第27回(H31年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前41~45】

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問題41 肉芽組織の構成要素はどれか。

1.線維芽細胞
2.平滑筋細胞
3.横紋筋細胞
4.上皮細胞

解答

解説

創傷の治癒過程とは?

①血液凝固期(術後~数時間後):出血による凝固塊が欠損をふさいで止血する時期である。
②炎症期(術直後~3日目ころ):炎症性細胞(好中球、単球、マクロファージなど)が傷に遊走して、壊死組織や挫滅組織などを攻める時期である。
③増殖期(3日目~2週間後):線維芽細胞が周辺から遊走して、細胞外マトリックスを再構築し、血管新生が起こり、肉芽組織が形成される時期である。
④成熟期(2週間~数か月後)(再構築期:リモデリング期):線維芽細胞が減り、線維細胞へと成熟し変化するじきである。コラーゲンの再構築が起き、創部の抗張力が高くなることで創傷が治癒していく。

1.〇 正しい。線維芽細胞は、肉芽組織の構成要素である。
肉芽組織の構成成分は、毛細血管、線維芽細胞、好中球、リンパ球、形質細胞、マクロファージなどの炎症性細胞のほか、酸性ムコ多糖、コラーゲンなどである。ちなみに、線維芽細胞とは、真皮線維芽細胞ともいい、皮膚の真皮にある細胞である。肌の元となる成分(コラーゲン・エラスチン・ヒアルロン酸)を作り出す役割を担う。細胞分裂周期が早く、古くなったら分解し細胞分裂によって絶えず新しい線維芽細胞を増やし続けている。

2.× 平滑筋細胞
平滑筋細胞とは、筋肉組織の一つで、組織を構成する平滑筋細胞は紡錘形で単核であり、緩やかな収縮で持続性がある。

3.× 横紋筋細胞
横紋筋細胞とは、筋肉組織の一つで、横紋筋を形成する細胞である。横紋筋とは、筋組織のひとつで筋繊維(筋細胞)の集まった物で、体を動かす際に使われるため「骨格筋」とも呼ばれる。横紋筋は、骨格筋と心筋に分類される。

4.× 上皮細胞
上皮細胞とは、体や体腔、臓器などの表面を覆う細胞である。上皮細胞は、隣接する細胞どうしが互いに強く結合することにより薄いシート状の細胞層を構成し、これにより、体や臓器を外部から隔て、病原菌の侵入や物質の漏出を防いでいる。

異物の処理

①排除とは、例えば咳やくしゃみのことで、気道内のゴミを気管支上皮の線毛運動などのことをさす。
②器質化とは、異物に対して周囲に肉芽組織が形成され、異物を吸収し、結合組織に置換すること。主にマクロファージ、好中球によって貪食され、酵素により分解される。しばしば、異物肉芽腫が形成される。
③異物肉芽腫とは、異物を取り囲んで形成される肉芽組織の一種で、マクロファージや異物型多核巨細胞が多数出現することをさす。
④被包とは、異物が肉芽組織から変化した線維組織によって取り囲まれることで、例えば陳旧性結核病変をさす。

(※参考:「病理学総論4.組織の修復、再生と線維化」)

 

 

 

 

 

問題42 肝硬変患者の脾臓に最も生じやすいのはどれか。

1.出血
2.うっ血
3.水腫
4.梗塞

解答

解説

肝硬変とは?

肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいう。慢性肝炎が起こると肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓のなかに壁ができる。

1.× 出血が脾臓に最も起こりやすいとはいえない。
肝硬変になると、肝臓へ行く大きな血管である門脈の圧が高まり、静脈瘤が形成され、その静脈瘤は破裂すると大量に出血し、吐血(新鮮血)や下血(タール便)がみられることもある。

2.〇 正しい。うっ血は、肝硬変患者の脾臓に最も生じやすい。
肝硬変自体が門脈圧亢進症の一般的な原因である。肝硬変が進むつれて、肝臓の繊維化、いわゆる硬くなることで肝臓内に流入する門脈の血流が減少する。したがって、脾臓への血流が増加し、うっ血をきたす。門脈は、だいたいの消化管から得られた栄養を肝臓へと運ぶ働きを持つ機能血管である。胃、腸、膵臓、脾臓、胆嚢の毛細管から静脈血を集める。門脈圧亢進症とは、門脈内の圧力が上昇した状態である。原因として最も頻度が高いものは、肝硬変、住血吸虫症、および肝血管異常である。続発症として、食道静脈瘤や門脈大循環性脳症などが生じる。診断は臨床基準に基づいて行い、しばしば画像検査や内視鏡検査を併用する。

3.× 水腫が脾臓に最も起こりやすいとはいえない。
水腫とは、筋肉の間に余分な体液が溜まっている状態を指す。一般的にはむくみとも呼ばれ、浮腫と同義語である。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。

4.× 梗塞が脾臓に最も起こりやすいとはいえない。
肝硬変は、消化管出血や静脈血栓塞栓症といった、肝臓外の出血と血栓症のリスクを高める。

(※図引用:「看護師イラスト集」看護roo!様HPより)

門脈とは?

門脈は、だいたいの消化管から得られた栄養を肝臓へと運ぶ働きを持つ機能血管である。胃、腸、膵臓、脾臓、胆嚢の毛細管から静脈血を集める。

 

 

 

 

 

問題43 免疫不全症でHIVによるのはどれか。

1.無γグロブリン血症
2.重症複合性免疫不全症
3.後天性免疫不全症候群
4.ディジョージ症候群

解答

解説
1.× 無γグロブリン血症
X連鎖(伴性)無ガンマグロブリン血症とは、遺伝性の免疫不全疾患で、X(性)染色体上の遺伝子の突然変異に起因した病気であり、B細胞がなく、抗体(免疫グロブリン)の量が極めて少ないか、まったくみられない。したがって、せきを繰り返したり、鼻、耳、皮膚、副鼻腔、肺の感染症を生後約6カ月から繰り返すことが多い。

2.× 重症複合性免疫不全症
重症複合性免疫不全症とは、生まれつき体の中の免疫細胞(T細胞やB細胞など)がうまく働かず、感染に対する抵抗力が低下する病気である。症状として、細菌やウイルスなどの病原体に感染しやすくなり、重篤な肺炎、中耳炎、膿瘍、髄膜炎などを繰り返す。

3.〇 正しい。後天性免疫不全症候群は、免疫不全症でHIVによる。
後天性免疫不全症候群〈AIDS〉は、ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉によって引き起こされ、伝播は主に性行為、血液接触、母子感染によるものである。ちなみに、ヒト免疫不全ウイルスは、人の免疫細胞に感染してこれを破壊し、最終的に後天性免疫不全症候群を発症させるウイルスである。ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症に対する治療法は飛躍的に進歩しており早期に発見することで後天性免疫不全症候群(AIDS)の発症を予防できるようになってきている。しかし、治療を受けずに自然経過した場合、免疫力の低下により様々な障害が発現する。

4.× ディジョージ症候群(DiGeorge症候群)
デイジョージ症候群とは、胸腺低形成とも言い、免疫不全を起こす先天性の病気で、出生時に胸腺がまったくないか、あっても未発達な状態を指す。小児の場合、心臓の異常、副甲状腺未発達または欠如、胸腺の未発達または欠如、特徴的な顔つきなど、いくつかの異常が生まれつきみられる。

 

 

 

 

問題44 扁平上皮癌が最も発生しやすいのはどれか。

1.舌
2.胃
3.胆囊
4.膵臓

解答

解説
1.〇 正しい。は、扁平上皮癌が最も発生しやすい。
扁平上皮癌とは、最上層が薄くて平らな細胞よりなる上皮からなる癌をいう。特徴として、分化度の異なる不均一からなる細胞から構成され、欠陥分布も均一性を欠く。好発部位は、舌が最も多く、次いで歯肉、頬、口底、口蓋である。

2~4.× 胃/胆囊/膵臓は、腺癌が多い。
腺癌とは、腺組織とよばれる上皮組織から発生するがんである。 、腸、子宮体部、肺、乳房、卵巣、前立腺、肝臓膵臓胆のうなどに発生する。なかでも、胃がんの90%以上は、胃壁の最も内側の粘膜上皮細胞から発生する腺癌である。

上皮組織の形態による分類

・単層扁平上皮:薄いので物質の交換などに向く。
(胸膜、腹膜、血管内皮、肺胞など)

・単層立方上皮:甲状腺の濾胞細胞など。
(甲状腺の濾胞上皮、尿細管など)

・単層円柱上皮:吸収と分泌を行う場所に向く。
消化器系(胃、小腸、大腸)、卵管・子宮など

・重層扁平上皮:摩擦など機械的刺激に強い。
皮膚、口腔~食道、肛門、膣など。

・多列線毛上皮:表面に線毛があり、杯細胞が豊富。線毛と粘液で塵や異物をからめとる。
鼻腔~気管・気管支(気道)

・移行上皮:伸び縮みすることができる。
腎杯腎~尿管~膀胱(尿路)

 

 

 

 

 

問題45 球麻痺でみられるのはどれか。

1.舌萎縮
2.嗅覚障害
3.聴力低下
4.眼球運動障害

解答

解説

中脳と橋、延髄にある脳神経核

【中脳】
Ⅲ:動眼
Ⅳ:滑車

【橋】
Ⅴ:三叉
Ⅵ:外転
Ⅶ:顔面
Ⅷ:前庭

【延髄】
Ⅸ:舌咽神経
Ⅹ:迷走神経
Ⅺ:副神経
Ⅻ:舌下神経

1.〇 正しい。舌萎縮は、球麻痺でみられる。
球麻痺とは、延髄にある神経核(Ⅸ:舌咽神経、Ⅹ:迷走神経、Ⅺ:副神経、Ⅻ:舌下神経)が障害された状態を指し、舌咽・迷走・舌下神経が障害される。したがって、嚥下・構音障害、舌萎縮、線維束攣縮などがみられる。

2.× 嗅覚障害は、嗅覚の伝導路の障害で生じる。
嗅覚は鼻腔上部の嗅部の粘膜上皮(嗅上皮)の嗅細胞で受容される。嗅細胞の中枢性突起が嗅神経となり、篩骨篩板を通って嗅球に入る。嗅球から後方に向かって嗅索が走り、その線維は大部分外側嗅条を通って海馬旁回の嗅覚野に達する。
①嗅細胞→②嗅神経→③嗅球→④嗅索→⑤嗅覚野(1次感覚野)に達する。
・一次中枢:①嗅細胞→②嗅神経→③嗅球まで。
・二次中枢:④嗅索→⑤嗅覚野(1次感覚野)

3.× 聴力低下は、聴覚の伝導路の障害で生じる。
聴覚の伝導路は視神経→視交叉→外側膝状体→視放線→視覚野である。聴覚の伝導路は、蝸牛神経→蝸牛神経核→上オリーブ核→中脳下丘→内側膝状体→上側頭回である。

4.× 眼球運動障害は、眼球運動の神経や筋の障害で生じる。

眼球運動の筋と支配神経

【眼球運動:筋】
外側:外直筋
内側:内直筋
外上方:外直筋+上直筋
内上方:内直筋+下斜筋
外下方:外直筋+下直筋
内下方:内直筋+上斜筋

【支配神経】
①動眼神経:内側直筋・上直筋・下直筋・下斜筋
②滑車神経:上斜筋
③外転神経:外側直筋

 

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