第31回(R5年)柔道整復師国家試験 解説【午後96~100】

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問題96 膝蓋骨脱臼で正しいのはどれか。

1.男性に多い。
2.内反膝が多い。
3.内側脱臼が多い。
4.自然整復されるものが多い。

答え.4

解説

膝蓋骨脱臼とは?

膝蓋骨脱臼とは、膝蓋骨がはずれる疾患である。ほとんどは外側に外れる。ジャンプの着地などの時に太ももの筋肉が強く収縮してはずれることが多く、はずれた時には膝に強い痛みや腫れを生じる。脱臼は自然に整復されることもある。

1.× 「男性」ではなく女性に多い。
男女比は、1:4といわれている。原因としては、女性の方が、靭帯の緩みや関節の柔軟性が高いためといわれている。

2.× 「内反膝(O脚)」ではなく外反膝(X脚)が多い。

3.× 「内側脱臼」ではなく外側脱臼が多い。
これは、内側広筋の脆弱化(大腿四頭筋のベクトルが外方へ向く)が要因の一つである。他にも、Q-angle の増大、つまり、大腿四頭筋収縮の際、膝蓋骨が外側に引かれやすいことがあげられる。

4.〇 正しい。自然整復されるものが多い
したがって、脱臼に気づかず誤診されることも多いため注意が必要である。

 

 

 

 

 

問題97 骨棘が生じるのはどれか。

1.肩関節不安定症
2.ベネット(Bennett)損傷
3.バンカート(Bankart)損傷
4.ヒル・サックス(Hill-Sachs)損傷

答え.2

解説

MEMO

骨棘とは、骨同士の摩擦や変形によって発生する骨のトゲのことである。変形性膝関節症などでよく見られるが、変形性股関節症でもみられる。レントゲンによって判断が可能で、変形性関節症の進行度合いの確認指標となる。

1.× 肩関節不安定症
肩関節不安定症とは、けがとは関係なく、肩関節が「ゆるい」ために、投球時に肩が痛い、肩が抜けそうな感じがするといった症状が出るものを指す。投球動作を繰り返すと肩の前後方向にストレスが加わり、小さな傷が肩の関節包に起き、もともとの関節包のゆるみが増幅され肩が不安定になることが考えられる。

2.〇 正しい。ベネット(Bennett)損傷は、骨棘が生じる。
Bennett損傷(ベネット損傷)とは、軟部組織損傷ともいい、投球動作により上腕三頭筋長頭や肩関節後方関節包に繰り返しの牽引力がかかり起こる骨膜反応である。野球暦の長い選手、特に投手に多く、上腕三頭筋長頭や後方下関節包の拘縮を合併する。炎症を伴うため、疼痛があるときは投球を中止し、初期は、冷罨法、固定、提肘により運動を制限する。疼痛軽減後は、ストレッチ運動や筋力強化訓練を行う。

3.× バンカート(Bankart)損傷
バンカート損傷とは、肩が脱臼した際に関節窩の周りにある関節唇が損傷するものをいう。自然には修復されず、さらに靭帯が緩んでしまうと脱臼を繰り返す。これを反復性脱臼という。

4.× ヒル・サックス(Hill-Sachs)損傷
ヒルサックス損傷とは、肩関節が脱臼した際に、上腕骨頭の後外側が、肩甲骨の角に押し付けられる力がかかり、陥没(圧迫)骨折を起こした状態をいう。

 

 

 

 

 

問題98 絞扼部位と神経の組合せで正しいのはどれか。

1.クワドリラテラルスペース:腋窩神経
2.上腕骨骨幹部:正中神経
3.フローセの腱弓:尺骨神経
4.ギヨン管:橈骨神経

答え.1

解説
1.〇 正しい。クワドリラテラルスペース:腋窩神経
クワドリラテラルスペースは、上腕三頭筋長頭、大円筋、小円筋、上腕骨に囲まれたスペースのことをいう。後上腕回旋動脈と腋窩神経が通る。

2.× 上腕骨骨幹部:正中神経
上腕骨骨幹部は、「正中神経」ではなく、橈骨神経が絞扼される。上腕骨骨幹部骨折の合併症として、①橈骨神経麻痺:開放創や挫傷、上腕骨骨折や上腕骨顆上骨折などの骨折、圧迫などで伴いやすい。上腕骨を螺旋状に橈骨神経が走行している。②偽関節:骨折した部分で骨がつかないこと。

3.× フローセの腱弓:尺骨神経
フローセの腱弓は、「尺骨神経」ではなく橈骨神経深枝(運動神経)である。フローセの腱弓(フローセアーケード)とは、回外筋という筋肉の入り口の部分のこと、つまり、回外筋という筋肉で作られたトンネルのようなものである。橈骨神経は、橈骨神経深枝(運動神経)と橈骨神経浅枝(知覚神経)の2つに分岐したあとの橈骨神経深枝(運動神経)だけがこのトンネルを通る。

4.× ギヨン管:橈骨神経
ギヨン管は、「橈骨神経」ではなく尺骨神経である。Guyon管を通るものとして、①尺骨神経、②尺骨動脈である。

 

 

 

 

 

問題99 神経障害と検査・徴候の組合せで正しいのはどれか。

1.リュックサック麻痺:スパーリングテスト
2.肘部管症候群:肘屈曲テスト
3.後骨間神経麻痺:ティアドロップサイン
4.手根管症候群:フローマンサイン

答え.2

解説
1.× リュックサック麻痺:スパーリングテスト
リュックサック麻痺とは、長胸神経、腋窩神経や筋皮神経などが単独もしくは複数的に傷害されるものである。リュックサックに限らず、荷物を担いだり、重たい物を担ぐ運送業などの方にもみられる神経麻痺である。ちなみに、Spurlingテスト(スパーリングテスト)は、頚椎の椎間孔圧迫試験である。方法は、頭部を患側に傾斜したまま下方に圧迫を加える。患側上肢に疼痛やしびれを認めれば陽性である。陽性の場合、椎間板ヘルニアや頚椎症による椎間孔狭窄(頚部神経根障害)などが考えられる。

2.〇 正しい。肘部管症候群:肘屈曲テスト
肘部管症候群とは、肘の内側を通る尺骨神経が圧迫され、小指・薬指がしびれたり、手が使いにくくなる病気である。肘関節を十分に曲げた状態を続けることでしびれ、痛みが悪化するかどうかを見る(誘発テスト)。症状が悪化する場合は肘屈曲テスト陽性と判断する。

3.× 後骨間神経麻痺:ティアドロップサイン
後骨間神経は、橈骨神経の枝である。ティアドロップサインは、正中神経麻痺で見られる。

4.× 手根管症候群:フローマンサイン
手根管症候群は、正中神経の圧迫によって手指のしびれや感覚低下などの神経障害が生じる。手根管(手関節付近の正中神経)を4~6回殴打すると、支配領域である母指から環指橈側および手背の一部にチクチク感や蟻走感が生じる(Tinel徴候陽性)。Tinel徴候のほか、ダルカン徴候(手根管部を指で圧迫するとしびれ感が増悪する)やファーレン徴候(Phalen徴候:手首を曲げて症状の再現性をみる)も陽性となる場合が多い。ちなみに、Froment徴候(フローマン徴候)は、尺骨神経麻痺の症状としてみられる。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。

前骨間神経と後骨間神経について

前骨間神経と後骨間神経は、前腕の橈骨と尺骨という2つ骨の間を繋ぐ骨間膜の前後を走る神経である。両者とも触覚に異常がないのが特徴である。神経炎以外にも、外傷、絞扼性神経障害でも生じる。

【前骨間神経】
・肘の辺りで正中神経から分岐して主に母指(親指)と示指の第1関節を動かす筋肉を支配している。
→涙のしずくが陽性。

【後骨間神経】
・肘の辺りで橈骨神経から分岐して回外筋にもぐりこみ、指を伸展する筋肉を支配している。
→下垂指(drop finger)となる。

 

 

 

 

 

問題100 病名と陽性となる検査・所見の組合せで正しいのはどれか。

1.下前腸骨棘骨折:ルドロフ徴候
2.腸腰筋拘縮:トーマステスト
3.アキレス腱周囲炎:トンプソンテスト
4.踵骨骨折:ナウマン徴候

答え.2

解説
1.× 下前腸骨棘骨折:ルドロフ徴候
ルドロフ徴候とは、大腿骨の小転子が腸腰筋の収縮によって引きちぎられる「裂離骨折」をしたときに起こる徴候である。イスなどに座ったときに、膝関節以上に足を上げることができなくなるが、あおむけになった場合は可能となる所見である。

2.〇 正しい。腸腰筋拘縮:トーマステスト
Thomasテスト(トーマステスト)は、股関節屈曲拘縮(腸腰筋拘縮)を診るテストである。背臥位で股関節・膝関節を屈曲する。反対側の膝が持ち上がると陽性である。

3.× アキレス腱周囲炎:トンプソンテスト
Thompsonテスト(トンプソンテスト)は、アキレス腱断裂を診るテストである。患者さんに立て膝をついてもらい、膝を90度曲げ、ふくらはぎを握る。足首より下の部分が動かなければ、陽性となる。

4.× 踵骨骨折:ナウマン徴候
ナウマン徴候とは、距骨骨折で生じる症状であり骨片が足関節後方に転位した際に、長母指屈筋腱を圧迫して腱には牽引力が働き第1足指が直角に屈曲する所見である。

 

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