第30回(R4年)柔道整復師国家試験 解説【午後61~65】

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問題61 骨形成不全症で正しいのはどれか。

1.視覚障害を合併する。
2.ステロイド薬が有効である。
3.骨折の癒合は比較的良好である。
4.Ⅱ型コラーゲンの形成異常が原因である。

答え.

解説

骨形成不全症とは?

骨形成不全症とは、「骨が非常にもろい」という特徴を持つ、遺伝性の病気である。骨形成不全症の90%以上の症例では、結合組織の主要な成分であるⅠ型コラーゲンの遺伝子変異(COL1A1,COL1A2)により、質的あるいは量的異常が原因で発症するとされている。症状として、骨折のしやすさ、骨の変形などの骨の弱さに加え、成長障害、目の強膜が青い、歯の形成が不十分、難聴、関節皮膚が伸びやすい、背骨の変形による呼吸の障害、心臓の弁(大動脈弁、僧帽弁に多い)の異常による心不全などが引き起こされることがある。
【治療】①内科的治療(骨粗鬆症に使用されるビスホスホネート製剤投与)、②外科的治療(骨折した際に外科的な骨接合術、四肢の変形に対して骨切り術、四肢の長い骨の骨折変形予防を目的とした髄内釘挿入術、背骨の変形に対する矯正固定術など)が行われる。

1.× 視覚障害は、合併しない
症状として、骨折のしやすさ、骨の変形などの骨の弱さに加え、成長障害、目の強膜が青い、歯の形成が不十分、難聴、関節皮膚が伸びやすい、背骨の変形による呼吸の障害、心臓の弁(大動脈弁、僧帽弁に多い)の異常による心不全などが引き起こされることがある。

2.× 「ステロイド薬」ではなく骨粗鬆症治療薬が有効である。
①内科的治療(骨粗鬆症に使用されるビスホスホネート製剤投与)、②外科的治療(骨折した際に外科的な骨接合術、四肢の変形に対して骨切り術、四肢の長い骨の骨折変形予防を目的とした髄内釘挿入術、背骨の変形に対する矯正固定術など)が行われる。

3.〇 正しい。骨折の癒合は比較的良好である
骨形成不全症とは、「骨が非常にもろい」という特徴を持つ。頻繁に骨折を経験するかもしれませんが、骨折の治癒過程自体は通常、健常者と同様に良好である。

4.× 「Ⅱ型コラーゲンの形成異常」ではなくⅠ型コラーゲンの遺伝子変異が原因である。
形成不全症とは、「骨が非常にもろい」という特徴を持つ、遺伝性の病気である。骨形成不全症の90%以上の症例では、結合組織の主要な成分であるⅠ型コラーゲンの遺伝子変異(COL1A1,COL1A2)により、質的あるいは量的異常が原因で発症するとされている。

副腎皮質ステロイド薬とは?

【ステロイドの機序】
ステロイドは細胞の中に入った後にグルココルチコイド受容体に結合する。ステロイドの結合したグルココルチコイド受容体は、細胞の核内へ移行し、炎症に関与する遺伝子の発現を調節すると言われている。 この結果として強力な抗炎症作用と免疫抑制作用が発揮される。

【ステロイドの副作用】
軽度:中心性肥満、体重増加、満月様顔貌
重度:消化管潰瘍、糖尿病、感染症、骨粗鬆症・骨壊死、筋炎、精神症状(抑うつ、せん妄)

ステロイドを長期的に内服した場合、体内でステロイドホルモンが分泌されなくなることがある。そのため、急に薬の内服を止めると体内のステロイドホルモンが不足し、倦怠感や血圧低下、吐き気、低血糖などの症状が起こることがある。これをステロイド離脱症候群という。

(※参考:「副腎皮質ステロイド」日本リウマチ学会様HP)

 

 

 

 

 

問題62 キーンベック(Kienbock)病で正しいのはどれか。

1.保存療法は無効である。
2.舟状骨の壊死性疾患である。
3.手関節掌側の腫脹がみられる。
4.進行すると手根骨の配列異常がみられる。

答え.

解説

(※画像引用:All About様)

Kienbock病とは?

Kienböck病(キーンベック病:月状骨軟化症)とは、月状骨がつぶれて扁平化する病気をいう。月状骨は手首(手関節)に8つある手根骨の1つでほぼ中央に位置している。月状骨は、周囲がほぼ軟骨に囲まれており血行が乏しいため、血流障害になり壊死しやすい骨の1つである。10~50歳代、男性、大工など手をよく使う人に好発する。治療は、初期では装具固定、進行例では手術療法を検討する。

1.× 保存療法は、「無効」ではなく有効である。
治療は、初期では装具固定(保存療法)、進行例では手術療法を検討する。ちなみに、保存的療法とは、人体を傷付けず、つまり出血させずに治療する方法の総称である。

2.× 「舟状骨」ではなく月状骨の壊死性疾患である。
Kienböck病(キーンベック病:月状骨軟化症)とは、月状骨がつぶれて扁平化する病気をいう。

3.× 手関節「掌側」ではなく背側の腫脹がみられる。
原因ははっきりわかっていないが、手を頻繁に使用する職業の男性に好発し、利き手に多く見られる。手を使った後の手首の痛み、腫脹、握力の低下などがあり、手首の背側に圧痛があればキーンベック病を疑う。

4.〇 正しい。進行すると手根骨の配列異常がみられる
なぜなら、進行により月状骨が壊死・破壊されるため。他の手根骨が動くことで、手関節の構造(手根骨の配列)が変化する。

 

 

 

 

 

問題63 頚椎後縦靱帯骨化症で正しいのはどれか。

1.女性に多い。
2.骨化の進行は早い。
3.糖尿病を合併することが多い。
4.進行すると弛緩性麻痺を呈する。

答え.

解説

後縦靱帯骨化症とは?

後縦靱帯骨化症とは、椎体骨の後縁を上下に連結し、背骨の中を縦に走る後縦靭帯が骨になった結果、脊髄の入っている脊柱管が狭くなり、脊髄や脊髄から分枝する神経根が押されて、感覚障害や運動障害等の神経症状を引き起こす病気である。症状が進行すると、頚髄損傷のように、四肢の麻痺や、上下肢の腱反射異常、病的反射、膀胱直腸障害が出現するようになる。中年以降、特に50歳前後で発症することが多く、男女比では2:1とされている。

1.× 「女性」ではなく男性に多い。
中年以降、特に50歳前後で発症することが多く、男女比では2:1と男性に多い。

2.× 骨化の進行は早いとはいえない
頚椎後縦靭帯骨化症は比較的ゆっくり進行する病気である。しかし、個々の患者においては、進行速度は疾患の程度、位置、他の健康問題などの多くの要因により異なる。

3.〇 正しい。糖尿病を合併することが多い
糖尿病や肥満に後縦靱帯骨化症の発生頻度が高い。ただし、単一の原因で生じる病気ではなく、複数の要因が関与して発病すると考えられている。ほかにも関係するものとして、遺伝的素因、性ホルモンの異常、カルシウム・ビタミンDの代謝異常、老化現象、全身的な骨化傾向、骨化部位における局所ストレス、またその部位の椎間板脱出などいろいろな要因が考えられているが、原因の特定には至っていない。

4.× 進行すると「弛緩性麻痺」ではなく脱力(運動障害)やしびれを呈する。
初期症状として、首筋や肩甲骨周辺・指先の痛みやしびれが生じる。さらに症状が進行すると、次第に痛みやしびれの範囲が拡がり、脚のしびれや感覚障害、足が思うように動かない等の運動障害、両手の細かい作業が困難となる手指の巧緻運動障害などが出現する。

麻痺の種類

・痙性麻痺とは、中枢神経系の筋を支配する神経細胞より上位の障害によるもので、筋緊張の亢進を伴う麻痺のことである。

・弛緩性麻痺とは、筋あるいは筋を直接支配する末梢運動神経の障害によるもので、筋緊張の低下を認める麻痺のことである。

 

 

 

 

 

問題64 モンテギア(Monteggia)骨折で正しいのはどれか。

1.尺骨神経麻痺を伴う。
2.橈骨頭の前方脱臼を伴う。
3.尺骨の遠位1/3で骨折する。
4.成人では外固定法が適応となる。

答え.

解説

モンテギア骨折とは?

Monteggia骨折は、尺骨骨幹部骨折に橈骨頭前方脱臼が起きたものである。手をついて転倒・転落した際、前腕回内力が作用することで起こりやすい。

1.× 「尺骨神経」ではなく橈骨神経麻痺を伴う。
橈骨神経麻痺では、下垂手がみられる。手関節・手指の伸筋群と、長母指外転筋・短母指伸筋の麻痺により、手関節背屈、示指から小指のMP関節伸展、母指伸展・外転が困難となる。

2.〇 正しい。橈骨頭の前方脱臼を伴う
Monteggia骨折は、尺骨骨幹部骨折に橈骨頭前方脱臼が起きたものである。

3.× 尺骨の「遠位1/3」ではなく骨幹部で骨折する。
Monteggia骨折は、尺骨骨幹部骨折に橈骨頭前方脱臼が起きたものである。

4.× 成人では「外固定法」ではなく手術が適応となる。
治療は、橈骨の脱臼を伴い不安定なことから、当初から観血固定術(患部を切開し、プレートを埋め込んで固定する術式)が選択される。 

固定法の種類

内固定法とは、鋼線やネジなどの金属で骨折した部分を体の中で直接固定する方法のこと。

外固定法とは、ギプス包帯法やギプス副子法、装具療法で固定する方法のこと。

 

 

 

 

 

問題65 手指伸筋腱皮下断裂の原因で誤っているのはどれか。

1.手関節ガングリオン
2.変形性手関節症
3.関節リウマチ
4.コーレス(Colles)骨折

答え.

解説

皮下断裂とは?

皮下断裂とは、骨と腱の接合部が弱くなったり、ステロイド注射をした後に突然指の屈曲ができなくなること。つまり、傷を伴わない腱断裂である。

1.× 手関節ガングリオンは、手指伸筋腱皮下断裂の原因ではない。
ガングリオンとは、手足に現れるゼリー状の物質が入った良性のしこりのこと。関節を包む袋が突き出ることで、関節などの曲げ伸ばしを滑らかにする液体(滑液:かつえき)が流れ込み、ゼリー状になって溜まることで発症する。この原因ははっきりと分かっておらず、自然にできることが多い。

2.〇 変形性手関節症
変形性関節症とは、軟骨下骨、関節裂隙、関節周囲構造の変化を伴う関節軟骨の異常に関連した疾患である。 手関節症、膝関節症、股関節症など、部位によって臨床症状が異なるが、一般的な症状として、圧痛、筋力低下、骨棘と呼ばれる突起があり、骨に当たってすれることなどがあげられる。

3.〇 関節リウマチ
関節リウマチは、免疫系が関節を攻撃する自己免疫疾患で、痛みや腫れ、関節の損傷を引き起こす。関節の損傷を引き起こすため、伸筋腱の断裂をも伴うことがある。

4.〇 コーレス(Colles)骨折
Colles骨折(コーレス骨折)とは、橈骨遠位端骨折のひとつで、手首側の骨片が手の甲の方向にずれるタイプのものである。この骨折により、伸筋腱の断裂を伴うことがある。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

橈骨遠位端骨折

・Smith骨折(スミス骨折):Colles骨折とは逆に骨片が掌側に転位する。
・Colles骨折(コーレス骨折):Smith骨折とは逆に骨片が背側に転位する。
・Barton骨折(バートン骨折):橈骨遠位部の関節内骨折である。遠位部骨片が手根管とともに背側もしくは掌側に転位しているものをいう。それぞれ背側Barton骨折・掌側Barton骨折という。

主な治療として、骨転位が軽度である場合はギプス固定をする保存療法、骨転位が重度である場合はプレート固定を行う手術療法である。

 

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