第29回(R3年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前76~80】

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問題76 脳血管障害における摂食嚥下障害について正しいのはどれか。

1.意識障害があっても経口摂取は継続する。
2.時間経過で回復することはない。
3.口腔ケアは誤嚥性肺炎予防に有効である。
4.むせなければ誤嚥は否定できる。

解答

解説

嚥下の過程

①先行期・・・飲食物の形や量、質などを認識する。
②準備期・・・口への取り込み。飲食物を噛み砕き、飲み込みやすい形状にする。
③口腔期・・・飲食物を口腔から咽頭に送り込む。
④咽頭期・・・飲食物を咽頭から食道に送り込む。
⑤食道期・・・飲食物を食道から胃に送り込む。

1.× 意識障害があっても経口摂取は、「継続」ではなく困難である。
なぜなら、嚥下の過程において、先行期があげられるため。先行期とは、飲食物の形や量、質などを認識する。したがって、認知機能が低下すると、食べ物へ認識が不十分で誤嚥のリスクが高まる。

2.× 時間経過で回復することもある
時間経過やリハビリにて摂食嚥下障害の改善・回復がみられる。主に言語聴覚士が行う。言語聴覚士とは、言語や聴覚、音声、呼吸、認知、発達、摂食・嚥下に関わる障害に対して、その発現メカニズムを明らかにし、検査と評価を実施し、必要に応じて訓練や指導、支援などを行う専門職である。

3.〇 正しい。口腔ケアは誤嚥性肺炎予防に有効である
誤嚥性肺炎とは、口腔内常在菌が食物の誤嚥とともに肺の中へ流れ込んで生じる肺炎のことである。原因は、①嚥下機能自体の低下、②寝たきり状態などによるADL(日常生活活動)の低下、③食物がスムーズに食道へ進めない状態などで、口腔内に長時間食物が存在してしまう状況などが挙げられる。

4.× むせなければ誤嚥は否定できるとはいえない
なぜなら、むせ(咳嗽反射)が低下している可能性も考えられるため。また、むせ(咳嗽反射)がなくとも気管内流入により誤嚥性肺炎を起こすこともある。ちなみに、むせや湿性嗄声、呼吸変化がなければ安全な嚥下と判断する。

 

 

 

 

 

問題77 C6完全麻痺の脊髄損傷患者が目標とするADLとして正しいのはどれか。

1.人工呼吸器からの離脱
2.環境制御装置の利用
3.移乗動作の自立
4.坂道での車椅子駆動の自立

解答

解説

(※引用:Zancolli E : Functional restoration of the upper limbs in traumatic quadriplegia. in Structural and Dynamic Basis of Hand Surgery. 2nd ed, Lippincott, Philadelphia, p229-262, 1979)

1.× 人工呼吸器からの離脱は、C3完全麻痺の脊髄損傷患者が目標とするADLである。
なぜなら、呼吸筋の麻痺が生じるため。

2.× 環境制御装置の利用は、C4完全麻痺の脊髄損傷患者が目標とするADLである。
なぜなら、上肢の機能がほとんど困難であるため。環境制御装置とは、わずかな随意機能でセンサーやスイッチを作動させ、家電やパソコンなど複数の装置を制御できるようになっているものである。

3.〇 正しい。移乗動作の自立は、C6完全麻痺の脊髄損傷患者が目標とするADLである。
なぜなら、C6は手関節背屈が可能なレベルであるため。第6頸髄節の運動機能は、手関節背屈が可能である。したがって、手関節背屈による把持作用をテノデーシスアクション(腱固定作用)が可能である。肩関節の動作は保たれ、肘関節は屈曲のみ可能で、上腕三頭筋による肘関節伸展動作はできない。トランスファーボードの利用などにより移乗ができ更衣・整容・食事も自助具を使用し自立可能である。

4.× 坂道での車椅子駆動の自立は、C7~8完全麻痺の脊髄損傷患者が目標とするADLである。
第7頸髄節の運動機能は、上腕三頭筋と橈側手根屈筋まで可能である。移動は車椅子駆動で、自動車の運転も可能となる。プッシュアップとベッドの側方移動が可能となり、車椅子にて日常生活のほとんどが自立まで至る。

 

 

 

 

 

問題78 脳性麻痺について正しいのはどれか。

1.自閉症を合併することが多い。
2.原因に進行性の疾患が含まれる。
3.生下時より骨変形をきたしている。
4.麻痺が進行することはない。

解答

解説

脳性麻痺とは?

脳性麻痺とは、お腹の中にいる間から、生後4週間までの間に発生した脳への損傷によって引き起こされる運動機能の障害を指す。失調型やアテトーゼ型などのタイプがある。アテトーゼとは、顔や手足をゆっくりと動かしてしまうものである。身体が突っ張ったり捻じれたりするジストニア、顔や手足をゆっくりと動かしてしまうアテトーゼ、踊るように身体を振ってしまう舞踏運動、上肢や下肢をいきなり大きく振り回してしまうバリズムなどがある。

1968年の厚生省脳性麻痺研究班の定義では、脳性麻痺は「受胎から新生児(生後4週以内)までの間に生じた、脳の非進行性病変にもとづく永続的な、しかし変化しうる運動および姿勢の異常」とされている。

1.× 自閉症を合併することはない
自閉症とは(小児自閉症障害とは)、3歳以前に現れる発達の以上または障害である。原因は、まだ特定されていないが、生まれつきの脳機能障害であると考えられている。対人関係を築けない、活動や興味の極端な限定がみられる、男児に多いなどのAsperger症候群に類似した特徴を持つが、言語発達の遅れ、知能低下がみられる点でAsperger症候群区別される。特徴として、対人関係が困難、常同的な反復行動、意思伝達の障害などがみられる。

2.× 原因に進行性の疾患は含まれていない。
1968年の厚生省脳性麻痺研究班の定義では、脳性麻痺は「受胎から新生児(生後4週以内)までの間に生じた、脳の非進行性病変にもとづく永続的な、しかし変化しうる運動および姿勢の異常」とされている。

3.× 生下時より骨変形をきたしているわけではない
失調型やアテトーゼ型などのタイプにより、徐々に骨変形をきたす。なぜなら、脳性麻痺は、変化しうる運動および姿勢の異常であるため。

4.〇 正しい。麻痺が進行することはない
1968年の厚生省脳性麻痺研究班の定義では、脳性麻痺は「受胎から新生児(生後4週以内)までの間に生じた、脳の非進行性病変にもとづく永続的な、しかし変化しうる運動および姿勢の異常」とされている。

 

 

 

 

 

問題79 COPDの呼吸筋トレーニングはどれか。

1.水の入ったビンを吹く。
2.リラクゼーションを行う。
3.スクイージングを行う。
4.エルゴメータで訓練を行う。

解答

解説

MEMO

慢性閉塞性肺疾患(COPD)とは、以前には慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称である。他の特徴として、肺の過膨張、両側肺野の透過性亢進、横隔膜低位、横隔膜の平低化、滴状心などの特徴が認められる。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。

【血中酸素飽和度が低下しやすい日常生活動作】
①排便(息を止めるため、呼吸のコントロールを行う)
②肩まで湯船につかる(胸部が圧迫されるため、動作環境や方法を工夫する)
③洗髪、上衣更衣、洗体など(上肢を使うため、上肢挙上は片腕のみで、呼吸のコントロールを行う。)
④ズボンや靴下を履く(体を前屈して行うため、動作のスピードや方法を調整する。)

※入浴の生活指導:息切れがある場合は全身入浴を控え、半身浴やシャンプーハットを使用したシャワーなどで対応する。入浴中は酸素吸入を行わない場合が多いため、入浴時間は短めにする。

1.〇 正しい。水の入ったビンを吹く
これは、口すぼめ呼吸の訓練となる。口すぼめ呼吸とは、呼気時に口をすぼめて抵抗を与えることにより気道内圧を高め、これにより末梢気管支の閉塞を防いで肺胞中の空気を出しやすくする方法である。鼻から息を吸い、呼気は吸気時の2倍以上の時間をかけて口をすぼめてゆっくりと息を吐くため、呼吸数は減少する。

2.× リラクゼーションを行う優先度は低い
なぜなら、リラクゼーションとは、胸郭の筋緊張を軽減し、排痰を誘発させる方法であるため。

3.× スクイージングを行う優先度は低い
なぜなら、Squeezing(スクイージング)とは、胸郭の呼気時圧迫により呼気流速を増し排痰を促進し、反動による吸気時の拡張を促す手技であるため。

4.× エルゴメータで訓練を行う優先度は低い
なぜなら、さらに労作時の呼吸困難感を助長させるため。主にエルゴメータは有酸素運動時に用いられる。

(図引用:「息切れを増強させる4つの動作のイラスト(慢性呼吸器疾患)」看護roo!看護師イラスト集)

 

 

 

 

 

問題80 骨折に注意してリハビリテーションを行う必要のある疾患はどれか。

1.腰椎椎間板ヘルニア
2.腰部脊柱管狭窄症
3.転移性脊椎腫瘍
4.筋筋膜性腰痛

解答

解説
1.× 腰椎椎間板ヘルニア
椎椎間板ヘルニアとは、線維輪(外縁部分)と髄核(中心部)の主に線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことである。L4/5とL5/S1が好発部位である。

2.× 腰部脊柱管狭窄症
腰部脊柱管狭窄症とは、脊柱管が腰部で狭くなる病気である。そのため、腰から下の神経に関連する症状(しびれや疼痛、脱力など)が出現する。歩行時には腰痛があまり強くならない事が多く、歩行と休息を繰り返す間歇性跛行が特徴である。

3.〇 正しい。転移性脊椎腫瘍は、骨折に注意してリハビリテーションを行う必要のある疾患である。
転移性脊椎腫瘍とは、体内の別の場所に発生したがん細胞が血流を介して背骨に病巣を形成する病気である。病変部が増大し骨を破壊すると、腫瘍そのものや壊れた骨の一部が神経を圧迫して痛みやしびれ、運動麻痺などの神経障害を引き起こす。

4.× 筋筋膜性腰痛
筋筋膜性腰痛とは、腰の筋肉や筋膜に急激または慢性的に負荷がかかることで生じる腰痛である。スポーツで急激な負荷がかかった場合に起こるケースがよく見られる。

 

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