第32回(R6年)柔道整復師国家試験 解説【午後36~40】

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問題36 貧血で正しいのはどれか。

1.単位容積当たりのヘモグロビン量が減少した状態をさす。
2.成人女性でヘモグロビン濃度13g/dLであれば貧血である。
3.易感染性を示す。
4.徐脈をきたす。

解答

解説
1.〇 正しい。単位容積当たりのヘモグロビン量が減少した状態をさす。貧血とは、「単位容積の血液中に含まれているヘモグロビン(Hb)量が基準値より減少した状態」と定義している。

2.× 成人女性でヘモグロビン濃度「13g/dL」ではなく12g未満であれば貧血である。基準値を、小児および妊婦では血液100mLあたり11g未満、思春期および成人女性では12g未満、成人男性では13g未満と定めている。

3.× 易感染性を示すものではない。貧血の症状として、めまいや立ちくらみ、頭痛、息切れ、倦怠感などがあげられる。ただし、貧血の種類の中でも、再生不良性貧血は、易感染性を伴いやすい。再生不良性貧血とは、骨髄の造血幹細胞の減少と、それによる末梢血の汎血球減少を主徴とする症候群で、骨髄で血液が造られないために血液中の赤血球、白血球、血小板のすべての血球が減ってしまう病気である。白血球(Tリンパ球)の働きが何らかの原因で異常をきたし、自分自身の造血幹細胞を攻撃して壊してしまうことが原因と考えられている。

4.× 「徐脈」ではなく頻脈をきたす。なぜなら、体が酸素を補おうとして心拍数を上げるため。

 

 

 

 

 

問題37 尿崩症で分泌異常がみられるのはどれか。

1.エストロゲン
2.コルチゾール
3.テストステロン
4.バソプレッシン

解答

解説

尿崩症とは?

尿崩症とは、多尿 (3L/日以上)を呈する状態である。尿崩症には2種類あり、①中枢性尿崩症(抗利尿ホルモンの分泌低下)と、②腎性尿崩症(ホルモンの作用障害)がある。多尿・口渇・多飲を主徴とする。

1.× エストロゲンとは、女性らしさをつくるホルモンで、成長とともに分泌量が増え、生殖器官を発育・維持させる働きをもっている。女性らしい丸みのある体形をつくったり、肌を美しくしたりする作用もあるホルモンである。分泌量は、毎月の変動を繰り返しながら20代でピークを迎え、45~55歳の更年期になると急激に減る。

2.× コルチゾールとは、副腎皮質から分泌されるホルモンで、血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

3.× テストステロンとは、男子の第二次性徴に最も関与するホルモンである。アンドロゲン(雄性ホルモン、男性ホルモン)とは、ステロイドの一種で、生体内で働いているステロイドホルモンのひとつである。アンドロゲンにはテストステロンとジヒドロテストステロン (dihydrotestosterone;DHT)があり、精巣の分化、機能、組織形成、さらに内性器・外性器の形成に重要な役割を果たす。

4.〇 正しい。バソプレッシンは、尿崩症で分泌異常がみられる。なぜなら、バソプレシンは、尿量の調節に深く関わるホルモンであるため。バソプレシンとは、下垂体後葉から分泌され、水の再吸収を促進する抗利尿作用・血圧上昇が起きる。尿を濃くし尿量を減らす作用がある。

 

 

 

 

 

問題38 関節リウマチで正しいのはどれか。

1.男性に多い。
2.高熱をきたす。
3.滑膜に炎症が起こる。
4.遠位指節間関節に好発する。

解答

解説

手の変形性関節症

Heberden結節(へバーデン結節):DIP関節に生じる。
Bouchard結節(ブシャール結節):PIP関節に生じる。

1.× 「男性」ではなく女性に多い。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。

2.× 高熱をきたすとは言いにくい。ただし、関節リウマチの活動期には発熱がみられる。概ね、慢性的な経過をたどる。関節リウマチの症状として、①全身症状(発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなど)、②関節症状、③その他(内臓病変)などみられる。

3.〇 正しい。滑膜に炎症が起こる。関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。ちなみに、滑膜とは、関節包を覆っている薄い膜状の組織である。

4.× 遠位指節間関節に好発するのは、へバーデン結節である。ちなみに、関節リウマチは、近位指節間関節の変形がみられる。ほかにも、関節リウマチの関節破壊と変形は、①環軸椎亜脱臼、②肩関節可動域制限、③肘関節屈曲拘縮、④手関節尺側偏位、⑤手指変形、⑥股関節屈曲拘縮、⑦膝関節内外反変形・屈曲拘縮、⑨足・足趾変形などが起こりやすい。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問題39 強皮症で誤っているのはどれか。

1.嚥下障害がみられる。
2.蝶形紅斑
3.手指の浮腫がみられる。
4.喀痰を伴わない咳嗽がみられる。

解答

解説
1.〇 正しい。嚥下障害/手指の浮腫/喀痰を伴わない咳嗽がみられる。強皮症とは、皮膚や内臓が硬くなる病気の総称である。全身性の結合組織病変で、手指より始まる皮膚の硬化病変に加え、肺線維症(拘束性障害)などの諸臓器の病変を伴う。病因は不明であり、中年女性に多い。症状は、仮面様顔貌、色素沈着、ソーセージ様手指、Raynaud現象(レイノー現象)、嚥下障害、間質性肺炎、関節炎、腎クリーゼなどである。

2.× 蝶形紅斑は、「強皮症」ではなく全身性エリテマトーデスでみられる。全身性エリテマトーデスとは、皮膚・関節・神経・腎臓など多くの臓器症状を伴う自己免疫性疾患である。皮膚症状は顔面の環形紅斑、口腔潰瘍、手指の凍瘡様皮疹である。10~30歳代の女性に好発する多臓器に障害がみられる慢性炎症性疾患であり、寛解と再燃を繰り返す病態を持つ。遺伝的素因を背景にウイルス感染などが誘因となり、抗核抗体などの自己抗体産生をはじめとする免疫異常で起こると考えられている。本症の早期診断、早期治療が可能となった現在、本症の予後は著しく改善し、5年生存率は95%以上となった。主な治療法として、①非ステロイド系消炎鎮痛剤、②ステロイド剤などである。

 

 

 

 

 

問題40 パーキンソン(Parkinson)病の症状はどれか。

1.痙縮
2.企図振戦
3.線維束収縮
4.姿勢反射障害

解答

解説

パーキンソン病とは?

パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

矛盾性運動(逆説的運動)とは、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。すくみ足の症状があっても、床の上の横棒をまたぐことができること、リズムをとったり、視覚的な目標物を踏み越えさせたりすると、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。ちなみに、階段昇降もこれに含まれ、平地歩行に比べて障害されにくい。階段昇降は、歩行の改善、下肢筋力強化の効果も期待される。

1.× 痙縮は、錐体路の上位運動ニューロン障害による損傷高位以下の脊髄前角細胞(下位運動ニューロン)の活動性が亢進し、麻痺筋の筋紡錘からの求心性刺激が増強することによって生じる。その結果、意思とは関係なく筋肉の緊張が高まり、手や足が勝手につっぱったり曲がってしまったりしてしまう状態となる。このため、前角細胞以下の障害では痙縮は出現しない。脳卒中の後遺症として起こる痙縮の治療にはボツリヌス毒素が用いられる。ボツリヌス毒素が神経終末の受容体に結合することで、アセチルコリンの放出を阻害し、アセチルコリンを介した筋収縮および発汗が阻害される。

2.× 企図振戦は、小脳の障害が疑われる。企図振戦とは、安静時にはほとんど生じないが、運動時、特に運動終了直前に生じる律動的な運動疾患である。

3.× 線維束収縮は、主に筋萎縮性側索硬化症(ALS)でみられる。線維束性収縮とは、運動神経や脊髄の運動神経細胞(脊髄前角細胞)に障害が起きた時に筋肉が細かくぴくぴくと小さなけいれんのような動きを生じることである。

4.× 姿勢反射障害は、パーキンソン病の症状である。パーキンソン病の4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害があげられる。健常人は、姿勢反射によって、体が傾いたときに、重心を移動してバランスを取る。それでも耐えきれないときは、足を踏み出して転倒を防ぐ(立ち直り反射)。 これらが障害されて転倒し易くなった状態を姿勢反射障害と呼ぶ。

”筋萎縮性側索硬化症とは?”

 筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、主に中年以降に発症し、一次運動ニューロン(上位運動ニューロン)と二次運動ニューロン(下位運動ニューロン)が選択的にかつ進行性に変性・消失していく原因不明の疾患である。病勢の進展は比較的速く、人工呼吸器を用いなければ通常は2~5年で死亡することが多い。男女比は2:1で男性に多く、好発年齢は40~50歳である。
【症状】3型に分けられる。①上肢型(普通型):上肢の筋萎縮と筋力低下が主体で、下肢は痙縮を示す。②球型(進行性球麻痺):球症状(言語障害、嚥下障害など)が主体、③下肢型(偽多発神経炎型):下肢から発症し、下肢の腱反射低下・消失が早期からみられ、二次運動ニューロンの障害が前面に出る。
【予後】症状の進行は比較的急速で、発症から死亡までの平均期間は約 3.5 年といわれている。個人差が非常に大きく、進行は球麻痺型が最も速いとされ、発症から3か月以内に死亡する例もある。近年のALS患者は人工呼吸器管理(非侵襲的陽圧換気など)の進歩によってかつてよりも生命予後が延長しており、長期生存例ではこれらの徴候もみられるようになってきている。ただし、根治療法や特効薬はなく、病気の進行に合わせて薬物療法やリハビリテーションなどの対症療法を行うのが現状である。全身に筋萎縮・麻痺が進行するが、眼球運動、膀胱直腸障害、感覚障害、褥瘡もみられにくい(4大陰性徴候)。終末期には、眼球運動と眼瞼運動の2つを用いたコミュニケーション手段が利用される。

(※参考:「2 筋萎縮性側索硬化症」厚生労働省様HPより)

 

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