第30回(R4年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後101~105】

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問題101 経脈病証で難聴が起こるのはどれか。

1.足の少陰経
2.手の太陽経
3.足の厥陰経
4.手の陽明経

解答

解説
1.× 足の少陰経
少陰病:外感病の極期~後期、虚寒/虚熱証。四肢厥冷、心煩、不眠など。
足の少陰腎経:空腹感があるが食べられない。顔面が黒くすすけて艶がない。咳をして唾を吐くと血が混じっている。咳をしてあえぐ。目がボーっとしてハッキリしない、不安感や煩悶感を覚え、よく恐れを抱き、恐れたり、驚いたり、不安を覚えたりする。口の中や喉の渇き上実下虚になり、咽頭が乾いたり痛んだりする。足底全体に熱感を感じて痛む。

2.〇 正しい。手の太陽経は、経脈病証で難聴が起こる。
太陽病:外感病初期、表寒証。悪寒、発熱、頭痛、項強痛、脈浮など。
手の太陽小腸経:咽頭の痛み、顎の付け根の腫れ、後ろを振り返ることができない。肩が抜けるように痛み、上腕が折れるように痛む。耳が間こえなくなり、目が黄ばんだり充血したり、類の辺りが腫れてくる。顎から顎の付け根、肩、上腕、肘など経脈の流注上が痛む。

3.× 足の厥陰経
厥陰病:外感病末期。寒熱錯雑。胸部不快感、口渇、四肢厥冷、嘔吐、下痢など。
足の厥陰肝経;腰痛が起こり、仰向けになったりうつ伏せになれなくなる。男性は睾丸が腫れ少腹が拘急疼痛し、婦人は少腹が腫れる。のどが乾き、顔面が垢がたまっている様に黒くなる。嘔吐や粥状の下痢をしたり、鼠径ヘルニア、小便失禁、尿開が起こる。

4.× 手の陽明経
陽明病:裏実熱証。発汗、壮熱、口渇、潮熱、大便秘結、譫語、洪脈など。
手の陽明大腸経:下の歯が痛み、頸が腫れる。目が黄ばみ、口が乾き、鼻血が出て、扁桃炎のような症状が出る。肩髃から臂臑あたりの経脈の流注上に痛みが出る。示指が痛んで使えない。冷えたままでなかなか温まりにくい。

六経弁証

太陽病:外感病初期、表寒証。悪寒、発熱、頭痛、項強痛、脈浮など。
少陽病:半表半裹証。発汗、寒熱往来、胸脇苦満、口苦、眩暈、脈弦など。
陽明病:裏実熱証。発汗、壮熱、口渇、潮熱、大便秘結、譫語、洪脈など。
太陰病:裏虚寒証(初期)。食欲不振、腹部膨満感、水様便など。
少陰病:外感病の極期~後期、虚寒/虚熱証。四肢厥冷、心煩、不眠など。
厥陰病:外感病末期。寒熱錯雑。胸部不快感、口渇、四肢厥冷、嘔吐、下痢など。

 

 

 

 

 

問題102 次の文で示す患者の病証で最もみられる脈状はどれか。
 「43歳の男性。主訴は便秘。1週間前に風邪を引き、その後、口渇が強くなり発汗も多くなった。午後3時から5時くらいまで体温が高くなる。」

1.濡脈
2.弦脈
3.洪脈
4.緩脈

解答

解説

本症例のポイント

・43歳の男性(主訴:便秘
・1週間前:風邪を引き、その後、口渇が強くなり発汗も多い。
・午後3時から5時くらい:体温が高くなる
→本症例は、陽明病の裏実熱証がみられる。発汗、壮熱、口渇、潮熱、大便秘結、譫語、洪脈などがあげられる。ちなみに、陽明潮熱とは、午後3~5時に体温上昇や熱感が強くなる。日晡潮熱。※陽明病

1.× 濡脈
濡脈(湿証、虚証):浮位で触れ、脈幅が小さく軟らかい。少し按じると絶えそうなもの。

2.× 弦脈
弦脈(肝胆病、痛証、痰飲):琴の弦に触れたような、長く真っすぐで緊張したもの。

3.〇 正しい。洪脈は、この患者の病証で最もみられる脈状である。
洪脈は、来る脈が大きく、指下に満ち、来るときは盛大で去るときはやや衰える。実脈と大脈の合わさったものである。来盛去衰。 裏実熱。邪気の高ぶりに見られる。陽明病:裏実熱証。発汗、壮熱、口渇、潮熱、大便秘結、譫語、洪脈など。

4.× 緩脈
緩脈(湿証、脾虚):一息に3至以上4至以下、1分間50~60拍のもの。

 

 

 

 

 

問題103 次の文で示す病証の治療原則で最も適切なのはどれか。
 「慢性の眩暈と頭痛、目の充血、のぼせ、腰がだるく力が入らない。脈は弦細数を認める。」

1.瀉実
2.急則治標
3.補虚瀉実
4.因地制宜

解答

解説

本症例のポイント

・慢性の眩暈と頭痛、
・目の充血、のぼせ、腰がだるく力が入らない。
・脈:弦細数
→本症例は、肝陰虚の症状がみられる。肝陰虚は、目乾、目渋、転筋、ほてり、のぼせ、盗汗、舌質紅、脈細数などがみられる。

1.× 瀉実(※読み:しゃじつ)
瀉実とは、邪気の旺盛な状態を改善することである。

2.× 急則治標(※読み:きゅうそくちひょう)
急則治標とは、急を要する症状や命に関わる症状があるときに、症状をやわらげる治療からすることを意味する。たとえば、慢性疾患を持っている人が風邪の症状が出たときに、元々持っている慢性疾患を治療する前に風邪の症状を治療することである。

3.〇 正しい。補虚瀉実(※読み:ほきょしゃじつ)は、この病証の治療原則である。
補虚瀉実とは、足りないものは補い(虚証)、必要でないものはとりのぞく(実証)という考えを表す言葉である。よって、実証では、体の中の余分なものをとりのぞく方法をとりいれる。

4.× 因地制宜(※読み:いんちせいぎ)
因地制宜とは、患者の住んでいる地域の気候や生活環境によって治療法を変えてゆくという治則である。

 

 

 

 

 

問題104 次の文で示す患者の病証で最も適切なのはどれか。
 「46歳の男性。主訴は肩こり。1年以上テレワークで外出機会が減少し、ストレスを感じている。胸肋部痛と喉のつかえ感を伴う。」

1.陰虚
2.気滞
3.湿熱
4.血虚

解答

解説

本症例のポイント

・46歳の男性(主訴:肩こり)
・1年以上:テレワークで外出機会が減少し、ストレスを感じている。
胸肋部痛喉のつかえ感を伴う。
→本症例は、肝鬱気滞の症状がみられる。肝鬱気滞は、精神抑鬱、急躁、易怒、胸肋部痛、脈弦、梅核気などである。

1.× 陰虚
陰虚(陰熱)は、ほてり、のぼせ、五心煩熱、手足身熱、盗汗、頬部紅潮、消痩、潮熱、舌質(紅)、舌苔(少)、脈(細脈)など。

2.〇 正しい。気滞は、この患者の病証である。
気鬱(気滞)は、 脹痛、胸悶、胸肋部痛、抑鬱感、腹部膨満感など。増悪と緩解を繰り返し、不安定となりやすい。

3.× 湿熱
湿熱とは、体内に余分な水分(湿)と熱が合わさり、ドロドロした状態になることである。自律神経や血液の巡りを邪魔し、体の様々な箇所で不調を引き起こすきっかけとなる。原因は暴飲暴食が多い。

4.× 血虚
血虚は、眩暈、顔面蒼白、動悸、不眠、健忘、目のかすみ、しびれ、痙攣、月経痛、経少、経色淡白、視力減退、爪の変形などである。

 

 

 

 

 

問題105 奇経八脈で血海と呼ばれるのはどれか。

1.任脈
2.衝脈
3.陰維脈
4.陰蹻脈

解答

解説
1.× 任脈
任脈は、陰経を調節し、胞胎を主る(月経・妊娠・出産の調節)。

2.〇 正しい。衝脈は、奇経八脈で血海と呼ばれる。
衝脈は、十二経脈の気血を調節し(十二経の海)、血を貯える(血海)。胞宮から起こり、月経に関与する。

3.× 陰維脈
陰維脈/陽維脈は、陰経と陽経を連絡する。陽維脈は全身の表と関係が深く、陰維脈は全身の裏と関係が深い。

4.× 陰蹻脈
陰蹻脈/陽蹻脈は、下肢・体幹の両側の陰陽を調節する。下肢の内・外側に分布する陰経と陽経を協調させる。

 

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