第30回(R4年)柔道整復師国家試験 解説【午後81~85】

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問題81 棘果長に左右差がみられないのはどれか。

1.股関節後方脱臼
2.大腿骨頸部骨折
3.デュベルニー(Duverney)骨折
4.マルゲーニュ(Malgaigne)骨折

答え.

解説

下肢長の測定方法

棘果長:上前腸骨棘から内果まで。
→骨盤の影響を含む。

②転子果長:大転子から外果まで。
→骨盤の影響は含まない。

1~3.〇 股関節後方脱臼/大腿骨頸部骨折/デュベルニー(Duverney)骨折
なぜなら、棘果長(上前腸骨棘から内果まで)の範囲での障害であるため。ちなみに、デュベルニー(Duverney)骨折とは、腸骨翼単独骨折のことである。腸骨の上部から外側にかけた骨折である。

4.× マルゲーニュ(Malgaigne)骨折は、棘果長に左右差がみられない。
なぜなら、棘果長(上前腸骨棘から内果まで)の範囲外での障害であるため。Malgaigne骨折(マルゲーニュ骨折)は、骨盤骨折の一形態で、前方骨盤輪骨折と後方骨盤輪骨折が合併した骨折で垂直方向にずれているものである。

 

 

 

 

 

問題82 大腿骨小転子骨折でみられるのはどれか。

1.トレンデレンブルグ徴候
2.ドレーマン徴候
3.ナウマン徴候
4.ルドロフ徴候

答え.

解説
1.× トレンデレンブルグ徴候
Trendelenburg徴候(トレンデレンブルグ徴候)とは、歩行時の患側(中殿筋に麻痺がある側)での片脚起立時に、健側(遊脚側)の骨盤が下がる現象である。

2.× ドレーマン徴候
ドレーマン徴候(Drehmann徴候)とは、股関節を他動的に屈曲すると外転・外旋する徴候である。大腿骨頭すべり症でみられる。

3.× ナウマン徴候
ナウマン徴候とは、距骨骨折で生じる症状であり骨片が足関節後方に転位した際に、長母指屈筋腱を圧迫して腱には牽引力が働き第1足指が直角に屈曲する所見である。

4.〇 正しい。ルドロフ徴候は、大腿骨小転子骨折でみられる。
ルドロフ徴候とは、大腿骨の小転子が腸腰筋の収縮によって引きちぎられる「裂離骨折」をしたときに起こる徴候である。イスなどに座ったときに、膝関節以上に足を上げることができなくなるが、あおむけになった場合は可能となる所見である。

 

 

 

 

 

問題83 大腿骨骨幹部骨折で誤っているのはどれか。

1.下肢の機能が全廃する。
2.介達外力では斜骨折となる。
3.異常膨隆がみられる。
4.高齢者に好発する。

答え.

解説

大腿骨骨幹部骨折とは?

大腿骨骨幹部とは、大腿骨の真ん中を指す。この部分が骨折した場合に大腿骨骨幹部骨折と呼ぶ。成人は、交通事故や転落などの極めて強い外力の作用により生じる場合(高エネルギー外傷)が多く、ケガをした直後は激しい痛みがあり歩行困難なる。また、高エネルギー外傷でその他の部位(四肢など)の骨折や他の外傷(頭部、胸部、腹部)を伴うことも多く注意が必要である。

1.〇 正しい。下肢の機能が全廃する。
全廃とは、下肢の運動性と支持性をほとんど失ったものをさす。成人は、交通事故や転落などの極めて強い外力の作用により生じる場合(高エネルギー外傷)が多く、ケガをした直後は激しい痛みがあり歩行困難なる。

2.〇 正しい。介達外力では斜骨折となる。
大腿骨骨幹部骨折は、介達外力が作用すると、骨はねじれ、曲がり、引き伸ばされるため、斜骨折が生じる。介達外力とは、打撃や圧迫などの外力が加わった部位から離れた部位に体内組織を通じて外力が伝わることである。斜骨折とは、骨の長軸に対して骨折線(骨折部に生じる亀裂)が斜めに入っているものをいう。

3.〇 正しい。異常膨隆がみられる。
なぜなら、炎症により骨折部位の周囲の組織が腫れ上がり、骨折部位が異常に膨らむため。ちなみに、炎症4徴候として、疼痛や腫脹、発赤、熱感があげられる。

4.× 高齢者に好発するとはいえない
なぜなら、大腿骨骨幹部骨折は、交通事故や転落などの極めて強い外力の作用により生じる場合(高エネルギー外傷)が多いため。

高齢者の4大骨折

骨粗鬆症は閉経後の女性に多く、骨の変形や痛み、易骨折性の原因となる。高齢者に多い骨折は①大腿骨頸部骨折、②脊椎圧迫骨折、③橈骨遠位端骨折、④上腕骨頸部骨折などがあり、これらは「高齢者の4大骨折」と呼ばれている。

 

 

 

 

 

問題84 大腿骨骨幹部骨折固定除去後の後療法で注意するのはどれか。2つ選べ。

1.回旋変形
2.関節強直
3.骨化性筋炎
4.挫滅症候群

答え.1・3

解説

後療法とは?

後療法とは、損傷した組織を回復させる治療法の事をいう。後療法には大きく3つの治療法(物理療法・運動療法・手技療法)がある。目的は、早期に社会復帰させることである。

1.〇 正しい。回旋変形は、大腿骨骨幹部骨折固定除去後の後療法で注意する。
なぜなら、患者の歩行や立位バランスが影響を受ける可能性があるため。回旋変形とは、骨折部位が回旋した状態で癒合した場合に見られる。

2.× 関節強直
関節強直とは、徒手的には改善困難な関節可動域制限の状態で、関節が破壊されて変形を起こし、機能しなくなった状態である。原因は先天性、骨折による関節面の破壊や感染、後天性があり、強直を有する病名には顎関節強直症、強直性脊椎炎、関節リウマチなどがある。 

3.〇 正しい。骨化性筋炎は、大腿骨骨幹部骨折固定除去後の後療法で注意する。
なぜなら、痛み、関節の動きの制限などによって日常生活に制限をきたす可能性があるため。骨化性筋炎とは、打撲などの外傷によって、筋肉の中に骨と同じような組織ができてしまう疾患のことである。 外傷性骨化性筋炎、骨化性筋炎とも言う。 損傷を受けた筋肉が出血して血腫ができたところに、カルシウムが沈着し、石灰化しておこる。

4.× 挫滅症候群
挫滅症候群とは、四肢が長時間圧迫を受けるか窮屈な肢位を強いられたため生じる骨格筋損傷により、救出後から急速に現れる局所の浮腫とショックや急性腎不全などのさまざまな全身症状を呈する外傷性疾患である。

 

 

 

 

 

問題85 下腿骨近位端部骨折と原因の組合せで誤っているのはどれか。

1.脛骨顆部骨折:長軸方向の圧迫
2.腓骨頭単独骨折:膝関節の外転
3.脛骨粗面骨折:大腿四頭筋の収縮
4.脛骨顆間隆起骨折:前十字靱帯の牽引

答え.

解説
1.〇 正しい。脛骨顆部骨折は、長軸方向の圧迫によって生じる。
脛骨顆部骨折とは、脛骨の上部(顆部)が損傷する骨折である。原因として、通常は直接的な衝撃や長軸方向への圧迫により引き起こされ、例えば、転倒や交通事故などにより膝が直接打撃を受けた場合などに生じる。

2.× 腓骨頭単独骨折は、「膝関節の外転」ではなく膝関節の外旋によって生じる。
例えば、転倒・転落で足首を強打した又は強く捻った際などに足首付近(外くるぶしの上下)で起こる事が多い。受傷すると痛みにより歩行困難となる。

3.〇 正しい。脛骨粗面骨折は、大腿四頭筋の収縮によって生じる。
脛骨粗面裂離骨折とは、骨端線閉鎖前の活動性の高い14歳~16歳に好発し、比較的まれな骨折(全骨端線損傷例中 0.4%)である。原因として、大腿四頭筋の収縮や膝蓋腱に対する脛骨粗面部の脆弱性が関与していると考えられ、跳躍、着地時等の牽引力による急性発症となる。

4.〇 正しい。脛骨顆間隆起骨折は、前十字靱帯の牽引によって生じる。
脛骨顆間隆起骨折は、膝関節の急激な屈曲や伸展により前十字靱帯が強く牽引された結果、脛骨の顆間隆起部分に力が加わって引き起こされる。8~12歳の小児や交通事故によって成人も発生することも多い。

 

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