第26回(H30年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後131~135】

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問題131 末梢神経麻痺と罹患筋への低周波鍼通電療法で用いる経穴との組合せで最も適切なのはどれか。

1.橈骨神経麻痺:手五里・温溜
2.正中神経麻痺:尺沢・通里
3.深腓骨神経麻痺:陽輔・懸鍾
4.脛骨神経麻痺:条口・解渓

解答

解説

鍼通電装置とは?

特殊鍼法である鍼通電は、鍼に低周波通電する方法で、鍼麻酔が代表的である。鍼の腐食を考慮し、3~5番鍼(20~24号銅)以上の鍼を用いる。通電(電気療法)は妊婦、ペースメーカー、知覚脱失、循環障害、重篤な動脈疾患、原因不明の発熱、強い皮膚病変などの患者には禁忌とされる。また、通電装置の出力に影響を及ぼすため、通電装置と超短波治療器あるいはマイクロ波治療器を近接して使用すべきではない。20号鍼(3番鍼)以上の太さが推奨される。病的共同運動には高Hz(100HZ)で行うとよい。

1.〇 正しい。橈骨神経麻痺は、下垂手がみられる。手関節・手指の伸筋群と、長母指外転筋・短母指伸筋の麻痺により、手関節背屈、示指から小指のMP関節伸展、母指伸展・外転が困難となる。
・手五里(※読み:てごり)は、上腕外側、曲池と肩隅を結ぶ線上、肘窩横紋の上方3寸に位置する。深部に橈骨神経幹が通る。上腕三頭筋の治療穴である。
・温溜(※読み:おんる)は、前腕後外側、陽渓と曲池を結ぶ線上、手関節背側横紋の上方5寸に位置する。長橈側手根伸筋と短橈側手根伸筋の間に取る。

2.× 正中神経麻痺とは、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる麻痺である。ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。perfect O(パーフェクト Oテスト)とは、親指と人差し指の先端をくっつけて丸形を作る検査である。
・尺沢(※読み:しゃくたく)は、肘前部、肘高横紋上、上腕二頭筋腱外方の陥凹部に位置する。上腕二頭筋の治療穴である。
・通里(※読み:つうり)は、前腕前内側、尺側手根屈筋腱の橈側縁、手関節掌側横紋の上方1寸に位置する。
※正中神経麻痺は、郄門と内関を組み合わせる。

3.× 深腓骨神経麻痺は、腓骨頭部(膝外側)の外部からの圧迫などによって、腓骨神経の機能不全をきたしている状態である。腓骨神経は、感覚(下腿外側、足背)や運動(足関節および足趾の背屈)を支配しているため、下腿の外側から足背ならびに足趾背側にかけて感覚が障害され、しびれたり、触った感じが鈍くなる。また、足首と足の指が背屈(上に反る)できなくなり、下垂足となる。したがって、深腓骨神経麻痺は、条口と解渓を組み合わせる。
・陽輔(※読み:ようほ)は、下腿外側、腓骨の前方、外果尖の上方4寸に位置する。短腓骨筋の治療穴である。
・懸鍾(※読み:けんしょう)は、下腿外側、腓骨の前方、外果尖の上方3寸に位置する。跗陽(膀胱経)の前方にあたる。短腓骨筋の治療穴である。
※陽輔と懸鍾は、浅腓骨神経に対する治療である。

4.× 脛骨神経麻痺は、足関節底屈筋群を支配するため、踵足歩行(らくだ歩行)がみられる。ちなみに、踵足歩行(らくだ歩行)とは、足のつま先が宙に浮いた状態で、踵だけが接地した歩行のことである。したがって、脛骨神経麻痺は、承筋と承山を組み合わせる。 
・条口(※読み:じょうこう)は、下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下方8寸に位置する。
・解渓(※読み:かいけい)は、足関節前面、足関節前面中央の陥凹部、長母指伸筋腱と長指伸筋腱の間に位置する。内果尖と外果尖との中点にあたる。

手根管症候群とは?

手根管症候群は、正中神経の圧迫によって手指のしびれや感覚低下などの神経障害が生じる。手根管(手関節付近の正中神経)を4~6回殴打すると、支配領域である母指から環指橈側および手背の一部にチクチク感や蟻走感が生じる(Tinel徴候陽性)。Tinel徴候のほか、ダルカン徴候(手根管部を指で圧迫するとしびれ感が増悪する)やファーレン徴候(Phalen徴候:手首を曲げて症状の再現性をみる)も陽性となる場合が多い。

手根管を通るもの:①浅指屈筋腱、②深指屈筋腱、③正中神経、④長母指屈筋腱、⑤橈側手根屈筋腱
ギヨンを通るもの:①尺骨動脈、②尺骨神経

 

 

 

 

 

問題132 次の文で示す症例に対し、局所治療穴を定めるための徒手検査で陽性になる可能性が最も高いのはどれか。
「21歳の男性。大学で水泳部に所属し、専門はフリースタイル。肩の外転、屈曲時に肩前外側に痛みを呈する。」

1.イートンテスト
2.エデンテスト
3.インピンジメントテスト
4.リフトオフテスト

解答

解説

本症例のポイント

・21歳の男性
・大学で水泳部に所属し、専門はフリースタイル
・肩の外転、屈曲時:肩前外側に痛みを呈する。
→本症例は、インピンジメント症候群が疑われる。インピンジメントの検査には、①Neerテスト、②Hawkinsテストがある。①Neerテスト(ニアテスト)は、患者の後側方に立ち、一方の手で肩甲骨を保持し、もう一方の手で上肢(回内位)を最大挙上させ、大結節を肩峰前縁に圧迫させる。挙上90°~120°で疼痛が誘発されれば陽性である。②Hawkinsテスト(ホーキンズテスト)は、患者の腕を90度まで上げ、肘を90度に屈曲させ、強制的に肩関節を内旋し、痛みの有無を調べる。肩峰下インピンジメントとは、上腕骨大結節と棘上筋腱停止部が、烏口肩峰アーチを通過する際に生じる、棘上筋腱の機械的圧迫のことである。この機械的圧迫は棘上筋腱に集中して発生する。つまり、肩の近くの関節の細いところで、骨同士の隙間が、こすれがあっている状態である。 原因として、年齢や疲労、姿勢の影響で動きの連携がとれずに衝突するとされている。炎症や出血を起こす。

1.× イートンテストは、頸椎の椎間関節症や頸椎症性神経根症を調べる検査である。患者は座位で、検査者が頸部を健側に側屈させる。側屈した側の逆の手関節を握り、後下外方へ引く。 患側上肢,特に手指に放散痛がある場合、頸椎症性神経根症を疑う。

2.× エデンテスト(Edenテスト)は、胸郭出口症候群誘発テストである。方法は、患者は座位になり胸を張った状態で両方の肩関節を伸展する。検査者は橈骨動脈の拍動をモニターして約1分程度保持する。橈骨動脈の拍動が減弱または消失した場合、胸郭出口症候群と判断する。

3.〇 正しい。インピンジメントテストは、本症例に対し、局所治療穴を定めるための徒手検査で陽性になる可能性が最も高い。なぜなら、特に水泳のように肩の大きな可動が求められるスポーツでは、インピンジメント症候群が好発されるため。

4.× リフトオフテスト(Lift Off Test)は、肩関節の障害部位を予測して不安定さを評価するテストである。主に、肩甲下筋の機能を評価する検査である。肩関節伸展内旋し、⼿背を背中に接した状態から⼿を後⽅へ持ち上げ、この際の筋⼒を検査します。

 

 

 

 

 

問題133 次の文で示す神経麻痺の罹患神経に対して低周波鍼通電療法を行う場合、経穴の組合せとして最も適切なのはどれか。
「手背の骨間溝が著明で鉤爪指がみられるが、パーフェクトOは正常であった。」

1.偏歴:曲池
2.太淵:孔最
3.内関:郄門
4.支正:小海

解答

解説

本症例のポイント

・手背の骨間溝が著明。
・鉤爪指がみられる。
・パーフェクトO:正常
→本症例は、尺骨神経麻痺が疑われる。尺骨神経麻痺とは、尺骨神経損傷により手掌・背の尺側に感覚障害やFroment徴候陽性、鷲手がみられる麻痺である。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。

1.× 偏歴:曲池
偏歴(※読み:へんれき)は、前腕後外側、陽渓と曲池を結ぶ線上、手関節背側横紋の上方3寸に位置する。
曲池(※読み:きょくち)は、肘外側、尺沢と上腕骨外側上顆を結ぶ線上の中点に位置する。

2.× 太淵:孔最
太淵(※読み:たいえん)は、手関節前外側、橈骨茎状突起と舟状骨の間、長母指外転筋腱の尺側陥凹部に位置する。
孔最(※読み:こうさい)は、前腕前外側、尺沢と太淵を結ぶ線上、手関節掌側横紋の上方7寸に位置する。

3.× 内関:郄門
内関(※読み:ないかん)は、前腕前面、長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間、手関節掌側横紋の上方2寸に位置する。
郄門(※読み:げきもん)は、前腕前面、長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間、手関節掌側横紋の上方5寸に位置する。

4.〇 正しい。支正:小海は、尺骨神経の走行に沿っている。
支正(※読み:しせい)は、前腕後内側、尺骨内縁と尺側手根屈筋の間、手関節背側横紋の上方5寸に位置する。
小海(※読み:しょうかい)は、肘後内側、肘頭と上腕骨内側上顆の間の陥凹部に位置する。

 

 

 

 

 

問題134 次の文で示す症例に対する治療穴で最も適切なのはどれか。
「35歳の女性。職業は事務員。右前腕前面近位部の疼痛と第1指から第4指橈側半の掌側および母指球にしびれがある。前腕の回内動作に抵抗を加えると症状が増悪する。ファレンテスト陰性。」

1.手三里
2.孔最
3.大陵
4.四瀆

解答

解説

本症例のポイント

・35歳の女性(職業:事務員)。
右前腕前面近位部の疼痛
・第1~4指橈側半の掌側および母指球にしびれ
前腕の回内動作に抵抗を加えると症状が増悪する
・ファレンテスト:陰性。
→本症例は 正中神経麻痺(特に円回内筋症候群)が疑われる。円回内筋症候群とは、円回内筋の支配神経で上肢腹側の真ん中を通っている正中神経が、肘関節周辺で圧迫されて痛みや痺れ、筋肉の衰えなどの症状を起こす疾患である。ちなみに、正中神経麻痺とは、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる麻痺である。ファーレン徴候(Phalen徴候)とは、手首を曲げて症状の再現性をみる検査である。perfect O(パーフェクト Oテスト)とは、親指と人差し指の先端をくっつけて丸形を作る検査である。

1.× 手三里(※読み:てさんり)は、前腕後外側、陽渓と曲池を結ぶ線上、肘窓横紋の下方2寸に位置する。長・短橈側手根伸筋の治療穴である。

2.〇 正しい。孔最は、本症例に対する治療穴である。孔最(※読み:こうさい)は、前腕前外側、尺沢と太淵を結ぶ線上、手関節掌側横紋の上方7寸に位置する。

3.× 大陵(※読み:だいりょう)は、手関節前面、長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間、手関節掌側横紋上に位置する。

4.× 四瀆(※読み:しとく)は、前腕後面、橈骨と尺骨の骨間の中点、肘頭の下方5寸に位置する。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題135、問題136の問いに答えよ。
「37歳の男性。主訴は不眠。仕事の期限に間に合わせるため長時間労働が続き、疲労感とともに肩こり、腹部膨満感、中途覚醒に悩まされている。よくため息をつく。舌診では舌辺が赤く、腹診では胸脇苦満が認められた。」

問題135 本症例が示す病証でみられやすい脈状はどれか。

1.浮脈
2.弦脈
3.濇脈
4.滑脈

解答

解説

本症例のポイント

・37歳の男性(主訴:不眠)。
・仕事の期限に間に合わせるため長時間労働が続いた。
疲労感とともに肩こり、腹部膨満感、中途覚醒に悩まされている。
・よくため息をつく。
・舌診では舌辺が赤く、腹診では胸脇苦満が認められた。
→本症例は、肝気鬱結が疑われる。肝気鬱結とは、精神的ストレスによる症状をさす。気の巡りが悪く、イライラ、憂うつ、胸脇部の張り、ため息などの症状を呈する。女性では、生理時に乳房が張って痛む、生理痛、生理不順などの症状もみられる。

1.× 浮脈は、表証、虚証で生じやすく、軽く指を当てると拍動が感じられ、按じると感じ方が弱くなる、もしくは感じられなくなるものである。

2.〇 正しい。弦脈は、本症例が示す病証でみられやすい脈状である。弦脈は、肝胆病、痛証、痰飲で生じやすく、琴の弦に触れたような、長く真っすぐで緊張したものである。

3.× 濇脈(渋脈)は、血瘀で生じやすく、脈の流れが悪く、ざらざらとして渋滞したようなものである。

4.× 滑脈は、痰湿、食滞で生じやすく、脈の流れが滑らかで、円滑に指に触れるものである。

 

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