第33回(R7年)柔道整復師国家試験 解説【午後116~120】

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問題116 17歳の男子。2年前から空手を始めた。1か月前に右足で蹴りの動作を行った際、右股関節部に軽度の痛みを自覚した。2週前から痛みが強くなり、引っ掛かりを感じたため来所した。股関節を屈曲外転外旋位から伸展する際にクリックを触知する。
 原因となる筋はどれか。

1.大殿筋
2.腸腰筋
3.大腿直筋
4.大腿筋膜張筋

解答

解説

本症例のポイント

・17歳の男子。
・2年前から空手を始めた。
・1か月前に右足で蹴りの動作:右股関節部に軽度の痛み
・2週前から痛みが強くなり、引っ掛かりを感じた。
股関節を屈曲外転外旋位から伸展する際にクリックを触知する。
→本症例は、弾発股(内側型)が疑われる。弾発股とは、股関節の回りの筋肉や腱が、骨(大転子)に引っ掛かり、ポキッと音がする症状をさす。ちなみに、弾発股(外側型)股関節運動時にこの大転子の上を腸脛靭帯という靭帯が滑るように通るが、何らかの原因で正常に動かなくなり引っ掛かり感や音、痛みが発生する。腸脛靭帯に移行していく大腿筋膜張筋の影響と、同じく腸脛靭帯に入り込む大殿筋の影響が大きい。主な原因は、①スポーツや仕事など日常生活の中で姿勢や習慣、②年齢による筋力低下、③股関節や仙腸関節の機能障害などがあげられる。

1.× 大殿筋の【起始】腸骨翼の外面で後殿筋線の後方、仙骨・尾骨の外側縁、仙結節靭帯、腰背筋膜、【停止】腸脛靭帯、大腿骨の殿筋粗面、【作用】股関節伸展、外旋、外転、上部:内転、下部:骨盤の下制、【支配神経】下殿神経である。

2.〇 正しい。腸腰筋が原因となる筋である。本症例は、股関節を屈曲外転外旋位から伸展する際にクリックを触知できる。腸腰筋の腱が、腸恥隆起、大腿骨頭、小転子のいずれかと接触することで弾発現象を引き起こす。また、空手の蹴り動作(特にハイキックなど)では、股関節を大きく屈曲させるため、腸腰筋に大きなストレスがかかり、炎症や腱の肥厚が生じやすい。
・腸腰筋とは、①腸骨筋と②大腰筋の2筋からなる筋肉である。
①腸骨筋:【起始】腸骨窩全体、【停止】大腿骨の小転子、【作用】股関節屈曲、外旋、【神経】大腿神経
②大腰筋:【起始】第12胸椎~第4腰椎の椎体と椎間円板、すべての腰椎の肋骨突起、第12肋骨、【停止】大腿骨の小転子、【作用】股関節屈曲、【神経】腰神経叢の枝

3.× 大腿直筋の【起始】下前腸骨棘および寛骨臼の上縁、【停止】膝蓋骨、脛骨粗面、【作用】膝関節伸展、股関節屈曲、【支配神経】大腿神経:L2~L4である。

4.× 大腿筋膜張筋は、腸脛靭帯に移行し、弾発股(外側型)に関与する。大腿筋膜張筋の【起始】上前腸骨棘と大腿筋膜の内側、【停止】腸脛靭帯、脛骨外側顆前面の粗面、【作用】股関節屈曲、内旋、外転。膝関節伸展、【支配神経】上殿神経:L4~S1である。

 

 

 

 

 

問題117 20歳の男性。短距離走で転倒し、足関節外側に疼痛を自覚したためすぐに来所した。他動的に足関節底屈あるいは背屈で足部を内がえしさせると疼痛が増悪する。さらに足部の前方引き出しで不安感が生じる。
 考えられる損傷靱帯はどれか。2つ選べ。

1.脛腓靭帯
2.踵腓靱帯
3.二分靭帯
4.前距腓靱帯

解答2・4

解説

本症例のポイント

・20歳の男性。
・短距離走で転倒:足関節外側に疼痛。
・他動的に足関節底屈、背屈で足部を内がえし:疼痛が増悪
足部の前方引き出しで不安感が生じる。
→本症例は、足関節捻挫により足関節外側靱帯へのストレスが示唆される。

1.× 脛腓靭帯とは、脛骨と腓骨の遠位端を結び、足関節の安定性に寄与する靱帯(前脛腓靱帯、後脛腓靱帯、骨間膜)である。本症例の足部の前方引き出しで不安感が生じるものとしては、優先度が低い。

2.4.〇 正しい。踵腓靱帯/前距腓靱帯が考えられる損傷靱帯である。なぜなら、踵腓靱帯は、足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)のひとつであるため。中でも前距腓靭帯が多く損傷されるが、踵腓靭帯も内がえし捻挫で損傷しやすい。

3.× 二分靭帯は、縦足弓の外側部を支持する。他にも外側の踵骨・立方骨・舟状骨を硬く締結する。つま先立ちやジャンプの着地で内反捻挫をした際に損傷を受ける。

外側靭帯とは?

外側靭帯は、前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯を合わせていう。

【足関節靭帯損傷の受傷原因】
足関節の内反や外反が強い外力でかかる捻挫が最も多い。
内反捻挫は、足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)が損傷される。
外反捻挫は、足関節内側靭帯(三角靭帯)が損傷される。

【頻度】
外反捻挫より内反捻挫が多い。
足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)の中でも前距腓靭帯が多く損傷される。
なぜなら、足関節の可動域が、外反より内反の方が大きく、内反・底屈に過強制力がかかるため。

 

 

 

 

 

問題118 35歳の男性。ラグビーでタックルを右側から受け右膝痛を自覚したため、すぐに来所した。右膝内側に皮下出血がみられ、膝関節の不安感を訴えている。
 考えられない損傷靱帯はどれか。

1.ACL
2.LCL
3.MCL
4.PCL

解答

解説

本症例のポイント

・35歳の男性。
・ラグビーでタックルを右側から受け右膝痛を自覚。
右膝内側に皮下出血
膝関節の不安感を訴えている。
→本症例は、外反ストレス(X脚)が加わったことが示唆されている。したがって、内側の膝関節裂隙が広がる方向に力が加わっている。

1.〇 ACL(前十字靱帯)とは、膝関節の中で、大腿骨と脛骨をつないでいる強力な靭帯である。役割は、主に①大腿骨に対して脛骨が前へ移動しないような制御(前後への安定性)と、②捻った方向に対して動きすぎないような制御(回旋方向への安定性)である。

2.× LCL(外側側副靱帯)が、考えられない損傷靱帯である。なぜなら、本症例は、外反ストレス(X脚)が加わったことが示唆されているため。したがって、内側の膝関節裂隙が広がる方向(内側側副靱帯の損傷)に力が加わっている。

3.〇 MCL(内側側副靱帯)とは、膝の外側からのストレス(外反ストレス)に抵抗することで、関節の内側部分が開きすぎるのを防ぐ役割を持つ靭帯である。

4.〇 PCL(後十字靱帯)とは、脛骨の後方への逸脱を防ぐ靭帯である。後十字靭帯を損傷する最も多い原因は、転倒の際に地面に強く膝の前面を打ち付けたり、ラグビーのようなコンタクトスポーツで脛(すね)の前面に相手プレイヤーがぶつかったり、交通事故で脛(すね)に強い衝撃が加わるなどである。

 

 

 

 

 

問題119 19歳の女性。バレーボールの試合中、ジャンプの着地で膝が「がくっ」となって膝関節の疼痛を自覚した。医科へ搬送され、関節穿刺にて血性の関節液が採取された。
 考えられるのはどれか。

1.半月板辺縁部損傷
2.膝蓋骨骨折
3.外側側副靱帯損傷
4.膝蓋腱断裂

解答

解説

本症例のポイント

・19歳の女性。
・バレーボールの試合中:ジャンプの着地で膝が「がくっ」となって膝関節の疼痛を自覚。
・関節穿刺にて血性の関節液が採取。
→ほかの選択肢が消去される理由もあげられるようにしよう。

1.〇 正しい。半月板辺縁部損傷が考えられる。なぜなら、ジャンプ着地時の「がくっ」という感覚は、膝関節の不安定性や靱帯損傷を示唆されているため。加えて、血性の関節液(関節血腫)は、膝関節内の血管に富んだ組織(骨、靱帯、半月板辺縁部など)の損傷が考えられるため。
・半月板とは、膝関節の大腿骨と脛骨の間にある板で、内側・外側にそれぞれがある。役割として衝撃吸収と安定化をはたす。損傷した場合、膝の曲げ伸ばしの際に痛みやひっかかりが起こる。重度の場合は、膝に水(関節液)がたまったり、急に膝が動かなくなる「ロッキング」が起こり、歩けなくなるほど痛みが生じる。

2.× 膝蓋骨骨折は、直接的な打撃や、大腿四頭筋の強い収縮による牽引力で発生することが多い。例えば、交通事故でダッシュボードに膝をぶつけたり、膝の上に固い物が落下してあたったなどによる強い外力によるものが多い。介達外力によるものでは、横骨折を呈する。症状として、膝関節の著明な疼痛・腫脹、限局性圧痛、膝関節伸展障害、膝蓋腱膜断裂で骨折部の著明な離開、陥凹触知などを呈する。ただし、腱膜損傷がなければ転位は軽度である。固定として、転位が軽度なら膝関節軽度屈曲位で、4~5週の副子固定(絆創膏orリング固定を併用)である。一方、転位が大きいものは観血療法である。長期固定による膝関節拘縮を合併することがある。

3.× 外側側副靱帯損傷は考えにくい。なぜなら、外側側副靱帯は、関節包の外側にあるため。
・外側側副靱帯とは、膝関節の外側に位置し、膝関節の内反ストレス(膝が外側に「くの字」に曲がる力)に対して抵抗する靭帯である。

4.× 膝蓋腱断裂より優先されるものが他にある。なぜなら、膝蓋腱は、関節包の外側にあるため。また、「膝ががくっとなった」という症状からも優先度が低いといえる。膝蓋腱断裂に特有の症状として、①膝伸展不能、②膝蓋骨の高位、③膝前面の陥凹などがあげられる。

 

 

 

 

 

問題120 3歳の男児。歩容異常を祖母に指摘されたため来所した。両下腿の内反変形がみられた。医科で画像検査を行い、両側ともにFTAは186度、脛骨近位端内側に嘴様変形がみられた。外傷の既往や明らかな感染徴候はない。
 考えられるのはどれか。

1.ブラント(Blount)病
2.マルファン(Marfan)症候群
3.ペレグリーニ・スティーダ(Pellegrini-Stieda)病
4.シンディングラーセン・ヨハンソン(SindingLarsen-Johansson)病

解答

解説

本症例のポイント

・3歳の男児(歩容異常)。
・両下腿の内反変形がみられた。
・両側ともにFTAは186度(O脚を示唆)、脛骨近位端内側に嘴様変形
・外傷の既往や明らかな感染徴候はない
→ほかの選択肢が消去される理由もあげられるようにしよう。

1.〇 正しい。ブラント(Blount)病が考えられる。
・ブラント病とは、脛骨近位端内側の成長板(骨端線)の成長障害により、脛骨が進行性に内反変形(O脚)する疾患である。放置すると40%程が手術を必要となる。歩行開始後にO脚が進行したり、左右の脚の長さが異なったりすることで気づかれることが多い。

2.× マルファン(Marfan)症候群とは、全身の結合組織の働きが体質的に変化しているために、骨格の症状(高身長・細く長い指・背骨が曲がる・胸の変形など)、眼の症状(水晶体(レンズ)がずれる・強い近視など)、心臓血管の症状(動脈がこぶのようにふくらみ、裂けるなど)などを起こす病気である。つまり、全身の結合組織がもろくなるため、大動脈癌や大動脈解離を生じやすい。

3.× ペレグリーニ・スティーダ(Pellegrini-Stieda)病とは、膝関節の内側側副靱帯の付着部(大腿骨内側上顆)に、外傷後に異所性骨化(靱帯や腱が骨化する現象)が生じる病態ある。これは、膝関節の内側への直接的な外力や内側側副靱帯の損傷後に発生することが多い

4.× シンディングラーセン・ヨハンソン(SindingLarsen-Johansson)病とは、膝蓋骨下端の成長軟骨に炎症や損傷が生じる成長期のオーバーユース症候群である。主に思春期前半のスポーツ活動が盛んな時期に発生し、膝蓋骨下端(膝蓋腱の付着部)の疼痛や圧痛を特徴とする。

 

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