第28回(R2年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後121~125】

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問題121 次の文で示す症例に対して灸治療を行う場合に最も適切な経穴はどれか。
 「60歳の女性。主訴は陰部掻痒感。4日前に深酒をした。昨日より右膝内側から大腿部内側のひきつれ感がある。脈は左関上の浮数滑。」

1.脛骨内縁の後際、内果尖の上方3寸
2.前脛骨筋の外縁、外果尖の上方8寸
3.腓骨の前方、外果尖の上方5寸
4.脛骨内側面の中央、内果尖の上方5寸

解答

解説

本症例のポイント

・60歳の女性(主訴:陰部掻痒感)
・4日前:深酒。
・昨日:右膝内側から大腿部内側のひきつれ感。
・脈:左関上の浮数滑。
→本症例は、六部定位脈診の左関上であることから、の不調が疑われる。そのなかでも、症状は肝風内動が疑われる。肝風内動は、眩暈、頭痛、舌の強ばり、片麻痺、手足しびれ、人事不省などである。

1.× 脛骨内縁の後際、内果尖の上方3寸は、三陰交(※読み:さんいんこう)である。
足の太陰径である三陰交は、下腿内側(脛側)、脛骨内縁の後側、内果尖の上方3寸に位置する。

2.× 前脛骨筋の外縁、外果尖の上方8寸は、豊隆(※読み:ほうりゅう)である。
足の陽明経である豊隆(※読み:ほうりゅう)は、下腿前外側、前脛骨筋の外縁、外果尖の上方8寸に位置する。

3.× 腓骨の前方、外果尖の上方5寸は、光明(※読み:こうめい)である。
足の少陽経である光明(※読み:こうめい)は、下腿外側、腓骨の前方、外果尖の上方5寸に位置する。

4.〇 正しい。脛骨内側面の中央、内果尖の上方5寸が、最も適切な経穴である。
足の厥陰経である蠡溝(※読み:れいこう)は、下腿前内側、脛骨内側面の中央、内果尖の上方5寸に位置する。

六部定位脈診

【部位】
①左:浮・沈
寸:小腸・心
関:胆・肝
尺:膀胱・腎

②右:浮・沈
寸:大腸・肺
関:胃・脾
尺:三焦・心包

 

 

 

 

 

問題122 次の文で示す症例の治療穴として太衝とともに用いる原穴はどれか。
 「49歳の女性。半年ほど前から、めまい、顔のほてりが起こりやすく、汗が出やすい。腰や膝がだるく、力が入らない。閉経している。舌質紅、脈細数。」

1.太白
2.太渓
3.大陵
4.太淵

解答

解説

本症例のポイント

・49歳の女性。
・半年ほど前:めまい、顔のほてりが起こりやすく、汗が出やすい。
・腰や膝がだるく、力が入らない。
・閉経している。
・舌質紅、脈細数。
→本症例は、肝腎陰虚が疑われる。肝陰虚は、目乾、目渋、転筋、ほてり、のぼせ、盗汗、舌質紅、脈細数などがあげられる。腎陰虚は、手足心熱、のぼせ、耳鳴、難聴、腰膝酸軟、口乾、舌質紅、脈数などがあげられる。

1.× 太白(※読み:たいはく)
足の太陰経の原穴である太白は、足内側、第1中足指節関節の近位陥凹部、赤白肉際に位置する。

2.〇 正しい。太渓が、症例の治療穴として太衝とともに用いる原穴である。
足の少陰経の原穴である太渓(※読み:たいけい)は、足関節後内側、内果尖とアキレス腱の間の陥凹部に位置する。ちなみに、足の厥陰経の原穴である太衝(※読み:たいしょう)は、足背、第1~2指中足骨間、中足骨底接合部遠位の陥凹部、足背動脈拍動部に位置する。募穴は、期門(自)に位置する。

3.× 大陵(※読み:だいりょう)
手の厥陰心包経の原穴である大陵は、手関節前面、長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間、手関節掌側横紋上に位置する。

4.× 太淵(※読み:たいえん)
手の太陰経の原穴である太淵は、手関節前外側、橈骨茎状突起と舟状骨の間、長母指外転筋腱の尺側陥凹部に位置する。

 

 

 

 

 

問題123 次の文で示す症例で経脈を考慮した治療穴として最も適切なのはどれか。
 「19歳の男性。2か月前に左足関節の内がえし捻挫を起こし、今も痛みが取れない。イライラしやすく、左肩上部のつっぱり感がある。」

1.第1・第2足指間、みずかきの近位、赤白肉際
2.第2・第3足指間、みずかきの後縁、赤白肉際
3.第5中足指節関節外側の遠位陥凹部、赤白肉際
4.第4・第5足指間、みずかきの近位、赤白肉際

解答

解説

本症例のポイント

・19歳の男性。
・2か月前:左足関節内がえし捻挫を起こし、今も痛みが取れない。
・イライラしやすく、左肩上部のつっぱり感がある。
→本症例は、左肩上部から左足関節外側にかけた不調が考えられる。したがって、その走行となる足の少陽胆経が治療対象となる。

足関節内反捻挫とは、足を内側に捻って捻挫したものをさす。スポーツ(着地をした瞬間や切り返し動作などで足をついた瞬間)、歩行時や走行時で足をついた瞬間などに起こしやすい。足関節内反捻挫の場合は、外側の前距腓靭帯や前脛腓靭帯が損傷しやすい。したがって、外返しの作用を持つ筋肉を鍛えることが予防につながる。ちなみに、内がえし(内反)とは、内転・回外・底屈が組み合わされている運動のことである。

1.× 第1・第2足指間、みずかきの近位、赤白肉際は、行間である。
足の厥陰肝経は、行間(※読み:こうかん)を通る。

2.× 第2・第3足指間、みずかきの後縁、赤白肉際は、内庭である。
足の陽明胃経は、内庭(※読み:ないてい)を通る。

3.× 第5中足指節関節外側の遠位陥凹部、赤白肉際は、足通谷である。
足の太陽膀胱経は、足通谷(※読み:あしつうこく)を通る。

4.〇 正しい。第4・第5足指間、みずかきの近位、赤白肉際は、この症例で経脈を考慮した治療穴である。
なぜなら、足の少陽胆経は、侠渓を通るため。本症例は、左肩上部から左足関節外側にかけた足の少陽胆経の不調が考えられる。

 

 

 

 

 

問題124 腰部脊柱管狭窄症に対する診療においてSOAP形式で記録する場合、Aに該当するのはどれか。

1.間欠跛行距離300m
2.腰下肢への低周波鍼通電療法
3.ケンプ徴候陽性
4.神経根型

解答

解説

SOAP(subjective, objective, assessment, plan)とは?

SOAP(subjective, objective, assessment, plan)とは、叙述的経過記録方式の問題志向型記録のことである。

S=主観的データ(自覚症状などの患者の訴え)
O=客観的データ(他覚所見:診察所見・血液検査・検査所見)
A=評価(S・Oをもとにした患者の状態の評価・考察)
P=計画(Aをもとにした今後の検査・治療・患者教育の計画・方針)

で、経過を記録する。

1.× 間欠跛行距離300m
これは、歩行距離の評価結果であるためOである。ただ、もし患者の発言で「間欠跛行距離300mしか歩けない」などであったら、Sとなる。ちなみに、間欠性跛行とは、歩行を続けると下肢の痛みと疲労感が強くなり、足を引きずるようになるが、休むと再び歩けるというものである。「体幹前傾」ではなく休むと改善する。

2.× 腰下肢への低周波鍼通電療法
これは、評価のもとに治療計画を立てているためである。

3.× ケンプ徴候陽性
これは、評価結果であるためOである。Kempテスト(ケンプテスト)の陽性は、脊椎管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアを疑う。検者は患者の両肩に手を置き、患者の体幹を回旋しながら左右の斜め後方に伸展させる。

4.〇 正しい。神経根型が、Aに該当する。
A=評価(S・Oをもとにした患者の状態の評価・考察)は、S=主観的データ(自覚症状などの患者の訴え)やO=客観的データ(他覚所見:診察所見・血液検査・検査所見)を参考に、治療者が考察している項目である。様々な訴えや身体所見などから神経根型と判断している。ちなみに、頚部捻挫には、①捻挫型(筋肉)、②神経根損傷型、③自律神経障害型などがある。神経根損傷型の場合、支配範囲にある上肢の感覚異常や痛み、運動障害が引き起こされることがある。

 

 

 

 

 

問題125 筋肉痛に対する局所施術として、罹患筋と治療穴の組合せで正しいのはどれか。

1.三角筋:消濼
2.上腕三頭筋:臂臑
3.薄筋:膝関
4.後脛骨筋:築賓

解答

解説
1.× 消濼は、「三角筋」ではなく上腕三頭筋の治療穴である。
消濼(※読み:しょうれき)は、上腕後面、肘頭と肩峰角を結ぶ線上、肘頭の上方5寸に位置する。橈骨神経溝中に取る。

2.× 臂臑は、「上腕三頭筋」ではなく三角筋上腕二頭筋の治療穴である。
臂臑(※読み:ひじゅ)は、上腕外側、三角筋前縁、曲池の上方7寸に位置する。

3.〇 正しい。膝関は、「薄筋」や半腱様筋の治療穴である。
膝関(※読み:しつかん)は、下腿脛骨面、脛骨内側顆の下方、陰陵泉の後方1寸に位置する。

4.× 築賓は、「後脛骨筋」ではなくヒラメ筋の治療穴である。
築賓(※読み:ちくひん)は、下腿後内側、ヒラメ筋とアキレス腱の間、内果尖の上方5寸に位置する。

 

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