第22回(H26年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前66~70】

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66.全身性硬化症(強皮症)でみられるのはどれか。

1.出血傾向
2.ブドウ膜炎
3.肺線維症
4.リンパ節腫脹

解答

解説
1.× 出血傾向は、血小板減少や凝固異常がある疾患(例:血小板減少性紫斑病、肝硬変)で見られる。

2.× ブドウ膜炎とは、ぶどう膜に炎症をきたしている状態を指す。ブドウ膜炎は、ベーチェット(Behcet)病で見られる炎症である。Behçet病(ベーチェット病)は、自己免疫疾患である。四徴として、①口腔粘膜のアフタ性潰瘍、②ぶどう膜炎、③皮膚症状(結節性紅斑や皮下硬結)、④外陰部潰瘍である。皮膚症状として、下腿に後発する。発赤や皮下結節を伴う結節性紅斑、圧痛を伴う皮下の遊走性血栓性静脈炎、顔面・頚部・背部などにみられる毛嚢炎様皮疹または痤瘡様皮疹などが出現する。

3.〇 正しい。肺線維症は、全身性硬化症(強皮症)でみられる。強皮症とは、全身性の結合組織病変で、手指より始まる皮膚の硬化病変に加え、肺線維症などの諸臓器の病変を伴う。病因は不明であり、中年女性に多い。症状は、仮面様顔貌、色素沈着、ソーセージ様手指、Raynaud現象(レイノー現象)、嚥下障害、間質性肺炎、関節炎、腎クリーゼなどがある。

4.× リンパ節腫脹とは、1つまたは複数のリンパ節が増大して触知できるようになった状態である。ウィルス、細菌、結核菌、梅毒、トキソプラズマなどによって起こる。体表から触知できるリンパ節は、①頭頸部、②腋窩、③肘関節上部、③腹部、④鼠径部(大腿部)、⑤膝窩部である。リンパ節は皮下に存在するため、皮膚を動かしても皮膚と一緒に動くことはないため、示指から環指の指腹を皮膚に軽く密着させ、皮膚を動かすことにより触診する。

 

 

 

 

 

67.アトピー性皮膚炎について誤っているのはどれか。

1.Ⅱ型アレルギーである。
2.季節により症状が変動しやすい。
3.気管支喘息と合併しやすい。
4.家系内発症がみられやすい。

解答

解説

アトピー性皮膚炎とは?

アトピー性皮膚炎とは、皮膚のバリア機能が低下し、かゆみを伴う湿疹がよくなったり悪くなったりを繰り返す病気のことである。子どもの頃に発症することが多く、一般的には成長とともに症状は改善していきますが、一部の患者は成人になってからもかゆみや湿疹などの症状が続く。原因は不明、アレルギーを起こしやすい体質や遺伝などが発症に関与していると考えられている。

1.× 「Ⅱ型」ではなくⅠ型アレルギーである。Ⅰ型アレルギーとは、肥満細胞や好塩基球からの化学伝達物質の放出によって起こる即時型アレルギーで、アレルゲンに接触した数分後に、皮膚・粘膜症状が出現する。まれにアナフィラキシーショックとなり重篤化(血圧低下、呼吸困難、意識障害を伴う)することがある。他の1型アレルギーには、花粉症、喘息、食物アレルギーなどがある。

2.〇 正しい。季節により症状が変動しやすい。なぜなら、環境因子(湿度、汗、花粉)によって変動しやすいため。例えば、冬季は乾燥によって悪化しやすく、夏季は汗や湿度が影響する。

3.〇 正しい。気管支喘息と合併しやすい。なぜなら、アトピー性皮膚炎は、アトピー素因を持つ人に発症しやすく、気管支喘息とアトピー性皮膚炎は同じ素因であるため。ちなみに、気管支喘息とは、主に気管支に炎症が起きている状態である。炎症により気管支が狭くなったり(狭窄)、刺激に対して過敏な反応を示したりする。喘息は乳幼児期に発症することが多く、全体の60~70%が2~3歳までに発症する。子どもの喘息の多くは思春期の頃には症状がよくなっていきますが、そのうちの約30%は大人になっても続くといわれている。

4.〇 正しい。家系内発症がみられやすい。なぜなら、アトピー性皮膚炎は、遺伝的素因が関与することが多く、親がアトピー素因を持つ場合、子供にも発症するリスクが高まるため。ちなみに、アトピー素因とは、気管支ぜんそく、アレルギー性鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎のうちいずれか、または複数を自分自身や家族がもっていることである。

(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

68.関節疾患について正しいのはどれか。

1.関節拘縮の原因は関節包内の骨・軟骨にある。
2.変形性関節症は退行変性である。
3.関節リウマチの原因は細菌である。
4.関節強直の原因は関節包外の軟部組織にある。

解答

解説
1.× 関節拘縮の原因は、「関節包内の骨・軟骨」だけとは限らない。関節拘縮は、関節の動きが制限されている状態である。主な原因は、関節包や靱帯の短縮・硬化、筋肉の萎縮、皮膚の癒着などの軟部組織の変化である。主に、長期間の不動により、線維化することで起こる。

2.〇 正しい。変形性関節症は退行変性である。退行変性とは、新陳代謝の低下により、体の細胞、組織、構造の機能が少しずつ衰えて戻らない、 いわゆる老化現象のことである。ちなみに、変形性関節症とは、軟骨下骨、関節裂隙、関節周囲構造の変化を伴う関節軟骨の異常に関連した疾患である。 手関節症、膝関節症、股関節症など、部位によって臨床症状が異なるが、一般的な症状として、圧痛、筋力低下、骨棘と呼ばれる突起があり、骨に当たってすれることなどがあげられる。長年の機械的負荷や加齢により関節軟骨がすり減り、炎症や痛み、関節の変形が引き起こされる。

3.× 関節リウマチの原因は、「細菌」ではなく免疫系である。関節リウマチは、自己免疫疾患であり、免疫系が異常に働き、自分自身の関節滑膜を攻撃することで炎症が生じる。関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。

4.× 関節強直の原因は、「関節包外」ではなく関節内の軟部組織ではなくにある。ちなみに、関節強直とは、徒手的には改善困難な関節可動域制限の状態で、関節が破壊されて変形を起こし、機能しなくなった状態である。原因は先天性、骨折による関節面の破壊や感染、後天性があり、強直を有する病名には顎関節強直症、強直性脊椎炎、関節リウマチなどがある。

 

 

 

 

 

69.疾患と徒手検査との組合せで正しいのはどれか。

1.上腕骨外側上顆炎:チェアテスト
2.胸郭出口症候群:スピードテスト
3.手根管症候群:ライトテスト
4.腱板炎:ファレンテスト

解答

解説
1.〇 正しい。上腕骨外側上顆炎:チェアテスト
Chairテストの陽性は、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)を疑う。方法は、患者さんに肘関節伸展位のまま手で椅子を持ち上げてもらう。

2.× スピードテストは、「胸郭出口症候群」ではなく上腕二頭筋長頭腱の炎症である。
・Speedテスト(スピードテスト)は、上腕二頭筋長頭腱の炎症の有無をみる。結節間溝部に痛みがあれば陽性である。【方法】被検者:座位で、上肢を下垂・肩関節外旋位から、上肢を前方挙上(肩関節屈曲)してもらう。検者:肩部と前腕遠位部を把持し、上肢に抵抗をかける。
・胸郭出口症候群は、胸郭出口付近における神経と動静脈の圧迫症状を総称したものである。症状として、上肢のしびれ、脱力感、冷感などが出現する。胸郭出口は、鎖骨、第1肋骨、前・中斜角筋で構成される。原因として、①前斜角筋と中斜角筋の間で圧迫される斜角筋症候群、②鎖骨と第一肋骨の間で圧迫される肋鎖症候群、③小胸筋を通過するときに圧迫される小胸筋症候群、④頭肋で圧迫される頸肋症候群などがある。

3.× ライトテストは、「手根管症候群」ではなく胸郭出口症候群である。
・ライトテストは、胸郭出口症候群の診断に用いられる検査である。方法は、座位で両側上肢を挙上(肩関節を外転90°、外旋90°、肘関節90°屈曲)させると、橈骨動脈の脈拍が減弱する。
・手根管症候群は、正中神経の圧迫によって手指のしびれや感覚低下などの神経障害が生じる。手根管(手関節付近の正中神経)を4~6回殴打すると、支配領域である母指から環指橈側および手背の一部にチクチク感や蟻走感が生じる(Tinel徴候陽性)。Tinel徴候のほか、ダルカン徴候(手根管部を指で圧迫するとしびれ感が増悪する)やファーレン徴候(Phalen徴候:手首を曲げて症状の再現性をみる)も陽性となる場合が多い。

4.× ファレンテストは、「腱板炎」ではなく手根管症候群である。
・Phalenテスト(ファレンテスト)は、手根管症候群の診断に用いられ、正中神経障害によって陽性となる。両手関節を最大掌屈させて手の甲を合わせ、その状態を1分間維持したときに正中神経領域(母指~環指橈側)のしびれや痛みが出れば陽性である。
・腱板炎(肩の腱板損傷や炎症)では、ペインフルアークテストやドロップアームテストが診断に用いられる。

 

 

 

 

 

70.緑内障でみられるのはどれか。

1.結膜の炎症
2.眼球の陥凹
3.水晶体の混濁
4.視野の障害

解答

解説

(※図:「看護師イラスト集」看護roo!様HPより)

1.× 結膜の炎症は、結膜炎や外眼部の感染症で見られる症状である。

2.× 眼球の陥凹は、外傷や強膜萎縮など眼球内容が減少した場合に起こる。

3.× 水晶体の混濁は、白内障の典型的な症状である。白内障とは、水晶体が年齢とともに白く濁って視力が低下する病気である。主な原因は加齢である。他にも、糖尿病や妊娠初期の風疹ウイルス感染などにより生じる。

4.〇 正しい。視野の障害は、緑内障でみられる。緑内障とは、眼圧の上昇や視神経の脆弱性などにより視神経が障害され、視野障害をきたす疾患である。一般的な症状として、①見える範囲が狭くなる、②一部が見えにくくなる、③見えない部分が出現するなどが生じる。一度悪くなった視界・視野の症状は改善されることはないため、病気の種類や進行度合いなどによって薬物療法、レーザー治療、手術などが検討される。

 

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