第30回(R4年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後156~160】

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次の文で示す症例について、問題155、問題156の問いに答えよ。
 「32歳の女性。主訴は月経時の下腹部および腰の痛み。主訴の部位と手足の冷えを伴い、温めると改善する。月経血は暗紫色で血塊が混じる。婦人科では機能性月経困難症と診断された。」

問題156 デルマトームを考慮した治療を行う場合、最も適切な経穴はどれか。

1.膈兪
2.腎兪
3.足三里
4.三陰交

解答

解説

本症例のポイント

・32歳の女性(主訴:月経時の下腹部・腰の痛み)。
・主訴の部位と手足の冷えを伴い、温めると改善する。
・月経血:暗紫色で血塊が混じる。
・機能性月経困難症。
→本症例は、瘀血の寒証が疑われる。瘀血は、疼痛(固定痛・刺痛、夜間に増悪)、腫脹、腫塊、肌膚甲錯。瘀斑、月経痛・血塊、皮下出血斑、色素沈着、紫舌・暗紅舌がみられる。

→機能性月経困難症とは、器質的疾患を伴わないものをいう。思春期~20歳台前半の発症が多い。原因として、月経の血液を排出するために子宮を収縮させる物質(プロスタグランジン)の分泌が多すぎて子宮が収縮しすぎることや、頸管(子宮の出口)が狭いことが痛みの主な原因とされている。大部分の月経困難症がこれにあたり、初経を迎えた2~3年後から起こることが多い。機能性月経困難症の治療として、プロスタグランジンの合成を抑制する非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)などの痛み止めが月経痛に有効である。痛み止めだけでは効果がない場合は、ホルモン剤治療(低用量ピルや黄体ホルモン剤)などの治療を行う。

1.× 膈兪(※読み:かくゆ)
膈兪は、上背部、第7胸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。

2.〇 正しい。腎兪(※読み:じんゆ)は、デルマトームを考慮した治療を行う場合の経穴である。
なぜなら、子宮の高さがT12~L2付近であるため。腎兪は、腰部、第2腰椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。

3.× 足三里(※読み:あしさんり)
足三里は、下腿前面、犢鼻と解渓を結ぶ線上、犢鼻の下方3寸に位置する。

4.× 三陰交(※読み:さんいんこう)
三陰交は、下腿内側(脛側)、脛骨内縁の後側、内果尖の上方3寸に位置する。

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」より)

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題157、問題158の問いに答えよ。
「62歳の女性。主訴は腰痛。立位で腰椎の前弯が強く、骨盤が前傾している。膝関節のアライメントの異常はみられなかった。」

問題157 伸長し弱化している筋として最も適切なのはどれか。

1.大殿筋
2.大腰筋
3.大腿直筋
4.大腿筋膜張筋

解答

解説

本症例のポイント

・62歳の女性(主訴:腰痛)
・立位:腰椎の前弯が強く、骨盤が前傾。
・膝関節のアライメントの異常なし。
→本症例は、腰椎の前弯が強く、骨盤が前傾している。骨盤の前傾は、上前腸骨棘が前方へ倒れ、坐骨結節が後方へ押しあがる運動である。したがって、大腿前面の筋肉は緊張し、大腿後面の筋肉は伸長される。つまり、大殿筋が伸張し弱化していると考えられる。

1.〇 正しい。大殿筋は、伸長し弱化している筋である。
大殿筋の【起始】腸骨翼の外面で後殿筋線の後方、仙骨・尾骨の外側縁、仙結節靭帯、腰背筋膜、【停止】腸脛靭帯、大腿骨の殿筋粗面、【作用】股関節伸展、外旋、外転、上部:内転、下部:骨盤の下制、【支配神経】下殿神経である。

2.× 大腰筋
腸腰筋とは、①腸骨筋と②大腰筋の2筋からなる筋肉である。
①腸骨筋:【起始】腸骨窩全体、【停止】大腿骨の小転子、【作用】股関節屈曲、外旋、【神経】大腿神経
②大腰筋:【起始】第12胸椎~第4腰椎の椎体と椎間円板、すべての腰椎の肋骨突起、第12肋骨、【停止】大腿骨の小転子、【作用】股関節屈曲、【神経】腰神経叢の枝

3.× 大腿直筋
大腿直筋の【起始】下前腸骨棘および寛骨臼の上縁、【停止】膝蓋骨、脛骨粗面、【作用】膝関節伸展、股関節屈曲、【支配神経】大腿神経:L2~L4である。ちなみに、上前腸骨棘に付着する筋肉は、大腿筋膜張筋や縫工筋である。

4.× 大腿筋膜張筋
大腿筋膜張筋の【起始】上前腸骨棘と大腿筋膜の内側、【停止】腸脛靭帯、脛骨外側顆前面の粗面、【作用】股関節屈曲、内旋、外転。膝関節伸展、【支配神経】上殿神経:L4~S1である。ちなみに、下前腸骨棘に付着する筋肉は、大腿直筋である。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題157、問題158の問いに答えよ。
「62歳の女性。主訴は腰痛。立位で腰椎の前弯が強く、骨盤が前傾している。膝関節のアライメントの異常はみられなかった。」

問題158 伸長し弱化している筋への局所治療穴として最も適切なのはどれか。

1.居髎
2.衝門
3.髀関
4.胞肓

解答

解説

本症例のポイント

・62歳の女性(主訴:腰痛)
・立位:腰椎の前弯が強く、骨盤が前傾。
・膝関節のアライメントの異常なし。
→本症例は、腰椎の前弯が強く、骨盤が前傾している。骨盤の前傾は、上前腸骨棘が前方へ倒れ、坐骨結節が後方へ押しあがる運動である。したがって、大腿前面の筋肉は緊張し、大腿後面の筋肉は伸長される。つまり、大殿筋が伸張し弱化していると考えられる。大殿筋の【起始】腸骨翼の外面で後殿筋線の後方、仙骨・尾骨の外側縁、仙結節靭帯、腰背筋膜、【停止】腸脛靭帯、大腿骨の殿筋粗面、【作用】股関節伸展、外旋、外転、上部:内転、下部:骨盤の下制、【支配神経】下殿神経である。

1.× 居髎は、大腿筋膜張筋や中殿筋の治療穴である。
居髎(※読み:きょりょう)は、殿部、上前腸骨棘と大転子頂点の中点に位置する。

2.× 衝門は、腸腰筋の治療穴である。
衝門(※読み:しょうもん)は、鼠径部、鼠経溝、大腿動脈拍動部の外方に位置する。

3.× 髀関は、大腿筋膜張筋や大腿直筋、縫工筋の治療穴である。
髀関(※読み:ひかん)は、大腿前面、3筋(大腿直筋と縫工筋と大腿筋膜張筋)の近位部の間の陥凹部に位置する。

4.〇 正しい。胞肓は、伸長し弱化している筋への局所治療穴である。
胞肓は、大殿筋や中殿筋の治療穴である。ほかにも、大殿筋の治療穴は、膀胱兪、中膂兪、白環、会陽、承扶、秩辺(膀胱)、環跳(胆)があげられる。ちなみに、胞肓(※読み:ほうこう)は、殿部、第2後仙骨孔と同じ高さ、正中仙骨稜の外方3寸に位置する。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題159、問題160の問いに答えよ。
「60歳の男性。主訴は足のむくみ。近医で乏尿ではないが、尿量が少ないと指摘された。残尿感はない。下痢しやすい。舌は胖嫩、歯痕、白厚膩苔、脈は滑を認める。」

問題159 治療すべき臓腑はどれか。

1.脾
2.心
3.肝
4.膀胱

解答

解説

本症例のポイント

・60歳の男性(主訴:足のむくみ)
・近医:乏尿ではないが、尿量が少ないと。
・残尿感はない。下痢しやすい。
・舌は胖嫩歯痕白厚膩苔、脈はを認める。
→本症例は、脾の不調が考えられる。脾の症状として、食欲不振、腹臓、下痢、浮種、身体の重だるさ、やせ、腹鳴などがあげられる。
嫩:虚証
胖大:陽虚、痰湿の停滞
歯痕:[胖大を伴う]陽虚、痰湿の停滞、[胖大を伴わない]気虚
白苔:健康、表証(薄白苔)、寒証(厚白苔)
膩苔・腐苔:痰湿の停滞、食滞
滑脈(痰湿、食滞):脈の流れが滑らかで、円滑に指に触れるもの。

1.〇 正しい。を治療すべき臓腑である。
本症例は、脾の不調が考えられる。脾の症状として、食欲不振、腹臓、下痢、浮種、身体の重だるさ、やせ、腹鳴などがあげられる。

2.× 心
心の不調の症状として、心悸、心煩、胸悶、不眠、意識障害などがあげられる。

3.× 肝
肝の不調の症状として、精神抑鬱、急躁、易怒、胸肋部痛、目赤、目のかすみ、舌辺紅、脈弦などがあげられる。

4.× 膀胱
例えば、膀胱湿熱の場合、頻尿、尿意促迫、隆閉、排尿痛、血尿、小便短赤、舌質紅、脈滑数などがあげられる。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題159、問題160の問いに答えよ。
「60歳の男性。主訴は足のむくみ。近医で乏尿ではないが、尿量が少ないと指摘された。残尿感はない。下痢しやすい。舌は胖嫩、歯痕、白厚膩苔、脈は滑を認める。」

問題160 適切な治療穴はどれか。

1.尺側手根屈筋腱の橈側縁、手関節掌側横紋の上方1寸
2.第1中足骨底内側の遠位陥凹部、赤白肉際
3.脛骨内側面の中央、内果尖の上方5寸
4.腓腹筋外側頭下縁とアキレス腱の間、崑崙の上方7寸

解答

解説

本症例のポイント

・60歳の男性(主訴:足のむくみ)
・近医:乏尿ではないが、尿量が少ないと。
・残尿感はない。下痢しやすい。
・舌は胖嫩歯痕白厚膩苔、脈はを認める。
→本症例は、脾の不調が考えられる。脾の症状として、食欲不振、腹臓、下痢、浮種、身体の重だるさ、やせ、腹鳴などがあげられる。
嫩:虚証
胖大:陽虚、痰湿の停滞
歯痕:[胖大を伴う]陽虚、痰湿の停滞、[胖大を伴わない]気虚
白苔:健康、表証(薄白苔)、寒証(厚白苔)
膩苔・腐苔:痰湿の停滞、食滞
滑脈(痰湿、食滞):脈の流れが滑らかで、円滑に指に触れるもの。

1.× 尺側手根屈筋腱の橈側縁、手関節掌側横紋の上方1寸は、通里である。
通里は、手の少陰経である。通里(※読み:つうり)は、前腕前内側、尺側手根屈筋腱の橈側縁、手関節掌側横紋の上方1寸に位置する。

2.〇 正しい。第1中足骨底内側の遠位陥凹部、赤白肉際は、適切な治療穴である。
なぜなら、本症例は、の不調が考えられるため。公孫は、足の太陰径である。公孫(※読み:こうそん)は、足内側、第1中足骨底の前下方、赤白肉際に位置する。

3.× 脛骨内側面の中央、内果尖の上方5寸は、蠡溝である。
蠡溝は、足の厥陰経である。蠡溝(※読み:れいこう)は、下腿前内側、脛骨内側面の中央、内果尖の上方5寸に位置する。

4.× 腓腹筋外側頭下縁とアキレス腱の間、崑崙の上方7寸は、飛揚である。
飛揚は、足の太陽膀胱経である。飛揚(※読み:ひよう)は、下腿後外側、腓腹筋外側頭下縁とアキレス腱の間、崑崙の上方7寸に位置する。

 

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