第28回(R2年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後116~120】

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問題116 着痹に対して補瀉を考えて刺鍼する場合の適切な手法はどれか。

1.抜鍼後に鍼孔を閉じる。
2.浅く入れ、後に深くする。
3.吸気時に刺入し、呼気時に抜く。
4.経絡の流注方向に沿って刺入する。

解答

解説

1~2.4.× 抜鍼後に鍼孔を閉じる/浅く入れ、後に深くする/経絡の流注方向に沿って刺入する。
これらは、補法である。補法は、比較的細い鍼を用い、ゆっくり刺入、目的の深さに達したなら催気、左右圧をかけ、速やかに抜鍼、と同時に鍼口を閉じる。鍼の方向は経の流れに随う。一方、瀉法は、比較的太めの鍼を用い、速やかに刺入、鍼を動かして邪気と生気を分け、鍼先の抵抗(ゆるみ)をみて下圧をかけ、徐に抜鍼、鍼口は閉じない。鍼の方向は経の流れに逆らう。

3.〇 正しい。吸気時に刺入し、呼気時に抜く
着痺(※読み:ちゃくひ)は、湿邪による痛みで、重だるい症状がでる。したがって、邪を除くために瀉法を用いる必要がある。

しびれの種類

神経痛などの痛みを「痺証(ひしょう)」と呼ぶ。
①着痺(※読み:ちゃくひ):湿邪による痛み。重だるい。
②熱痺(※読み:ねっぴ):熱邪による痛み。熱感や腫れ。
③痛痺(※読み:つうひ):寒邪による痛み。温めると症状は改善しやすい。
④行痹(※読み:こうひ):風邪による痛み。遊走性の痛み。
⑤尪痹(※読み:おうひ):加齢による痛み。関節の変形や体質慢性化がある。

 

 

 

 

 

問題117 頑固な腰痛に対する治療で、腰部に鍼を2本使用して行うのはどれか。

1.偶刺
2.斉刺
3.揚刺
4.傍鍼刺

解答

解説
1.× 偶刺
偶刺は、心痹のとき、胸部と背部の圧痛・反応点を前後から刺す。2本使用する。ちなみに、心痹とは、胸部に苦しい痛みがある病証のことである。

2.× 斉刺
斉刺は、寒気・痹気の範囲が狭く深部のとき、中心とその両側に刺す。3本使用する。ちなみに、寒気・痹気とは、いわゆる冷えからくる痛みのことである。

3.× 揚刺
揚刺は、寒気の範囲が広く大きいとき、その中心と、四隅から中心に向かって刺す。5本使用する。

4.〇 正しい。傍鍼刺は、頑固な腰痛に対する治療で、腰部に鍼を2本使用して行う。
傍鍼刺は、経過が長く同じ部位の痹のとき、痛みの中心とその傍らに刺す。2本使用する。

しびれの種類

神経痛などの痛みを「痺証(ひしょう)」と呼ぶ。
①着痺(※読み:ちゃくひ):湿邪による痛み。重だるい。
②熱痺(※読み:ねっぴ):熱邪による痛み。熱感や腫れ。
③痛痺(※読み:つうひ):寒邪による痛み。温めると症状は改善しやすい。
④行痹(※読み:こうひ):風邪による痛み。遊走性の痛み。
⑤尪痹(※読み:おうひ):加齢による痛み。関節の変形や体質慢性化がある。

 

 

 

 

 

問題118 次の文で示す症例の治療方針として調整すべき経絡で最も適切なのはどれか。
 「33歳の女性。主訴は全身の痛み。3年前から全身の疼痛に悩まされ、最近になって線維筋痛症と診断された。食欲がなく、雨天時には特に調子が悪く、起き上がることもできない。」

1.陰維脈
2.陰蹻脈
3.脾の大絡
4.胃の大絡

解答

解説

本症例のポイント

・33歳の女性(主訴:全身の痛み)。
・3年前:全身の疼痛に悩む。
・最近:線維筋痛症と診断。
・食欲がなく、雨天時には特に調子が悪く、起き上がることもできない。
→本症例は、「食欲がなく、雨天時には特に調子が悪く、起き上がることもできない」ことから、脾の症状がみられる。脾の主な症状として、食欲不振、腹臓、下痢、浮種、身体の重だるさ、やせ、腹鳴などがみられる。ちなみに、線維筋痛症とは、慢性的な身体広範囲にわたる疼痛と圧痛閾値低下を生じるリウマチ類縁疾患である。中高年女性に多い。

1.× 陰維脈(陽維脈)
陰維脈(陽維脈)は、陰経と陽経を連絡する。陽維脈は全身の表と関係が深く、陰維脈は全身の裏と関係が深い。

2.× 陰蹻脈(陽蹻脈)
陰蹻脈(陽蹻脈)は、下肢・体幹の両側の陰陽を調節する。下肢の内・外側に分布する陰経と陽経を協調させる。

3.〇 正しい。脾の大絡は、本症例の治療方針として調整すべき経絡である。
脾の大絡の絡穴は、大包(※読み:だいほう)である。大包は、側胸部、第6肋間、中腋窩線上に位置する。

4.× 胃の大絡
胃の大絡は、虚里である。虚里の動として、左乳下の動(心尖拍動)があげられる。

 

 

 

 

 

問題119 次の文で示す患者の病証に対する治療で最も適切な経脈はどれか。
 「38歳の女性。もともと喘息の持病があったが、最近、反抗期の息子に怒ってばかりでイライラし、症状が頻発し、咳も出るようになった。口が苦く咳をすると胸脇部が痛む。舌質紅、舌は薄黄苔、脈は弦数。」

1.手の太陰経と足の厥陰経
2.手の太陰経と足の太陰経
3.手の少陰経と足の厥陰経
4.手の少陰経と足の太陰経

解答

解説

本症例のポイント

・38歳の女性(持病:喘息)。
・最近:反抗期の息子に怒って、イライラ。
・症状:頻発し、咳も出る。
・口が苦く、咳をすると胸脇部が痛む。
・舌質紅、舌:薄黄苔、脈:弦数
→本症例は、肝火犯肺が疑われる。肝火上炎は、頭痛、眩暈、耳鳴、目赤、急躁、易怒、舌辺紅、脈弦数などである。犯肺とは、肺に異常が起こった状態を指す。肺の病証の主な症状は、咳嗽、喘息、息切れ、自汗、易感冒などである。したがって、肝と肺を対象に治療する。

1.〇 正しい。手の太陰経と足の厥陰経は、この患者の病証に対する治療である。
なぜなら、手の太陰()経、足の厥陰()経であるため。

2.× 手の太陰()経と足の太陰()経

3.× 手の少陰()経と足の厥陰()経

4.× 手の少陰()経と足の太陰()経

 

 

 

 

 

問題120 次の文で示す患者の病証として最も適切なのはどれか。
「42歳の女性。主訴は頻尿と排尿時痛。尿は途切れがちで黄色く混濁している。会陰部の違和感や残尿感もみられる。舌質紅、脈は滑数。」

1.脾腎両虚
2.肝腎陰虚
3.膀胱湿熱
4.大腸湿熱

解答

解説

本症例のポイント

・42歳の女性(主訴:頻尿排尿時痛
・尿:途切れがち、黄色く混濁。
・会陰部の違和感や残尿感もみられる。
舌質紅、脈:滑数
→本症例は、膀胱湿熱が疑われる。膀胱湿熱は、頻尿、尿意促迫、隆閉、排尿痛、血尿、小便短赤、舌質紅、脈滑数などである。

1.× 脾腎両虚
脾腎両虚とは、脾・腎の両方が虚していることをさす。血虚は、眩暈、顔面蒼白、動悸、不眠、健忘、目のかすみ、しびれ、痙攣、月経痛、経少、経色淡白、視力減退、爪の変形などをさす。

2.× 肝腎陰虚
肝腎陰虚とは、肝・腎が陰虚状態であることをさす。陰虚(陰熱)は、ほてり、のぼせ、五心煩熱、手足身熱、盗汗、頬部紅潮、消痩、潮熱、舌質(紅)、舌苔(少)、脈(細脈)などである。

3.〇 正しい。膀胱湿熱が、この患者の病証である。
膀胱湿熱は、頻尿、尿意促迫、隆閉、排尿痛、血尿、小便短赤、舌質紅、脈滑数などである。

4.× 大腸湿熱
大腸湿熱は、腹痛、裏急後重、肛門の灼熱痛、口渇、舌質紅、舌苔黄膩などである。

 

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