第22回(H26年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前76~80】

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76.外反母趾について正しいのはどれか。

1.凹足に発症することが多い。
2.足の内在筋の弱化は認めない。
3.第1中足趾節関節は上方に突出する。
4.バニオンは滑液包の腫脹である。

解答

解説

外反母趾とは?

外反母趾とは、足の親指(母趾)が小指側に曲がり、「く」の字のように変形することである。

1.× 「凹足」ではなく扁平足に発症することが多い。扁平足とは、足関節外反位に加えにアーチの低下などアライメント不良を起こした状態である。したがって、外反扁平足ともよぶ。ちなみに、凹足変形とは、足底の縦アーチが高い状態の変形である。先天性の内反足などで起こやすい。

2.× 足の内在筋の弱化は認める。なぜなら、内在筋の弱化により、第1中足骨が内側に引っ張られるため。特に母趾外転筋の弱化が認められる。

3.× 第1中足趾節関節は、「上方」ではなく内側に突出する。この突出が靴との摩擦を生み、炎症や痛みを引き起こす。

4.〇 正しい。バニオンは滑液包の腫脹である。バニオンとは、第1中足骨頭の内側部分の隆起である。原因は、母趾の外側への屈曲(外反母趾)など、第1中足骨または母趾の位置の変化であることが多い。二次性変形性関節症および骨棘形成がよくみられる。 症状としては、疼痛および発赤、関節内側の滑液包炎、軽度の滑膜炎などがある。

 

 

 

 

 

77.「26歳の男性。全身倦怠感を主訴に来院した。視診上、黄疸を認め、ウイルスマーカー検査ではIgM-HA抗体陽性、HBs抗原陰性、HCV-RNA陰性であった。」
 感染の原因として最も考えられるのはどれか。

1.ハンバーガー
2.いずし
3.生ガキ
4.鶏生肉

解答

解説

本症例のポイント

・26歳の男性(主訴:全身倦怠感)。
・黄疸あり。
・ウイルスマーカー検査:IgM-HA抗体陽性、HBs抗原陰性、HCV-RNA陰性。
→本症例は、A型肝炎が疑われる。IgM-HA抗体は、A型肝炎ウイルス(HAV)に対するIgM抗体を測定する検査である。
→A型肝炎とは、A型肝炎ウイルス(HAV)感染による疾患である。通常、感染した人の便で汚染されたものを摂取したときに感染する。人の便が流れている海で育った貝類の摂取で感染することもある。初期症状は倦怠感や発熱、頭痛、筋肉痛等で、一過性の急性肝炎が主症状であり、治癒後に強い免疫が残る。治療は、通常、安静を含めた対症療法が中心となる。

1.× ハンバーガーに感染する感染症は、腸管出血性大腸菌〈O157〉である。腸管出血性大腸菌とは、ベロ毒素 、または志賀毒素と呼ばれている毒素を産生することで病原性を持った大腸菌である「病原性大腸菌」の一種である。飲食物を介した経口感染であり、菌に汚染された飲食物を摂取したり、患者の糞便に含まれる大腸菌が直接または間接的に口から入ることによって感染する。症状は、無症候性から軽度の下痢、激しい腹痛、頻回の水様便、さらに、著しい血便とともに重篤な合併症を起こし死に至るものまで様々である。

2.× いずし(飯寿し)に感染する感染症は、ボツリヌス菌による食中毒である。これは、製造時に圧迫することで中の空気がなくなり、ボツリヌス菌の増殖に適した環境になるためである。ちなみに、いずし(飯寿し)とは、魚介類と野菜、米を酢や麹で漬け込んで発酵させたなれずしの一種で、北海道や新潟県などの郷土料理である。

3.〇 正しい。生ガキは、感染の原因として最も考えられる。本症例は、IgM-HA抗体陽性であることからA型肝炎が疑われる。A型肝炎とは、A型肝炎ウイルス(HAV)感染による疾患である。通常、感染した人の便で汚染されたものを摂取したときに感染する。人の便が流れている海で育った貝類の摂取で感染することもある。初期症状は倦怠感や発熱、頭痛、筋肉痛等で、一過性の急性肝炎が主症状であり、治癒後に強い免疫が残る。治療は、通常、安静を含めた対症療法が中心となる。

4.× 鶏生肉に感染する感染症は、カンピロバクターである。カンピロバクターとは、生肉・生乳が主な原因食品であり、鶏、牛、野鳥など多くの動物が保有する細菌である。潜伏期間は、2~7日である。症状は、腹痛を伴う下痢、発熱などである。

B型肝炎ウイルス検査について

・HBs抗原が「陰性」の場合:B型肝炎ウイルスに感染していない。自覚症状などがあれば、再度検査を促す。

・HBs抗原が「陽性」の場合:B型肝炎ウイルスに感染している。医療機関の受診を強く勧める。HBs抗原が陽性となった場合には、医療機関において、現在の感染状態を調べるため、さらに詳しい検査を実施する。

【さらに詳しい検査項目】
①HBs抗体:陽性であれば過去に感染し、その後、治癒やしたことを示す。HBVワクチンを接種した場合にも陽性となる。
②HBc抗体:陽性であればHBVに感染したことを示す。(HBVワクチン接種の場合は陽性にはならない。)
③HBc-IgM抗体:最近HBVに感染したことを示す。
④HBe抗原:陽性であれば一般にHBVの増殖力が強いことを示す。
⑤HBe抗体:陽性であれば一般にHBVの増殖力が低下していることを示す。
⑥HBV-DNA:血液中のHBVのウイルス量を測定する。

 

 

 

 

 

78.「26歳の男性。全身倦怠感を主訴に来院した。視診上、黄疸を認め、ウイルスマーカー検査ではIgM-HA抗体陽性、HBs抗原陰性、HCV-RNA陰性であった。」
 本疾患で正しいのはどれか。

1.発熱を前駆症状として発症する。
2.インターフェロン療法が有効である。
3.慢性化する。
4.輸血によっても発症する。

解答

解説

本症例のポイント

・26歳の男性(主訴:全身倦怠感)。
・黄疸あり。
・ウイルスマーカー検査:IgM-HA抗体陽性、HBs抗原陰性、HCV-RNA陰性。
→本症例は、A型肝炎が疑われる。IgM-HA抗体は、A型肝炎ウイルス(HAV)に対するIgM抗体を測定する検査である。
→A型肝炎とは、A型肝炎ウイルス(HAV)感染による疾患である。通常、感染した人の便で汚染されたものを摂取したときに感染する。人の便が流れている海で育った貝類の摂取で感染することもある。初期症状は倦怠感や発熱、頭痛、筋肉痛等で、一過性の急性肝炎が主症状であり、治癒後に強い免疫が残る。治療は、通常、安静を含めた対症療法が中心となる。

1.〇 正しい。発熱を前駆症状として発症する。初期症状は倦怠感や発熱、頭痛、筋肉痛等である。

2.× インターフェロン療法が有効であるのは、「B型肝炎やC型肝炎」である。インターフェロンとは、動物体内で病原体や腫瘍細胞などの異物の侵入に反応して細胞が分泌する蛋白質のことである。ウイルス増殖の阻止や細胞増殖の抑制、免疫系および炎症の調節などの働きをするサイトカインの一種である。一般的に、A型急性肝炎の治療は、通常、安静を含めた対症療法が中心となる。

3.× 慢性化するのは、「B型肝炎やC型肝炎」である。A型肝炎の多くは急性肝炎として自然治癒する。
・B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することによって生じる肝臓の病気のことである。B型肝炎ウイルスは主に感染者の血液や体液を介して感染する。たとえば、注射針を感染者と共用した場合や、感染者と性行為をした場合などに感染することがある。しかし、B型肝炎にはワクチンがあるため、適切にワクチンを接種することによって感染を予防することができる。
・C型肝炎とは、主に感染者の血液や体液を介して感染する肝炎である。たとえば、注射針を感染者と共用した場合や、感染者と性行為をした場合などに感染することがある。潜伏期間は2週間から6か月間である。初期感染の後、感染者のおよそ80%は症状なく、感染者の急性症状では、発熱、易疲労性、食欲低下、吐き気、嘔吐、腹痛、暗色尿、灰白色便、関節痛、黄疸などがみられる。

4.× 輸血によっても発症するのは、「B型肝炎やC型肝炎」である。

 

 

 

 

 

79.「58歳の女性。数年前から左手の第4指の近位指節間関節の腫脹に気がついた。特に疼痛はなかったが、今年になって右手の第4指近位指節間関節の腫脹もみられるようになった。」
 本疾患について適切でないのはどれか。

1.女性に多い。
2.家族歴がある。
3.皮下結節がみられる。
4.骨棘形成がみられる。

解答3・4

解説

本症例のポイント

・58歳の女性。
・数年前:左手の第4指の近位指節間関節の腫脹。
・特に疼痛はなし
・今年:右手の第4指近位指節間関節の腫脹あり。
→本症例は、変形性手関節症のプシャール結節が疑われる。ヘバーデン結節/プシャール結節は、変形性関節症(OA)の症状である。手指の変形性関節症は大きく2種類あり、①DIP関節の変形(ヘバーデン結節)と、②PIP関節の変形(ブシャール結節)がある。これらの関節と親指の付け根がこわばり、ときに痛みを伴うことがある。一般的に手首・MP関節、手掌の関節は侵されない。治療としては、①関節可動域を改善する訓練を温水中で行う(運動中の痛みを軽減しできるだけ関節を柔軟にしておくため)、②安静にする、③間欠的に副子で固定して変形を予防する、④鎮痛薬や非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を用いて痛みや腫れを軽減するなどがあげられる。

1.〇 女性に多い。なぜなら、変形性関節症は特に中高年女性に多く、ホルモンの影響加齢による関節軟骨の変性が主な原因と考えられているため。

2.〇 家族歴がある。変形性関節症(特にヘバーデン結節やブシャール結節)は、遺伝的素因が関与するとされている。

3.× 皮下結節がみられるのは、「関節リウマチ」である。関節リウマチとは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。

4.× 骨棘形成がみられるのは、「股関節や膝関節などの変形性関節症」である。骨棘とは、骨同士の摩擦や変形によって発生する骨のトゲのことである。変形性膝関節症などでよく見られ、レントゲンによって判断が可能で、変形性関節症の進行度合いの確認指標となる。

 

 

 

 

 

80.「58歳の女性。数年前から左手の第4指の近位指節間関節の腫脹に気がついた。特に疼痛はなかったが、今年になって右手の第4指近位指節間関節の腫脹もみられるようになった。」
 本患者の治療で有効なのはどれか。

1.非ステロイド系抗炎症薬
2.カルシトニン
3.ビタミンD製剤
4.ビタミンB6

解答

解説

本症例のポイント

・58歳の女性。
・数年前:左手の第4指の近位指節間関節の腫脹。
・特に疼痛はなし
・今年:右手の第4指近位指節間関節の腫脹あり。
→本症例は、変形性手関節症のプシャール結節が疑われる。ヘバーデン結節/プシャール結節は、変形性関節症(OA)の症状である。手指の変形性関節症は大きく2種類あり、①DIP関節の変形(ヘバーデン結節)と、②PIP関節の変形(ブシャール結節)がある。これらの関節と親指の付け根がこわばり、ときに痛みを伴うことがある。一般的に手首・MP関節、手掌の関節は侵されない。治療としては、①関節可動域を改善する訓練を温水中で行う(運動中の痛みを軽減しできるだけ関節を柔軟にしておくため)、②安静にする、③間欠的に副子で固定して変形を予防する、④鎮痛薬や非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)を用いて痛みや腫れを軽減するなどがあげられる。

1.〇 正しい。非ステロイド系抗炎症薬は、本患者の治療で有効である。なぜなら、変形性関節症における治療の基本は、症状の軽減と機能改善であるため。非ステロイド性抗炎症薬には、炎症を抑え、腫脹や痛みを軽減する。

2.× カルシトニンとは、甲状腺から分泌され、骨吸収を抑制する働きを持つ。つまり、血中カルシウム濃度を低下させる働きをもつ。主に骨粗鬆症の治療に使用される。

3.× ビタミンD製剤とは、腸管からカルシウムの吸収を促進するとともに、骨代謝を調整する作用がある薬である。具体的には、骨吸収抑制作用により骨密度を改善(骨粗鬆症やくる病など)する効果がある。ちなみに、ビタミンDとは、カルシウムとリンの吸収を促進する働きがある。ビタミンDの欠乏によりくる病をきたす。

4.× ビタミンB6とは、アミノ酸・ヘム合成・神経伝達物質の合成などに関わるため、神経障害の治療や予防に用いられる。

骨粗鬆症とは?

骨粗鬆症とは、骨量が減って骨が弱くなり、骨折しやすくなる病気である。原因として、閉経による女性ホルモンの低下や運動不足・喫煙・飲酒・栄養不足・加齢などである。骨粗鬆症の患者は、わずかな外力でも容易に圧迫骨折(特に胸腰椎)、大腿骨頚部骨折、橈骨遠位端骨折を起こしやすい(※参考:「骨粗鬆症」日本整形外科学会様HPより)。

 

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