第28回(R2年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前66~70】

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問題66 呼吸器感染症について正しいのはどれか。

1.非結核性抗酸菌は人から人へ感染する。
2.感冒の原因は主に細菌感染である。
3.肺結核の治療は抗菌薬の単剤治療である。
4.肺炎治療で菌の耐性化が問題となっている。

解答

解説
1.× 非結核性抗酸菌は、人から人へ感染しない
非結核性抗酸菌とは、結核菌とらい菌以外の抗酸菌のことである。土壌、水、給水システム、家畜の体内など、広く環境中に生息し、結核菌とは異なり、人から人には感染しない特徴を持つ。

2.× 感冒の原因は、主に「細菌」ではなくウイルス感染である。
感冒とは、鼻漏、咳嗽、咽頭痛などの上気道症状を引き起こし、通常は発熱を伴わずに自然に軽快する急性ウイルス感染症である。

3.× 肺結核の治療は、抗菌薬の「単剤」ではなく複剤治療である。
治療は抗結核薬の多剤併用療法(3~4種類)が基本となり、治療期間は約6カ月である。2ヶ月治療したら2種類の治療薬に減ることが多い。

4.〇 正しい。肺炎治療で菌の耐性化が問題となっている
菌の耐性化とは、細菌による病気の治療のために、薬剤(抗生物質などの抗菌剤)を使用すると、細菌がその薬剤に対して耐性をもってしまうこと(耐性化)である。

肺結核とは?

肺結核とは、結核菌による感染症で、体の色々な臓器に起こることがあるが多くは肺のことである。結核菌は、喀痰の中に菌が出ている肺結核の患者と密閉空間で長時間(一般的には数週間以上)接触することにより空気感染でうつる。リンパ節結核や脊椎カリエス(骨の結核)など、肺に病気のない結核患者からはうつらない。また肺結核でも、治療がうまくいって喀痰の中に菌が出ていない患者さんからはうつることはない。また、たとえ感染しても、発病するのはそのうち1割ぐらいといわれており、残りの9割の人は生涯何ごともなく終わる。感染してからすぐに発病することもあるが、時には感染した後に体の免疫が働いていったん治癒し、その後数ヶ月から数十年を経て、免疫が弱ったときに再び結核菌が増えて発病することもある。結核の症状には、咳、痰、血痰、熱、息苦しさ、体のだるさなどがある。

 

 

 

 

 

問題67 COPDについて正しいのはどれか。

1.女性に多い。
2.拘束性換気障害を呈する。
3.安静時の呼吸困難が特徴である。
4.増悪予防にはインフルエンザワクチン接種は有効である。

解答

解説

COPDとは?

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の最大の原因は喫煙であり、喫煙者の約20%がCOPDを発症する。慢性閉塞性肺疾患とは、以前には慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称である。他の特徴として、肺の過膨張、両側肺野の透過性亢進、横隔膜低位、横隔膜の平低化、滴状心などの特徴が認められる。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。

増加:残気量・残気率・肺コンプライアンス・全肺気量・PaCO2

減少:一秒率・一秒量・肺活量・肺拡散能・PaO2

1.× 「女性」ではなく男性に多い。
男女比は、約3:1である。たばこが原因であるが、粉じんなどの仕事も関係しているといわれている。

2.× 「拘束性」ではなく閉塞性換気障害を呈する。
閉塞性換気障害とは、気道が狭くなり、息を吐き出しにくくなる障害のことである。

3.× 「安静時」ではなく運動時(活動時)の呼吸困難が特徴である。
他の特徴として、肺の過膨張、両側肺野の透過性亢進、横隔膜低位、横隔膜の平低化、滴状心などの特徴が認められる。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。
増加:残気量・残気率・肺コンプライアンス・全肺気量・PaCO2
減少:一秒率・一秒量・肺活量・肺拡散能・PaO2

4.〇 正しい。増悪予防にはインフルエンザワクチン接種は有効である
慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、インフルエンザワクチン接種によりCOPDの悪化による死亡率を50%減少させることが報告されている。したがって、全てのCOPDにインフルエンザワクチン接種が勧められている。

(※図引用:yakugaku lab様HP)

 

 

 

 

 

問題68 帯状疱疹について正しいのはどれか。

1.抗ウイルス薬が有効である。
2.発疹は両下肢に好発する。
3.コプリック斑が出現する。
4.小児期に発症する。

解答

解説

帯状疱疹とは?

帯状疱疹とは、身体の左右どちらか一方に、ピリピリと刺すような痛みと、これに続いて赤い斑点と小さな水ぶくれが帯状にあらわれる病気である。多くの人が子どものときに感染する水ぼうそうのウイルスが原因で起こる。

1.〇 正しい。抗ウイルス薬が有効である
帯状疱疹は、抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル)の全身投与を出来るだけ早期に開始することが大切である。

2.× 発疹は、「両下肢」ではなく片側に好発する。
なぜなら、水疱が神経に沿って広がっていっても正中部を乗り越えずそこでとどまるため。また、多数の神経節が並んでいる体幹部、特に胸神経の支配領域に多く発症する。

3.× コプリック斑が出現するのは、麻疹(はしか)である。
Koplik斑(コプリックはん)とは、麻疹 (はしか) 患者の大部分に現れる頬粘膜の斑点である。臼歯に対する部分に境界明瞭なやや隆起した粘膜疹ができる。麻疹とは、麻疹ウイルスの感染後、10~12日間の潜伏期ののち発熱や咳などの症状で発症する病気のこと。38℃前後の発熱が2~4日間続き、倦怠感(小児では不機嫌)があり、上気道炎症状(咳、鼻みず、くしゃみなど)と結膜炎症状(結膜充血、目やに、光をまぶしく感じるなど)が現れて次第に強くなる。

4.× 「小児期」ではなく50歳以上に発症する。
なぜなら、高齢となるとそもそもの免疫力の低下に加え、ストレスや疲労で免疫力が低下するため。日本では80歳までに約3人に1人が帯状疱疹になるといわれている。

 

 

 

 

 

問題69 潜伏期間が最も長いのはどれか。

1.流行性耳下腺炎
2.エイズ
3.ジフテリア
4.破傷風

解答

解説
1.× 流行性耳下腺炎
流行性耳下腺炎とは、2~3週間の潜伏期(平均18日前後)を経て発症し、片側あるいは両側の唾液腺の腫脹を特徴とするウイルス感染症である。通常1~2 週間で軽快する。最も多い合併症は髄膜炎であり、その他髄膜脳炎、睾丸炎(精巣炎)、卵巣炎、難聴、膵炎などを認める場合がある。流行性耳下腺炎の約20%に精巣炎を合併すると言われており、思春期以降に精巣炎を起こすと、男性不妊の原因となる。

2.〇 正しい。エイズは、潜伏期間が最も長い。
エイズの潜伏期間は、短くて6か月、位長い場合は15年以上の場合もある。

3.× ジフテリア
ジフテリアの潜伏期間は、2~5日間程度である。ジフテリアとは、ジフテリア菌により発生する疾病で、主に気道の分泌物によってうつり、喉などに感染して毒素を放出する。最後に報告されたのが1999年であるが、かつては年間8万人以上の患者が発生し、そのうち10%程度が亡くなっていた。

4.× 破傷風
破傷風とは、接触感染で、破傷風菌により発生し、主に傷口に菌が入り込んで感染を起こし毒素を通して、さまざまな神経に作用する。感染して3日から3週間からの症状のない期間があった後、口を開けにくい、首筋が張る、体が痛いなどの症状があらわれる。その後、体のしびれや痛みが体全体に広がり、全身を弓なりに反らせる姿勢や呼吸困難が現れたのちに死亡する。

ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症について

後天性免疫不全症候群〈AIDS〉は、ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉によって引き起こされ、伝播は主に性行為、血液接触、母子感染によるものである。ちなみに、ヒト免疫不全ウイルスは、人の免疫細胞に感染してこれを破壊し、最終的に後天性免疫不全症候群を発症させるウイルスである。ヒト免疫不全ウイルス〈HIV〉感染症に対する治療法は飛躍的に進歩しており早期に発見することで後天性免疫不全症候群(AIDS)の発症を予防できるようになってきている。しかし、治療を受けずに自然経過した場合、免疫力の低下により様々な障害が発現する。後天性免疫不全症候群(AIDS)の状態にあると判断できる疾患(エイズ指標疾患)は、23種類ある。AIDS指標疾患としてもっとも頻度が高いのは、ニューモシスチス肺炎(39.3%)、ついでサイトメガロウイルス感染症(13.4%)、カンジダ症(13.1%)、活動性結核(7.1%)、カポジ肉腫(4.5%)、非結核性抗酸菌症(3.8%)の順であった。

 

 

 

 

 

問題70 潰瘍性大腸炎の特徴で正しいのはどれか。

1.大腸壁の全層に炎症を起こす。
2.痔瘻合併の頻度が高い。
3.直腸から口側へと病変が連続する。
4.回盲部に好発する。

解答

解説

潰瘍性大腸炎とは?

潰瘍性大腸炎とは、主に大腸の粘膜を侵し、再燃と寛解を繰り返す慢性のびまん性炎症性腸疾患である。症状として、繰り返す粘血便・下痢・腹痛・発熱・体重減少などがみられる。したがって、潰瘍性大腸炎の食事は、易消化性で高エネルギー、高タンパク、低脂肪、低残渣食を基本とする。

1.× 大腸壁の「全層」ではなく粘膜に炎症を起こす。
大腸の壁は内側から、粘膜、粘膜筋板、粘膜下層、固有筋層、漿膜下層、漿膜の6層で構成されている。

2.× 痔瘻(※読み:じろう)合併の頻度が「高い」のではなく低い
痔瘻とは、肛門の中から外側の皮膚につながるトンネルのような管ができた状態のことである。主に細菌感染で起こる。

3.〇 正しい。直腸から口側へと病変が連続する
炎症は直腸から始まり、連続的に大腸全体へと広がる。炎症が強くなると、頻繁な下痢や粘液便、血便、腹痛などの症状を来す。

4.× 「回盲部」ではなく小腸末端部に好発する。

MEMO

クローン病とは、小腸や大腸などの粘膜に、慢性的な炎症を引き起こす病気のことで、クローン病は10~20歳代で発症するケースが多く、主に小腸や大腸に炎症が現れる。現在のところ、はっきりした発症原因はよく分かっていない。一般的な症状は腹痛と下痢である。しかし、口から肛門まで全ての消化器官に炎症を引き起こす可能性があるため、症状は人によって大きく異なる。栄養の消化吸収障害、炎症による消耗に伴う必要エネルギーの増加などが起こるため、食事・栄養管理は重要である。したがって、クローン病の食事療法は高カロリー・低脂肪食・低残渣食が基本とされている。低残渣食とは、胃腸に負担をかけないように調整した食事のことで、日常の食事で胃腸にもっとも負担をかける成分は食物繊維で、それを制限し負担をかけやすい脂肪の多い物・刺激の強い物・極端に冷たい物などを控えた食事のことである。必要エネルギーの補給のほか、腸管の安静と食事性アレルゲンの除去を目的として栄養療法を行う。治療では小腸や大腸などの炎症や、過剰な免疫作用を抑える薬物療法が中心に行われる。

 

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