第28回(R2年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後131~135】

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問題131 咬筋の過緊張による顎関節症に対する局所治療穴として最も適切なのはどれか。

1.頬車
2.上関
3.地倉
4.顴髎

解答

解説

咬筋の治療穴

頬車(※読み:きょうしゃ):顔面部、下顎角の前上方1横指(中指)

下関(※読み:げかん):顔面部、類骨弓の下縁中点と下顎切痕の間の陥凹部

1.〇 正しい。頬車が、咬筋の過緊張による顎関節症に対する局所治療穴として最も適切である。
頬車(※読み:きょうしゃ)は、顔面部、下顎角の前上方1横指(中指)に位置する。
下関(※読み:げかん)は、顔面部、類骨弓の下縁中点と下顎切痕の間の陥凹部に位置する。

2.× 上関は、側頭筋の治療穴である。
上関(※読み:じょうかん)は、頭部、頬骨弓中央の上際陥凹部に位置する。別名は、客主人であり、頻骨弓をはさんで、下関(胃経)の直上にあたる。

3.× 地倉は、口輪筋の治療穴である。
地倉(※読み:ちそう)は、顔面部、口角の外方4分(指寸)に位置する。

4.× 顴髎
顴髎(※読み:けんりょう)は、顔面部、外眼角の直下、頬骨下方の陥凹部に位置する。下関(胃経)の前方にあたる。

 

 

 

 

 

問題132 高齢者に対する評価法とその目的との組合せで正しいのはどれか。

1.バーセルインデックス:認知症の評価
2.改訂PGCモラールスケール:歩行機能の評価
3.MMSE:ADLの評価
4.ハミルトン評価尺度:抑うつ状態の評価

解答

解説
1.× バーセルインデックスは、「認知症」ではなく日常生活活動(ADL)の評価である。
バーセル・インデックスの評価項目は、10項目(①食事、②椅子とベッド間の移乗、③整容、④トイレ動作、⑤入浴、⑥移動、⑦階段昇降、⑧更衣、⑨排便コントロール、⑩排尿コントロール)あり、100点満点で評価され

2.× 改訂PGCモラールスケールは、「歩行機能」ではなく主観的QOLの評価である。
改訂PGCモラールスケールとは、Lawtonによって開発された尺度で、「I:心理的動揺」「II:老いに対する態度」「III:孤独感・不満足感」を下位概念としたモラールを測定する尺度である。ちなみに、モラールとは、士気ややる気とも訳され、集団の目標達成のために積極的に貢献しようとする意欲・態度のことを表す。

3.× MMSEは、「ADL」ではなく認知症の評価である。
MMSE(Mini-Mental State Examination)は、認知障害(認知症・せん妄・健忘性障害)のスクリーニングとして国際的によく用いられている検査である。内容は、見当識・記銘力・注意と計算・想起・言語・組み立ての各項目があり、30点満点で評価する。26点以下で軽度認知障害の疑いを示し、23点以下では認知障害の可能性が高いことを示す。

4.〇 正しい。ハミルトン評価尺度:抑うつ状態の評価
HRS-D(Hamilton rating scale for depression:ハミルトンうつ病評価尺度)は、うつ病にみられる17の項目についてその重症度を医療者が評価するものである。

 

 

 

 

 

問題133 徒手検査法の陽性所見と罹患筋への治療穴との組合せで適切なのはどれか。

1.トンプソンテスト:豊隆
2.トムゼンテスト:支正
3.足関節内反ストレステスト:照海
4.グラスピングテスト:膝陽関

解答

解説
1.× 豊隆は、前脛骨筋長指伸筋の治療穴である。
豊隆(※読み:ほうりゅう)は、下腿前外側、前脛骨筋の外縁、外果尖の上方8寸に位置する。一方、Thompsonテスト(トンプソンテスト)は、アキレス腱断裂を診るテストである。患者さんに立て膝をついてもらい、膝を90度曲げ、ふくらはぎを握る。足首より下の部分が動かなければ、陽性となる。

2.× 支正は、尺側手根屈筋の治療穴である。
支正は、前腕後内側、尺骨内縁と尺側手根屈筋の間、手関節背側横紋の上方5寸に位置する。尺側手根屈筋の【起始】上腕頭:内側上顆と前腕筋膜、尺骨頭:肘頭から尺骨中部までの後縁、【停止】豆状骨、豆鉤靭帯、豆中手靭帯、有鉤骨、第5中手骨底、【作用】手関節の掌屈、尺屈、【支配神経】尺骨神経:C7~T1である。一方、Thomsen(トムセン)テストの陽性は、テニス肘(上腕骨外側上顆炎)を疑う。方法は、握りこぶしにして手関節を背屈させ、検者が掌屈させようとする。テニス肘とは、上腕骨外側上顆炎ともいい、手首を伸ばす筋肉に炎症が起こる病気である。はっきりした原因は不明であるが、主に手首を伸ばす筋肉に負担がかかることが関係していると考えられている。主な症状は、肘の外側から前腕の辺りに痛みである。

3.× 足関節内反ストレステスト:照海は、後脛骨筋長趾伸筋長母趾伸筋の治療穴である。
照海(※読み:しょうかい)は、足内側、内果尖の下方1寸、内果下方の陥凹部に位置する。一方、足関節内反ストレステストの陽性は、足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)の損傷が疑われる。

4.〇 正しい。グラスピングテスト:膝陽関
膝陽関は、大腿二頭筋の治療穴である。膝陽関(※読み:ひざようかん)は、膝外側、大腿二頭筋腱と腸脛靭帯の間の陥凹部、大腿骨外側上顆の後上縁に位置する。Graspingテスト(グラスピングテスト)が陽性であることからも腸脛靱帯炎が疑われる。腸脛靱帯炎とは、ランナー膝ともいい、膝の屈伸運動を繰り返すことによって腸脛靱帯が大腿骨外顆と接触して炎症(滑膜炎)を起こし、疼痛が発生している状態を指す。特にマラソンなどの長距離ランナーに好発し、ほかにバスケットボール、水泳、自転車、エアロビクス、バレエ等にも多い。ちなみに、Graspingテスト(グラスピングテスト)は、腸脛靭帯を圧迫してテンションをかけた状態で、膝の曲げ伸ばしで症状が再現されるかどうかで判断する。

外側靭帯とは?

外側靭帯は、前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯を合わせていう。

【足関節靭帯損傷の受傷原因】
足関節の内反や外反が強い外力でかかる捻挫が最も多い。
内反捻挫は、足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)が損傷される。
外反捻挫は、足関節内側靭帯(三角靭帯)が損傷される。

【頻度】
外反捻挫より内反捻挫が多い。
足関節外側靭帯(前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯)の中でも前距腓靭帯が多く損傷される。
なぜなら、足関節の可動域が、外反より内反の方が大きく、内反・底屈に過強制力がかかるため。

 

 

 

 

 

問題134 次の文で示す患者の罹患筋に対する治療穴として最も適切なのはどれか。
 「20歳の男性。ラグビーで反復性の肩関節脱臼を起こしている。先日、脱臼して整復されたが、肩の外側にしびれと筋の脱力感による挙上制限がみられた。」

1.巨骨
2.秉風
3.臂臑
4.天宗 

解答

解説

本症例のポイント

・20歳の男性(ラグビー)。
反復性の肩関節脱臼
・先日:脱臼して整復された。
肩の外側にしびれと筋の脱力感による挙上制限がみられた。
→反復性肩関節脱臼とは、一度大きなけがをして肩を脱臼した方が、その後脱臼を繰り返してしまうことである。膝関節も反復性脱臼する可能性はあるが、特に肩関節が最も一般的である。

1.× 巨骨は、棘上筋の治療穴である。
巨骨(※読み:ここつ)は、肩周囲部、鎖骨の肩峰端と肩甲棘の間の陥凹部に位置する。

2.× 秉風は、棘上筋や僧帽筋の治療穴である。
秉風(※読み:へいふう)は、肩甲部、棘上窩、肩甲棘中点の上方に位置する。

3.〇 正しい。臂臑が、この患者の罹患筋に対する治療穴である。
なぜなら、本症例は、肩のがいそくにしびれをきたしているため。三角筋が治療の対象として望ましい。臂臑は、三角筋や上腕二頭筋の治療穴である。臂臑(※読み:ひじゅ)は、上腕外側、三角筋前縁、曲池の上方7寸に位置する。

4.× 天宗は、棘下筋の治療穴である。
天宗(※読み:てんそう)は、肩甲部、肩甲棘の中点と肩甲骨下角を結んだ線上、肩甲棘から1/3にある陥凹部に位置する。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題135、問題136の問いに答えよ。
 「71歳の男性。100mの歩行で左下腿後面に絞扼痛が出現、休息で軽快。仰臥位で両下肢を挙上させ30秒足趾を屈伸させると患側足底部が白くなる。SLRテスト陰性。」

問題135 身体診察で患側下肢にみられる所見はどれか。

1.ケンプ徴候陽性
2.足底部の触覚鈍麻
3.アキレス腱反射減弱
4.足背動脈拍動減弱

解答

解説

本症例のポイント

・71歳の男性。
・100m歩行:左下腿後面に絞扼痛が出現、休息で軽快
・仰臥位:両下肢を挙上させ30秒足趾を屈伸させると患側足底部が白くなる。
・SLRテスト:陰性
→本症例は、閉塞性動脈硬化症が疑われる。①間欠性跛行、②循環不全、③神経症状が認められないことから考えられる。閉塞性動脈硬化症は、手や足の血管の動脈硬化により、狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こして、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気である。下肢の慢性虚血による間欠性跛行が発症症状であることが多く、虚血が進行すると壊死に至る。50~70歳代の男性、糖尿病症例に多くみられる。太ももの付け根(大腿動脈)や足の甲(足背動脈)を触診し、脈が触れないことで診断し、確定診断には血管造影検査を行う。

1.× ケンプ徴候陽性
Kempテスト(ケンプテスト)の陽性は、脊椎管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアを疑う。検者は患者の両肩に手を置き、患者の体幹を回旋しながら左右の斜め後方に伸展させる。腰部脊柱管狭窄症とは、脊柱管が腰部で狭くなる病気である。そのため、腰から下の神経に関連する症状(しびれや疼痛、脱力など)が出現する。歩行時には腰痛があまり強くならない事が多く、歩行と休息を繰り返す間欠性破行が特徴である。

2.× 足底部の触覚鈍麻/アキレス腱反射減弱
これらは椎間板ヘルニアの各レベルの症状である。椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。
L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

4.〇 正しい。足背動脈拍動減弱は、身体診察で患側下肢にみられる所見である。
なぜなら、本症例は、仰臥位にて両下肢を挙上させ30秒足趾を屈伸させると患側足底部が白くなるため。つまり、循環不全が考えられる。

閉塞性動脈硬化症とは?

閉塞性動脈硬化症は、手や足の血管の動脈硬化により、狭窄(血管が狭くなる)や閉塞(血管が詰まる)を起こして、血液の流れが悪くなり、手先や足先へ栄養や酸素を十分に送り届けることができなくなる病気である。下肢の慢性虚血による間欠性跛行が発症症状であることが多く、虚血が進行すると壊死に至る。50~70歳代の男性、糖尿病症例に多くみられる。太ももの付け根(大腿動脈)や足の甲(足背動脈)を触診し、脈が触れないことで診断し、確定診断には血管造影検査を行う。

【病期】
Ⅰ期:「しびれ」「冷感」。
Ⅱ期:「間歇性跛行(かんけつせいはこう)」。一定距離を歩くと脚が傷み、休むとまた歩けるようになる。
Ⅲ期:「安静時疼痛」。安静にしていても脚に痛みが生じる。
Ⅳ期:「潰瘍」「壊疽」。血液が足の先に行かないので、足に潰瘍ができ、ついには足が腐ってしまう。

【治療】
まず動脈硬化の原因である糖尿病・高血圧・脂質異常症の治療を行う。喫煙者は禁煙する。初期の手足の冷感やしびれには血管拡張薬や血液を固まりにくくする薬(抗血小板剤)を用いる。また歩くことによって、側副血行路が発達し血行の流れの改善をはかる。

(※参考:「閉塞性動脈硬化症」厚生労働省HPより)

 

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