第30回(R4年)柔道整復師国家試験 解説【午後101~105】

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問題101 有痛性外脛骨で誤っているのはどれか。

1.若年者に好発する。
2.足背部の骨折が原因である。
3.靴による圧迫で痛みを訴える。
4.アーチに異常がみられる。

答え.

解説

有痛性外脛骨とは?

外脛骨とは、足の舟状骨の内側に位置する骨をいう。正常な人の15%程度にみられる足の内側にある余分な骨である。有痛性外脛骨とは、その外脛骨が痛みを起こしてしまった状態をいう。スポーツ活動や捻挫などの外傷をきっかけに痛みを起こすことがあり、小児、特に女性での発症が多く、成長期を終えると痛みが治まることが多い。主な症状として、①疼痛(圧痛、運動時痛)、②腫脹(うちくるぶしの下方の腫れ)があげられる。他にも、炎症が強い場合には、熱感も引き起こすことがある。治療として、①薬物療法(鎮痛)、②運動療法、③物理療法(温熱や電気刺激による鎮痛)、④装具療法などがあげられる。

1.〇 正しい。若年者に好発する。
小児、特に女性での発症が多く、成長期を終えると痛みが治まることが多い。したがって、好発年齢はスポーツ活動が盛んな思春期(10~15歳頃)である。

2.× 「足背部の骨折」ではなく外脛骨の炎症が原因である。
スポーツ活動や捻挫などの外傷をきっかけに外脛骨の炎症が起こる。

3.〇 正しい。靴による圧迫で痛みを訴える。
他にも主訴として、外脛骨部の痛み、腫れや熱感、圧痛、歩くと痛い、体重をかけると痛い、運動すると痛いなどがあげられる。

4.〇 正しい。アーチに異常がみられる。
アライメント異常の内容として、土踏まず(内側縦アーチ)が低く、踵が内側へ倒れやすい状態である。内側縦アーチの低下は、扁平足である。つまり、扁平足に対した対応が求められる。また、扁平足のため踵骨が内側に倒れ込む外反も考慮する。内側縦アーチは、踵骨・距骨・舟状骨・内側楔状骨・第1中足骨からなる。外側縦アーチは、踵骨・立方骨・第5中足骨からなる。

 

 

 

 

 

問題102 外反母趾で誤っているのはどれか。

1.第1MTP関節が外反変形する。
2.足底板の挿入を指導する。
3.第2・3MTP関節底側に胼胝を形成する。
4.第5中足骨頭の外側にバニオンが生じる。

答え.

解説

外反母趾とは?

外反母趾とは、足の親指(母趾)が小指側に曲がり、「く」の字のように変形することである。

1.〇 正しい。第1MTP関節が外反変形する。
第1MTP関節とは、母趾中足趾節関節のことをいい、足の親指の母趾基節骨と第一中足骨の間の関節である。

2.〇 正しい。足底板の挿入を指導する。
外反母趾では、まず生活指導(靴指導、足底板、運動)、装具療法、理学療法、薬物療法が行われる。これらで改善しない場合には、手術が検討される。

3.〇 正しい。第2・3MTP関節底側に胼胝を形成する。
鶏眼(うおのめ)、胼胝(たこ)は、スポーツや職業、趣味などにより手足の特定の部位に圧が反復的に加わることで生じる皮膚の局所的な肥厚である。外反母趾の場合、第2・3MTP関節底側に圧がかかるため、胼胝が形成される。治療の対象となるのは、ほとんどが荷重部の足裏や足の指に生じるものである。

4.× 第5中足骨頭の外側にバニオンが生じる。
バニオンとは、第1中足骨頭の内側部分の隆起である。原因は、母趾の外側への屈曲(外反母趾)など、第1中足骨または母趾の位置の変化であることが多い。二次性変形性関節症および骨棘形成がよくみられる。 症状としては、疼痛および発赤、関節内側の滑液包炎、軽度の滑膜炎などがある。

 

 

 

 

 

問題103 80歳の女性。玄関で転倒し手を衝き左手首が変形したため来所した。別に外観写真と手関節背側より長軸方向を観察した超音波画像を示す。
 施術する際の注意点で誤っているのはどれか。

1.全身状態を確認する。
2.解剖学的治癒を主眼に置く。
3.尺骨茎状突起骨折の合併を疑う。
4.固定部以外の自動運動を早期より行う。

答え.

解説

本症例のポイント

・80歳の女性
・玄関で転倒:手を衝き左手首が変形。
→受傷機転、外観写真、超音波画像から、橈骨遠位端骨折が疑われる。橈骨遠位端骨折とは、橈骨の骨折のことで、転んで手をついたときに起こる比較的頻度が高い骨折である。同時に、尺骨の骨折も起こる。

1.〇 正しい。全身状態を確認する。
なぜなら、骨折箇所が手首以外も否定できないため。高齢者に多い骨折は①大腿骨頸部骨折、②脊椎圧迫骨折、③橈骨遠位端骨折、④上腕骨頸部骨折などがあり、これらは「高齢者の4大骨折」と呼ばれている。

2.× 「解剖学的治癒」ではなく機能的治癒を主眼に置く。
本症例の場合、高齢(80歳)で、超音波検査より複雑に骨折していることがわかる。この複雑な骨折に対し、解剖学的治癒は困難であるといえ、早期から機能的治癒に主眼を置くことが望ましい。一般的に、橈骨遠位端骨折の治療においても、骨折にほとんど転位のない場合は、ギプス固定を約4週間行う。骨折に転位のある場合では、レントゲンの透視像を見ながら、徒手整復し、安定していれば、ギブス固定(約4~6週間)行う。困難な場合は手術が検討される。

3.〇 正しい。尺骨茎状突起骨折の合併を疑う。
なぜなら、橈骨遠位端骨折において合併しやすいため。橈骨遠位端骨折とは、橈骨の骨折のことで、転んで手をついたときに起こる比較的頻度が高い骨折である。同時に、尺骨の骨折も起こる。

4.〇 正しい。固定部以外の自動運動を早期より行う。
なぜなら、高齢者は、不活動により筋力低下をきたし、さらなる転倒を助長やすいため。ちなみに、廃用症候群とは、病気やケガなどの治療のため、長期間にわたって安静状態を継続することにより、身体能力の大幅な低下や精神状態に悪影響をもたらす症状のこと。関節拘縮や筋萎縮、褥瘡などの局所性症状だけでなく、起立性低血圧や心肺機能の低下、精神症状などの症状も含まれる。一度生じると、回復には多くの時間を要し、寝たきりの最大のリスクとなるため予防が重要である。廃用症候群の進行は速く、特に高齢者はその現象が顕著である。1週間寝たままの状態を続けると、10~15%程度の筋力低下が見られることもある。

 

 

 

 

 

問題104 70歳の男性。2週前から足関節捻挫で通所中である。痛みが引かないとクレームを言ってきた。普段から態度が威圧的である。
 施術にあたり正しいのはどれか。

1.施術を中止する。
2.患者の態度をいさめる。
3.施術に対する希望を尋ねる。
4.優遇して施術する。

答え.

解説

本症例のポイント

・70歳の男性(2週前から足関節捻挫)。
・「痛みが引かない」とクレーム。
・普段から態度が威圧的である。
→本症例は、足関節捻挫に対しての知識は不十分と考えられる。足関節捻挫の程度にも異なるが、一般的に完治するまでの期間は約8週間(約2ヶ月)といわれている。生活状況や足首の使用頻度によってはさらに伸びる可能性も考えられる。歩くときに痛みが出る程度の捻挫であっても、2ヶ月間は痛みと付き合いながら生活しなければならない。施設からの説明は十分であったか?、説明の仕方(場合によっては紙面)を工夫しなければならない。

1.× 施術を中止する必要はない
なぜなら、クレームを言ってきたということは、施設側にも落ち度があると考えられるため。施設からの説明は十分であったか?、説明の仕方(場合によっては紙面)を工夫しなければならない。

2.〇 正しい。患者の態度をいさめる
なぜなら、他の患者さんやスタッフに影響をきたしかねないため。少なからず、患者さんの中には、「100%施設側に落ち度がない」状態で、暴論と極論を振りまく患者さん(精神疾患の疑い)は一定数存在する。その場合は、出禁という対応を取るのが望ましい。ちなみに、「いさめる」とは、まちがいや良くない点を改めるように言うことである。つまり、忠告することである。

3.× 施術に対する希望を尋ねる必要はない
なぜなら、さらに症状が増悪し、クレームにつながりかねないため。炎症している状態で、血流を促すマッサージや温熱療法は禁忌であるとされている。ちなみに、温熱療法の禁忌は、①急性炎症、②悪性腫瘍、③感覚障害と意識障害、④出血傾向、⑤循環障害・動脈硬化などである。

4.× 優遇して施術する必要はない
なぜなら、他の患者さんやスタッフに影響をきたしかねないため。また、さらなるエスカレートした要求につながりかねない。患者さんに対する適切な対応は、公平かつ一貫したケアを提供することであるべきである。

 

 

 

 

 

問題105 18歳の男子。柔道の練習中に足払いを頻回に受けた際、下腿部に疼痛を感じた。下袴に血液の付着がみられたが、そのまま練習を継続した。3日後、疼痛および腫脹が増強し来所した。来所時、下腿部に発赤を伴う腫脹、熱感がみられ体温は38.5°Cであった。
 考えられるのはどれか。2つ選べ。

1.蜂窩織炎
2.シンスプリント
3.脛骨悪性骨腫瘍
4.急性コンパートメント症候群

答え.1・4

解説

本症例のポイント

・18歳の男子。
・柔道中の足払いを受けた際:下腿部に疼痛。
・下袴に血液の付着。
3日後:疼痛および腫脹が増強
・来所時:下腿部に発赤を伴う腫脹、熱感、体温38.5°C
→この問題は、消去法で解くことが望ましい。今回の経緯から、絶対ありえないといえる項目から排除していこう。

1.〇 正しい。蜂窩織炎が考えられる。
蜂窩織炎とは、皮膚とその下にある皮下脂肪にかけて、細菌が入り込んで、感染する皮膚の感染症である。スキンケアが重要である。また、浮腫が出現した時の対処として、①スキンケア、②マッサージによるリンパドレナージ、③圧迫療法、④浮腫減退運動療法を総合的に行う。一般的に、 ブドウ球菌とレンサ球菌が原因となる。接触感染の感染経路をとり、個室隔離の必要はない。

2.× シンスプリント
シンスプリント(脛骨過労性骨膜炎)とは、脛骨に付着している骨膜(筋肉)が炎症している状態である。運動中や運動後にすねの内側に痛みが出る。超音波にて治療を行う際は、下腿中央から遠位1/3部の脛骨後内方、前脛骨筋部、骨間膜などに照射する。原因として、過度の運動量、運動時間、運動内容、フォームの変更、固いグランドや路面での練習、薄く硬いシューズの使用(踵の摩耗)、下肢の形態異常(O脚、回内足、扁平足など)、足関節の柔軟性低下や下肢の筋力不足、足部の疲労による衝撃緩衝能の低下などである。

3.× 脛骨悪性骨腫瘍
悪性骨腫瘍とは、①原発性骨腫瘍(10歳代に発症しやすい骨肉腫)、②転移性骨腫瘍(肺癌や乳癌の骨への転移)がある。悪性骨腫瘍全体では転移性骨腫瘍が大半を占める。各腫瘍に特有な症状はない、けがをしないのに痛みや腫れが出現し、長く続いたりすることが多い。

4.〇 正しい。急性コンパートメント症候群が考えられる。
コンパートメント症候群とは、骨・筋膜・骨間膜に囲まれた「隔室」の内圧が、骨折や血腫形成、浮腫、血行障害などで上昇して、局所の筋・神経組織の循環障害を呈したものをいう。症状として6P【①pain(痛み)、②pallor(蒼白)、③paresthesia(知覚障害)、④paralysis(運動麻痺)、⑤pulselessiiess(末梢血管の拍動の消失)、⑥puffiniss(腫脹)】があげられ、それらを評価する。

 

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