第27回(H31年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前71~75】

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問題71 肝炎の感染経路で正しいのはどれか。

1.A型肝炎は血液で感染する。
2.B型肝炎は性行為で感染する。
3.C型肝炎は生鮮魚介類の摂取で感染する。
4.E型肝炎は母子感染する。

解答

解説
1.× 血液で感染するのは、「A型肝炎」ではなくB型肝炎である。
A型肝炎とは、A型肝炎ウイルス(HAV)感染による疾患である。通常、感染した人の便で汚染されたものを摂取したときに感染する。人の便が流れている海で育った貝類の摂取で感染することもある。初期症状は倦怠感や発熱、頭痛、筋肉痛等で、一過性の急性肝炎が主症状であり、治癒後に強い免疫が残る。治療は、通常、安静を含めた対症療法が中心となる。

2.〇 正しい。B型肝炎は性行為で感染する
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することによって生じる肝臓の病気のことである。B型肝炎ウイルスは主に感染者の血液や体液を介して感染する。たとえば、注射針を感染者と共用した場合や、感染者と性行為をした場合などに感染する。しかし、B型肝炎にはワクチンがあるため、適切にワクチンを接種することによって感染を予防することができる。

3.× 生鮮魚介類の摂取で感染するは、「C型肝炎」ではなくA型肝炎である。
C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染することによって起こる肝臓の病気である。C型肝炎ウイルスは、主に感染者の血液や体液から感染する。感染の危険性がある行為としては注射器の使い回しや剃刀(かみそり)の共用などがある。そのほか、妊娠中の母親から胎児への感染や性行為による感染もあるが、感染する確率は低いと考えられている。

4.× 母子感染するは、「E型肝炎」ではなくB型肝炎である。
E型肝炎ウイルスとは、急性肝炎の原因となるRNAウイルスである。水や豚・猪のレバーなど食物を介して経口感染する。従来、経口伝播型非A非B型肝炎とよばれてきたウイルス性の急性肝炎で、その病原体はE型肝炎ウイルス(RNAウイルス)である。E型肝炎の致死率はA型肝炎の10倍といわれ、妊婦では実に20%に達することがある。

 

 

 

 

 

問題72 認知症の症状とその原因となる病態の組合せで正しいのはどれか。

1.トイレ以外で放尿する:失行
2.テレビのリモコンが使えない:失認
3.「財布がない」と大騒ぎをする:記銘力障害
4.料理ができない:見当識障害

解答

解説

失行

観念失行:使用すべき対象物(道具・物品)の使用障害である。
観念運動失行:習慣的な動作を言語命令に従ったり、模倣で遂行することができない状態である。

1.× トイレ以外で放尿するのは、「失行」ではなく認知症にみられる。
トイレ以外で放尿する原因として、①トイレの場所がわからない(見当識障害)、②トイレまで間に合わない(失禁)、③そこがトイレだと思いこんでいるなどがみられる。ちなみに、失行は、頭頂葉の障害で起こる。失行とは、麻痺や運動機能の障害はないが、意識した動作が正しく行えない状解である。

2.× テレビのリモコンが使えないのは、「失認」ではなく失行にみられる。
失認とは、1つまたは複数の感覚で物体を識別する能力が失われる障害である。視覚・聴覚・味覚・嗅覚・体性感覚などその感覚自体の異常がなく、注意や知能といった一般的な精神機能は保たれているが、対象を認知できないことである。

3.〇 正しい。「財布がない」と大騒ぎをする:記銘力障害
物盗られ妄想は、アルツハイマー型認知症に特徴的な症状である。物盗られ妄想とは、記銘力障害により物を置いた場所を忘れてしまい、そのことを誰かが物を盗ったと妄想的に考えることで成立する。

4.× 料理ができないのは、「見当識障害」ではなく遂行機能障害にみられる。
見当識障害とは、「今がいつか(時間)」「ここがどこか(場所)」がわからなくなる状態である。自分の周囲の状況や、 自分が置かれている状況(人や時間、 場所)が正しく理解できなくなる。

 

 

 

 

 

問題73 障害モデルとして用いられているのはどれか。

1.ADL
2.ICF
3.MMT
4.QOL

解答

解説

(※画像引用:Job Medley様HPより)

1.× ADL(Activities of Daily Living)
ADLとは、日常生活を送るために必要な基本的な動作を指す。起居動作・移乗・移動・食事・更衣・排泄・入浴・整容などの動作があげられる。

2.〇 正しい。ICFが障害モデルとして用いられている。
ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)は、人間の生活機能と障害分類法として2001年5月、世界保健機関(WHO)において採択された。これまでの ICIDH(国際障害分類、1980)が「疾病の帰結(結果)に関する分類」であったのに対し、ICF は「健康の構成要素に関する分類」であり、新しい健康観を提起するものとなった。生活機能上の問題は誰にでも起りうるものなので、ICF は特定の人々のためのものではなく、「全ての人に関する分類」である。

3.× MMT(manual muscle testing:徒手筋力テスト)
MMTとは、筋力を測定するための方法のひとつである。筋収縮のまったくみられない場合「0」、正常を「5」として6段階で評価する。

4.× QOL(Quality of life)
QOLとは、個人を主体としたその人自身の生命と生活の質のことである。人が人間らしく満足して生活しているか、自分らしい生活が送れているか「生活の質」を評価する概念である。

徒手筋力検査とは?

徒手筋力テスト(MMT:manual muscle testing)は、筋力を測定するための方法のひとつである。筋収縮のまったくみられない場合「0」、正常を「5」として6段階で評価する。

0(Zero:ゼロ):「筋収縮のまったくみられない」状態である。
1(trace:不可):「関節の運動は起こらないが、筋のわずかな収縮は起こる。筋収縮がみえる、または触知できる」状態である。
2(poor:可):「重力を除けば全可動域動かせる」状態である。
3(fair:良):「重力に打ち勝って全可動域動かせるが、抵抗があれば行えない」状態である。
4(good:優):「ある程度、徒手抵抗を加えても、全可動域動かせる」状態である。
5(normal:正常):「強い抵抗(最大抵抗)を加えても、完全に運動できる」状態である。

 

 

 

 

 

問題74 FIMに含まれる運動項目はどれか。

1.食事
2.調理
3.洗濯
4.買い物

解答

解説

FIMとは?

FIMとは、日常生活動作(ADL)を評価する尺度で、運動項目(13項目)と認知項目(5項目)の計18項目を7段階で採点する。【運動項目】セルフケア(食事、整容、清拭、更衣:上・下、トイレ動作)、移乗(ベッド・椅子・車椅子移乗、トイレ移乗、浴槽・シャワー移乗)、排泄コントロール(排尿管理、排便管理)、移動(歩行・車椅子、階段)、【認知項目】コミュニケーション(理解、表出)、社会的認知(社会的交流、問題解決、記憶)で評価する。

1.〇 正しい。食事は、FIMに含まれる運動項目である。

2~4.× 調理/洗濯/買い物
これらは、IADLの項目に含まれる。IADL(手段的日常生活動作)とは、日常生活を送るために必要な動作の中でも基本的なADLよりも複雑で高度な動作をいう。項目として、①電話を使用する能力、②買い物、③食事の準備、④家事、⑤洗濯、⑥移送の形式、⑦自分の服薬管理、⑧財産取り扱い能力である。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題75、問題76の問いに答えよ。
 「50歳の男性。主訴は体重減少。口渇、下肢の感覚鈍麻を認める。BMI30。空腹時血糖180mg/dl、HbA1c8.9%。」

問題75 本症例の神経学的所見で正しいのはどれか。

1.感覚障害は左右非対称である。
2.振動覚は正常である。
3.アキレス腱反射は亢進する。
4.発汗異常を認める。

解答

解説

本症例のポイント

・50歳の男性(主訴:体重減少)。
・口渇、下肢の感覚鈍麻。
・BMI30、空腹時血糖180mg/dl、HbA1c8.9%。
→本症例は、Ⅱ型糖尿病が疑われる。1型糖尿病の原因として、自己免疫異常によるインスリン分泌細胞の破壊などがあげられる。一方、2型糖尿病の原因は生活習慣の乱れなどによるインスリンの分泌低下である。運動療法の目的を以下に挙げる。

【糖尿病の診断基準】
・HbA1c:6.5%以上
・随時血糖値:200mg/dL以上
・空腹時血糖値:126mg/dL以上
・75g経口ブドウ糖負荷試験で2時間後血糖値:200mg/dL以上

1.× 感覚障害は、左右「非対称」ではなく対称である。
糖尿病の合併症(糖尿病性末梢神経障害)は、いわゆる手袋靴下型の感覚障害を引き起こす。左右対称に手袋・靴下型に異常感覚をきたしやすく、糖尿病足病変にも注意が必要である。

2.× 振動覚は、「正常」ではなく異常である。
3.× アキレス腱反射は「亢進」ではなく低下する。
振動覚の低下やアキレス腱反射の消失も糖尿病性末梢神経障害の特徴である。

4.〇 正しい。発汗異常を認める
糖尿病には、主に3大合併症として、糖尿病網膜症、糖尿病腎症、糖尿病神経障害があげられる。なかでも糖尿病性神経障害とは、糖尿病に合併する自律神経障害や末梢神経障害である。自律神経障害がみられるため、発汗異常を認める。ちなみに、末梢神経症状は、①眼筋・眼瞼挙筋麻痺、③下肢の腱反射低下、④振動覚障害、しびれなどが特徴である。上肢よりも下肢,近位部よりも遠位部が障害されやすい。感覚障害は、手部や足部に左右対称におこることが多い。

 

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