第33回(R7年)柔道整復師国家試験 解説【午後26~30】

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問題26 Japan Coma Scaleで10と記載される状態はどれか。

1.見当識障害がある。
2.普通の呼びかけで容易に開眼する。
3.自分の名前、生年月日が言えない。
4.大きな声または体の揺さぶりで開眼する。

解答

解説

(※図引用:「意識レベル(JCS:Japan Coma Scale)」堺市HPより)

1.× 見当識障害がある。
これは、JCSで1~2に該当する。

2.〇 正しい。普通の呼びかけで容易に開眼する
これは、JCSで10に該当する。

3.× 自分の名前、生年月日が言えない。
これは、JCSで3に該当する。

4.× 大きな声または体の揺さぶりで開眼する。
これは、JCSで20に該当する。

 

 

 

 

 

問題27 神経麻痺の写真を下に示す。
 障害されている神経はどれか。

1.腋窩神経
2.尺骨神経
3.正中神経
4.橈骨神経

解答

解説
1.× 腋窩神経とは、腕神経叢から出る上腕部に走行する末梢神経で、上肢の背側を走行し、上腕部で、停止する。後神経束から分岐する。上腕の上外側の感覚と、小円筋と三角筋の筋肉を支配する。腋窩神経麻痺は、肩関節周辺の骨折や脱臼、肩関節の打撲、局所の神経圧迫、不良肢位、手術侵襲などで伴いやすい。

2.× 尺骨神経とは、上腕の内側から前腕の内側を通る。小指側の感覚と手指・手首の運動を支配する。尺骨神経麻痺の症状として、Froment徴候陽性や鷲手がみられる。ちなみに、鷲手とは、尺骨神経麻痺により手内筋が萎縮し、とくに環指と小指の付け根の関節(MP関節、中手指骨関節)が過伸展する一方、指先の関節(DIP関節、遠位指節間関節)と中央の関節(PIP関節、近位指節間関節)が屈曲した状態である。

3.× 正中神経とは、腕神経叢を出たのち上腕骨に沿って走り、前腕では橈骨と尺骨の間を走り、手根管をくぐりぬけて、主に手の親指側に分布する。支配する感覚の領域は手のひら側の親指から薬指の半分とその下の手のひら、手背側では親指から薬指の半分の指先である。正中神経麻痺では、母指球筋が萎縮し、母指の掌側外転麻痺が生じ、猿手となる。tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる。ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。perfect O(パーフェクト Oテスト)とは、親指と人差し指の先端をくっつけて丸形を作る検査である。

4.〇 正しい。橈骨神経は、写真で障害されている神経である。なぜなら、下垂手であるため。手関節・手指の伸筋群と、長母指外転筋・短母指伸筋の麻痺により、手関節背屈、示指から小指のMP関節伸展、母指伸展・外転が困難となる。

 

 

 

 

 

問題28 腸管にガスが貯留しているときの打診音はどれか。

1.鼓音
2.清音
3.濁音
4.摩擦音

解答

解説
1.〇 正しい。鼓音は、腸管にガスが貯留しているときの打診音である。
・鼓音とは、ガスが充満しているとき、例えば、腸管内に大量のガスがあるときに聴こえる。気胸および肺に空洞のある患者の一部に胸部打診をしたとき聞こえる変化した鼓のような音調である。

2.× 清音とは、通常、空気を含む部位(例えば、肺)を打診したときに聞こえる。音の振幅が大きく、含気が多いことを意味する。正常な場合、打診によって聴かれる。

3.× 濁音とは、打診で聴取される小さく濁った音である。音の振幅が小さく、含気が少ないことを意味する。肝臓、心臓などの実質性臓器において聴取される音である。腹水が貯留しているとき、臥位で側腹部を打診すると、液体が存在するため濁音が聴こえる。

4.× 摩擦音は、「打診音」ではなく聴診で聞かれる音である。
・胸膜摩擦音とは、胸膜炎で胸膜面が粗くなったときに聴取できる靴底の軋む音、雪を握るような音(握雪音、ギュギュ) のことである。

 

 

 

 

 

問題29 体温が最も高い部位はどれか。

1.腋窩
2.口腔内
3.前額部
4.直腸内

解答

解説

深部体温とは?

深部体温とは、環境の変動によっても温度が変化しない生態の核心部(中心部)の温度である。外殻温度と異なり体温調節により一定に調節されている。実際に、核心温度を常時測定するのは不可能であるが、最も核心温度に近いのは、直腸の温度であり37℃を超える。直腸温と腋窩温は1℃近くの差がある。

1.3.× 腋窩/前額部より体温が高い部位が他にある。なぜなら、外殻温度であるため。外殻温度は、外気の影響を受けやすい特徴を持つ。

2.× 口腔内より体温が高い部位が他にある。なぜなら、口腔内の開閉、呼吸の影響を受けるため。

4.〇 正しい。直腸内は、体温が最も高い部位である。なぜなら、直腸は体の深部に位置し、血管が豊富で外部環境からの影響を受けにくいため。

 

 

 

 

 

問題30 アキレス腱反射が減弱するのはどれか。

1.脳梗塞
2.多発性硬化症
3.変形性頸椎症
4.ギラン・バレー(Guillain-Barré)症候群

解答

解説

錐体路とは

錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。障害されることで片麻痺などの症状をきたす。

【錐体路徴候】
・深部腱反射亢進
・病的反射(+)
・表在反射(消失)
・痙性麻痺

【錐体外路症状】
・深部腱反射正常
・表在反射(+)
・病的反射(-)
・不随意運動の出現

1.× 脳梗塞は、アキレス腱反射が亢進することが多い。なぜなら、錐体路が障害されるため。

2.× 多発性硬化症は、アキレス腱反射が亢進することが多い。なぜなら、錐体路が障害されるため。多発性硬化症は、中枢神経系の慢性炎症性脱髄疾患であり、時間的・空間的に病変が多発するのが特徴である。病変部位によって症状は様々であるが、視覚障害(視神経炎)を合併することが多く、寛解・増悪を繰り返す。視力障害、複視、小脳失調、四肢の麻痺(単麻痺、対麻痺、片麻痺)、感覚障害、膀胱直腸障害、歩行障害、有痛性強直性痙攣等であり、病変部位によって異なる。寛解期には易疲労性に注意し、疲労しない程度の強度及び頻度で、筋力維持及び強化を行う。脱髄部位は視神経(眼症状や動眼神経麻痺)の他にも、脊髄、脳幹、大脳、小脳の順にみられる。有痛性強直性痙攣(有痛性けいれん)やレルミット徴候(頚部前屈時に背部から四肢にかけて放散する電撃痛)、ユートホフ現象(体温上昇によって症状悪化)などが特徴である。若年成人を侵し再発寛解を繰り返して経過が長期に渡る。視神経や脊髄、小脳に比較的強い障害 が残り ADL が著しく低下する症例が少なからず存在する長期的な経過をたどるためリハビリテーションが重要な意義を持つ(参考:「13 多発性硬化症/視神経脊髄炎」厚生労働省様HPより)。

3.× 変形性頸椎症は、アキレス腱反射が亢進することが多い。なぜなら、錐体路が障害されるため。変形性頸椎症とは、頸椎の変形により神経根や脊髄が圧迫される疾患である。原因は、加齢による椎間板の変性であり、40歳以上で発症することが多い。主な症状としては、頭頚部の可動域の悪化、首や肩の痛み、神経圧迫による腕や足への痛み・痺れや筋力低下などである。

4.〇 正しい。ギラン・バレー(Guillain-Barré)症候群は、アキレス腱反射が減弱する。なぜなら、反射弓の遠心路(運動神経)が障害されるため。

ギラン・バレー症候群とは?

ギラン・バレー症候群とは、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)。

 

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