第28回(R2年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後126~130】

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問題126 次の文で示す患者の患側の徒手検査所見で、みられる可能性が最も高いのはどれか。
 「60歳の男性。2か月前から右頸肩上肢に痛みがある。近医にて頸椎症によるC6神経根障害と言われた。」

1.モーレイテスト陽性
2.腕橈骨筋反射減弱
3.ホフマン反射陽性
4.中指の触覚鈍麻

解答

解説

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

1.× モーレイテスト陽性
Morley test(モーレイテスト、モーリーテスト)は、胸郭出口症候群の誘発テストである。方法は、検者が患者の鎖骨上縁の斜角筋三角部を指先で1分間圧迫する。患側頚部から肩・腕および手指にかけての痛み・しびれ・だるさなどが出現すれば陽性である。

2.〇 正しい。腕橈骨筋反射減弱が、みられる可能性が最も高い。
腕橈骨筋反射の【中枢】C5~C6(橈骨神経)、【検査法】手首をつかんで肘を軽く屈曲位にして、前腕を回内外中間位か、やや回内位にし、橈骨下端を直接に叩打する。【判定】肘関節屈曲と前腕の回外運動が起これば反射出現(+)。手指の屈曲は起こっても弱い。ちなみに、腕橈骨筋の【起始】上腕骨外側縁の下部、外側上腕筋間中隔、【停止】橈骨遠位下端、茎状突起、【作用】肘関節屈曲、回内位での回外、回外位での回内、【神経】橈骨神経:C5,C6である。

3.× ホフマン反射陽性
Hoffmann反射陽性(ホフマン反射)とは、最も弱い刺激によって惹起される指の屈曲反射のことであり、これによって指の屈曲が出現する場合は、反射は非常に増強しており、病的であると判断される。筋萎縮性側索硬化症は、上位運動ニューロンおよび下位運動ニューロンが系統的に障害される進行性疾患である。そのため、病的反射であるHoffmann反射が陽性となる。

4.× 中指の触覚鈍麻
中指の触覚は正中神経が支配領域である。

 

 

 

 

 

問題127 次の文で示す症状に対して罹患神経近傍へ施術する場合、最も適切な経穴はどれか。
 「手の骨間筋の萎縮がみられ、フローマン徴候陽性である。」

1.尺沢
2.手五里
3.小海
4.内関

解答

解説

本症例のポイント

・手の骨間筋の萎縮
・フローマン徴候陽性
→本症例は、尺骨神経麻痺が疑われる。尺骨神経麻痺とは、尺骨神経損傷により手掌・背の尺側に感覚障害やFroment徴候陽性、鷲手がみられる麻痺である。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。

1.× 尺沢(※読み:しゃくたく)
尺沢は、肘前部、肘高横紋上、上腕二頭筋腱外方の陥凹部に位置する。上腕二頭筋の治療穴である。

2.× 手五里(※読み:てごり)
手五里は、上腕外側、曲池と肩隅を結ぶ線上、肘窩横紋の上方3寸に位置する。深部に橈骨神経幹が通る。上腕三頭筋の治療穴である。

3.〇 正しい。小海(※読み:しょうかい)が、罹患神経近傍へ施術する場合、最も適切な経穴である。
小海は、肘後内側、肘頭と上腕骨内側上顆の間の陥凹部に位置する。尺側手根屈筋の治療穴である。

4.× 内関(※読み:ないかん)
内関は、前腕前面、長掌筋腱と橈側手根屈筋腱の間、手関節掌側横紋の上方2寸に位置する。浅指屈筋、長掌筋、橈側手根屈筋の治療穴である。

 

 

 

 

 

問題128 罹患筋支配の神経近傍への刺鍼を行う場合、症状と治療穴の組合せで最も適切なのはどれか。

1.閉眼困難:完骨
2.足関節外がえし困難:陽陵泉
3.手関節背屈困難:曲沢
4.近位指節間関節屈曲困難:手五里

解答

解説
1.× 完骨は、「閉眼困難(眼輪筋)」ではなく胸鎖乳突筋頭板状筋の治療穴である。
完骨(※読み:かんこつ)は、前頸部、乳様突起の後下方、陥凹部に位置する。

2.〇 正しい。足関節外がえし困難(長腓骨筋):陽陵泉
陽陵泉(※読み:ようりょうせん)は、下腿外側、腓骨頭前下方の陥凹部に位置する。長腓骨筋の治療穴である。ちなみに、長腓骨筋の【起始】腓骨頭、腓骨体外側面の上半、一部は筋膜と前下腿筋間中隔、【停止】第1,2中足骨底、内側楔状骨、【作用】足関節底屈、外返し、【神経】浅腓骨神経である。

3.× 曲沢は、「手関節背屈困難」ではなく上腕二頭筋の治療穴である。
曲沢(※読み:きょくたく)は、肘前面、肘窩横紋上、上腕二頭筋腱内方の陥凹部に位置する。上腕動脈拍動部で、尺沢(肺経)と少海(心経)とのほぼ中点にあたる。

4.× 手五里は、「近位指節間関節屈曲困難」ではなく上腕三頭筋の治療穴である。
手五里(※読み:てごり)は、上腕外側、曲池と肩隅を結ぶ線上、肘窩横紋の上方3寸に位置する。深部に橈骨神経幹が通る。

 

 

 

 

 

問題129 罹患筋への治療穴として天泉を用いる疾患で、陽性となる可能性が最も高い理学検査はどれか。

1.スピードテスト
2.ペインフルアークサイン
3.フローマン徴候
4.ティアドロップ徴候

解答

解説

天泉(※読み:てんせん)

手の厥陰心包経である天泉は、上腕前面、上腕二頭筋長頭と短頭の間、腋窩横紋前端の下方2寸に位置する。上腕二頭筋の治療穴である。

1.〇 正しい。スピードテストが、罹患筋への治療穴として天泉を用いる疾患で、陽性となる可能性が最も高い。
Speedテスト(スピードテスト)は、上腕二頭筋長頭腱の炎症の有無をみる。結節間溝部に痛みがあれば陽性である。【方法】被検者:座位で、上肢を下垂・肩関節外旋位から、上肢を前方挙上(肩関節屈曲)してもらう。検者:肩部と前腕遠位部を把持し、上肢に抵抗をかける。

2.× ペインフルアークサイン
肩腱板損傷では、主に棘上筋腱が最も損傷・断裂しやすく、96.6%を占める。Painful arc sign(ペインフルアークサイン)は、患者さんの力により外転方向に挙上してもらう。棘上筋が損傷していれば60°〜120°の間で疼痛を感じ、それ以外の角度では疼痛を感じない。

3.× フローマン徴候
Froment徴候(フローマン徴候)は、尺骨神経麻痺の症状としてみられる。Froment徴候(フローマン徴候)とは、母指の内転ができなくなり、母指と示指で紙片を保持させると母指が屈曲位をとることである。

4.× ティアドロップ徴候
正中神経麻痺で、tear drop sign(ティア ドロップ サイン)または、perfect O(パーフェクト Oテスト)や、Phalen(ファレンテスト)が陽性となる。perfect O(パーフェクト Oテスト)とは、親指と人差し指の先端をくっつけて丸形を作る検査である。

 

 

 

 

 

問題130 次の文で示す症例について、陽性となる可能性が最も高い理学検査はどれか。
 「45歳の男性。2か月前から左腰下肢に痛みを感じる。前かがみで痛みが増強する。左足底部の知覚鈍麻、アキレス腱反射は減弱。間欠跛行はみられない。」

1.FNSテスト
2.ボンネットテスト
3.ゲンスレンテスト
4.アリス徴候

解答

解説

本症例のポイント

・45歳の男性。
・2か月前から左腰下肢に痛みを感じる。
前かがみで痛み:増強
・左足底部:知覚鈍麻、アキレス腱反射:減弱。
・間欠跛行:みられない
→本症例は、L5‒S1間の椎間板ヘルニアが疑われる。椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

ちなみに、腰部脊柱管狭窄症とは、脊柱管が腰部で狭くなる病気である。そのため、腰から下の神経に関連する症状(しびれや疼痛、脱力など)が出現する。歩行時には腰痛があまり強くならない事が多く、歩行と休息を繰り返す間欠性破行が特徴である。

1.× FNSテスト
FNSテスト(大腿神経伸展テスト:Femoral Nerve Stretching Test)は、L3・L4の神経根障害(腰椎椎間板ヘルニア)で陽性となる。腹臥位になってもらい、膝を曲げて太ももを背中側に挙げる。ふとももの前に痛みが誘発された場合、陽性となる。第2/3腰椎間、第3/4腰椎間の椎間板ヘルニアに特徴的な検査である。本症例の場合、L5‒S1間(支配神経根S1)の障害が考えられるため、FNSテストが陽性となる可能性は低い。

2.〇 正しい。ボンネットテストが、陽性となる可能性が最も高い。
なぜなら、本症例は、前かがみで痛みが増強するため(SLRテストと同様の肢位となる)。Bonnetテスト(ボンネットテスト)は、根性坐骨神経痛の有無を調べるテストである。SLRの増強法の一つである。SLRテスト(下肢伸展挙上テスト)は、脊髄後根で圧迫を受ける疾患(坐骨神経痛、椎間板ヘルニアなど)の有無、ハムストリングス損傷や短縮をみる。背臥位で、下肢を挙上し痛みが生じたら陽性である。ちなみに、混合しやすいものにKボンネットテストがある。これが、梨状筋症候群の診断に使用される誘発テストである。

3.× ゲンスレンテスト
Gaenslenテスト(ゲンスレンテスト)は、仙腸関節の障害をみるテストである。被験者は検査側をベッドに垂らし背臥位をとってもらう。健側の股・膝関節を屈曲させ、膝の上で両手で組み股・膝関節を徐々に屈曲する。そのときに、仙腸関節に疼痛があれば陽性と判断する。

4.× アリス徴候
アリス徴候は、背臥位で両膝を屈曲しながら、股関節を屈曲して両下腿をそろえ、左右の膝の高さを比べる診察法である。膝の高さに差があるときに陽性と診断し、股関節脱臼を疑う。これは、股関節の脱臼が生じると大腿骨頭が寛骨臼の後方に位置するため、左右差が生じる。一方、両側脱臼例や下肢に骨性の短縮が存在する症例の場合、有効ではないため注意が必要である。

 

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