第32回(R6年)柔道整復師国家試験 解説【午後51~55】

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問題51 消毒と滅菌で正しいのはどれか。

1.消毒薬自体が汚染されることはない。
2.微生物によって消毒薬が異なる。
3.光学機器の滅菌には高圧蒸気を用いる。
4.粘膜の消毒にはアルコールを用いる。

解答

解説

各用語の説明

・無菌とは、すべての菌が存在しない状態である。
・滅菌とは、物体の表面または容器内のすべての生命形態(細菌、ウイルス、胞子、真菌など)を完全に除去または死滅させるプロセスを指す。
・消毒とは、病原性微生物を、害の無い程度まで減らしたり、あるいは感染力を失わせたりして、毒性を無力化させることである。
・殺菌とは、一部を殺しただけでも「殺菌した」と言える状態であるため、この用語を使う場合は、有効性を保証したものではないともいえる。
・静菌とは、菌をしずめている状態で、菌を殺さないがその増殖を止めている状態を指す。対象や程度を含まない概念である。
・除菌とは、菌をのぞいている状態で、対象物から菌を除いて減らしている状態である。
・抗菌とは、菌をふせぐことで、細菌の増殖を阻止する(抑制する)ことである。菌を殺したり減少させたりするのではなく、繁殖を阻止する(抑制する)対象や程度を含まない概念である。

1.× 消毒薬自体が汚染されることはないと断言できない。むしろ、消毒薬が不適切に保管されることで、微生物が混入し、消毒薬自体が汚染されることがある。例えば、消毒薬の容器の口が開いたまま放置されるなどの状況である。したがって、消毒薬の取り扱いには注意が必要である。

2.〇 正しい。微生物によって消毒薬が異なる。例えば、アルコールは一般的に細菌やウイルスに対して有効であるが、ノロウイルスには効果がない。ちなみに、消毒には、通常のアルコール製剤や逆性石鹸は有効でないため、塩素系消毒剤(0.1%次亜塩素酸ナトリウム)を用いる。

3.× 光学機器の滅菌には、「高圧蒸気」ではなくエチレンオキサイドガス滅菌(酸化エチレンガス滅菌)などを用いる。光学機器とは、光の作用や性質を利用した機器の総称である。レンズやミラー、プリズムなどで構成され、光の直進や屈折、反射、干渉などを利用する器械で、視覚に絡んだものや計測機器のようなものが多い。光学機器の滅菌方法として、エチレンオキサイドガス滅菌(酸化エチレンガス滅菌)があげられる。特徴として、沸点が10.8℃と低く可燃性で引火しやすいが、強い殺菌作用がある。滅菌条件は50~60℃、4~6時間である。熱に弱いプラスチック製品、カテーテルチューブ類、ゴム製品、光学機器、内視鏡などの滅菌に適し、浸透性に優れている。一方、高圧蒸気滅菌(オートクレーブ滅菌)とは、飽和水蒸気(空気が排除され蒸気で満たされた状態)の中で135℃付近まで加熱し、発生した水分により蛋白凝固を促進して微生物を死滅させる方法をいう。利点として、①浸透性が強いこと、②残留毒性がないこと、③短時間で滅菌可能であることなどがあげられる。

4.× 粘膜の消毒には、「アルコール」ではなくオキシドールなどを用いる。一般的なアルコールは、粘膜に対して刺激が強いため、粘膜の消毒には通常使用されない。ちなみに、オキシドール(過酸化水素)は、創傷・潰瘍の殺菌・消毒に用いられる。血液や体組織と接触すると、これらに含まれるカタラーゼの作用により分解して大量の酸素を発生し、この酸素の泡が異物除去効果(洗浄効果)を示す。

ノロウイルスとは?

ノロウイルスは、もっとも一般的な胃腸炎の原因である。感染者の症状は、非血性下痢、嘔吐、胃痛(悪心・嘔吐、水様性下痢腹痛、発熱等の急性胃腸炎)が特徴である。発熱や頭痛も発生する可能性がある。症状は、通常ウイルス曝露後12〜48時間で発症し、回復は通常1〜3日以内である。合併症はまれだが、特に若人、年配者、他の健康上の問題を抱えている人では、脱水症状が起こることがある。原因として、①カキ等の二枚貝、②感染者の嘔吐物等への接触や飛沫による二次感染である。感染経路は、経口感染、接触感染、飛沫感染、空気(飛沫核)感染による。

【予防・拡大防止】
①感染源となる二枚貝等は、中心部まで十分に加熱(85~95℃以上、90秒以上)する。
②消毒には、通常のアルコール製剤や逆性石鹸は有効でないため、塩素系消毒剤(0.1%次亜塩素酸ナトリウム)を用いる。
③ノロウイルスは乾燥に強く、感染者の嘔吐物等が乾燥して空気中に飛散することで感染拡大するため完全に拭き取る。
④嘔吐物等の処理時には手袋、ガウンマスクを装着する。

(※参考:「ノロウイルスに関するQ&A」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問題52 麻酔で誤っているのはどれか。

1.腰椎穿刺後の頭痛は体動で悪化する。
2.悪性高熱症では異常高体温が起こる。
3.気管支けいれんは気管挿管時に起こりやすい。
4.ラリンジアルマスクでは誤嚥性肺炎を予防できる。

解答

解説

腰椎穿刺とは?

腰椎穿刺とは、診断・検査のために脳脊髄液を採取するために、脊柱管に針を挿入する医療処置である。腰椎穿刺の主な理由は、脳や脊髄を含む中枢神経系の病気の診断に役立てることである。これらの状態の例には、髄膜炎およびくも膜下出血などがある。

1.〇 正しい。腰椎穿刺後の頭痛は、体動で悪化する。なぜなら、腰椎穿刺後の頭痛(ほかにも、嘔気や嘔吐など)は、低髄液症候群によるものであるため。腰椎穿刺によって髄液が10%程度減少した場合、頭痛や嘔気・嘔吐といった低髄液症候群に陥る。脳脊髄液の圧力が体位によって変化するため、横になることで軽減することが多い。

2.〇 正しい。悪性高熱症では、異常高体温が起こる。悪性高熱症とは、通常は脱分極性筋弛緩薬と強力な揮発性の吸入全身麻酔薬の併用に対する代謝亢進反応により生じる体温上昇である。全身麻酔薬の使用中に発症し、急激な体温上昇や異常な高熱・頻脈・筋硬直・ミオグロビン尿などを特徴とする。遺伝性があるため、術前に家族歴や既往を聴取することが重要である。治療としては麻酔の中止、ダントロレン投与、全身冷却などを行う。

3.〇 正しい。気管支けいれんは気管挿管時に起こりやすい。気管支痙攣は、気管挿管の際に起こりうる合併症のひとつである。気管支の平滑筋が反射的に収縮する可逆的な痙攣で、迷走神経が介在している。揮発性吸入麻酔薬や気管チューブによる刺激が原因で起こる。

4.× ラリンジアルマスクでは誤嚥性肺炎を予防できる「できない」。なぜなら、密閉が甘く個人差の技量も関係し、誤嚥のリスクは残存するため。ラリンジアルマスクとは、気管挿管とフェイスマスクの中間に位置する気道確保のためのマスクである。麻酔時や緊急時に使用され、チューブを口腔から喉頭へ挿入してチューブ先端のカフによって形成されたマスクで喉頭部分を覆い、気管(肺)への換気を行うことができる。

(※写真引用:「確実にできる!ラリンジアルマスク」羊土社様)

 

 

 

 

 

問題53 出血と症状や処置の組合せで正しいのはどれか。

1.鼻出血-嚥下を促す。
2.吐血-気管からの出血である。
3.静脈性出血-勢いよく拍動性に噴出する。
4.四肢の比較的太い動脈からの出血-緊縛法を用いる。

解答

解説
1.× 鼻出血は、「嚥下を促す」ではなくキーゼルバッハ部位の圧迫である。キーゼルバッハ部位とは、鼻に指をほんの少し入れたとき、その指先が内側(鼻中隔側)で触れることのできる中央の硬い部分である。ここには血管が多く集まっているため、鼻出血に最も関与する。小鼻を両側から、5分ほど強くつまむことで、多くの場合はこの方法で止血可能である。

2.× 吐血は、「気管」ではなく消化管からの出血である。気管からの出血は、喀血という。気道の出血が少量であれば痰に血が混じっている状態、血痰という。喀血は血液そのものを咳とともに吐く状態である。一方、吐血との区別は口から血が出たときに伴う症状で区別する。①喀血とは、下気道(気管支肺)からの出血、②吐血とは、上部消化管からの出血がある。したがって、喀血は吐血と比べると赤みが強く、泡が混じることが多く、固まりにくいという特徴がある。

3.× 勢いよく拍動性に噴出するのは、「静脈性出血」ではなく動脈性出血である。静脈性出血とは、暗赤色の血液が、傷口から持続的にわき出てくる出血(非拍動性)である。動脈性出血とは、鮮紅色の血液が、傷口から勢いよく拍動性に噴き出している出血である。

4.〇 正しい。四肢の比較的太い動脈からの出血は、緊縛法を用いる。緊縛法とは、止血法でも止血困難な場合(四肢からの出血)に用いる方法である。 出血している四肢の傷口より心臓に近い場所を止血帯などで強く縛り止血する。

用手間接圧迫法とは?

間接圧迫止血法とは、動脈性の出血が激しく続いている ときに、ガーゼや包帯を準備する間に行う方法である。傷口から心臓に近い動脈を圧迫する。

 

 

 

 

 

問題54 成人に対する胸骨圧迫心臓マッサージで誤っているのはどれか。

1.肘をまっすぐ伸ばして圧迫する。
2.胸骨圧迫の深さは5㎝以上で押す。
3.1分間に80回のテンポで行う。
4.胸の真ん中を圧迫する。

解答

解説

一次救命処置とは?

 一次救命処置とは、呼吸が止まり、心臓も動いていないと見られる人の救命へのチャンスを維持するため、特殊な器具や医薬品を用いずに行う救命処置であり、胸骨圧迫と人工呼吸からなる心肺蘇生法(CPR)、そしてAEDの使用を主な内容とする。

成人に対する一次救命処置では、胸骨圧迫を30回したのち、人工呼吸を2回行い(30対2)、これを繰り返す。成人であれば胸骨が少なくとも5~6cm沈むように圧迫し、1分間に100~120回のテンポで行う。絶え間なく圧迫することが重要である。

1.〇 正しい。肘をまっすぐ伸ばして圧迫する。なぜなら、肘関節伸展位で圧迫することで、力が伝わりやすく、効果的な圧迫が可能であるため。効果的な圧迫のため、肘関節伸展位のほか、肩の真下に手を置き、体重を使って圧迫することが推奨されている。

2.〇 正しい。胸骨圧迫の深さは5㎝以上で押す。心肺蘇生法ガイドライン2016では、成人への胸骨圧迫において押す深さは「5cm以上で6cmを超えない」(小児や乳児は、胸の約3分の1の深さ)、テンポは「100回~120回/分」となっている。

3.× 1分間に「80回」ではなく100回~120回のテンポで行う。

4.〇 正しい。胸の真ん中を圧迫する。胸の左右真ん中にある胸骨の下半分を圧迫する。

 

 

 

 

 

問題55 交通外傷後、緊急CT検査で後腹膜腔に著明な血腫がみられる場合、考えられる損傷臓器はどれか。

1.脾臓
2.膵臓
3.肝臓
4.空腸

解答

解説

後腹膜臓器とは?

腹膜後器官(後腹膜臓器)とは、後腹壁の壁側腹膜に接する領域に位置する器官のことである。腹膜後器官には、十二指腸、腎臓、副腎、膵臓、尿管、腹大動脈、下大静脈、胸管、乳び槽などがある。

1.3~4.× 脾臓/肝臓/空腸より優先されるものがほかにある。なぜなら、これら臓器は、腹腔内に存在する臓器(腹腔内臓器)であるため。ちなみに、腹腔内臓器とは、腹腔内に収納されている臓器のことをいい、胃や肝臓、空腸、胆嚢、脾臓、回腸、虫垂、横行結腸、S状結腸などがあげられる。

2.〇 正しい。膵臓が交通外傷後で損傷されている場合、後腹膜腔に著明な血腫がみられる。膵臓は、後腹膜腔に位置しており、CT検査の後腹膜腔に多量の血腫がみられる。

 

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