第31回(R5年)柔道整復師国家試験 解説【午後101~105】

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問題101 単純性股関節炎で正しいのはどれか。

1.片側性が多い。
2.高齢者に好発する。
3.外旋が制限される。
4.予後良好である。

答え.1

解説

単純性股関節炎とは?

単純性股関節炎とは、原因は不明で、1週間ほど安静にしていれば痛みも治まり、自然治癒する。エックス線写真において、特段異常所見は見られない。3~10歳に好発する。男女の比率はおおよそ4:1とされる。超音波検査やMRIで関節液の貯留が確認される。ほとんど片側性で、強い発赤や腫脹、発熱は見られないが、股関節の運動時疼痛を訴え、運動制限、跛行が見られる。

1.〇 正しい。片側性が多い
ほとんど片側性で、強い発赤や腫脹、発熱は見られないが、股関節の運動時疼痛を訴え、運動制限、跛行が見られる。

2.× 「高齢者」ではなく若年者(3~10歳)に好発する。

3.× 外旋が制限されるとはいえない
なぜなら、股関節内に関節液の貯留や痛みが出現するため、その状態に合わせて、股関節の全ての方向の可動域制限が起こるため。

4.△ 予後良好であるとはいえない
通常1~2週間程度の安静にて治癒するが、場合によっては1ヵ月近く長引くこともある。症状が続く場合ペルテス病・化膿性股関節炎との鑑別の為精査が必要となる。

 

 

 

 

 

問題102 大腿部打撲後のスポーツ復帰の条件となるのはどれか。

1.疼痛が完全になくなった。
2.可動域が健側の90%まで回復した。
3.筋力が健側の70%まで回復した。
4.俊敏性が受傷前の50%のレベルに到達した。

答え.1

解説

打撲後のスポーツ復帰の条件

受傷後3日をすぎて、膝関節が90度以上曲がれば3週間以内の復帰が見込める。
その際の復帰する条件
①痛みや可動域に制限がない。
②筋力や柔軟性の回復(怪我してないほうの90%以上)
③俊敏性の改善が十分に得られていること
があげられる。

1.〇 正しい。疼痛が完全になくなった
痛みは慢性化しやすくパフォーマンスに関わる。

2.× 可動域が健側の「90%」ではなく100%の改善が求められる。

3.× 筋力が健側の「70%」ではなく90%まで回復することが求められる。
ただし、個々の状況や競技によっても様々であるため、必ずしも、スポーツ復帰が不可能とはいえない場合もある。最後の試合や引退試合などの状況にも十分考慮・配慮しなければならない。

4.× 俊敏性は、受傷前の「50%」では不十分である
受傷前のパフォーマンスに近い状態が望ましい。

 

 

 

 

 

問題103 15歳の男子。柔道の試合中投げられ右手掌を衝き、肘関節外反強制で上腕遠位端部を負傷した。肘関節内側に著明な腫脹と限局性圧痛および軋轢音がみられた。
 損傷される可能性が高い神経はどれか。

1.橈骨神経
2.筋皮神経
3.正中神経
4.尺骨神経

答え.4

解説

外反肘とは?

 外反肘とは、上腕の軸に対して前腕の軸が、正常(10~15°程度外反)より外側を向いている状態(手部が外側に開く状態)である。逆に内側に向いているのが内反肘である。原因として、先天性では先天性橈骨頭脱臼など、後天性では上腕骨外顆骨折後の偽関節や変形治癒で生じる。外反肘では、肘の内側にある尺骨神経が肘関節伸展位において伸ばされるため、数年から数十年経過して徐々に麻痺が出現する、遅発性尺骨神経麻痺となりやすい。

1.× 橈骨神経
橈骨神経麻痺は、開放創や挫傷、上腕骨骨折や上腕骨顆上骨折などの骨折、圧迫などで伴いやすい。

2.× 筋皮神経
筋皮神経麻痺では、肘関節屈筋群の低下がみられる。

3.× 正中神経
正中神経麻痺の原因は、日常生活動作のケガ・スポーツ外傷・骨折・神経の炎症・ 糖尿病などがある。特に、手首にある手根管の部位に出やすく少しの圧迫でも神経への影響がある。

4.〇 正しい。尺骨神経が、損傷される可能性が高い神経である。
外反肘では、肘の内側にある尺骨神経が肘関節伸展位において伸ばされるため、数年から数十年経過して徐々に麻痺が出現する、遅発性尺骨神経麻痺となりやすい。尺骨神経麻痺では、Froment徴候陽性や鷲手がみられる。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。

 

 

 

 

 

問題104 9歳の男児。公園の遊具からジャンプし、着地に失敗して手を衝いて転倒した。自宅に帰ったところ、肘から前腕にかけて腫れてきたので来所した。尺骨骨幹部に著明な圧痛がみられ、肘の屈伸運動は可能であったが、前腕の回内回外はできなかった。
 考えられるのはどれか。2つ選べ。

1.橈骨頭脱臼
2.橈骨骨幹部骨折
3.尺骨頭脱臼
4.尺骨骨幹部骨折

答え.1・4

解説

本症例のポイント

・9歳の男児。
・公園の遊具からジャンプ、着地に失敗して手を衝いて転倒した。
・肘から前腕にかけて腫れてきた。
尺骨骨幹部に著明な圧痛
前腕の回内回外は不可
→本症例は、Monteggia骨折が疑われる。Monteggia骨折(モンテジア骨折)は、尺骨骨幹部骨折に橈骨頭脱臼が起きたものである。手をついて転倒・転落した際、前腕回内力が作用することで起こりやすい。

1.4.〇 正しい。橈骨頭脱臼/尺骨骨幹部骨折が考えられる。
本症例は、尺骨骨幹部に著明な圧痛、前腕の回内回外は不可であることから、Monteggia骨折が疑われる。Monteggia骨折(モンテジア骨折)は、尺骨骨幹部骨折に橈骨頭脱臼が起きたものである。手をついて転倒・転落した際、前腕回内力が作用することで起こりやすい。

2.× 橈骨骨幹部骨折は考えにくい。
なぜなら、橈骨骨幹部の痛みの記載がないため。本症例は、尺骨骨幹部に著明な圧痛がみられる。

3.× 尺骨頭脱臼は考えにくい。
なぜなら、肘の屈伸運動は可能であるため。本症例は、前腕の回内回外は不可である。

 

 

 

 

 

問題105 21歳の男性。柔道の乱取り中、背負い投げをかけられた際に左手を強く衝いた。稽古後、手関節部に圧痛を自覚したため来所した。医科での単純エックス線写真を別に示す。
 誤っているのはどれか。


1.長期間の固定が必要である。
2.近位部が骨壊死になりやすい。
3.手関節橈屈位で患部を触知しやすい。
4.長母指伸筋腱と短母指伸筋腱に囲まれた部位に圧痛がある。

答え.3

解説

本症例のポイント

・21歳の男性。
・左手を強く衝いた。
・手関節部に圧痛。
【単純エックス線の所見】舟状骨の連続性が途絶えている。
舟状骨骨折が疑われる。

(※図引用:The Bone Identity ~整形外科医のブログ~様HPより)

 

1.〇 長期間の固定が必要である。
舟状骨骨折の固定期間は、6~10週間と比較的に長期間となる傾向がある。したがって、手関節の装具をつけることもある。

2.〇 近位部が骨壊死になりやすい。
阻血性骨壊死になりやすい骨折として、①上腕骨解剖頸骨折、②手の舟状骨骨折、③大腿骨頸部内側骨折、④距骨骨折があげられる。これらの部位の骨折は栄養血管損傷を起こしやすく、血流が障害されやすい。

3.× 患部を触知しやすいのは、「手関節橈屈位」ではなく手関節背屈位(尺屈位)である。
なぜなら、舟状骨は、ちょうど親指の付け根に存在する骨であるため。

4.〇 長母指伸筋腱と短母指伸筋腱に囲まれた部位に圧痛がある。
この囲まれた部位を解剖学的嗅ぎタバコ窩という。手背の母指基部の専用のタバコ粉末を置いて匂いをかぐ楽しみの一つで使用されていた部位であることから、その名がつけられた。手背には長母指伸筋の腱、掌側には短母指伸筋の腱と長母指外転筋の腱が並んで走行している。ここから舟状骨も触知できる。

偽関節とは?

偽関節とは、骨折部位の癒合がうまくいかず、骨折部が可動性を持つ状態のことである。偽関節が生じやすい部位は、①上腕骨解剖頸、②手の舟状骨、③大腿骨頸部、④脛骨中下1/3、⑤距骨である。ちなみに、開放骨折・粉砕骨折・整復後も離開が生じている骨折では、部位によらず骨癒合は遷延しやすい。

 

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