第31回(R5年)柔道整復師国家試験 解説【午後111~115】

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問題111 16歳の男子。フィギアスケートでジャンプに失敗し、肘伸展位で左手を衝き受傷した。肘頭が後方に突出した外観を呈している。
 正しいのはどれか。

1.肘関節屈伸運動で異常可動性を触知する。
2.上腕筋腱の索状隆起を触知する。
3.内側上顆骨折を合併しやすい。
4.顆上骨折屈曲型との鑑別を要する。

答え.3

解説

本症例のポイント

・肘伸展位で左手を衝き受傷した。
・外見:肘頭が後方に突出した。
→本症例は、肘関節後方脱臼が疑われる。肘関節後方脱臼の主な症状は、肘関節の痛みや腫れ、関節の変形、肘関節の曲げ伸ばしができなくなる。周囲の靭帯の損傷などが重い場合、立っていられなくなるような激しい痛みを感じることもある。

【肘関節後方脱臼について】
好発:青壮年
原因:①肘関節過伸展の強制:肘関節伸展位で手をつく(転倒などの強い衝撃)
【症状】関節包前方断裂、疼痛、肘関節屈曲30度で弾発性固定、自動運動不可、肘頭の後方突出、上腕三頭筋腱が緊張(索状に触れる)、ヒューター三角の乱れ(肘頭高位)、前腕の短縮
【固定肢位】肘関節90°屈曲、前腕中間位(回内位も)
【固定範囲】上腕近位部からMP関節手前まで
【固定期間】靭帯損傷なし:3週間、不安定性がある場合4週間

1.× 肘関節屈伸運動で異常可動性を触知する。
異常可動性は、骨折部に生じる可動性で正常な状態では生じない動きであり骨折の固有症状である。

2.× 上腕筋腱の索状隆起を触知する。
上腕筋腱の索状隆起を触知されるものとして、上腕二頭筋腱炎がみられる。腱鞘炎は、関節を動かす筋肉の腱が炎症を起こすことで、腫れや痛みが生じる病気である。上腕筋腱の索状隆起による腱鞘炎は、スポーツや仕事などで手や腕を過度に使用することが原因となることが多い。治療としては、炎症を抑える薬物、アイシングなどが有効である。

3.〇 正しい。内側上顆骨折を合併しやすい
肘関節後方脱臼の場合、内側上顆骨折だけでなく、外側上顆骨折や前顆骨折、関節面骨折など、他の骨折も合併する可能性がある。合併するケースでは、手術適用となり、肘関節の動揺性や関節可動域制限を残すことがある。

4.× 顆上骨折「屈曲型」ではなく伸展型との鑑別を要する。
伸展型骨折とは、肘関節伸展位で手掌を衝いて転倒の際に、前腕は回内し肘は過伸展する為、肘頭は強く肘頭窩に当たりこれが支点となり肘関節部に強力な前方凸の屈曲力が働き、屈曲骨折第二型の発生機序をとって発生するものをさす。多発で95%がこれにあたる。

(※図引用:「上腕骨 完全脱臼」illustAC)

脱臼の固有症状とは?

①弾発性固定:脱臼した位置で関節が動かなくなる状態をいう。患部を押しても反発するか、動いてもまた脱臼した位置に戻ろうとする特徴がある。

②変形:関節が元の位置から逸脱するために、見た目にも変形がみられる。一度脱臼すると、関節の構造が破壊されてしまったり、靭帯や関節包が緩んでしまったりすることで不安定性が残る可能性がある。特に肩関節は、再負傷しやすいといわれている(反復性脱臼)。

 

 

 

 

 

問題112 24歳の男性。ラグビーでタックルした際に、右手環指が相手のジャージに引っかかり受傷した。痛みが強くなかったためプレーを続行したが、終了後に指の違和感が強くなり来所した。来所時、PIPおよびDIP関節の自動的伸展は可能だが、DIP関節の自動的屈曲ができなかった。関節部に腫脹はみられなかった。
 考えられる損傷部位はどれか。

1.正中索
2.終止腱
3.掌側板
4.深指屈筋腱

答え.4

解説
1.× 正中索
正中索の断裂によりボタン穴変形が起こる。なぜなら、側索が掌側へ移動するため。ちなみに、ボタン穴変形は、DIP過伸展・PIP屈曲する変形である。したがって、手の母指には起こらない。

2.× 終止腱
終止腱(側索の停止部)の断裂により槌指が起こる。槌指変形(マレット指)とは、DIP関節が曲がったまま伸ばせなくなった状態である。手指にも足趾にも見られる。

3.× 掌側板
掌側板の緩みにより槌指で起こる。槌指では掌側板の損傷が起き、緩みが出ることがある。ちなみに掌側板は、MP・PIP・DIP関節の掌側にある軟骨である。また、槌指変形(マレット指)とは、DIP関節が曲がったまま伸ばせなくなった状態である。手指にも足趾にも見られる。

4.〇 正しい。深指屈筋腱が考えられる損傷部位である。
深指屈筋の【起始】尺骨の内側面と前面、前腕骨間膜の一部、【停止】第2~5指末節骨底、【作用】第2~5指の両指節間関節の屈曲、【神経】橈側部は正中神経、尺骨部は尺骨神経である。したがって、本症例の「PIPおよびDIP関節の自動的伸展は可能だが、DIP関節の自動的屈曲ができなかった」原因の理由が付く。

 

 

 

 

 

問題113 21歳の男性。大学テニス部に所属している。右肩部周辺の鈍痛や易疲労感、挙上障害を訴え来所した。肩関節屈曲時に肩甲骨内側縁と肩甲骨下角が後方に突出するのがみられた。
 考えられないのはどれか。

1.前鋸筋麻痺
2.僧帽筋麻痺
3.菱形筋麻痺
4.三角筋麻痺

答え.4

解説

本症例のポイント

・肩関節屈曲時に肩甲骨内側縁と肩甲骨下角が後方に突出した。
→①翼状肩甲がみられる。翼状肩甲とは、肩甲骨内側縁が後方に突出して鳥の翼のような形状をとることをいう。
→②肩甲骨下角が後方に突出:肩甲骨上方回旋や外転の筋力の低下が考えられる。

1.〇 前鋸筋麻痺
翼状肩甲とは、肩甲骨内側縁が後方に突出して鳥の翼のような形状をとることをいう。原因として、長胸神経の障害である。長胸神経支配の前鋸筋麻痺があげられる。
前鋸筋の【起始】第1~8(~10)肋骨前外側面、【停止】第1,2肋骨とその間の腱弓からの筋束は肩甲骨上角。第2,3肋骨からは分散して広く肩甲骨内側縁。第4肋骨以下からは下角、【作用】全体:肩甲骨を前方に引く。下2/3:下角を前に引いて肩甲骨を外方に回旋し、上腕の屈曲と外転を補助。最上部:肩甲骨をやや引き上げる、【神経】長胸神経である。

2.〇 僧帽筋麻痺
僧帽筋麻痺(特に下部線維)により、肩甲骨下角が後方に突出がみられる。僧帽筋の【起始】後頭骨上項線、外後頭隆起、項靭帯、第7頸椎以下全胸椎の棘突起および棘上靭帯、【停止】肩甲骨の肩甲棘と肩峰の上縁および鎖骨外側1/3(三角筋の起始範囲とほぼ同じ)、【作用】上部:肩甲骨と鎖骨の肩峰端を内上方にあげる。中部:肩甲骨を内側に引く。下部:肩甲骨を内下方に引き下げると同時にその下角を外側に回旋する、【神経】副神経(外枝)と頸神経叢の筋枝である。

3.〇 菱形筋麻痺
菱形筋麻痺により、肩甲骨下角が後方に突出がみられる。なぜなら、大・小菱形筋の作用は、肩甲骨を内上方に引くため。

4.× 三角筋麻痺
三角筋麻痺では、肩甲骨の位置や動きには直接影響を与えにくい。
三角筋の【起始】肩甲棘、肩峰、鎖骨の外側部1/3、【停止】上腕骨三角筋粗面、【作用】肩関節外転、前部は屈曲、後部は伸展、【神経】腋窩神経である。

 

 

 

 

 

問題114 25歳の男性。右下肢痛を訴えて来所した。下腿外側から足背にかけて感覚異常があり、長母趾伸筋の筋力低下がみられた。股関節内転・内旋で症状が増悪した。
 考えられるのはどれか。

1.腰椎分離症
2.梨状筋症候群
3.腰部脊柱管症候群
4.腰部椎間板ヘルニア

答え.2

解説
1.× 腰椎分離症
腰椎のどの部位で発生しているかによって、症状は異なる
腰椎分離症とは、腰部の繰り返しのスポーツ動作によるストレスで起こる関節突起間部の疲労骨折である。日本人男性の約8%にみられ、また成長期のスポーツ選手の腰痛の原因の30~40%を占める。L5に好発し、腰部から殿部の痛みと圧痛・叩打痛がみられる。椎弓と呼ばれる腰椎の後方部分が分離した状態のことを指す。歩行時に下肢痛やしびれなどの症状が出現する。また、Kemp徴候(他動的な後側屈による放散痛)がみられる。

2.〇 正しい。梨状筋症候群が考えられる。
梨状筋症候群は、坐骨神経が大坐骨切痕と梨状筋との間で圧迫を受ける絞扼性神経障害で、大腿後面のしびれを生じる。代表的な症状は坐骨神経痛、梨状筋部の痛みや圧痛、足首・足指が動きにくくなるなどである。

3.× 腰部脊柱管症候群
腰椎のどの部位で発生しているかによって、症状は異なる
腰部脊柱管狭窄症とは、脊柱管が腰の部分で狭くなる病気である。そのため、腰から下の神経に関連する症状が出現する。

4.× 腰部椎間板ヘルニア
腰椎のどの部位で発生しているかによって、症状は異なる
椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

 

 

 

 

 

問題115 41歳の男性。ソフトボールの試合中に遠投した際、右肩に鋭い痛みを感じて負傷退場した。氷で冷やし安静にしていたところ痛みは緩和したが、また痛みが増してきたので翌日来所した。肩部の腫脹はみられないが肩峰下部に圧痛がみられ、肩関節外転が制限されている。
 陽性となる検査法はどれか。

1.ライトテスト
2.サルカスサイン
3.ヤーガソンテスト
4.ドロップアームテスト

答え.4

解説

本症例のポイント

遠投した際、右肩に鋭い痛みを感じた。
・肩峰下部に圧痛あり。
・肩関節外転が制限あり。
→本症例は、回旋筋腱板損傷が疑われる。回旋筋腱板(回旋筋腱板:ローテーターカフ)とは、肩甲骨と上腕骨をつないでいる4つの筋肉の腱の総称である。① 棘上筋、②棘下筋、③小円筋、④肩甲下筋から成る。

1.× ライトテスト
Wright テスト(ライトテスト)陽性は、胸郭出口症候群において陽性となる。座位で両側上肢を挙上(肩関節を外転90°、外旋90°、肘関節90°屈曲)させると、橈骨動脈の脈拍が減弱する。

2.× サルカスサイン
サルカスサインとは、反復性肩関節脱臼などの肩関節不安定性を評価する検査である。肩関節外転外旋位で、上腕骨頭を後方から前方へ押し出すストレスをかけた際の不安感を確認する。ストレスをかけた際に不安感や怖さを感じたら陽性である。

3.× ヤーガソンテスト
Yergasonテスト(ヤーガソンテスト)の陽性は、上腕二頭筋腱炎を疑う。患者の肘90°屈曲させ、検者は一側の手で肘を固定して、他方の手で患側手首を持つ。次に患者にその前腕を外旋・回外するように指示し、検者はそれに抵抗を加える。

4.〇 正しい。ドロップアームテストが陽性となる検査法である。
Drop armテスト(ドロップアームテスト)は、腱板損傷の検査である。方法は、座位で被験者の肩関節を90°より大きく外転させ、検者は手を離すテストである。

上腕二頭筋腱炎(上腕二頭筋長頭炎)とは?

 上腕二頭筋腱炎(上腕二頭筋長頭炎)は、上腕二頭筋長頭腱が、上腕骨の大結節と小結節の間の結節間溝を通過するところで炎症が起こっている状態のことである。腱炎・腱鞘炎・不全損傷などの状態で肩の運動時に痛みが生じる。Speedテスト(スピードテスト)・Yergasonテスト(ヤーガソンテスト)で、上腕骨結節間溝部に疼痛が誘発される。治療は保存的治療やステロイド局所注射となる。

 

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