用できる。
アルコールは、手指や皮膚の消毒に広く使用されている。手洗いは①石けんと流水による手洗いか、②速乾性擦式消毒(アルコール消毒)を行うことが望ましい。WHOはアルコールの方が手荒れ対策に有効であることを強調している。15秒以上こすり合わせる必要がある。
3.× 高圧蒸気は、光学機器の滅菌に有用ではない。
光学機器とは、光の作用や性質を利用した機器の総称である。レンズやミラー、プリズムなどで構成され、光の直進や屈折、反射、干渉などを利用する器械で、視覚に絡んだものや計測機器のようなものが多い。光学機器の滅菌方法として、エチレンオキサイドガス滅菌(酸化エチレンガス滅菌)があげられる。特徴として、沸点が10.8℃と低く可燃性で引火しやすいが、強い殺菌作用がある。滅菌条件は50~60℃、4~6時間である。熱に弱いプラスチック製品、カテーテルチューブ類、ゴム製品、光学機器、内視鏡などの滅菌に適し、浸透性に優れている。一方、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ滅菌)とは、飽和水蒸気(空気が排除され蒸気で満たされた状態)の中で135℃付近まで加熱し、発生した水分により蛋白凝固を促進して微生物を死滅させる方法をいう。利点として、①浸透性が強いこと、②残留毒性がないこと、③短時間で滅菌可能であることなどがあげられる。
4.〇 正しい。滅菌はすべての微生物を死滅させることである。
無菌とは、すべての菌が存在しない状態である。滅菌とは、物体の表面または容器内のすべての生命形態(細菌、ウイルス、胞子、真菌など)を完全に除去または死滅させるプロセスを指す。消毒とは、病原性微生物を、害の無い程度まで減らしたり、あるいは感染力を失わせたりして、毒性を無力化させることである。殺菌とは、一部を殺しただけでも「殺菌した」と言える状態であるため、この用語を使う場合は、有効性を保証したものではないともいえる。静菌とは、菌をしずめている状態で、菌を殺さないがその増殖を止めている状態を指す。対象や程度を含まない概念である。除菌とは、菌をのぞいている状態で、対象物から菌を除いて減らしている状態である。抗菌とは、菌をふせぐことで、細菌の増殖を阻止する(抑制する)ことである。菌を殺したり減少させたりするのではなく、繁殖を阻止する(抑制する)対象や程度を含まない概念である。