第31回(R5年)柔道整復師国家試験 解説【午後106~110】

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問題106 25歳の男性。草野球でボールを打った瞬間から手のひらに強い痛みを自覚し、その後バットが握れなくなったため翌日来所した。図の部位に強い圧痛と腫脹があり、握り動作によって痛みが増強した。
 考えられるのはどれか。

1.有頭骨骨折
2.月状骨骨折
3.三角線維軟骨複合体損傷
4.有鈎骨骨折

答え.4

解説

(※図引用:「All About様」HPより)

1〜2.× 有頭骨/月状骨骨折
これら骨折の場合、疼痛部は図より内側となる。

3.× 三角線維軟骨複合体損傷
三角繊維軟骨複合体とは、遠位橈尺関節を安定化させている支持組織である。遠位橈尺関節は手関節に隣接して存在し、肘関節に隣接する近位橈尺関節と共に前腕の回内外運動を行う。遠位橈尺関節の安定性と衝撃吸収を担うため、三角線維軟骨複合体損傷は、疼痛や機能障害の原因となる。

4.〇 正しい。有鈎骨骨折が考えられる。
受傷機転や疼痛部位など一致する。野球やゴルフ、テニスのスイング動作の繰り返しによる疲労骨折で、グリップエンド側(下の手)に発症する。

 

 

 

 

 

問題107 25歳の男性。交通事故で右大腿骨骨幹部骨折の診断を受け、即日入院となった。呼吸状態に異常はなかったが、翌日から急に息苦しさを訴え始めた。
 他に考えられる症状はどれか。

1.発汗低下
2.血圧上昇
3.低体温
4.頻脈

答え.4

解説
1.× 発汗低下
パーキンソン病などによる交感神経の異常、シェーグレン症候群などの自己免疫疾患、甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、薬の副作用などによって起こる。

2.× 血圧上昇
骨折や痛みにより、ストレス反応として血圧上昇が起こることはあるが、本症例に見られる息苦しさと直接的な関係は考えにくい。

3.× 低体温
甲状腺機能低下症などの内分泌疾患、薬の副作用などによって起こる。

4.〇 正しい。頻脈が他に考えられる症状である。
交通事故で大腿骨骨幹部骨折を負った患者が、翌日から急に息苦しさを訴える場合、急性肺血栓塞栓症の疑いがかけられる。呼吸困難、胸痛、頻脈、頻呼吸、血圧低下などを認めた場合、急性肺血栓塞栓症の可能性を疑い、造影CTなどの実施を検討し早期診断につなげる。

肺血栓塞栓症とは?

肺血栓塞栓症とは、肺の血管に血のかたまり(血栓)が詰まって、突然、呼吸困難や胸痛、ときには心停止をきたす危険な病気である。ロング・フライト血栓症やエコノミークラス症候群などと呼ばれる。離床(車椅子乗車や立位訓練、歩行訓練など)を開始したタイミングで発症するリスクが高くなるため注意が必要である。

 

 

 

 

 

問題108 74歳の女性。階段を踏み外して転倒した。次第に痛みが強くなったので翌日歩いて来所した。医科での単純エックス線検査で大腿骨頸部の骨折と診断された。
 正しいのはどれか。

1.大転子高位が著明である。
2.大腿近位に軽度の腫脹がある。
3.スカルパ三角部に軽度の圧痛がある。
4.観血療法の絶対的な適応となる。

答え.2

解説
1.× 大転子高位が著明とはならない
なぜなら、大腿骨頸部骨折は、大転子より近位で起こる骨折であるため。

2.〇 正しい。大腿近位に軽度の腫脹がある。腫脹は炎症症状の一つである。炎症とは、壊死や刺激・侵襲に対する生体反応のことである。【炎症の四徴】①発熱(局所の熱感)、②発赤、③腫脹、④疼痛があげられる。さらに⑤機能障害を加えて、炎症の五徴と呼ぶ場合もある。

3.× スカルパ三角部に、「軽度」ではなく著明の圧痛がある。
スカルパ三角(Scarpa三角)とは、①鼠径靭帯、②縫工筋(内側縁)、③長内転筋(外側縁)で囲まれた部分である。スカルパ三角内の深層に、大腿骨頸部が位置する。

4.× 観血療法は、「絶対的な適応」といえない
一般的に、大腿骨頸部は強く荷重される部位であるため、骨接合術または人工骨頭置換術という手術を行うことが多い。

 

 

 

 

 

問題109 75歳の女性。食事中に顎が閉まらなくなり来所した。半開口のままで、口の開閉はわずかに可能である。オトガイ部は左側に偏位している。患側の耳孔前方に陥凹を触知する。
 考えられるのはどれか。

1.右顎関節側方脱臼
2.左顎関節側方脱臼
3.右顎関節前方脱臼
4.左顎関節前方脱臼

答え.3

解説

本症例のポイント

オトガイ部は左側に偏位している。
→右顎関節が脱臼している。

患側の耳孔前方に陥凹を触知する。
→前方脱臼が示唆される。

したがって、選択肢3.右顎関節前方脱臼が考えられる。

1〜2.× 右顎関節側方脱臼/左顎関節側方脱臼
顎関節の側方脱臼の場合は、下顎が後方に位置する。咬合不能、下顎運動障害。下顎頭が下顎窩の外側または内側で触知される。頻度は少なく、骨折も合併することが多い。下あごやその周囲側頭部に大きな外的ショック(交通事故など)を受けた時に発生する。

4.× 左顎関節前方脱臼
左顎関節が脱臼した場合、顎は右側に偏位する。

 

 

 

 

 

問題110 41歳の男性。ランニング中、段差につまずいて右手掌を衝き、前腕を回内強制された。右肘関節前外側に疼痛、腫脹、変形がみられる。また、感覚障害はみられなかったが、運動障害はみられた。肘関節側面の単純エックス線写真を別に示す。
 この場合の運動障害はどれか。

1.手関節背屈
2.手関節掌屈
3.MP関節伸展
4.MP関節屈曲

答え.3

解説

本症例のポイント

・右手掌を衝き、前腕を回内強制。
右肘関節前外側に疼痛、腫脹、変形。
運動障害はみられた。
・【レントゲン所見】外側上顆は連続性が途絶えている。
→本症例は、上腕骨外側上顆骨折が疑われる。上腕骨外顆骨折に付着する筋肉の働きが不十分になることが考えられる。

1.× 手関節背屈の主動作筋は、尺側手根伸筋、長 ・短橈側手根伸筋などである。外側上顆に付着する筋肉もあるが、他にも付着部が多く、手関節背屈に作用する筋肉がいくつもあるため代償して行うことができる。

2.× 手関節掌屈の主動作筋は、橈側手根屈筋、尺側手根屈筋などである。
上腕骨の内側上顆に付着する筋肉が多い。

3.〇 正しい。MP関節伸展の主動作筋は、指伸筋である。
指伸筋の【起始】上腕骨の外側上顆、前腕筋膜の内面と肘関節包、【停止】中央は中節骨底、両側は合して末節骨底、【作用】手関節の背屈、第2~5指の伸展、外転、【神経】橈骨神経深枝である。

4.× MP関節屈曲の主動作筋は、浅指屈筋、深指屈筋である。
上腕骨の内側上顆に付着する筋肉が多い。

 

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