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問題101 ベーカー(Baker)嚢腫が発生するのはどれか。
1.膝蓋前皮下包
2.脛骨粗面皮下包
3.側副靭帯滑液包
4.腓腹筋半膜様筋包
解答4
解説
ベーカー(Baker)嚢腫とは、膝の裏にある関節液(滑液)という液体を含んだ滑液包が炎症を起こし膨らむことである。過剰な圧や摩擦が加わると炎症が起こる。症状としては、膝裏の腫れ、違和感、不快感などで、痛みは強くなりにくい特徴がある。
1.× 膝蓋前皮下包とは、膝蓋骨の前面、皮膚と膝蓋骨の間にある滑液包である。この滑液包が炎症を起こすと「膝蓋前滑液包炎」となる。
2.× 脛骨粗面皮下包とは、膝蓋靱帯が脛骨に付着する脛骨粗面と皮膚の間にある滑液包である。この部位が炎症を起こすと「脛骨粗面滑液包炎」となる。
3.× 側副靭帯滑液包は、は、膝関節の内側(内側側副靱帯滑液包)や外側(外側側副靱帯滑液包)に存在する滑液包である。
4.〇 正しい。腓腹筋半膜様筋包は、ベーカー(Baker)囊腫が発生する。ベーカー囊腫は、膝窩部(膝の裏側)にある腓腹筋の内側頭と半膜様筋の間に存在する滑液包(腓腹筋半膜様筋包)と、膝関節の関節腔が交通(つながっている)している場合に発生する。膝関節内に過剰な関節液が貯留すると、この脆弱な交通部を通じて滑液包に流れ込み、嚢胞を形成する。
囊腫とは、体内にできる液体や半固体の物質がたまった袋状の構造物である。(※読み:のうしゅ)
問題102 傷病と部位の組合せで正しいのはどれか。
1.第1ケーラー(Köhler)病:第2中足骨骨頭
2.モートン(Morton)病:足の舟状骨
3.二分靱帯損傷:踵立方関節背側
4.有痛性外脛骨:脛骨下端前縁
解答3
解説
1.× 第1ケーラー(Köhler)病は、「第2中足骨骨頭」ではなく足の舟状骨である。
・第1ケーラー病とは、足の中央分にある舟状骨が変形し、痛みを引き起こす疾患である。原因は、繰り返しの圧迫が与えられたことで血液の循環障害が生じ、舟状骨が壊死してしまうことである。
・第2ケーラー病とは、足の第2中足骨頭(足の人差し指の付け根の関節部周辺)におこる骨端症である。中足骨頭に繰り返される圧迫力が働き、骨頭部で壊死を起こした状態である。
2.× モートン(Morton)病は、「足の舟状骨」ではなく足趾へと向かう神経である。
・モートン病とは、足趾へと向かう神経が、足趾の付け根の部位で圧迫を受けることで生じる神経障害である。 神経が圧迫される原因には、ハイヒールなどの爪先が細くヒールが高い靴を履くことや、外反母趾など骨の形態異常がある。
3.〇 正しい。二分靱帯損傷:踵立方関節背側
・二分靭帯(Y靭帯)は、縦足弓の外側部を支持する。他にも外側の踵骨・立方骨・舟状骨を硬く締結する。つま先立ちやジャンプの着地で内反捻挫をした際に損傷を受ける。
4.× 有痛性外脛骨は、「脛骨下端前縁」ではなく足の舟状骨の内側である。
外脛骨とは、足の舟状骨の内側に位置する骨をいう。正常な人の15%程度にみられる足の内側にある余分な骨である。有痛性外脛骨とは、その外脛骨が痛みを起こしてしまった状態をいう。スポーツ活動や捻挫などの外傷をきっかけに痛みを起こすことがあり、小児、特に女性での発症が多く、成長期を終えると痛みが治まることが多い。主な症状として、①疼痛(圧痛、運動時痛)、②腫脹(うちくるぶしの下方の腫れ)があげられる。他にも、炎症が強い場合には、熱感も引き起こすことがある。治療として、①薬物療法(鎮痛)、②運動療法、③物理療法(温熱や電気刺激による鎮痛)、④装具療法などがあげられる。
問題103 82歲の女性。昨晚、自宅布団の上で尻もちをついた。起床時から背部中央に痛みがあるため来所した。着座の度に痛みが強くなり、同部に叩打痛がみられる。
考えられるのはどれか。2つ選べ。
1.圧迫骨折
2.破裂骨折
3.横突起骨折
4.棘突起骨折
解答1・2
解説
・82歲の女性(起床時から背部中央に痛み)。
・昨晚、自宅布団の上で尻もちをついた。
・着座の度に痛みが強くなり、同部に叩打痛がみられる。
→ほかの選択肢が消去される理由もあげられるようにしよう。
→本症例は、圧迫骨折が疑われる。圧迫骨折とは、背骨の椎体と言う部分が潰されるように骨折した状態である。尻もちなどの外力による受傷が多く見られる。女性の高齢者に多く見られる代表的な骨折である。
1.〇 正しい。圧迫骨折が考えられる。なぜなら、高齢の女性、特に閉経後の女性は骨粗鬆症を患っていることが多く、脊椎の骨がもろくなっているため。したがって、尻もちのような比較的軽微な外力でも、脊椎の椎体が潰れるように圧迫骨折を起こしやすい。
→脆弱性骨折とは、骨量の減少や骨質の劣化によって骨強度が低下し、軽微な外力によって発生した非外傷性骨折である。 軽微な外力とは、立った姿勢からの転倒かそれ以下の外力をさす。転んで手をついた、重いものを持ち上げた、尻もちをついた、など健康な方では折れないような外力による骨折のことをさす。【高齢者の4大骨折】骨粗鬆症は閉経後の女性に多く、骨の変形や痛み、易骨折性の原因となる。高齢者に多い骨折は①大腿骨頸部骨折、②脊椎圧迫骨折、③橈骨遠位端骨折、④上腕骨頸部骨折などがあり、これらは「高齢者の4大骨折」と呼ばれている。
2.〇 正しい。破裂骨折が考えられる。なぜなら、圧迫骨折よりも強い外力で発生することが多いが、骨粗鬆症が進んだ高齢者であれば、尻もちのような外力でも発生しうる可能性があるため。
・椎体破裂骨折とは、椎体の前方の壁だけではなく、後方の壁も割れる骨折で、脊髄症状(麻痺、シビレ、脚の痛み)を生じる。これらは胸椎下部~腰椎上部に多く発生する。
3.× 横突起骨折より優先されるものが他にある。なぜなら、着座との関連性が低いため。
・腰椎横突起骨折とは、交通事故で、追突されて大きな衝撃を受けた場合やバイク・自転車から転落した場合などに発症することが多い傷病である。スポーツやスキー、スノボなどをしているときに腰椎横突起骨折をするケースもある。症状は、主に腰痛や圧痛、動作痛(大腰筋や腰方形筋)である。ただ、末梢神経を傷めることがないため、足の麻痺やしびれ感などの神経症状は伴わない。治療方法としては、腰を安静にして、コルセットや腰部固定帯を使って骨折した部位を固定する。
4.× 棘突起骨折より優先されるものが他にある。なぜなら、着座との関連性が低いため。
・棘突起とは、椎体の背中側に突き出した突起のことである。頚椎棘突起骨折とは、自家筋力によるものが多く、下部頭椎:特に第7頸椎に好発する。症状として、頸部の軽度疼痛、運動制限、棘突起の圧痛、叩打痛などがみられる。スコップ作業者などでは疲労骨折として発生する。高度な骨片転位は少なく、脊髄損傷を合併することはない。
問題104 72歳の女性。5日前にベッドから転落し、床で右肩を強打した。右肩外上部の腫脹と皮下出血斑に気付き来所した。右肩関節の挙上は疼痛のため困難である。後日、医科で撮影した単純エックス線写真を下に示す。
正しいのはどれか。
1.頸静脈が怒張する。
2.腋窩神経麻痺を合併する。
3.保存療法で予後は良好である。
4.烏口鎖骨靱帯の断裂を考慮する。
解答4
解説
・72歳の女性。
・5日前にベッドから転落し、床で右肩を強打した。
・右肩外上部の腫脹と皮下出血斑に気付き来所した。
・右肩関節の挙上は疼痛のため困難である。
・単純エックス線:肩鎖関節脱臼が疑われる。
→ほかの選択肢が消去される理由もあげられるようにしよう。
肩鎖関節脱臼(肩鎖関節の損傷)には、トッシー分類(Tossy分類)がある。3型に分けられ、Grade1:靱帯の軽度の損傷のみで捻挫と同様、レントゲンで明らかな関節のずれはない。触診では肩鎖関節部の突出はなく軽度の圧痛がある。
Grade2:肩鎖靱帯の損傷があり、レントゲンで亜脱臼位を呈する。触診で肩鎖関節の圧痛と軽度の動揺性がある。
Grade3:肩鎖靱帯損傷に烏口鎖骨靱帯の損傷が加わり、レントゲンで完全脱臼位を呈する。触診で肩鎖関節部に一致した突出があり、同部を押すとピアノの鍵盤の様な浮き沈みを認める。
1.× 頸静脈が怒張するのは、心不全や心タンポナーデなどの中心静脈圧上昇を示す所見である。
・心タンポナーデとは、心臓を包んでいる2層の膜(心膜)の間に体液などの血液が貯留し、心臓が圧迫される。その結果、血液を送り出す心臓のポンプ機能が阻害され、 典型的にはふらつきや息切れを感じ、失神することもある。心膜腔に大量の血液が貯留し、著明な心室拡張障害から静脈還流障害が生じ、血圧低下およびショック状態に至る病態である。開心術後の合併症として生じ得る。
2.× 腋窩神経麻痺を合併は、肩関節脱臼で合併しやすい。小円筋の支配神経であるため、肩関節外旋不全は生じるが、図の楕円部に圧痛と筋萎縮は、小円筋から離れているため、腋窩神経損傷は考えにくい。
3.× 保存療法で予後は、「良好」ではなく不良である。なぜなら、完全な靱帯断裂を伴い、関節の安定性が失われているため。したがって、手術療法を要することも多い。
4.〇 正しい。烏口鎖骨靱帯の断裂を考慮する。なぜなら、レントゲン写真から、脱臼のずれが重度と判断できるため。ピアノキー症状は、肩鎖関節脱臼では肩鎖関節のズレにより、鎖骨の外側の端が皮膚を持ち上げて階段状に飛び出して見えることである。上方に持ち上がった鎖骨の端を上から押すとピアノの鍵盤のように上下に動くこと。肩鎖関節の安定性が損なわれていることを示している。
問題105 45歳の女性。1年前のコーレス(Colles)骨折によって、橈骨が軽度短縮転位している。1か月前からドアノブを回す際に違和感を手関節に覚え、1週前から手関節尺側に腫脹と疼痛が出現した。
考えられるのはどれか。
1.橈尺骨癒合
2.長母指伸筋腱断裂
3.尺骨突き上げ症候群
4.反射性交感神経性ジストロフィー
解答3
解説
・45歳の女性。
・1年前のコーレス骨折:橈骨が軽度短縮転位。
・1か月前:ドアノブを回す際に違和感を手関節に覚える。
・1週前:手関節尺側に腫脹と疼痛が出現。
→コーレス骨折(橈骨遠位端部伸展型骨折)は、橈骨遠位端骨折の1つである。 橈骨が手関節に近い部分で骨折し、遠位骨片が手背方向へ転位する特徴をもつ。合併症には、尺骨突き上げ症候群、手根管症候群(正中神経障害)、長母指伸筋腱断裂、複合性局所疼痛症候群 (CRPS)などがある。
1.× 橈尺骨癒合とは、前腕の橈骨と尺骨が骨性または線維性に結合してしまう状態である。前腕の回内・回外運動が制限される。通常、先天性であり原因は不明である。
2.× 長母指伸筋腱断裂より優先されるものが他にある。なぜなら、本症例の主訴は「手関節尺側に腫脹と疼痛」であるため。長母指伸筋腱断裂は、コーレス骨折の合併症のひとつであるが、母指の動きや橈側に症状が出現する。
3.〇 正しい。尺骨突き上げ症候群が考えられる。なぜなら、ドアノブを回す動作(前腕の回内・回外運動)や、手関節を尺側偏位させる動作は、尺骨頭と手根骨の接触を増加させ、痛みや違和感を引き起こすため。
・尺骨突き上げ症候群とは、手首の小指側にある尺骨が橈骨より長くなり、手を使うとその突き出た部分が手首の軟骨や靱帯を圧迫して痛みを引き起こす状態である。
4.× 反射性交感神経性ジストロフィーより優先されるものが他にある。なぜなら、本症例の主訴は「手関節尺側に腫脹と疼痛」であるため。反射性交感神経性ジストロフィーは、骨折などの外傷後に発生する慢性の疼痛症候群で、局所の自律神経系の異常を伴う。典型的な症状は、激しい痛み、腫脹、皮膚温の変化(熱感または冷感)、皮膚色の変化(赤色または紫色)、発汗異常、関節拘縮、毛の異常成長などである。
複合性局所疼痛症候群(CRPS)は、軟部組織もしくは骨損傷後(Ⅰ型:反射性交感神経性ジストロフィー)または神経損傷後(Ⅱ型:カウザルギー)に発生して、当初の組織損傷から予測されるより重度で長期間持続する、慢性の神経障害性疼痛である。その他の症状として、自律神経性の変化(例:発汗、血管運動異常)、運動機能の変化(例:筋力低下、ジストニア)、萎縮性の変化(例:皮膚または骨萎縮、脱毛、関節拘縮)などがみられる。疼痛をコントロールしながら、左手(疼痛側)の使用機会を増やす介入が必要である。