第28回(R2年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後81~85】

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専門基礎科目

問題81 回復期リハビリテーション病棟で作業療法としてよく行われるのはどれか。

1.歩行訓練
2.巧緻動作訓練
3.嚥下訓練
4.立ち上がり動作訓練

解答

解説

回復期リハビリテーションとは?

回復期リハビリテーションとは、急性期を脱したが、まだ自宅に戻れない段階でのリハビリテーションを担当することが多い。近年、急性期治療から早期のリハビリテーションを、複数の医療機関が連携と役割分担をしながら一連の流れで行う地域連携クリテイカルパスが促進されている。急性期病院で入院や手術をされた場合でも、回復期病院でその情報が共有され、加えて回復期リハビリテーション病棟では、【訓練→目標を随時達成→機能の回復→退院】を目指す。

1.× 歩行訓練/立ち上がり動作訓練は、理学療法士が主に担当する。
理学療法士とは、医師の指示のもとに治療体操や運動・マッサージ・電気刺激・温熱などの物理的手段を用いて、運動機能の回復を目的とした治療法・物理療法(理学療法)を行う専門職である。つまり、関節可動域や筋力の向上などが役割である。

2.〇 正しい。巧緻動作訓練が、回復期リハビリテーション病棟で作業療法としてよく行われる。
作業療法士とは、医師の指示のもとに手工芸・芸術・遊びやスポーツ・日常動作などを行うことにより、障害者の身体運動機能や精神心理機能の改善を目指す治療(作業療法)を行う専門職である。つまり、食事動作等、日常生活動作の回復が役割である。

3.× 嚥下訓練は、言語聴覚士が主に担当する。
言語聴覚士とは、言語や聴覚、音声、呼吸、認知、発達、摂食・嚥下に関わる障害に対して、その発現メカニズムを明らかにし、検査と評価を実施し、必要に応じて訓練や指導、支援などを行う専門職である。

 

 

 

 

 

問題82 正常歩行のサイクルで正しいのはどれか。

1.立脚中期に全足接地をする。
2.二重支持期は40%である。
3.立脚相で膝関節は1回屈曲する。
4.遊脚相が立脚相より時間が長い。

解答

解説

1.〇 正しい。立脚中期に全足接地をする
立脚中期とは、対側爪先離地から対側下腿下垂位までである。

2.× 二重支持期は、「40%」ではなく20%である。
両脚支持期とは、両脚での支持期間で、1歩行周期に2回あり、20~25%(70歩/分)を占めている。ちなみに、40%は自然歩行周期で遊脚相の占める比率である。

3.× 立脚相で膝関節は、「1回」ではなく2回屈曲する。
膝関節は、踵接地直後と遊脚期に膝関節は2度屈曲(膝関節のダブルニーアクション)する。踵接地直後の膝関節屈曲は、床の衝撃を和らげるために起こる。ちなみに、遊脚期の膝関節屈曲は、床とのクリアランス確保のために起こる。

4.× 逆である。「立脚相」が「遊脚相」より時間が長い。
なぜなら、歩行周期の割合は、立脚期60%(立脚相の前後10%ずつは両脚支持)、遊脚期40%であるため。つまり、立脚相の前後10%ずつは両脚支持があるため、立脚相の方が長くなっている。

歩行周期

【立脚期】

 1. 初期接地(Initial Contact;以下,IC):観測肢の接地の瞬間
 2. 荷重応答期(Lording Response;以下,LR):IC から対側爪先離地まで
 3. 立脚中期(Mid Stance;以下,MSt):対側爪先離地から対側下腿下垂位まで
   立脚中期前半:対側爪先離地から両下腿の交差まで
   立脚中期後半:両下腿交差から対側下腿下垂位まで
 4. 立脚終期(Terminal Stance;以下,TSt):対側下腿下垂位から対側 IC まで
 5. 前遊脚期(Pre Swing;以下,PSw):対側 IC から観測肢爪先離地まで

【遊脚期】

 6. 遊脚初期(Initial Swing;以下,ISw):観測肢爪先離地から両下腿の交差まで
 7. 遊脚中期(Mid Swing;以下,MSw):両下腿交差から下腿下垂位まで
 8. 遊脚終期(Terminal Swing;以下,TSw):下腿下垂位から IC まで

 

 

 

 

 

問題83 脳卒中片麻痺患者の動作について正しいのはどれか。

1.衣服を着るときは健側から行う。
2.ベッドでの起き上がりは患側を下にする。
3.歩行時には杖を健側で持つ。
4.階段は患側から上がる。

解答

解説
1.× 衣服を着るときは、「健側」ではなく麻痺側から行う。
上着を着る場合、麻痺側から行う。ちなみに、脱ぐ場合は非麻痺側から行う。

2.× ベッドでの起き上がりは、「患側」ではなく非麻痺側を下にする。
なぜなら、感覚が保たれている非麻痺側を下にして行うことで、麻痺側の巻き込み(重度麻痺の場合は脱臼)などなく安定して行えるため。

3.〇 正しい。歩行時には杖を健側で持つ
なぜなら、健側で持った方が正常歩行に近くなるため。正常の歩行の場合、右足が出た際、反対の手(左手)が出る。したがって、麻痺側が立脚相のとき、健側に持った杖と一緒に支えることができ、より安定する。

4.× 階段は、「患側」ではなく非麻痺側から上がる。
階段を上る場合、非麻痺側(杖→非麻痺側→麻痺側)から上る。ちなみに、下る場合は、麻痺側(杖→麻痺側→非麻痺側)から下りる。

 

 

 

 

 

問題84 脊髄損傷の損傷レベルとkey muscle(主たる残存筋)の組合せで正しいのはどれか。

1.C5:上腕三頭筋
2.C8:深指屈筋
3.L3:腸腰筋
4.L4:下腿三頭筋

解答

解説

ASIAとは?

ASIA(American Spinal Injury Association:米国脊髄損傷協会)の脊髄損傷の神経学的・機能的国際評価法は、運動機能スコアと知覚機能スコアの得点結果から、①神経損傷高位、②機能障害スケール、③臨床症状分類を判断できるように構成されている。

1.× C5は、「上腕三頭筋」ではなく肘関節屈筋群(上腕二頭筋や上腕筋)である。
ちなみに、上腕三頭筋はC7である。

2.〇 正しい。C8は、深指屈筋である。

3.× L3は、「腸腰筋」ではなく大腿四頭筋である。
ちなみに、股関節屈筋群(腸腰筋)はL2である。

4.× L4は、「下腿三頭筋」ではなく前脛骨筋である。
ちなみに、下腿三頭筋はS1である。

 

 

 

 

 

問題85 前腕義手のうち能動義手の特徴はどれか。

1.装飾が主な目的である。
2.ケーブルでフックを開閉する。
3.モーターで動作をコントロールする。
4.四辺形ソケットを用いる。

解答

解説
1.× 装飾が主な目的であるのは、装飾用義手である。
装飾用義手とは、外観的な面の復元を目的として、外観のみの義手である。したがって、指を動かしたり肘を曲げたりといった動作は、反対側の手で行う必要がある。

2.〇 正しい。ケーブルでフックを開閉する
能動義手には、①体内力源義手と②体外力源義手が存在する。①体内力源義手とは、従来の「使える義手」のことであり、肩甲帯と体幹の動きを利用して、ハーネス・コントロールケーブルシステムを介して、切断者の身体の動きによって操作する(※引用:「義手の可能性」著:陳 隆明より)。

3.× モーターで動作をコントロールするのは、動力義手である。
②体外力源義手とは、動力義手とも呼ばれ、義手を操作する力源として切断者自身ではなく外部の力に依存するものである。筋電制御で行う筋電義手が代表的なものである。作業用義手は労働作業に適した機能を最優先した義手であり、外観にはとらわれない。手先具としては色々なものがあり、例えば双嘴鈎や曲鈎がある(※引用:「義手の可能性」著:陳 隆明より)。

4.× 四辺形ソケットを用いるのは、大腿義足である。
四辺形ソケットとは、断面形状を四角く作り、坐骨を包み込むような形状で造るソケットである。

 

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