第32回(R6年)柔道整復師国家試験 解説【午後41~45】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

問題41 筋萎縮性側索硬化症で現れるのはどれか。

1.褥瘡
2.感覚障害
3.呼吸筋麻痺
4.直腸膀胱障害

解答

解説

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

1~2.4.× 褥瘡/感覚障害/直腸膀胱障害は、筋萎縮性側索硬化症で見られにくい。筋萎縮性側索硬化症の4大陰性徴候として、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡があげられる。

3.〇 正しい。呼吸筋麻痺は、筋萎縮性側索硬化症で現れる。

 

 

 

 

 

問題42 熱中症の症状でないのはどれか。

1.頭痛
2.めまい
3.項部硬直
4.意識障害

解答

解説
1~2.5.〇 頭痛/めまい/意識障害は、熱中症の症状である。熱中症とは、高温多湿な環境に長時間いることで、体温調節機能がうまく働かなくなり、体内に熱がこもった状態を指す。屋外だけでなく室内で何もしていないときでも発症し、救急搬送されたり、場合によっては死亡することもある。主な初期症状として、めまい(目眩、眩暈)や立ちくらみ、一時的な失神などがあげられる。

3.× 項部硬直は、髄膜炎である。項部硬直とは、髄膜刺激症状のひとつで、頸部が前屈に対してのみ抵抗を示すものであるため。仰臥位で後頭部を持ちあげると、項筋が収縮して著しい抵抗を示す現象で、髄膜炎やくも膜下出血などの診断に用いられる。

MEMO

髄膜炎とは、なんらかの理由(主な病原体:髄膜炎菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌)で、髄膜が炎症を起こす病気である。症状は、髄膜炎の3大症状でもある発熱、頭痛、項部硬直で、75%以上の意識障害(傾眠~昏睡と程度は様々)である。他にも、嘔吐や羞明もよくみられる。けいれんは初期症状にみられ、髄膜炎の全経過を通して20~40%に起きる。

 

 

 

 

 

問題43 梅毒で正しいのはどれか。

1.クラミジア感染症である。
2.飛沫感染によって伝播する。
3.晩期梅毒では中枢神経症状を呈する。
4.硬性下疳が消退すれば治療の必要はない。

解答

解説

梅毒とは?

梅毒とは、5類感染症の全数把握対象疾患であり、スピロヘータ(細菌)の一種である梅毒トロポネーマ感染により発症し、この梅毒トロポネーマが脳の実施まで至ると、進行性麻痺となる。性行為や胎盤を通じて感染する。梅毒に特徴的な症状として、陰茎・外陰部を中心に生じる無痛性の硬結(指で触れることのできる硬い丘疹)やバラ疹(全身にできる淡い紅斑)などがあり、進行すると神経系の病変を生じて死に至ることもある。

【臨床的特徴】
Ⅰ期梅毒:感染後3~6週間の潜伏期の後に、感染局所に初期硬結や硬性下疳、無痛性の鼠径部リンパ節腫脹がみられる。
Ⅱ期梅毒:感染後3か月を経過すると皮膚や粘膜に梅毒性バラ疹や丘疹性梅毒疹、扁平コンジローマなどの特有な発疹が見られる。
経過晩期:感染後3年以上を経過すると顕症梅毒としてゴム腫、梅毒によると考えられる心血管症状、神経症状、眼症状などが認められることがある。なお、感染していても臨床症状が認められないものもある。先天梅毒は、梅毒に罹患している母体から出生した児で、①胎内感染を示す検査所見のある症例、②Ⅱ期梅毒疹、骨軟骨炎など早期先天梅毒の症状を呈する症例、③乳幼児期は症状を示さずに経過し、学童期以後にHutchinson3徴候(実質性角膜炎、内耳性難聴、Hutchinson歯)などの晩期先天梅毒の症状を呈する症例がある。また、妊婦における梅毒感染は、先天梅毒のみならず、流産及び死産のリスクとなる。(※一部引用:「梅毒」厚生労働省HPより)

1.× クラミジア感染症「ではない」。梅毒は、スピロヘータ(細菌)の一種である梅毒トロポネーマ感染により発症する。一方、性器クラミジア感染症とは、単純ヘルペスウイルス(HSV)の感染によって性器やその周辺に水疱や潰瘍等の病変が形成される疾患である。感染症法下では4類感染症定点把握疾患に分類されている。感染機会があってから2〜21日後に外陰部の不快感、掻痒感等の前駆症状ののち、発熱、全身倦怠感、所属リンパ節の腫脹、強い疼痛等を伴って、多発性の浅い潰瘍や小水疱が急激に出現する。

2.× 「飛沫感染」ではなく接触感染(性的接触)によって伝播する。具体的には、性器と性器、性器と肛門(アナルセックス)、性器と口の接触(オーラルセックス)などが原因となる。また、潜伏期の初期にも他者に感染する可能性がある。

3.〇 正しい。晩期梅毒では中枢神経症状を呈する。経過晩期は、感染後3年以上を経過すると顕症梅毒としてゴム腫、梅毒によると考えられる心血管症状、神経症状、眼症状などが認められることがある。なお、感染していても臨床症状が認められないものもある。

4.× 硬性下疳が消退した場合でも、治療の必要がある。硬性下疳とは、潰瘍を伴うしこりのことである(※読み:こうせいげかん)。硬性下疳は、初期梅毒の症状であり、自然に消えることが多い。その後、適切な抗生物質治療を受けなければ、感染は進行し、後期の合併症(皮膚、骨、神経などに影響を与える)を引き起こす。

感染経路と感染症

感染には、①接触感染、②空気感染、③飛沫感染がある。

①接触感染(例:流行性角結膜炎、疥癬、ノロウイルス感染症など)
(1)直接接触感染:感染者の皮膚粘膜との直接接触による伝播・感染する。
(2)間接接触感染:感染者の微生物で汚染された衣類、周囲の器物、環境などとの接触による伝播・感染する。

②飛沫感染(例:風疹、流行性耳下腺炎、 インフルエンザ、マイコプラズマ、百日咳など)
咳やくしゃみなどに伴って発生する飛沫(粒径5μm以上の粒子)が経気道的にヒトの粘膜に付着し感染する。飛散する範囲は1m以内であることが特徴。

③空気感染(例:結核、水痘、麻疹など)
飛沫核 (粒径5μm未満の粒子に付着した微生物)が長期間空中を浮遊し、これを吸い込むことで感染が伝播・感染する。

(※参考:「医療施設等における感染対策ガイドライン」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

問題44 76歳の女性。大腿骨頸部骨折の手術後、離床を開始した直後に突然の胸痛と呼吸困難を訴えた。経皮的酸素飽和度は88%と低下し、頻脈、頻呼吸がみられた。
 最も考えられるのはどれか。

1.気管支喘息
2.心房細動
3.肺炎
4.肺血栓塞栓症

解答

解説

本症例のポイント

・76歳の女性(大腿骨頸部骨折の手術後)。
・離床を開始した直後:突然の胸痛呼吸困難
・経皮的酸素飽和度:88%(低下)
・頻脈、頻呼吸がみられた。
→本症例は、肺血栓塞栓症が疑われる。肺血栓塞栓症とは、肺の血管に血のかたまり(血栓)が詰まって、突然、呼吸困難や胸痛、ときには心停止をきたす危険な病気である。ロング・フライト血栓症やエコノミークラス症候群などと呼ばれる。原因として、①血液凝固能の亢進、②静脈血流のうっ滞、③静脈壁の障害の3つの因子が種々の程度に重なって起こる。離床(車椅子乗車や立位訓練、歩行訓練など)を開始したタイミングで発症するリスクが高くなるため注意が必要である。症状として、呼吸困難、胸痛、失神などが認められ、時に心停止となり、突然死に至る場合もある。

1.× 気管支喘息より優先されるものがほかにある。なぜなら、離床を開始した直後であるため。気管支喘息とは、主に気管支に炎症が起きている状態である。炎症により気管支が狭くなったり(狭窄)、刺激に対して過敏な反応を示したりする。喘息は乳幼児期に発症することが多く、全体の60~70%が2~3歳までに発症する。子どもの喘息の多くは思春期の頃には症状がよくなっていくが、そのうちの約30%は大人になっても続くといわれている。【症状】喘鳴、呼吸困難、呼気延長など(1秒率の低下)、アレルギー反応やウイルス感染が誘引となる。【治療】気道の炎症を抑えて、発作が起きない状態にする。発作を繰り返すと、気道の粘膜が徐々に厚くなり、狭くなった気道が元に戻らなくなるため治療が難しくなる。そのため、日頃から気道の炎症を抑える治療を行い、喘息をコントロールすることが重要である。

2.× 心房細動より優先されるものがほかにある。なぜなら、症状のほか、離床を開始した直後であるため。心房細動とは、心臓がこまかく震えている状態である。血栓ができやすいため脳塞栓の原因となり最多である。心房細動の特徴として、心房の興奮が形・大きさともに不規則であり、基線が揺れている(f波)。心房が正常に収縮しないためにP波が消失し、QRS波が不規則である。

3.× 肺炎より優先されるものがほかにある。なぜなら、突然の胸痛と頻脈、頻呼吸がみられるため。肺炎とは、何らかの理由で肺に炎症がみられる状態で、主な症状として、せき、発熱、胸痛、痰がでる、息苦しいなどである。

4.〇 正しい。肺血栓塞栓症は最も考えられる。なぜなら、①大腿骨頸部骨折の手術後、②離床を開始した直後、③SPO2低下、突然の胸痛、呼吸困難などの理由から。ちなみに、肺血栓塞栓症とは、肺の血管に血のかたまり(血栓)が詰まって、突然、呼吸困難や胸痛、ときには心停止をきたす危険な病気である。ロング・フライト血栓症やエコノミークラス症候群などと呼ばれる。原因として、①血液凝固能の亢進、②静脈血流のうっ滞、③静脈壁の障害の3つの因子が種々の程度に重なって起こる。離床(車椅子乗車や立位訓練、歩行訓練など)を開始したタイミングで発症するリスクが高くなるため注意が必要である。症状として、呼吸困難、胸痛、失神などが認められ、時に心停止となり、突然死に至る場合もある。

マイコプラズマ肺炎とは?

マイコプラズマ肺炎とは、「肺炎マイコプラズマ」という細菌に感染することによって起こる呼吸器感染症である。小児や若い人の肺炎の原因としては、比較的多いものの1つである。例年、患者として報告されるもののうち約80%は14歳以下であるが、成人の報告もみられる。

 

 

 

 

 

問題45 66歳の男性。3か月前から四肢脱力を生じ、階段昇降や座位から立ち上がることが困難となった。手指関節伸側に落屑を伴う紅斑を認める。血液検査で筋原性酵素の上昇と炎症反応の陽性がみられた。
 この患者で注意すべき合併症はどれか。

1.貧血
2.悪性腫瘍
3.前立腺肥大
4.甲状腺機能亢進

解答

解説

本症例のポイント

・66歳の男性。
・3か月前:四肢脱力を生じ、階段昇降や座位から立ち上がることが困難となった。
・手指関節伸側に落屑を伴う紅斑を認める。
・血液検査:筋原性酵素の上昇、炎症反応の陽性。
→本症例は、皮膚筋炎が疑われる。皮膚筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、多発性筋炎の症状(主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下)に加え、典型的な皮疹を伴うものをさす。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)。

1.× 貧血より優先されるものが他にある。貧血の原因として、さまざまあるが血液を造るための造血細胞自体の異常や、ビタミンや鉄などの原料不足により赤血球の産生が低下することによって起こりえる。

2.〇 正しい。悪性腫瘍は、この患者で注意すべき合併症である。なぜなら、本症例は、皮膚筋炎が疑われるため。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。

3.× 前立腺肥大より優先されるものが他にある。前立腺肥大の原因として、主に加齢である。他には、遺伝的要因、食生活、メタボリックシンドローム(高血圧、高血糖、肥満、脂質異常)などとの関係性も指摘されている。

4.× 甲状腺機能亢進より優先されるものが他にある。甲状腺機能亢進症の原因としては、現在も不明である。症状は、眼球突出、頻脈、びまん性甲状腺腫が特徴的である。

貧血の定義

貧血とは、「単位容積の血液中に含まれているヘモグロビン(Hb)量が基準値より減少した状態」と定義している。基準値を、小児および妊婦では血液100mLあたり11g未満、思春期および成人女性では12g未満、成人男性では13g未満と定めている。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)