第28回(R2年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前61~65】

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問題61 血液疾患と症状の組合せで正しいのはどれか。

1.鉄欠乏性貧血:末梢神経障害
2.悪性リンパ腫:舌炎
3.急性白血病:出血傾向
4.再生不良性貧血:リンパ節腫脹

解答

解説

貧血の種類

①小球性低色素性貧血:鉄欠乏性血・鉄芽球性血・サラセミア・異常へモグロビン症・慢性炎症による貧血など。
②正球性正色素性貧血:再生不良性貧血・溶血性貧血・遺伝性球状赤血球症・自己免疫性溶血性貧血・発作性夜間血色素尿症など。
③大球性貧血(大球性正色素性貧血)
巨赤芽球性貧血:悪性貧血・胃切除後貧血・葉酸欠乏性貧血・ビタミンB12欠乏性貧血など。
非巨赤芽球性貧血:溶血性貧血・出血性血・肝障害・甲状腺機能低下症・骨髄異形成症候群など。

1.× 鉄欠乏性貧血は、「末梢神経障害」ではなく舌炎である。
鉄欠乏性貧血では、血漿中の鉄分が欠乏し、舌に炎症が起こり、痛みを伴う。鉄欠乏性貧血とは、体内に流れている赤血球に多く含まれるヘモグロビンと鉄分が欠乏する事により、酸素の運搬能力が低下し全身に十分な酸素が供給されず倦怠感や動悸、息切れなどの症状がみられる貧血の種類の中でも最も多く特に女性に多い疾患である。原因としては、栄養の偏りなどによる鉄分の摂取不足、消化性潰瘍やがん、痔などの慢性出血による鉄の喪失、腸管からの鉄吸収阻害などがあげられる。

2.× 悪性リンパ腫は、「舌炎」ではなく末梢神経障害である。
悪性リンパ腫では、腫瘍による末梢神経幹の圧迫や巻き込み、腫瘍細胞の末梢神経実質内への浸潤などが起こるため。悪性リンパ腫とは、血液細胞(血液中に存在する細胞)の中のリンパ球ががん化する病気である。一般的に、首や腋(わき)の下、脚の付け根などにあるリンパ節にしこりが生じる。進行した場合の症状として、発熱、体重減少、寝汗をかきやすくなるなどである。悪性リンパ腫はがん細胞の形や性質などによって70以上もの種類に分類されており、それぞれ症状や進行の仕方などの特徴が異なる。そのため、治療方針もさまざまである。治療では、放射線治療や薬物療法、造血幹細胞移植などが行われる。

3.〇 正しい。急性白血病:出血傾向
急性白血病とは、骨髄の中にある幼若な血液細胞が癌化して白血病細胞となり骨髄の中で急速に分裂して数を増やす疾患である。白血病細胞が骨髄の中で増えてくる結果、骨髄の本来の機能である造血能が著しく障害される。初期症状として、発熱・貧血・出血傾向・骨痛・倦怠感がみられる。

4.× 再生不良性貧血は、「リンパ節腫脹」ではなく出血傾向である。
再生不良性貧血とは、骨髄の造血幹細胞の減少と、それによる末梢血の汎血球減少を主徴とする症候群で、骨髄で血液が造られないために血液中の赤血球、白血球、血小板のすべての血球が減ってしまう病気である。白血球(Tリンパ球)の働きが何らかの原因で異常をきたし、自分自身の造血幹細胞を攻撃して壊してしまうことが原因と考えられている。医療費助成の対象となる疾患は、300以上あるため、以前にも出題された病気を中心に覚えていく。このほかにも、パーキンソン病、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎などが指定されている。

リンパ節腫脹とは?

リンパ節腫脹とは、1つまたは複数のリンパ節が増大して触知できるようになった状態である。ウィルス、細菌、結核菌、梅毒、トキソプラズマなどによって起こる。体表から触知できるリンパ節は、①頭頸部、②腋窩、③肘関節上部、③腹部、④鼠径部(大腿部)、⑤膝窩部である。リンパ節は皮下に存在するため、皮膚を動かしても皮膚と一緒に動くことはないため、示指から環指の指腹を皮膚に軽く密着させ、皮膚を動かすことにより触診する。

 

 

 

 

 

問題62 高血圧と耐糖能異常のいずれも認めないのはどれか。

1.褐色細胞腫
2.アジソン病
3.クッシング症候群
4.原発性アルドステロン症

解答

解説
1.〇 褐色細胞腫
褐色細胞腫とは、交感神経(自律神経の一種)に働きかけるホルモンであるカテコラミン(アドレナリン、ノルアドレナリンなど)の産生能を有する腫瘍である。主に、腎臓の上に位置する副腎髄質から発生する。カテコラミンは、交感神経に働いて、身体中の血管を収縮させたり、心臓の収縮能を増加させることで、脳や腎臓などの臓器への血流調整に、重要な役割を果たす。褐色細胞腫ではこのカテコラミンが過剰に分泌され、高血圧や頭痛、動悸、発汗、不安感、便秘、腸閉塞(麻痺性イレウス)など多様な症状を呈する。また、糖尿病、脂質異常症を併発することもある。

2.× アジソン病は、高血圧と耐糖能異常のいずれも認めない。
アジソン病とは、副腎皮質機能低下症ともいい、るいそう(やせ)と色素沈着など特徴的である。副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。コルチゾール:血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

3.〇 クッシング症候群
クッシング症候群は、副腎皮質ホルモンであるコルチゾールの過剰分泌により起こる内分泌系疾患である。満月様顔貌や中心性肥満などの特徴的な症状を呈する。主に、副腎腺腫、副腎癌、副腎過形成、ACTH産生下垂体腺腫などによりコルチゾールの過剰分泌が起こる。

4.〇 原発性アルドステロン症
原発性アルドステロン症とは、副腎皮質の自律的なアルドステロン産生(過形成、腺腫、または癌腫による)により引き起こされるアルドステロン症である。主な症状として、発作性の筋力低下、血圧上昇、および低カリウム血症がある。 健常状態において副腎からのアルドステロン分泌は、体液量の低下を感知して腎臓から分泌されるレニンの制御を受け、塩分を体内に保持し、血圧を維持するはたらきを持つ。 レニンが低値にもかかわらず副腎からアルドステロンが過剰分泌される状態を確認することで、この病気と診断される。

補足事項

副腎皮質ホルモンには、コルチゾール・アルドステロン・アンドロゲン(男性ホルモン)などがある。
コルチゾール:血糖値の上昇や脂質・蛋白質代謝の亢進、免疫抑制・抗炎症作用、血圧の調節など、さまざまな働きがあるが、過剰になるとクッシング症候群、不足するとアジソン病を引き起こす。

 

 

 

 

 

問題63 自己免疫機序が関与しないのはどれか。

1.悪性貧血
2.溶血性貧血
3.鉄欠乏性貧血
4.再生不良性貧血

解答

解説

MEMO

自己免疫疾患とは、免疫システムが自分自身の体内の細胞や組織を誤って攻撃する疾患のことである。

1.〇 悪性貧血
悪性貧血とは、ビタミンB12または葉酸の欠乏によって生じる巨赤芽球性貧血の中である。最も発生頻度が高いビタミンB12欠乏性の貧血が悪性貧血である。ビタミンB12は胃液中の内因子との結合によって小腸下部で吸収され、葉酸とともに骨髄内での赤血球生成に利用される。悪性貧血は、高度の萎縮性胃炎による内因子分泌の欠乏が一次的原因である。その結果、回腸末端部からのビタミンB12の吸収障害をおこす。欠乏症状として①動悸、②めまい、③耳鳴り、④全身倦怠感、⑤舌炎、⑥悪心、⑦嘔吐、⑧下痢、⑨神経症状として四肢の知覚異常、⑩歩行困難、⑪視力障害などがおこる。時には興奮,軽い意識混濁などの精神障害をきたすこともある。

2.〇 溶血性貧血
溶血性貧血とは、血管の中を流れる赤血球が破壊される(溶血)ことにより起こる貧血の一種である。これにより、血液中の赤血球の数が減少し、貧血状態になる。溶血性貧血は、血液中のビリルビン(赤血球の分解産物)の量が増加することで黄疸となる。

3.× 鉄欠乏性貧血は、自己免疫機序が関与しない。
鉄欠乏性貧血とは、体内に流れている赤血球に多く含まれるヘモグロビンと鉄分が欠乏する事により、酸素の運搬能力が低下し全身に十分な酸素が供給されず倦怠感や動悸、息切れなどの症状がみられる貧血の種類の中でも最も多く特に女性に多い疾患である。原因としては、栄養の偏りなどによる鉄分の摂取不足、消化性潰瘍やがん、痔などの慢性出血による鉄の喪失、腸管からの鉄吸収阻害などがあげられる。

4.〇 再生不良性貧血
再生不良性貧血とは、骨髄の造血幹細胞の減少と、それによる末梢血の汎血球減少を主徴とする症候群で、骨髄で血液が造られないために血液中 の赤血球、白血球、血小板のすべての血球が減ってしまう病気である。白血球(Tリンパ球)の働きが何らかの原因で異常をきたし、自分自身の造血幹細胞を攻撃して壊してしまうことが原因と考えられている。医療費助成の対象となる疾患は、300以上あるため、以前にも出題された病気を中心に覚えていく。このほかにも、パーキンソン病、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎などが指定されている。

貧血の種類

①小球性低色素性貧血:鉄欠乏性血・鉄芽球性血・サラセミア・異常へモグロビン症・慢性炎症による貧血など。
②正球性正色素性貧血:再生不良性貧血・溶血性貧血・遺伝性球状赤血球症・自己免疫性溶血性貧血・発作性夜間血色素尿症など。
③大球性貧血(大球性正色素性貧血)
巨赤芽球性貧血:悪性貧血・胃切除後貧血・葉酸欠乏性貧血・ビタミンB12欠乏性貧血など。
非巨赤芽球性貧血:溶血性貧血・出血性血・肝障害・甲状腺機能低下症・骨髄異形成症候群など。

 

 

 

 

 

問題64 次の文で示す症例の病態で正しいのはどれか。
 「85歳の女性。左大腿骨頸部骨折の手術を受けた翌日の夜に、ちぐはぐな言動が出現した。」

1.せん妄
2.認知症
3.うつ病
4.不安神経症

解答

解説

本症例のポイント

・85歳の女性(左大腿骨頸部骨折の手術後)。
・翌日の夜:ちぐはぐな言動が出現した。
→本症例は、せん妄が疑われる。せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。【原因】脳疾患、心疾患、脱水、感染症、手術などに伴って起こることが多い。他にも、心理的因子、薬物、環境にも起因する。

【症状】
①意識がぼんやりする。
②その場にそぐわない行動をする。
③夜間に起こることが多い。 (夜間せん妄)
④通常は数日から1週間でよくなる。

【主な予防方法】
①術前の十分な説明や家族との面会などで手術の不安を取り除く。
②昼間の働きかけを多くし、睡眠・覚醒リズムの調整をする。
③術後早期からの離床を促し、リハビリテーションを行う。

1.〇 正しい。せん妄は、症例の病態である。
せん妄とは、疾患や全身疾患・外因性物質などによって出現する軽度~中等度の意識障害であり、睡眠障害や興奮・幻覚などが加わった状態をいう。高齢者は薬剤によってせん妄が引き起こされる場合も多い。

2.× 認知症
認知症とは、いろいろな原因で脳の細胞が死んでしまったり、働きが悪くなったためにさまざまな障害が起こり、生活するうえで支障が出ている状態(およそ6ヵ月以上継続)を指す。

3.× うつ病
うつ病とは、抑うつ感、希望や元気を失ったり、興味を失ったり、生産性が低下したり、睡眠障害、食欲の低下、身体症状などが2週間以上続いている状態である。原因は多岐にわたり、生物学的、環境的、社会的要因が関係していることが知られている。

4.× 不安神経症
不安神経症とは、全般性不安障害ともいい、多数の出来事や活動に対する過剰な不安および心配が、ほぼ毎日6か月以上続き、制御することができない状態である。全般性不安障害ではパニック発作が生じる。

 

 

 

 

 

問題65 続発性脂質異常症の診断に有用でないのはどれか。

1.肥満度
2.血尿の有無
3.HbA1c
4.甲状腺ホルモン値

解答

解説

脂質異常症とは、高LDLコレステロール血症、低HDLコレステロール血症、高トリグリセリド(TG)血症を指し、動脈硬化の原因となる。その治療で重要なのは、薬物療法のほか、食事指導による適正体重の維持や内臓脂肪の減量である。まず食事指導の基本は、総摂取エネルギーと栄養素配分を適正化することである。

1.〇 肥満度
肥満度とは、BMI[体重÷身長の2乗]で求められる指数である。BMI:25以上を「肥満」、BMI:18.5未満を「やせ」としている。続発性脂質異常症の分類である高トリグリセライド血症の②肥満に該当する。

2.× 血尿の有無は、続発性脂質異常症の診断に有用でない。
血尿とは、尿に血液が混ざっている状態を指す。主な原因として、悪性腫瘍や結石、膀胱炎などの炎症、腎臓の内科的な病気などが考えられる。

3.〇 HbA1c
ヘモグロビンA1cとは、ヘモグロビンのアミノ基とブドウ糖が結合したもので過去1~2ヶ月程度の血糖の高さを反映する検査である。HbA1c:6.5%以上は、糖尿病の診断基準である。続発性脂質異常症の分類である高トリグリセライド血症の③糖尿病に該当する。

4.〇 甲状腺ホルモン値
続発性脂質異常症の分類である高コレステロール血症の①甲状腺機能低下症に該当する。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。

 

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