第29回(R3年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後141~145】

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問題141 次の文で示す患者に対し、八会穴を用いて治療を行う場合、膈兪とともに選穴するのはどれか。
 「47歳の女性。2か月前からめまいがあり、頭部MRI検査では異常はなかった。疲れやすく、風邪を引きやすい。爪の色が薄く、経血量の減少がある。舌は淡、脈は弱を認める。」

1.大杼
2.膻中
3.陽陵泉
4.懸鍾

解答

解説

本症例のポイント

・47歳の女性(頭部MRI検査:異常なし)。
・2か月前からめまいあり。
・疲れやすく、風邪を引きやすい。
・爪の色が薄く、経血量の減少。
・舌:、脈:
→本症例は、気虚血虚が疑われる。気虚は、倦怠感、無力感、眩暈、息切れ、懶言、自汗、易感冒などである。血虚は、眩暈、顔面蒼白、動悸、不眠、健忘、目のかすみ、しびれ、痙攣、月経痛、経少、経色淡白、視力減退、爪の変形などである。

八会穴
腑会-中脘【任】、血会-膈兪【膀】、臟会-章門【肝】、骨会-大杼【膀】、筋会-陽陵泉【胆】、脈会-太淵【肺】、髄会-懸鍾【胆】、気会-膻中【任】

1.× 大杼(※読み:だいじょ)は、骨会である。
大杼は、上背部、第1胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。

2.〇 正しい。膻中(※読み:だんちゅう)は、この患者に対し、八会穴を用いて治療を行う場合、膈兪とともに選穴する。
膈兪は、血会である。したがって、気会である膻中が選択される。膈兪(※読み:かくゆ)は、上背部、第7胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。一方、膻中は、前胸部、前正中線上、第4肋間と同じ高さに位置する。

3.× 陽陵泉(※読み:ようりょうせん)は、筋会である。
陽陵泉は、下腿外側、腓骨頭前下方の陥凹部に位置する。

4.× 懸鍾(※読み:けんしょう)は、髄会である。
懸鍾は、下腿外側、腓骨の前方、外果尖の上方3寸に位置する。跗陽(膀胱経)の前方にあたる。

 

 

 

 

 

問題142 次の文で示す患者の病証に対する治療方針として最も適切なのはどれか。
 「65歳の男性。1か月前から腰下肢のだるさがあり、最近では耳鳴りが断続的に起こる。舌は紅、脈は細数を認める。」

1.肺陰を補う。
2.腎陰を補う。
3.肝陽を補う。
4.脾陽を補う。

解答

解説

本症例のポイント

・65歳の男性。
・1か月前から腰下肢のだるさ。
・最近:耳鳴りが断続的に起こる。
・舌:紅、脈:細数。
→本症例は、腎陰虚が疑われる。陰虚(陰熱)は、ほてり、のぼせ、五心煩熱、手足身熱、盗汗、頬部紅潮、消痩、潮熱、舌質(紅)、舌苔(少)、脈(細脈)などである。腎陰虚は、手足心熱、のぼせ、耳鳴、難聴、腰膝酸軟、口乾、舌質紅、脈数などがあげられる。

1.× 肺陰を補う。
肺陰虚は、乾いた咳嗽、痰(粘稠で少量黄色)、盗汗、のぼせ、口乾、舌質紅などがあげられる。

2.〇 正しい。腎陰を補う
腎陰虚は、手足心熱、のぼせ、耳鳴、難聴、腰膝酸軟、口乾、舌質紅、脈数などがあげられる。

3.× 肝陽を補う。
肝陽上亢は、眩暈、耳鳴、頭痛、目赤、陰虚によるほてり・のぼせ、腰膝酸軟などがあげられる。

4.× 脾陽を補う。
脾陽虚は、腹部の冷え、水様便・未消化便、食欲不振、顔面蒼白、畏寒などがあげられる。

 

 

 

 

 

問題143 次の文で示す患者の病証に対する治療方針として最も適切なのはどれか。
 「36歳の女性。主訴は咳嗽。せき込むと粘稠で白色の痰を多量に喀出する。緩解と増悪を繰り返しながら3年が経過している。子どもの頃から食が細く、痩せている。舌は淡、白膩苔、脈は滑を認める。」

1.風寒の邪を取り除く。
2.瘀血を取り除く。
3.肺陰を補う。
4.運化を高める。

解答

解説

本症例のポイント

・36歳の女性(主訴:咳嗽
・せき込むと粘稠で白色のを多量に喀出する。
・緩解と増悪を繰り返しながら3年が経過。
・子どもの頃から食が細く、痩せている。
・舌:淡、白膩苔、脈:滑。
→本症例は、脾と肺の気虚が疑われる。気虚は、倦怠感、無力感、眩暈、息切れ、懶言、自汗、易感冒などがあげられる。ちなみに、脾気虚は、食欲不振、腹脹、大便溏薄、倦怠感、息切れ、自汗、面色萎黄などがあげられる。一方、肺気虚は、無力な咳嗽・息切れ、倦怠感、鼻汁、痰、易感冒、自汗などがあげられる。

1.× 風寒の邪を取り除く。
風寒の侵襲のことを風寒反肺という。悪寒、発熱、頭痛、咳嗽、無汗、鼻閉、鼻汁、脈浮緊など。

2.× 瘀血を取り除く。
瘀血(おけつ)とは、血液が汚れたり、滞ったり、固まりやすくなった状態のことである。瘀血になると、血の流れが悪くなり、全身に栄養が行き渡らなくなるため、さまざまな症状が現れやすくなる。少腹急結(※読み:しょうふくきゅうけつ)とは、下腹部(特に左)に抵抗感や硬結のあるものである。瘀血の腹証。

3.× 肺陰を補う。
肺陰虚は、乾いた咳嗽、痰(粘稠で少量黄色)、盗汗、のぼせ、口乾、舌質紅などがあげられる。

4.〇 正しい。運化を高める
脾の生理として、①運化(飲食物を水穀の精微に変化させ、心・肺に運ぶ)、②統血(血が脈中から漏れ出るのを防ぐ(気の固摂作用))があげられる。脾は気血生成の源、生痰の源といわれる。

 

 

 

 

 

問題144 次の文で示す患者の病証に対する治療方針として最も適切なのはどれか。
 「36歳の男性。主訴は焦燥感。仕事の重圧によりイライラする。最近は動悸があり、寝付きが悪い。顔が赤く、便秘である。舌尖は紅、脈は数有力を認める。」

1.肝陰を補う。
2.心火を瀉す。
3.脾陽を補う。
4.肺の痰湿を除く。

解答

解説

本症例のポイント

・36歳の男性(主訴:焦燥感
・仕事の重圧によりイライラする。
・最近:動悸があり、寝付きが悪い。
・顔が赤く、便秘である。
・舌尖:紅、脈:数有力を認める。
→本症例は、心火亢進が疑われる。心火亢進は、心悸、心煩、不眠、顏面紅潮、口渇、暑がり、舌尖紅、脈数などがあげられる。

1.× 肝陰を補う。
肝陰虚は、目乾、目渋、転筋、ほてり、のぼせ、盗汗、舌質紅、脈細数などがあげられる。

2.〇 正しい。心火を瀉す
本症例は、心火亢進が疑われる。心火亢進は、心悸、心煩、不眠、顏面紅潮、口渇、暑がり、舌尖紅、脈数などがあげられる。

3.× 脾陽を補う。
脾陽虚は、腹部の冷え、水様便・未消化便、食欲不振、顔面蒼白、畏寒などがあげられる。

4.× 肺の痰湿を除く。
痰湿(津液の停滞) 湿・水:(身体が重だるい、浮腫、下痢)など。
飲:腹鳴、動悸、喘息、浮腫など。
痰:眩暈、咳嗽、頭痛、動棒、意識障害、精神障害など。
→痰湿阻肺は、咳嗽(喀痰で軽減)、喀痰、鼻閉、鼻汁、舌質淡紅、舌質白膩など。

 

 

 

 

 

問題145 次の文で示す患者の病証に対する治療方針として最も適切なのはどれか。
 「43歳の男性。主訴は咳嗽。仕事が忙しくなると発作的にせき込む。痰が切れにくく、咽頭部に違和感があり、胸脇部が張る。舌は紅、脈は弦数を認める。」

1.腎陰を補う。
2.肺気を補う。
3.肝火を抑える。
4.痰濁を除く。

解答

解説

本症例のポイント

・43歳の男性(主訴:咳嗽)
・仕事が忙しくなると発作的にせき込む。
・痰が切れにくく、咽頭部に違和感があり、胸脇部が張る。
・舌:、脈:弦数
→本症例は、肝火上炎が疑われる。肝火上炎の症状は、頭痛、眩暈、耳鳴、目赤、急躁、易怒、舌辺紅脈弦数などである。

1.× 腎陰を補う。
腎陰虚は、手足心熱、のぼせ、耳鳴、難聴、腰膝酸軟、口乾、舌質紅、脈数などがあげられる。

2.× 肺気を補う。
肺気虚は、無力な咳嗽・息切れ、倦怠感、鼻汁、痰、易感冒、自汗などがあげられる。

3.〇 正しい。肝火を抑える
本症例は、肝火上炎が疑われる。肝火上炎の症状は、頭痛、眩暈、耳鳴、目赤、急躁、易怒、舌辺紅脈弦数などである。

4.× 痰濁を除く。
痰濁、瘀血は、半身の汗(汗の異常)があげられる。

 

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