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問題111 24歳の女性。事務員で一日の大半がデスクワークである。数か月前から腰痛を自覚し、痛みが徐々に強くなったため来所した。腰部は前弯が強く、後屈で痛みが増悪する。SLR検査は陰性で、下肢の感覚異常や筋力低下はみられない。
考えられるのはどれか。
1.腸腰筋拘縮
2.脊柱管狭窄症
3.変形性腰椎症
4.椎間板ヘルニア
解答1
解説
・24歳の女性。
・事務員で一日の大半:デスクワーク。
・数か月前:腰痛を自覚、痛みが徐々に強くなった。
・腰部は前弯が強く、後屈で痛みが増悪。
・SLR検査:陰性、下肢の感覚異常や筋力低下はみられない。
→ほかの選択肢が消去できる理由もあげられるようにしよう。
1.〇 正しい。腸腰筋拘縮が考えられる。なぜなら、本症例は、長時間のデスクワーク(座位姿勢:股関節が常に屈曲位)で、腸腰筋が短縮・拘縮しやすい環境といえるため。腸腰筋が拘縮すると、立位や歩行時に腰椎が過度に前弯しやすくなり、これにより腰椎の後ろ側(椎間関節や棘突起、椎弓など)にストレスがかかり、痛みを引き起すことがある。
・腸腰筋とは、①腸骨筋と②大腰筋の2筋からなる筋肉である。
①腸骨筋:【起始】腸骨窩全体、【停止】大腿骨の小転子、【作用】股関節屈曲、外旋、【神経】大腿神経
②大腰筋:【起始】第12胸椎~第4腰椎の椎体と椎間円板、すべての腰椎の肋骨突起、第12肋骨、【停止】大腿骨の小転子、【作用】股関節屈曲、【神経】腰神経叢の枝
2.× (腰部)脊柱管狭窄症とは、脊柱管が腰部で狭くなる病気である。そのため、腰から下の神経に関連する症状(しびれや疼痛、脱力など)が出現する。歩行時には腰痛があまり強くならない事が多く、歩行と休息を繰り返す間欠性破行が特徴である。
3.× 変形性腰椎症とは、腰椎の加齢変化で骨棘と呼ばれる骨の棘ができたり、背骨が変形したりして生じる腰痛のことである。進行により脊柱管狭窄症になることもある。つまり、高齢者になりやすい。
4.× 椎間板ヘルニアとは、線維輪(外縁部分)と髄核(中心部)の主に線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことである。L4/5とL5/S1が好発部位である。
L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。
問題112 50歳の男性。日常生活で肩関節外転時に痛みを自覚したため来所した。肩部に腫脹はないが、肩関節外転筋力が低下している。肩内旋・屈曲で痛みを訴えるが、肩外旋・屈曲あるいは肩伸展では痛みを訴えない。肘関節屈曲に対する前腕への抵抗運動では痛みを訴えない。
考えられるのはどれか。
1.SLAP損傷
2.棘上筋腱損傷
3.肩甲下筋腱損傷
4.上腕二頭筋長頭腱炎
解答2
解説
・50歳の男性。
・肩関節外転時に痛みを自覚。
・肩関節外転筋力が低下(肩部に腫脹はない)。
・肩内旋・屈曲で痛み(他、痛みなし)。
・肘関節屈曲に対する前腕への抵抗運動では痛みを訴えない。
→本症例は、棘上筋腱損傷が疑われる。ちなみに、腱板断裂とは、肩のインナーマッスルである棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の腱が損傷・断裂していることをいう。肩峰や上腕骨頭とのインピンジメント(衝突)で損傷されやすい棘上筋腱の損傷がほとんどである。画像所見やインピンジメントの誘発テストによって診断される。
1.× SLAP損傷(Superior Labrum Anterior and Posterior lesion)とは、上方関節唇損傷のことをさす。野球やバレーボールなどのオーバーヘッドスポーツにおける投球動作やアタック動作などを反復することによって上腕二頭筋長頭腱に負荷がかかり、関節唇の付着部が剥がれてしまう状態を指す。また、腕を伸ばした状態で転倒した際に上腕骨頭の亜脱臼に合併してSLAP損傷が生じることや、交通事故などの外傷性機序で発症することがある。スポーツでは、スライディングで手をついたり、肩を捻った時に発症することがある。
2.〇 正しい。棘上筋腱損傷が考えられる。
①肩関節外転時痛と筋力低下:棘上筋の機能障害に直接関連する。
②肩内旋・屈曲で痛む:棘上筋腱は肩峰下を通過するため、この動作で肩峰と腱が衝突し、インピンジメント(衝突)を起こしやすく痛みが誘発されやすい。
③肩外旋・屈曲、肩伸展で痛まない:これらの動作では棘上筋腱への直接的なストレスが少ないため。
3.× 肩甲下筋腱損傷は、主に肩関節内旋時の痛みや筋力低下が主訴となる。
・肩甲下筋の【起始】肩甲骨肋骨(肩甲下窩)と筋膜内面、【停止】上腕骨前面の小結節、小結節稜上端内側、【作用】肩関節内旋、【神経】肩甲下神経である。
4.× 上腕二頭筋長頭腱炎は、上腕二頭筋の長頭腱に炎症が生じる病態である。結節間溝(上腕骨の溝)に圧痛がみられることも特徴である。ほかにも、肩関節の屈曲や前腕の回外に対する抵抗運動で痛みが誘発される。
・Speedテスト(スピードテスト)は、上腕二頭筋長頭腱の炎症の有無をみる。結節間溝部に痛みがあれば陽性である。【方法】被検者:座位で、上肢を下垂・肩関節外旋位から、上肢を前方挙上(肩関節屈曲)してもらう。検者:肩部と前腕遠位部を把持し、上肢に抵抗をかける。
問題113 20歳の男性。体操部に所属している。つり輪の練習中に左肩部に痛みを自覚した。肩関節の挙上は違和感はあるが可能である。肩前方の短軸超音波画像を下に示す。
考えられるのはどれか。
1.上腕二頭筋長頭腱炎
2.ベネット(Bennett)損傷
3.パンカート(Bankart)損傷
4.ヒル・サックス(Hill-Sachs)損傷
解答1
解説
・20歳の男性(体操部)。
・つり輪中:左肩部に痛み。
・肩関節の挙上は違和感はあるが可能。
→ほかの選択肢が消去できる理由もあげられるようにしよう。
1.〇 正しい。上腕二頭筋長頭腱炎が考えられる。本症例の場合、腱炎の初期段階(肩関節の挙上は可能だが違和感)といえる。吊り輪のような肩関節に強い負荷がかかる運動は、上腕二頭筋長頭腱にストレスを与えやすく、腱炎を引き起こす典型的な原因である。超音波画像では、健側(右側)と比較して患側(左側)の腱周囲に液体貯留や肥厚が見られる。
2.× ベネット(Bennett)損傷とは、軟部組織損傷ともいい、投球動作により上腕三頭筋長頭や肩関節後方関節包に繰り返しの牽引力がかかり起こる骨膜反応である。野球暦の長い選手、特に投手に多く、上腕三頭筋長頭や後方下関節包の拘縮を合併する。炎症を伴うため、疼痛があるときは投球を中止し、初期は、冷罨法、固定、提肘により運動を制限する。疼痛軽減後は、ストレッチ運動や筋力強化訓練を行う。
3.× パンカート(Bankart)損傷とは、肩が脱臼した際に関節窩の周りにある関節唇が損傷するものをいう。自然には修復されず、さらに靭帯が緩んでしまうと脱臼を繰り返す。これを反復性脱臼という。
4.× ヒル・サックス(Hill-Sachs)損傷とは、肩関節が脱臼した際に、上腕骨頭の後外側が、肩甲骨の角に押し付けられる力がかかり、陥没(圧迫)骨折を起こした状態をいう。
問題114 11歳の女児。女子野球部の右投げピッチャーである。繰り返しの投球動作で右肩部に痛みを自覚していたが、徐々に悪化し安静時も痛むようになってきたため来所した。肩関節可動域は正常で、他動で痛みは増悪しない。約4週の安静を指導し痛みが消失した。
考えられるのはどれか。
1.肩関節周囲炎
2.棘上筋腱損傷
3.上腕骨近位骨端線離開
4.上腕骨大結節裂離骨折
解答3
解説
・11歳の女児(右投げピッチャー)。
・繰り返しの投球動作:右肩部に痛みを自覚。
・徐々に悪化し安静時も痛む。
・肩関節可動域:正常、他動で痛みは増悪しない。
・約4週の安静を指導し痛みが消失した。
→ほかの選択肢が消去できる理由もあげられるようにしよう。
1.× 肩関節周囲炎(五十肩)は、肩関節とその周辺組織(肩峰下滑液包や腱板など)の退行性変性が原因となり肩関節の痛みと運動の制限を伴うものである。加齢による退行変性を基盤に発症し、疼痛(運動時痛、夜間時痛)と運動障害を主徴とする。
2.× 棘上筋腱損傷(腱板損傷)は、多くの場合、肩関節の自動運動時の痛みや筋力低下が顕著で、他動運動でも痛みを伴う。
・腱板損傷とは、肩のインナーマッスルである棘上筋、棘下筋、小円筋、肩甲下筋の腱が損傷・断裂していることをいう。肩峰や上腕骨頭とのインピンジメント(衝突)で損傷されやすい棘上筋腱の損傷がほとんどである。好発年齢は、40歳以上の男性であり、腱板の上にある滑液包が強い炎症をおこし腫れたり、充血したり、水がたまったりする。
3.〇 正しい。上腕骨近位骨端線離開が考えられる。
上腕骨近位骨端線離開とは、リトルリーグ肩とも呼ばれ、成長期の投球選手に特有の障害である。成長途中の骨の端にある骨端線(成長軟骨)は、物理的に脆弱なため、繰り返しの投球動作による牽引力や圧縮力によってストレスがかかり、骨端線が損傷したり、離開したりする。骨端線病変では、関節自体には問題がなく、関節の動きでは痛まないことが多い。
・骨端線離開とは、骨端線骨折ともいい、骨端線閉鎖前の成長期に繰り返し骨端線に負担がかかることで、骨同士が離れてしまう病態のことである。好発年齢は10歳〜15歳と言われる。ちなみに、骨端線とは、成長期に見られる骨を成長させる部分のことで、力学的に弱い部分である。
4.× 上腕骨大結節裂離骨折とは、回旋筋腱板(特に棘上筋)の急激な牽引力によって大結節(上腕骨の肩に近い部分の突出部)が剥がれる骨折である。強い外力、例えば転倒による肩の打撲や、急激な投球動作の際に一度の強い牽引力で発生することが多い。
裂離骨折とは、剥離骨折ともいい、靭帯や筋肉の牽引によってその付着部が引きはがされて損傷してしまった状態を指す。
問題115 25歳の女性。バレーボールの社会人リーグに所属している。ブロックの際に、ボールで右母指が橈側外転強制された。2日経過しても腫れと物が特ちにくい症状が残存するため来所した。徒手検査で動揺性がみられる。
誤っているのはどれか。
1.CM関節橈側に圧痛がみられる。
2.MP関節屈曲位で動揺性を評価する。
3.後療法ではピンチ力の筋力強化を行う。
4.競技の復帰には観血療法が推奨される。
解答1
解説
・25歳の女性(バレーボール)。
・ブロックの際:ボールで右母指が橈側外転強制された。
・2日経過:腫れと物が特ちにくい症状が残存する。
・徒手検査:動揺性がみられる。
→本症例は、スキーヤー母指を呈していると考えられる。スキーヤー母指とは、母指MP関節尺側側副靭帯損傷ともいい、原因は、親指の先から2番目の関節が、スキー中に転倒した場合などにストックによって外側に強制的に曲げられたときに、靭帯に損傷が起こって生じる。不安定性のほか、物をつまんだり、にぎり動作で痛みが増強する症状がみられる。損傷の程度は、指を横に曲げてみて判定し、軽度の場合は保存的治療法を選択し、過度に横に曲がってしまう場合は手術によって切れた靭帯を再建する必要がある。
1.× CM関節「橈側」ではなく尺側に圧痛がみられる。なぜなら、スキーヤー母指に伴い、母指のMP関節尺側側副靱帯損傷が疑われるため。これは、ブロックの際、ボールで右母指が橈側外転強制されたことからも理解できる。
2.〇 正しい。MP関節屈曲位で動揺性を評価する。なぜなら、MP関節が伸展位にあると、掌側板と呼ばれる組織が緊張し、靱帯の損傷があっても動揺性が隠れてしまうことがあるため。したがって、MP関節伸展位で、アルミ副子などで3週間程度固定する(※参考:「手指側副靭帯損傷」スポーツ整骨院様HPより)
3.〇 正しい。後療法ではピンチ力の筋力強化を行う。なぜなら、ピンチ力の筋力強化は、母指MP関節尺側側副靭帯損傷の代償(母指の安定性)において重要な役割を果たすため。
4.〇 正しい。競技の復帰には、観血療法(手術など)が推奨される。なぜなら、徒手検査で明らかな不安定性(動揺性)がある場合には、靱帯の自然治癒が期待できないため。