第25回(H29年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後151~155】

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きゅう理論試験問題(問題151~160)
(きゅう師国家試験を受験する者が解答すること。)

問題151 透熱灸に用いる艾で最も適切なのはどれか。

1.黒褐色である。
2.繊維が粗い。
3.葉柄が多い。
4.灰分が少ない。

解答

解説

透熱灸とは?

有痕灸である透熱灸は、良質艾を米粒大前後で円錐形に捻り、経穴や圧痛点など皮膚上の治療点に直接施灸する。※糸状灸も含まれる。

【艾の良否鑑別】
良質艾:芳香、手触り良く柔らかい、線維が細かい、夾雑物が少ない、淡黄白色、煙と灰が少ない、熱感が緩和(燃焼温度が低い)、燃焼時間が短い、よく乾燥している、など
粗悪艾:青臭い、手触りが悪く固い、線維が粗い、夾雑物が多い、黒褐色、煙と灰が多い、熱感が強い(燃焼温度が高い)、燃焼時間が長い、湿気を帯びている、など

1.× 黒褐色である。
2.× 繊維が粗い。
3.× 葉柄が多い。
これらは、粗悪艾の特徴である。つまり、良質艾を使用する透熱灸には適さない。

4.〇 正しい。灰分が少ないものは、透熱灸に用いる艾で最も適切である。なぜなら、良質艾の特徴であるため。

 

 

 

 

 

問題152 艾炷の燃焼について正しいのはどれか。

1.良質艾では燃焼時間が長くなる。
2.粗悪艾では最高温度が低くなる。
3.硬くひねると温度の上昇がゆっくりになる。
4.軟らかくひねると熱感が強くなる。

解答

解説

艾の良否鑑別

良質艾:芳香、手触り良く柔らかい、線維が細かい、夾雑物が少ない、淡黄白色、煙と灰が少ない、熱感が緩和(燃焼温度が低い)、燃焼時間が短い、よく乾燥している、など
粗悪艾:青臭い、手触りが悪く固い、線維が粗い、夾雑物が多い、黒褐色、煙と灰が多い、熱感が強い(燃焼温度が高い)、燃焼時間が長い、湿気を帯びている、など

1.× 良質艾では燃焼時間が、「長く」ではなく短くなる。
2.× 粗悪艾では最高温度が、「低く」ではなく高くなる。
なぜなら、粗悪艾は、夾雑物が多く、最高温度は高くなるため。

3.〇 正しい。硬くひねると、温度の上昇がゆっくりになる。なぜなら、ひねりが強い場合、艾炷に含まれる空気の量が少ないため。燃焼速度が緩やかで、温度上昇も緩やかになる。

4.× 軟らかくひねると熱感が「強く」ではなく弱くなる。なぜなら、艾の量が少ないため。刺激量を決める要因として、灸の場合、①艾炷の大小、②ひねりの硬軟、③数、④施灸法(※刺激強:艾炷が大きい、ひねりが硬い、壮数が多い)などがあげられる。

 

 

 

 

 

問題153 糖尿病患者で避けるべきなのはどれか。

1.ニンニク灸
2.糸状灸
3.押灸
4.八分灸

解答

解説

無痕灸とは?

無痕灸とは、皮膚ともぐさが直接触れず、お灸との間に一定の空間を開けて熱を加える灸法のことである。皮膚にお灸の痕を残さないため、無痕灸と呼ばれる。知熱灸のほかにも、温灸、隔物灸、薬物灸、切艾、線香があげられる。

1.× ニンニク灸/押灸は、隔物灸(無痕灸)に該当する。隔物灸は、艾炷と皮膚の間に物を置いて施灸する方法である。塩灸、韮灸、墨灸、ニンニク灸、味噌灸、生姜灸、ビワの葉灸、押灸など。 

2.〇 正しい。糸状灸は、糖尿病患者で避けるべきである。なぜなら、皮膚への刺激が強すぎるため。糖尿病患者は、手足の壊疽といった動脈硬化症などの血管障害が起こる。したがって、怪我や炎症が起きた時、治るのに時間がかかってしまう。また、感染の恐れもあるため、炎症を伴いやすい処置は行わない。

4.× 八分灸は、8割燃焼による無痕灸である。知熱灸に分類され、半米粒~米粒大の艾炷に点火し、患者の気持ちの良い所で消火もしくは取り除く方法である。

MEMO

2型糖尿病とは、遺伝的な体質(インスリン分泌低下、インスリン抵抗性)に過食、運動不足、肥満が加わることにより起こる糖尿病を指す。一方で、1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。ちなみに、低血糖症状は、①自律神経症状と②中枢神経症状に分けられる。①自律神経症状は、冷感・顔面蒼白・頻脈・動悸・発汗・手の震え・空腹感などである。②中枢神経症状は、頭痛・集中力低下・視力低下・痙攣・昏睡などである。予防法として、飴や角砂糖などを携帯してもらう。

 

 

 

 

 

問題154 灸あたりについて誤っているのはどれか。

1.瞑眩ともいう。
2.初めて灸療法を受けた場合に起こりやすい。
3.施術後の不潔操作で起こりやすい。
4.食欲不振は症状の一つである。

解答

解説

灸あたり(瞑眩)

症状:施灸直後または翌日から数時間~数十時間、全身倦怠感、脱力感、頭重、めまい、悪寒、発熱、嘔気などをみるが、その後、愁訴は急速に軽減・消失する。
原因:総刺激量の過剰などが要因と考えられている。
処置:安静臥床、予防では刺激量の調節や精神的安定を図る。

1.〇 瞑眩(※読み:めいげん)ともいう。灸あたり(瞑眩)は、施灸直後または翌日から数時間~数十時間、全身倦怠感、脱力感、頭重、めまい、悪寒、発熱、嘔気などの症状を指す。

2.〇 初めて灸療法を受けた場合に起こりやすい。なぜなら、灸療法を受けることにより、体内の血行が変化し、初めての変化に困惑するため。

3.× 施術後の不潔操作で起こりやすいのは、「感染や灸痕化膿」である。灸あたりの原因は、総刺激量の過剰などが要因と考えられている。

4.〇 食欲不振は症状の一つである。一般的な症状として、全身倦怠感、脱力感、頭重、めまい、悪寒、発熱、嘔気などがみられる。

 

 

 

 

 

問題155 有痕灸施術部位の皮膚消毒について最も適切なのはどれか。

1.施灸前後に行う。
2.ラビング法を用いる。
3.施灸部位を往復するように拭く。
4.次亜塩素酸ナトリウムを用いる。

解答

解説

有痕灸の種類

透熱灸:良質艾を米粒大前後で円錐形に捻り、経穴や圧痛点など皮膚上の治療点に直接施灸する。※糸状灸も含まれる。

焦灼灸:イボ、ウオノメ、タコなどに用いる灸法。施灸部の皮膚、組織を破壊する。タール成分(カテコール)の作用がある。

打膿灸(弘法の灸):小指~母指頭大程度の艾炷を直接施灸して火傷を作り、膏薬を貼付して化膿を促す灸法。小児や虚弱者には不適である。

1.〇 正しい。施灸前後に行う。なぜなら、感染を防ぐため。基本的に手洗い同様、一回の手技行う前に消毒する。

2.× 「ラビング法」ではなくスワブ法を用いる。ラビング法とは、擦式法ともいい、アルコール擦式製剤を手掌にとり、乾燥するまで擦り込んで消毒する方法である。一方、スワブ法とは、拭き取り法ともいい、物体表面の付着微 生物を拭き取って捕捉する方法である。

3.× 施灸部位を「往復」ではなく片方向に拭く。なぜなら、往復で行うと感染部位を広めてしまう結果となるため。原則、清拭は①一方向性か、②遠心性渦巻き状に行う必要がある。

4.× 「次亜塩素酸ナトリウム」ではなく消毒用エタノールを用いる。次亜塩素酸ナトリウムとは、ノロウイルス感染症に罹患した患者の嘔吐物が床に飛び散っているこの処理に使用する消毒薬である。ノロウイルスの消毒には、通常のアルコール製剤や逆性石鹸は有効でないため、塩素系消毒剤(0.1%次亜塩素酸ナトリウム)を用いる。ただし、次亜塩素酸ナトリウムの注意点として、毒性が強く、吸い込んでしまったり、目に入ってしまった場合には呼吸器や粘膜へ損傷を与える危険を伴う。

手指衛生の5つのタイミング

①患者に触れる前( 手指を介して伝播する病原微生物から患者を守るため)
②清潔/無菌操作の前( 患者の体内に微生物が侵入することを防ぐため)
③体液に曝露された可能性のある場合(患者の病原微生物から医療従事者を守るため)
④患者に触れた後(患者の病原微生物から医療従事者と医療環境を守るため)
⑤患者周辺の環境や物品に触れた後(患者の病原微生物から医療従事者と医療環境を守るため)
である。

(※WHO手指衛生ガイドラインより)

 

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