第24回(H28年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前31~35】

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31.糸球体における有効ろ過圧の計算式で正しいのはどれか。

1.糸球体血圧+血漿膠質浸透圧+ボーマン嚢内圧
2.糸球体血圧+血漿膠質浸透圧-ボーマン嚢内圧
3.糸球体血圧-血漿膠質浸透圧+ボーマン嚢内圧
4.糸球体血圧-血漿膠質浸透圧-ボーマン嚢内圧

解答

解説

有効濾過圧とは?

有効濾過圧は、糸球体での血液濾過を生じさせる圧力差を表す。糸球体の濾過は、糸球体血圧、ボーマン嚢内圧および血漿膠質浸透圧の間のバランスによって決まる。

有効濾過圧は、以下の式で計算できます。

有効濾過圧=糸球体血圧-(ボーマン嚢内圧+血漿膠質浸透圧)

1.× 糸球体血圧+血漿膠質浸透圧+ボーマン嚢内圧
2.× 糸球体血圧+血漿膠質浸透圧-ボーマン嚢内圧
3.× 糸球体血圧-血漿膠質浸透圧+ボーマン嚢内圧
は、有効ろ過圧の計算式とはいえない。

4.〇 「糸球体血圧-血漿膠質浸透圧-ボーマン嚢内圧」は、糸球体における有効ろ過圧の計算式である。
・糸球体血圧とは、糸球体毛細血管の内側から外側(ボーマン嚢側)へ液体を押し出す力。ろ過を促進する方向の力。
・血漿膠質浸透圧とは、血漿中のタンパク質(主にアルブミン)による浸透圧。血漿内へ水分を引き戻す方向に働き、ろ過を防ぐ方向の力。
・ボーマン嚢内圧とは、ボーマン嚢内に存在する液体による圧力。血管内への逆流を促し、ろ過を防ぐ方向の力。

(※図引用:「イラストボックス様」より)

 

 

 

 

 

32.ニューロンから分泌されるのはどれか。

1.オキシトシン
2.成長ホルモン
3.パラソルモン
4.レニン

解答

解説
1.〇 正しい。オキシトシンは、ニューロンから分泌される。オキシトシンは、視床下部の視索上核や室傍核に存在する大細胞性神経分泌ニューロンの細胞体で産生され、下垂体後葉から血中に放出される。ちなみに、オキシトシンは、出産後に乳汁射出、子宮収縮作用がある。また、分娩開始前後には分泌が亢進し、分娩時に子宮の収縮を促し、胎児が下界に出られるように働きかける。児の吸啜刺激によって分泌が亢進し、分娩後の母体の子宮筋の収縮を促す。

2.× 成長ホルモンとは、下垂体前葉から合成・分泌されるホルモンで、成長促進作用や代謝作用などの作用がある。

3.× パラソルモン(副甲状腺ホルモン)とは、副甲状腺から分泌され、腎臓のカルシウム再吸収およびリンの排泄促進作用などがあり、血中のカルシウム濃度を上昇させる。

4.× レニンとは、腎臓(傍糸球体細胞)から分泌されるホルモンである。レニンは、腎血流量の減少により作動し、血圧上昇させる働きがある。

 

 

 

 

 

33.授乳中に分泌が抑制されるのはどれか。

1.プロラクチン
2.性腺刺激ホルモン
3.成長ホルモン
4.ソマトスタチン

解答

解説
1.× プロラクチンは、授乳中に分泌が増加する。プロラクチンとは、乳腺刺激ホルモンともいい、脳の下垂体から分泌され、妊娠すると高くなり乳腺を成長させ乳汁産生を行う。一般的に出産後など授乳期間中において、乳頭の刺激で高くなり乳汁を分泌する。

2.〇 正しい。性腺刺激ホルモン(卵胞刺激ホルモン・黄体形成ホルモン)は、授乳中に分泌が抑制される。なぜなら、授乳中は、視床下部から分泌されるゴナドトロピン放出ホルモン(GnRH)が抑制されるため。ゴナドトロピン放出ホルモン〈GnRH〉が抑制されることで、排卵が抑制され、授乳中は月経が不規則または停止する。ちなみに、ゴナドトロピン放出ホルモン〈GnRH〉は、性腺刺激ホルモン放出ホルモンともいい、視床下部から分泌され、下垂体前葉を刺激し、ゴナドトロピン(卵胞刺激ホルモン、黄体形成ホルモン)を分泌させる。これらによって、エストロゲンとプロゲステロンが分泌され月経が起こる。

3.× 成長ホルモンは、授乳中の分泌の変化はほとんどない。成長ホルモンとは、下垂体前葉から合成・分泌されるホルモンで、成長促進作用や代謝作用などの作用がある。

4.× ソマトスタチンは、授乳中の分泌の変化はほとんどない。ソマトスタチンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるγ細胞から分泌されるホルモンの一種で、成長ホルモン、インスリン、グルカゴン、ガストリン、セクレチンの分泌抑制の作用がある。

グルカゴンとは?

膵臓のランゲルハンス島からは、①インスリン、②グルカゴン、③ソマトスタチンが分泌される。
①インスリンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるβ細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖低下、②脂肪合成の作用がある。

②グルカゴンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるα細胞から分泌されるホルモンの一種で、①血糖上昇、②脂肪分解の作用がある。

③ソマトスタチンとは、膵臓のランゲルハンス島にあるγ細胞から分泌されるホルモンの一種で、成長ホルモン、インスリン、グルカゴン、ガストリン、セクレチンの分泌抑制の作用がある。

 

 

 

 

 

34.抑制性伝達物質としてのみ働くのはどれか。

1.アセチルコリン
2.ガンマアミノ酪酸
3.ノルアドレナリン
4.グルタミン酸

解答

解説
1.× アセチルコリンは、主に興奮性伝達物質として働く。アセチルコリンとは、代表的な神経伝達物質であり、①運動神経の神経筋接合部、②交感神経および副交感神経の節前線維の終末、副交感神経の節後線維の終末などのシナプスで放出される。アセチルコリンは、中枢神経で働く場合と末梢神経で働く場合で作用が異なる。①運動神経の神経筋接合部では、筋収縮に作用する。

2.〇 正しい。ガンマアミノ酪酸は、抑制性伝達物質としてのみ働く。γ-アミノ酪酸(GABA)とは、脳や脊髄で抑制性の神経伝達物質として働いている。他の神経の活動を抑制するため、不安が軽減するといわれている。

3.× ノルアドレナリンは、主に興奮性伝達物質として働く。ノルアドレナリンとは、激しい感情や強い肉体作業などで人体がストレスを感じたときに、交感神経の情報伝達物質として放出されたり、副腎髄質からホルモンとして放出される物質である。ノルアドレナリンが交感神経の情報伝達物質として放出されると、交感神経の活動が高まり、その結果、血圧が上昇したり心拍数が上がったりして、体を活動に適した状態となる。副腎髄質ホルモンとして放出されると、主に血圧上昇と基礎代謝率の増加をもたらす。

4.× グルタミン酸は、主に興奮性伝達物質として働く。グルタミン酸とは、中枢神経系において主要な興奮性神経伝達物質であり、記憶・学習などの脳高次機能に重要な役割を果たしている。また、広作動域ニューロンに関与する。広作動域ニューロンとは、非侵害刺激を含めた色々の種類の刺激を受け入れるC線維(ポリモーダル受容器)が受けた刺激を脳へ中継する神経細胞のことである。脊髄Ⅴ層に存在する。一次感覚細胞から広作動域ニューロンへの痛みの信号はサブスタンスPやグルタミン酸などの興奮性アミノ酸によって伝達される。

 

 

 

 

 

35.筋収縮においてATPのエネルギーを必要とするのはどれか。

1.横行小管の電気的興奮
2.筋小胞体からのカルシウムイオンの放出
3.トロポニンとカルシウムイオンの結合
4.ミオシン頭部の変位

解答

解説

筋収縮の機序

【筋収縮の機序】
①筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。
ATPエネルギーを利用したミオシンの頭部首振り運動が起こる
③アクチンフィラメントを引き寄せながらミオシンフィラメント上を滑走して筋収縮が起こる。

【運動による筋疲労によって起こる事象】
①代謝産物の蓄積(乳酸の増加やpHの低下)
②エネルギー供給率の低下(ATP低下、ADP増加、グリコーゲン低下)
③興奮収縮連関不全(筋小胞体へのCa2+取り込み低下)

1.× 横行小管の電気的興奮は、筋細胞膜を伝わる活動電位の結果として起こる。横行小管(T管)から伝わった脱分極電位により筋小胞体から、Ca2+が放出される。一般的な筋収縮は、細胞外からもしくは、筋小胞体から放出されるCa2+に依存する。

2.× 筋小胞体からのカルシウムイオンの放出は、脱分極電位によるものである。横行小管(T管)から伝わった脱分極電位により筋小胞体から、Ca2+が放出される。一般的な筋収縮は、細胞外からもしくは、筋小胞体から放出されるCa2+に依存する。

3.× トロポニンとカルシウムイオンの結合は、物理的なプロセスである。ちなみに、トロポニンとは、心筋に特異的に含まれる物質で、心筋が障害を受けたときに血液中で増える物質で、筋収縮の機序としては、①筋小胞体から放出されたCa2+がトロポニンと結合する。

4.〇 正しい。ミオシン頭部の変位は、筋収縮においてATPのエネルギーを必要とする。この動きをミオシンの頭部首振り運動という。

 

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