第28回(R2年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後146~150】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

問題146 内臓痛について誤っているのはどれか。

1.Aβ線維により伝達される。
2.痛みの局在が不明瞭である。
3.脊髄後角の広作動域ニューロンに接続する。
4.関連痛の出現に関与する。

解答

解説


1.× Aβ線維により伝達されるのは、触圧覚である。
内臓痛覚の受容器も自由神経終末で、求心性線維にはⅢ、Ⅳ群(Aδ、C)線維が混在する。

2.〇 正しい。痛みの局在が不明瞭である。
内臓痛とは、内臓が何らかのダメージを受けることによって生じる痛みのことである。痛む部位がはっきりせず、鈍い痛みや押されるような痛みとして表現されることが特徴である。原因として、管腔臓器の腫瘍圧迫による閉塞、消化管内圧の上昇、固形臓器の被膜伸展により生じる。

3.〇 正しい。脊髄後角の広作動域ニューロンに接続する。
広作動域ニューロンとは、非侵害刺激を含めた色々の種類の刺激を受け入れるC線維(ポリモーダル受容器)が受けた刺激を脳へ中継する神経細胞のことである。脊髄Ⅴ層に存在する。一次感覚細胞から広作動域ニューロンへの痛みの信号はサブスタンスPやグルタミン酸などの興奮性アミノ酸によって伝達される。

4.〇 正しい。関連痛の出現に関与する。
関連痛とは、神経線維の走行の関係で生じる痛みである。つまり、原因とは離れた部位に感じる痛みである。心筋梗塞では左肩・上腕部痛などとして自覚される。

内臓痛とは?

内臓痛とは、内臓が何らかのダメージを受けることによって生じる痛みのことである。痛む部位がはっきりせず、鈍い痛みや押されるような痛みとして表現されることが特徴である。原因として、管腔臓器の腫瘍圧迫による閉塞、消化管内圧の上昇、固形臓器の被膜伸展により生じる。

一方、体性痛とは、体性疼痛ともいい、皮膚・骨格筋・関節・腹膜・胸膜などが物理的に刺激されて起こる痛みのことである。部位が不明瞭な持続する鋭い痛みが特徴である。持続的な鋭い痛みで圧痛点と患部が一致する。筋性防御などの腹膜刺激症状を伴うこともあり、身体を動かすことにより痛みが増強されることがある。

 

 

 

 

 

問題147 痛覚の中枢内伝導路で情動行動、自律神経機能や痛みの制御の調節に関与すると考えられているのはどれか。

1.後索路
2.脊髄網様体路
3.前脊髄視床路
4.新脊髄視床路

解答

解説
1.× 後索路
後索路は、深部感覚である。後索路は、脊髄後角から同側の後索を通り、延髄でニューロンを換え、左右交差し、内側毛帯を通り、視床という経路となる。

2.〇 正しい。脊髄網様体路が、痛覚の中枢内伝導路で情動行動、自律神経機能や痛みの制御の調節に関与すると考えられている。
脊髄網様体路は、脊椎動物の姿勢や歩行(移動)動作に関与する運動性下行路である。

3.× 前脊髄視床路
前脊髄視床路(粗大な触覚・圧覚)は、感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄前索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野である。

4.× 新脊髄視床路
新脊髄視床路(二次求心線維)は、脊髄から視床を通って大脳皮質に刺激を伝える速くて鋭い急性の痛みを伝達するものである。

まとめ

聴覚:蝸牛神経→蝸牛神経核→上オリーブ核→中脳下丘→内側膝状体→上側頭回

視覚:視神経→視交叉→外側膝状体→視放線→視覚野

・外側皮質脊髄路 (錐体路・運動)
大脳皮質—放線冠—内包後脚—中脳の大脳脚—橋縦束―延髄で錐体交叉—脊髄の側索

・前皮質脊髄路(錐体路の一部・運動)
大脳皮質—放線冠—内包後脚—中脳の大脳脚—橋縦束—延髄—交叉せずに脊髄前索を下降(10~25%程度)
重要事項①延髄で交差せずに同側に下降すること、②支配はL2まで。

・前脊髄視床路(粗大な触覚・圧覚)
感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄前索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野

・外側脊髄視床路(温痛覚・粗大触圧覚)
感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄側索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野

 

 

 

 

 

問題148 刺鍼時のフレア形成に関与するのはどれか。

1.脊髄後角でのガンマアミノ酪酸(GABA)放出
2.交感神経節後線維の興奮
3.軸索反射によるCGRP放出
4.視床腹側基底核群の興奮

解答

解説

フレア現象とは?

フレア現象とは、お灸の熱刺激によって細胞レベルで微細な火傷が起こり、神経から脳に「ここにケガがあるから治すために血液を送ってください」と連絡が入ることで起こる軸索反射のこと。軸索反射とは、末梢神経の軸索上で起こる反射様現象である。神経末端に生じた興奮が神経の分枝に沿って逆行性に伝播する現象のことをさす。したがって、鋮刺激によりポリモーダル受容器が興奮すると、軸索反射によって受容器末端から神経伝達物質が放出され、コリン作動性神経の末梢血管に働いて(血管拡張(フレア)、膨疹(浮腫))が生じる。※神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。

1.× 脊髄後角でのガンマアミノ酪酸(GABA)放出
ガンマアミノ酪酸(GABA)の作用が増強すると他の神経の活動を抑制するため、不安や痛覚が軽減するといわれている。

2.× 交感神経節後線維の興奮
交感神経の節後線維の興奮は、血圧の上昇、心拍数の上昇、筋肉の緊張、発汗の促進などの作用が起こる。自律神経の作用であるため、フレア形成(軸索反射)とは異なる。

3.〇 正しい。軸索反射によるCGRP放出が、刺鍼時のフレア形成に関与する。
軸索反射とは、末梢神経の軸索上で起こる反射様現象である。神経末端に生じた興奮が神経の分枝に沿って逆行性に伝播する現象のことをさす。したがって、鋮刺激によりポリモーダル受容器が興奮すると、軸索反射によって受容器末端から神経伝達物質が放出され、コリン作動性神経の末梢血管に働いて(血管拡張(フレア)、膨疹(浮腫))が生じる。※神経伝達物質には(CGRPサブスタンスP)が考えられている。

4.× 視床腹側基底核群の興奮
視床腹側基底核群は、痛覚の伝導路のひとつである。視床とは、嗅覚以外のあらゆる感覚情報(体性感覚、痛覚、視覚、聴覚、味覚など)を大脳皮質に送る一大中継基地を担う。

 

 

 

 

 

問題149 鍼鎮痛の発現に関与する部位はどれか。

1.脊髄前角
2.歯状核
3.中脳水道周囲灰白質
4.赤核

解答

解説

D-フェニルアラニンとは?

D-フェニルアラニンを鍼鎮痛の動物実験で前投与すると、鍼鎮痛の発現効果を促す。エンケファリン分解酵素の阻害剤とされている。

鍼鎮痛とは、鍼刺激によって体内の鎮痛系が活発になることによって起こる。鎮痛系には、脳や脊髄などの中枢神経が大きく関わっており、体内の麻薬様物質(オピオイド)が痛み信号の脳への伝達を抑える。

1.× 脊髄前角は錐体路である。
錐体路とは、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。障害されることで片麻痺などの症状をきたす。

2.× 歯状核は、小脳にある。
歯状核は、小脳半球にある核で随意運動の制御に関与する。ちなみに、その他に①球状核、②栓状核、③室頂核がある。また、①球状核、②栓状核で中位核とも呼ばれる。

3.〇 正しい。中脳水道周囲灰白質が、鍼鎮痛の発現に関与する部位である。
水道周囲灰白質とは、中脳水道の周囲に広がる細胞集団で、大脳辺縁系や視床下部などから情動やそれに伴う自律神経性の入力を、脳幹や脊髄からは感覚性入力を受け、これらの情報を統合して、適切な行動や自律神経系活動の発現に関与する。

4.× 赤核
赤核とは、不随意の運動の調節(赤核振戦:粗大な動作で誘発される振戦)を担う。赤核脊髄路とは、運動野と小脳からの求心性線維を受け取るため、間脳と運動ニューロンを通じて脊髄の活動に影響を与える錐体外路として機能するものである。

 

 

 

 

 

問題150 鍼の末梢性鎮痛効果に最も関与するのはどれか。

1.アドレナリン受容体
2.ムスカリン受容体
3.ヒスタミン受容体
4.アデノシンA1受容体 

解答

解説
1.× アドレナリン受容体
α1アドレナリン受容体は、中枢神経系、心臓血管系や下部尿路などの組織に広く分布し、交感神経性の反応に関与している。さらに高血圧、心肥大、排尿障害などの病態に関与している。

2.× ムスカリン受容体
アセチルコリン受容体には、①イオンチャネル型のニコチン受容体と②代謝型受容体であるムスカリン受容体がある。副交感神経性の反応に関与している。

3.× ヒスタミン受容体
ヒスタミン受容体は、ヒスタミンの受け皿として働くタンパク質である。ヒスタミンとは、アレルギー様症状を呈する化学物質である。組織周辺の肥満細胞や血中の好塩基球がアレルギー反応の際に分泌される。血圧降下血管透過性亢進、血管拡張作用がある。

4.〇 正しい。アデノシンA1受容体は、鍼の末梢性鎮痛効果に最も関与する。
アデノシンとは、心臓、骨格筋、脳、肝臓などの種々の臓器の血管拡張を司っており、特に冠血管については、主として直径50~200μmの抵抗血管を拡張し、冠血流量増加をもたらすことから、重要な冠血流量調節因子と考えられている。また、アデノシンが末梢の痛覚受容器に存在するアデノシンA1受容体に作用すると鎮痛が起こる。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)