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問題106 24歳の女性。スケートボード練習中に転倒して右手を衝き、手関節が伸展橈屈強制された。翌日、右手が動かしにくくなったため来所した。スナッフボックスの腫脹と圧痛、第1・2中手骨の骨軸方向からの軸圧痛がみられる。
正しいのはどれか。
1.母指はMP関節の手前まで固定する。
2.クラーメル金属副子は背側にあてる。
3.手関節は軽度屈曲(掌屈)・橈屈位で固定する。
4.固定されていない手指は運動を積極的に行わせる。
解答4
解説
・24歳の女性。
・スケートボード中に転倒:右手を衝き、手関節が伸展橈屈強制。
・翌日:右手が動かしにくくなったため来所。
・スナッフボックスの腫脹と圧痛、第1・2中手骨の骨軸方向からの軸圧痛。
→本症例は、舟状骨骨折が疑われる。舟状骨骨折とは、サッカーなどの運動時に後ろ向きに転倒して、手関節背屈で手をついた時に受傷することが多い。10〜20代のスポーツ競技者によくみられる骨折である。急性期では、手首の母指側が腫れ、痛みがある。急性期を過ぎると一時軽快するが、放置して骨折部がつかずに偽関節になると、手首の関節の変形が進行し、手首に痛みが生じて、力が入らなくなり、また動きにくくなる。
→軸圧痛とは、介達痛ともいい、骨折の患部から離れた場所を刺激した際、患部に生じる痛みのことである。骨折が疑われる骨の長軸に沿って末梢部から圧力をかけると、骨折部の断端が刺激され、患部に痛みを感じる。
1.× 母指は、「MP関節」ではなくIP関節の手前まで固定する。なぜなら、舟状骨骨折の固定では、母指の動きを制限し、骨折部の安静を保つため。ちなみに、舟状骨骨折の固定期間は、6~10週間と比較的に長期間となる傾向がある。したがって、手関節の装具をつけることもある。
2.× クラーメル金属副子は、「背側」ではなく掌側にあてる。なぜなら、掌側にあてることで、手関節の伸展を制限し、舟状骨への負荷を軽減できるため。
3.× 手関節は、「軽度屈曲(掌屈)・橈屈位」ではなく軽度伸展(背屈)位、軽度橈屈位で固定する。なぜなら、舟状骨にかかるストレスを最小限にするため。
4.〇 正しい。固定されていない手指は、運動を積極的に行わせる。なぜなら、長期間の固定による関節拘縮や筋力低下を防ぐため。これを患部外トレーニングという。
問題107 59歳の女性。自宅でテレビを見ていて大きくあくびをしたところ、口を閉じることができなくなったため来所した。下顎歯列は上顎歯列の前方に偏位している。耳前方に陥凹を触れ、頬は扁平となっている。
整復で誤っているのはどれか。
1.最初の1回で整復しないと整復が困難になる。
2.ヒポクラテス法では患者の頭部を前屈させる。
3.患者に発声させないようにすると整復が容易になる。
4.ボルカース法では術者は手指消毒をして滅菌ガーゼを用いる。
解答3
解説
・59歳の女性。
・あくび後:口を閉じることができなくなった。
・下顎歯列は、上顎歯列の前方に偏位している。
・耳前方に陥凹を触れ、頬は扁平となっている。
→本症例は、顎関節前方脱臼が疑われる。
1.〇 正しい。最初の1回で整復しないと、整復が困難になる(ことが多い)。なぜなら、最初の1回で整復できなかった場合、痛みを伴い筋緊張が強まる可能性が高いため。ただし、脱臼から時間が経過していない場合、繰り返し試みたり、麻酔を併用したりすることで整復は可能なこともある。選択肢の文章では、「必ず整復困難になる」という書き方なので、誤解が生みやすい。
2.〇 正しい。ヒポクラテス法では患者の頭部を前屈させる。具体的な手法は、まず患者の頭部を固定し、術者は患者の前方に位置する。次に、両拇指にガーゼを巻いて下顎大臼歯咬合面(歯が無い場合は同相当部顎堤)に置き、他の 4 指で下顎下縁を保持する。下顎頭を下方に圧下して、オトガイ部を挙上させ、後上方に押し込むように閉口させる。なお、片側ずつの整復法もある。その際には、一側の下顎臼歯部に拇指を置き、上記と同様に行うが、空いている片手の拇指を整復測の脱臼した下顎頭前方に置き、下顎頭を口内法に圧迫するように補助する(※引用:「顎関節脱臼の Q&A」日本顎関節学会HPより)。
3.× 患者に「発声させないようにすると」ではなく発声しながら整復が容易になる。必心理的に動揺している患者をリラックスさせて落ち着かせることが大切であるため、全身の力を抜いて腹式呼吸を数回してもらう。顎関節脱臼の整復中、患者にはリラックスしてもらうことが最優先で、患者は口を開けたままである。発声が治療に左右することはない。
4.〇 正しい。ボルカース法では、術者は手指消毒をして滅菌ガーゼを用いる。
ボルカース法(Borchers法、ボルヘルス法)は、患者を坐位とし、術者は患者の後方に立ち両手母指を患者の両側下顎大臼歯部に添えて、その他の指で患者の両側下顎下縁部を把持する。その後はヒポクラテス法と同様の手技で下顎全体を回転させ整復する。
問題108 55歳の女性。自転車で走行中に転倒し、右肩を負傷して来所した。肩峰が角状に突出し、三角筋胸筋三角の消失がみられる。
運動療法で正しいのはどれか。
1.1週目から肩の他動運動を行う。
2.2週目からコッドマン体操を行う。
3.3週目から外旋・外転運動を行う。
4.4週目から肩甲帯の筋力増強訓練を行う。
解答2
解説
・55歳の女性。
・自転車で転倒:右肩を負傷。
・肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角の消失。
→本症例は、肩関節烏口下脱臼が疑われる。烏口下脱臼とは、肩関節前方脱臼(約90%)のひとつである。上腕骨頭が肩甲骨関節窩から前方に脱臼した症状で、①烏口下脱臼と②鎖骨下脱臼に分類される。関節全体を覆う袋状の関節包と靭帯の一部が破れ、突き出た上腕骨頭が烏口突起の下へすべることで起こる脱臼である。介達外力が多く、後方から力が加わる、転倒するなどで手を衝くことで過度の伸展力が発生した場合(外旋+外転+伸展)などに起こる。症状として、①弾発性固定、②関節軸の変化(骨頭は前内方偏位、上腕軸は外旋)、③脱臼関節自体の変形(三角筋部の膨隆消失、肩峰が角状に突出、三角筋胸筋三角:モーレンハイム窩の消失)、④上腕仮性延長、⑤肩峰下は空虚となり、烏口突起下に骨頭が触知できる。
1.× 1週目から肩の他動運動を行う必要はない。なぜなら、肩関節脱臼の整復直後(1週目)は、関節包や周囲の軟部組織が損傷しており、非常に不安定な状態であるため。適切な固定期間が組織の修復を促進させる。
・【固定】①材料:巻軸包帯、副子(肩関節前後面にあてる)、腋窩枕子、三角巾。②肢位と範囲:肩関節軽度屈曲・内旋位で肩関節のみ。③期間:30歳代以下は5~6週間、40歳代以上は3週間
2.〇 正しい。2週目からコッドマン体操を行う。なぜなら、コッドマン体操は、脱臼の整復後、炎症が落ち着き始める2週目頃から、医師の指示のもと、痛みがない範囲でゆっくりと開始できるため。
・Codman体操(コッドマン体操)は、肩関節周囲炎の炎症期に使用する運動であり、肩関節回旋筋腱板の強化や肩関節可動域拡大を目的に使用する。患側の手に1~1.5㎏の重錘を持ち、振り子運動を行う。肩甲骨と上腕骨の間に関節の遊びを作ることで、痛みや障害を予防する。
3.× 3週目から外旋・外転運動を行う必要はない。なぜなら、肩関節の外旋位と外転位は、肩関節脱臼、特に前方脱臼の再脱臼を最も起こしやすい肢位であるため。
4.× 4週目から肩甲帯の筋力増強訓練を行う必要はない。なぜなら、まだ関節包や靱帯の治癒過程にあり、肩関節自体の安定性が不十分なことが多いため。
問題109 21歳の女性。ソフトボールの試合中、捕球に失敗し右手小指を負傷した。右手小指は背側の皮膚に深い陥凹がみられ、自動的にも他動的にも動かせない。外観写真を下に示す。
考えられるのはどれか。
1.終止腱断裂
2.中央索断裂
3.基節骨頸部骨折
4.PIP関節背側脱臼
解答4
解説
・21歳の女性。
・ソフトボールの捕球に失敗:右手小指を負傷。
・右手小指は背側の皮膚:深い陥凹
・自動的・他動的:運動不可。
→ほかの選択肢が消去される理由もあげられるようにしよう。
1.× 終止腱断裂は、槌指(マレットフィンガー)が生じる。
マレットフィンガーとは、槌指やハンマー指、ベースボールフィンガー、ドロップフィンガーのことである。DIP関節の過屈曲によりDIP関節の伸筋腱の断裂で起こる。DIP関節が曲がったままで痛みや腫れがあり、自動伸展は不能で、自分で伸ばそうと思っても伸びない。しかし、他動伸展は可能である。
【末節骨骨折・マレットフィンガーの分類】
Ⅰ型(腱断裂):終止腱の断裂
Ⅱ型(裂離骨折):終止腱の停止部での裂離骨折
Ⅲ型(関節内骨折):末節骨の背側関節面を含む骨折
2.× 中央索断裂は、ボタン穴変形が生じる。ボタン穴変形は、関節リウマチでみられる。ボタン穴変形とは、DIP過伸展・PIP屈曲する変形である。正中索の断裂によりボタン穴変形が起こる。
3.× 基節骨頸部骨折は、指の腫脹や圧痛が主体である。本症例のように、関節脱臼に伴うような背側陥凹はみられない。また他動運動が完全に不能になることも少ないため否定できる。
4.〇 正しい。PIP関節背側脱臼が考えられる。本症例の画像では、PIP関節の背側に陥凹が見られ、指が屈曲拘縮し、自動・他動いずれでも動かせない。これはPIP関節が背側へ脱臼し、関節面が整復されていない典型所見である。
・PIP関節背側脱臼とは、背側脱臼が多く、掌側板の断裂や中節骨基部掌側顆部骨折を伴う。簡単に整復された場合や裂離した骨片が大きくなく転位や回転がほとんどない場合は保存的に治療するが、それ以外は早期に手術を行う。長軸方向への牽引は整復障害を助長するため行わない。背側脱臼では、掌側板損傷を合併しやすい。
【種類】
①背側脱臼:掌側板損傷する
②掌側脱臼:正中索損傷する(ボタン穴変形)
③側方脱臼:側副靱帯損傷する(側方動揺性)
【固定法】
①DIP・PIP関節:軽度屈曲位
②正中索損傷の場合:PIP伸展位
③側副靭帯損傷の場合:隣接指間にパットを挟み固定
※示指PIP関節背側脱臼で正中索損傷を合併している稀な症例であるが、基本的に正中索損傷する(ボタン穴変形)に対する固定方法を行う。
問題110 10歳の女児。立ち幅跳びの着地で膝関節を屈曲した際に受傷した。直後の外観写真を下に示す。
誤っているのはどれか。
1.外側膝蓋支帯の断裂を伴う。
2.後療法は内側広筋の強化を行う。
3.皮下出血は膝蓋骨内側を中心に発生する。
4.膝関節のアライメント異常は危険因子となる。
解答1
解説
・10歳の女児。
・立ち幅跳びの着地で膝関節を屈曲した際に受傷。
・直後の外観写真:膝蓋骨が異常な偏位。
→本症例は、膝蓋骨脱臼が疑われる。膝蓋骨脱臼とは、膝蓋骨がはずれる疾患である。ほとんどは外側に外れる。ジャンプの着地などの時に太ももの筋肉が強く収縮してはずれることが多く、はずれた時には膝に強い痛みや腫れを生じる。脱臼は自然に整復されることもある。
1.× 「外側」ではなく内側膝蓋支帯の断裂を伴う。なぜなら、膝蓋骨脱臼のほとんどは外側に外れるため。損傷するのは主に内側膝蓋支帯(MPFL)である。
・膝蓋支帯とは、膝蓋骨の内側を縦に走る線維束で、膝関節の伸展機構の一部として機能している。
2.〇 正しい。後療法は、内側広筋の強化を行う。なぜなら、膝蓋骨の安定性において、特に内側広筋が寄与するため。再発予防に有効となる。
3.〇 正しい。皮下出血は、膝蓋骨内側を中心に発生する。なぜなら、膝蓋骨脱臼のほとんどは外側に外れ、主に内側膝蓋支帯(MPFL)に炎症反応がみられるため。つまり、膝蓋骨が外側へ脱臼すると、内側の支持組織が裂け、血管損傷も伴い、皮下出血は内側に集中する。
4.〇 正しい。膝関節のアライメント異常は危険因子となる。なぜなら、外反膝(X脚)、膝蓋高位、内側広筋の機能不全などがあると、膝蓋骨が外側へ引かれやすく、脱臼リスクが高くなるため。特に、若年女性では外反膝や過回内足が多く、膝蓋骨不安定症を引き起こしやすい。