第25回(H29年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後146~150】

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問題146 迎え鍼を行う有害事象はどれか。

1.気胸
2.折鍼
3.渋鍼
4.脳貧血

解答

解説

抜鍼困難(渋鍼)

原因:回旋による筋組織の巻き付き、筋撃縮や反射的筋収縮などによる銀体の固定、体動による鍼体の弯曲、など

処置:リラックス、逆方向への回旋、放置(置鍼術)、副刺激術、示指打法、迎え鍼(周囲に刺鍼する)など

1.× 気胸とは、肺と胸壁の間の空間に空気が溜まる状態を指す。肺が損傷し、気胸(内開放性気胸)が生じる。背部や前胸部などへの刺鍼で多く、女性に多い。症状には胸痛、刺激性咳、チアノーゼ、労作性呼吸困難などがある。

2.× 折鍼の原因は、鍼自体の欠陥、患者の不意な体動、(直流)電流による通電、オートクレーブでの反復滅菌、湿気を含むなどである。処置として、体動を禁じ、皮膚表面に断端が出ればピンセットで引き抜く。抜鍼できない場合には外科手術が必要である。

3.〇 正しい。渋鍼は、迎え鍼を行う有害事象である。ちなみに、迎え鍼とは、周囲に新しく刺鍼することを指す。

4.× 脳貧血(脳虚血)の原因は、精神的緊張や不安状態がある患者への座位・立位での刺鍼、全身状態の良くない患者への粗暴な施術、などである。症状として、顔面蒼白、冷や汗、悪心・嘔吐、血圧低下、失神などがあげられる。処置として、仰臥位で頭を低くして安静にさせる、返し鍼(合谷、足三里などの四肢末端に近い部位への刺鍼)、などがあげられる。

 

 

 

 

 

問題147 医療現場における肝炎・エイズの感染について正しいのはどれか。

1.A型肝炎は血液を介して感染する。
2.エイズは食事で感染する。
3.注射針の誤刺による感染が最も多い。
4.1回誤刺に対する感染成立の確率はC型肝炎が最も高い。

解答

解説

ウイルス性肝炎とは?

ウイルス性肝炎とは、A、B、C、D、E型などの肝炎ウイルスの感染によって起こる肝臓の病気である。A型、E型肝炎ウイルスは主に食べ物を介して感染し、B型、C型、D型肝炎ウイルスは主に血液を介して感染する。中でもB型、C型肝炎ウイルスについては、感染すると慢性の肝臓病を引き起こす原因ともなる。

1.× 血液を介して感染するのは、「A型肝炎」ではなくB型肝炎である。
・A型肝炎とは、A型肝炎ウイルス(HAV)感染による疾患である。通常、感染した人の便で汚染されたものを摂取したときに感染する。人の便が流れている海で育った貝類の摂取で感染することもある。初期症状は倦怠感や発熱、頭痛、筋肉痛等で、一過性の急性肝炎が主症状であり、治癒後に強い免疫が残る。治療は、通常、安静を含めた対症療法が中心となる。
・B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することによって生じる肝臓の病気のことである。B型肝炎ウイルスは主に感染者の血液や体液を介して感染する。たとえば、注射針を感染者と共用した場合や、感染者と性行為をした場合などに感染する。しかし、B型肝炎にはワクチンがあるため、適切にワクチンを接種することによって感染を予防することができる。
・C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染することによって起こる肝臓の病気である。C型肝炎ウイルスは、主に感染者の血液や体液から感染する。感染の危険性がある行為としては注射器の使い回しや剃刀(かみそり)の共用などがある。そのほか、妊娠中の母親から胎児への感染や性行為による感染もあるが、感染する確率は低いと考えられている。

2.× エイズは、食事では感染しない。後天性免疫不全症候群〈AIDS〉は、ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉によって引き起こされ、伝播は主に性行為血液接触母子感染によるものである。ちなみに、ヒト免疫不全ウイルスは、人の免疫細胞に感染してこれを破壊し、最終的に後天性免疫不全症候群を発症させるウイルスである。ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症に対する治療法は飛躍的に進歩しており早期に発見することで後天性免疫不全症候群(AIDS)の発症を予防できるようになってきている。しかし、治療を受けずに自然経過した場合、免疫力の低下により様々な障害が発現する。後天性免疫不全症候群(AIDS)の状態にあると判断できる疾患(エイズ指標疾患)は、23種類ある。AIDS指標疾患としてもっとも頻度が高いのは、ニューモシスチス肺炎(39.3%)、ついでサイトメガロウイルス感染症(13.4%)、カンジダ症(13.1%)、活動性結核(7.1%)、カポジ肉腫(4.5%)、非結核性抗酸菌症(3.8%)の順であった。

3.〇 正しい。注射針の誤刺による感染が最も多い。医療従事者の血液暴露事故の80%以上が針刺し事故によるといわれている。ちなみに、針刺し事故とは、医療従事者が業務中に、患者血液が付着した器具によって被る外傷を代表例として示す言葉である。これら外傷は、日常の診療行為のなかで常に 起こりうる状況にあり、医療従事者それぞれが本人自身および他人のことを考えて注意を払えば、確実に減少させうる種類の事故である。

4.× 1回誤刺に対する感染成立の確率は、「C型肝炎」ではなくB型肝炎が最も高い。「針刺し事故の予防と対策 著:飯野四郎様」において「針刺し事故による感染の確率は、HBV→HCV→HIVの順で、HIVが最も低く、約0.4%といわれている」と記載されている。

 

 

 

 

 

問題148 鍼の重だるい響き感覚を伝える神経線維はどれか。

1.Aβ
2.Aδ
3.B
4.C

解答

解説

1.× Aβは、触圧覚を伝導する。

2.× Aδは、鋭く速い痛みを伴う熱刺激を伝導する。

3.× Bは、交感神経の節前線維である。

4.〇 正しい。Cは、鍼の重だるい響き感覚を伝える神経線維である。

 

 

 

 

 

問題149 次の文で示す研究から適切なのはどれか。
「ラットの足部への鍼刺激で迷走神経活動が亢進し胃内圧が上昇したが、内臓神経活動は変化しなかった。一方、腹部の鍼刺激では内臓神経活動が亢進し胃内圧が低下したが、迷走神経活動は変化しなかった。」

1.足部刺激による作用は体性-運動反射である。
2.足部刺激では上脊髄を介した反応が起こる。
3.腹部刺激による作用は副交感神経活動の抑制による。
4.腹部刺激による作用は内臓-内臓反射である。

解答

解説

ポイント

・【足部への鍼刺激】迷走神経活動が亢進、胃内圧が上昇(内臓神経活動は変化なし)。
・【腹部への鍼刺激】内臓神経活動が亢進、胃内圧が低下(迷走神経活動は変化なし)。
→圧自律神経反射とは、自律神経反射の一種である迷走神経反射のひとつで、身体の一部が圧迫されると、その刺激の信号が脊髄内の側索を上行して中枢に達し、中枢から興奮というかたちで末梢の器官へ及ぶ、一種の反射現象である。

1.× 足部刺激による作用は、「体性-運動反射」ではなく体性-内臓反射(上脊髄性)である。一方、腹部刺激による作用は、体性-内臓反射(脊髄性)である。

2.〇 正しい。足部刺激では上脊髄を介した反応が起こる。四肢への鍼刺激は、主に頸髄や腰髄などの脊髄分節に入力される。これらの分節には自律神経の節前ニューロンが比較的少ないため、脊髄レベルでの自律神経反応(局所反射)が起こりにくく、代わりに脳幹や視床下部などの上位中枢を介した上脊髄性の自律神経反応が起こりやすくなる。上脊髄反射は、脳幹で統合され、自律神経を介して内臓に作用する。

3.× 腹部刺激による作用は、「副交感神経活動の抑制」ではなく交感神経活動の亢進による。

4.× 腹部刺激による作用は、「内臓-内臓反射」ではなく体性-内臓反射(脊髄性)である。

自律神経反射の一覧

内臟・内臟反射:圧受容器反射、排便・排尿の反射など
内臟・体性知覚反射:関連痛、知覚過敏帯(ヘッド帯・マッケンジー帯)など
内臟・体性運動反射:筋性防御など
内臟・体性自律反射:汗腺反射、皮脂腺反射、立毛筋反射、皮膚血管反射など
体性・内臟反射:対光反射、鍼灸による内臓機能の調整など

 

 

 

 

 

問題150 1Hzの鍼通電刺激で起こる鍼鎮痛の特徴について正しいのはどれか。

1.主にⅡ群線維が関与する。
2.効果の出現部位は施術部位と同じデルマトーム領域に限られる。
3.鍼通電終了と同時に鎮痛効果は消失する。
4.筋収縮が得られる刺激強度の方が効果が高い。

解答

解説

鍼通電装置とは?

特殊鍼法である鍼通電は、鍼に低周波通電する方法で、鍼麻酔が代表的である。鍼の腐食を考慮し、3~5番鍼(20~24号銅)以上の鍼を用いる。通電(電気療法)は妊婦、ペースメーカー、知覚脱失、循環障害、重篤な動脈疾患、原因不明の発熱、強い皮膚病変などの患者には禁忌とされる。また、通電装置の出力に影響を及ぼすため、通電装置と超短波治療器あるいはマイクロ波治療器を近接して使用すべきではない。20号鍼(3番鍼)以上の太さが推奨される。病的共同運動には高Hz(100HZ)で行うとよい。

1.× 主に、「Ⅱ群線維」ではなく「Ⅲ群やⅣ群線維」が関与する。なぜなら、これらの線維は痛みに関与するため。

2.× 効果の出現部位は、施術部位と同じデルマトーム領域に「限られない」。鎮痛効果の出現部位は、全身に関与する。なぜなら、ゲートコントロール理論が関与するため。ゲートコントロール理論とは、高頻度刺激によって、脊髄の触・圧・振動覚などの低閾値感覚を伝える太い神経線維を刺激することで、脊髄後角の感覚神経を活性化させ、痛みの信号通路のゲートを閉ざし疼痛を抑制させる理論である。脳と脊髄は痛みやその他の接触刺激などを同時に感じ取らないように働いているため、このような理論が提唱されている。

3.× 鍼通電終了と同時に鎮痛効果は消失する「わけではない」。なぜなら、痛みの発現・消失は個人差がみられるため。また、精神面にも関与するため、通電後も一般的に30分近く効果は持続することが多い。

4.〇 正しい。筋収縮が得られる刺激強度の方が効果が高い。なぜなら、骨格筋をリズミカルに収縮させることで、筋肉の収縮と弛緩を促し、局所の血流障害が改善されるため。

 

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