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問題76 第1仙骨神経根障害の所見はどれか。
1.FNSテスト陽性
2.足関節背屈不能
3.足背内側部感覚障害
4.アキレス腱反射低下
答え.4
解説
椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。
L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。
1.× FNSテストは、「陽性」ではなく陰性である。
FNSテスト(大腿神経伸展テスト:Femoral Nerve Stretching Test)は、L3・L4の神経根障害で陽性となる。腹臥位になってもらい、膝を曲げて太ももを背中側に挙げる。ふとももの前に痛みが誘発された場合、陽性となる。第2/3腰椎間、第3/4腰椎間の椎間板ヘルニアに特徴的な検査である。
2.× 足関節背屈は、「不能」ではなく可能である。
足関節背屈が不能であるのは第5腰椎神経障害である。
ちなみに、第1仙骨神経根障害は足関節外返しが不十分となる。
3.× 感覚障害は、「足背内側部」ではなく足背外側部と足裏である。
足背内側部の感覚障害は、第4腰椎神経障害である。
4.〇 正しい。アキレス腱反射低下は、第1仙骨神経根障害の所見である。
アキレス腱反射は、S1・2(脛骨神経)である。背臥位検査の他に、①両下肢の股関節を軽度屈曲、外転、外旋位にして、膝関節を軽度屈曲させて両踵をつける。検者は足関節を背屈位にしてアキレス腱部を叩打する方法、②一側下腿の前面に健側下腿をのせ、足関節を背屈位にしてアキレス腱部を叩打する方法がある。
問題77 RICE処置でEの目的はどれか。
1.関節可動域を保持する。
2.静脈還流を促進させる。
3.神経伝導速度を速める。
4.血管透過性を亢進させる。
答え.2
解説
RICE処置とは、①安静(Rest)、②冷却(Ice)、③圧迫(Compression)、③挙上(Elevation)することで、これらの頭文字をとったものである。
1.× 関節可動域を保持する。
かえって、炎症症状が悪化する。RICE処置の主な目的は、炎症や浮腫の抑制である。
2.〇 正しい。静脈還流を促進させる。
RICE処置でElevation(挙上)の目的である。Elevation(挙上)は、患部を心臓より高い位置に保つことで、静脈還流を促進し、腫脹を軽減する。
3.× 神経伝導速度を速める。
かえって、疼痛が増悪する。冷却すると伝導速度が低下するため、急性痛に対しては寒冷療法が推奨される。
4.× 血管透過性を亢進させる。
かえって、腫脹が増強する。血管透過性とは、血管とその周りの組織との間で起こる水分や栄養分などの移動のことである。特に、Ice(冷却)は血管収縮を促し、血管透過性を抑制させる効果がある。
問題78 高齢者の転倒リスクでないのはどれか。
1.足元を注視して歩いている。
2.踵から接地して歩いている。
3.遠近両用メガネをかけている。
4.たくさんの薬を服用している。
答え.2
解説
高齢者の転倒の主な原因は、①加齢による身体機能の低下、②病気や薬の影響、③運動不足である。加齢に伴い身体機能が徐々に低下し、筋力、バランス能力、瞬発力、持久力、柔軟性が衰え、とっさの反射的防御動作が、すばやく力強く行えなくなるため転倒に至ることが多い。(※参考:「たった一度の転倒で寝たきりになることも。転倒事故の起こりやすい箇所は?」政府広報オンラインHPより)
1.〇 足元を「注視」して歩いている。
なぜなら、高齢者が足元を注視して歩くことは、周囲の状況や障害物に気づかなくなり、転倒リスクが高まる原因となるため。注視とは、じっと見詰めることをさす。
2.× 踵から接地して歩いていることは、高齢者の転倒リスクでない。
なぜなら、踵から接地して歩くことは、適切な歩行パターンであるため。
3.〇 「遠近両用メガネ」をかけている。
遠近両用メガネは、1本のメガネで近くと遠く両方の視力矯正ができて便利な反面、視野の一部がぼやけたり、段差や障害物を見落とす可能性がある。
4.〇 「たくさんの薬」を服用している。
高齢者が多くの薬を服用している場合、薬剤相互作用や副作用が重なり、立ちくらみ、眠気、平衡感覚の喪失などが引き起こされる可能性がある。
【立脚期】
1. 初期接地(Initial Contact;以下,IC):観測肢の接地の瞬間
2. 荷重応答期(Lording Response;以下,LR):IC から対側爪先離地まで
3. 立脚中期(Mid Stance;以下,MSt):対側爪先離地から対側下腿下垂位まで
立脚中期前半:対側爪先離地から両下腿の交差まで
立脚中期後半:両下腿交差から対側下腿下垂位まで
4. 立脚終期(Terminal Stance;以下,TSt):対側下腿下垂位から対側 IC まで
5. 前遊脚期(Pre Swing;以下,PSw):対側 IC から観測肢爪先離地まで
【遊脚期】
6. 遊脚初期(Initial Swing;以下,ISw):観測肢爪先離地から両下腿の交差まで
7. 遊脚中期(Mid Swing;以下,MSw):両下腿交差から下腿下垂位まで
8. 遊脚終期(Terminal Swing;以下,TSw):下腿下垂位から IC まで
問題79 健康管理として女性アスリート三主徴に含まれないのはどれか。
1.無気力
2.無月経
3.骨粗鬆症
4.エネルギー不足
答え.1
解説
女性アスリートの三主徴とは、①エネルギー不足、②無月経、③骨粗鬆症のことである。これらは、激しいトレーニングを続けていることで起こりやすい。
1.× 無気力は、健康管理として女性アスリート三主徴に含まれない。
無気力とは、①なにもする気力がないこと、②意欲のないことをさす。意欲が低下したり、自発性が低下したり、感情の起伏が小さくなったり、周囲に無関心になったりするような無気力な症状を呈することを「無気力症」「無気力症候群」「アパシー・シンドローム」という。
2~4.〇 無月経/骨粗鬆症/エネルギー不足
激しいトレーニングにより、エネルギー不足に陥り、性腺刺激ホルモン放出ホルモンの分泌が低下する。したがって、成長ホルモンやエストロゲンの分泌が抑制された結果、無月経とともに骨代謝異常をきたし、骨量が低下する。
問題80 尺骨神経管での絞扼によってみられる感覚障害部位はどれか。
1.手掌尺側
2.手掌橈側
3.手背尺側
4.手背橈側
答え.1
解説
Guyon管(尺骨神経管)とは、豆状骨と有鈎骨、そして豆鈎靱帯によって形成されたトンネル(管)のことである。通るものとして、①尺骨神経、②尺骨動脈である。Guyon管症候群は、尺骨神経麻痺が起こる。尺骨神経麻痺の症状として、Froment徴候陽性や鷲手がみられる。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。
1.〇 正しい。手掌尺側は、尺骨神経管での絞扼によってみられる感覚障害部位である。
尺骨神経の障害は、手掌の尺側(小指側)の感覚障害を引き起こす。
2.× 手掌橈側
尺骨神経の障害が起こるため、橈側の障害は否定できる。ちなみに、手掌橈側は正中神経が支配する。
3.× 手背尺側
手背尺側は尺骨神経支配であるが、Guyon管(尺骨神経管)とは、豆状骨と有鈎骨、そして豆鈎靱帯によって形成されたトンネル(管)のことである。つまり、Guyon管(尺骨神経管)は、手掌側に位置するため、手背尺側の障害は否定できる。
4.× 手背橈側
尺骨神経の障害が起こるため、橈側の障害は否定できる。ちなみに、手背橈側は橈骨神経が支配する。