第30回(R4年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後176~180】

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問題176 施灸時の熱刺激を伝える一次求心性神経線維はどれか。

1.Ⅰa群線維
2.Ⅰb群線維
3.Ⅱ群線維
4.Ⅳ群線維

解答

解説


1.× Ⅰa群線維
Ⅰa群線維は、筋紡錘の伸展を感知する。錐内線維である核袋線維と核鎖線維にⅠa線維の終末が存在する。

2.× Ⅰb群線維
Ⅰb線維は、ゴルジ腱器官から脊髄に情報を伝達する神経線維である(腱紡錘)。

3.× Ⅱ群線維
Ⅱ群線維は、触圧覚を伝える。

4.〇 正しい。Ⅳ群線維は、施灸時の熱刺激を伝える一次求心性神経線維である。
なぜなら、Ⅲ・Ⅳ群線維の求心路は、温冷・痛覚であるため。ちなみに、広汎性害制調節(PNIC)は、侵害刺激が痛みを抑制する現象で全身性に効果が出るものを指す。Ⅲ・Ⅳ群線維の興奮で作動する。効果は刺激開始と同時に発現する。下行性ニューロンが脊髄後角細胞を抑制する。

 

 

 

 

 

問題177 熱刺激の伝導で一次求心性神経線維のシナプスがあるのはどれか。

1.胸髄核
2.薄束核
3.楔状束核
4.脊髄後角

解答

解説
1.× 胸髄核

後脊髄小脳路は、非意識型深部感覚を伝える。脊髄に入り後索をやや上行したのち、あるいは直接に後角の胸髄核に達する。ここでニューロンを代えて、同側の側索の後外側部の表層を後脊髄小脳路として上行し、下小脳脚を経て小脳に至る。(非交叉性)姿勢の調節運動における個々の筋の精密な協調のために必要な情報である。

2~3.× 薄束核/楔状束核
深部感覚(振動覚、位置覚)の伝導路である。後根 ⇒ 後索(下肢からの線維は薄束を通って薄束核に終わり、上肢からの線維は楔状束を通って楔状束核に終わる) ⇒ 延髄(後索核) ⇒ 毛帯交叉 ⇒ 内側毛帯 ⇒ 視床後外側腹側核 ⇒ 感覚野

4.〇 正しい。脊髄後角は、熱刺激の伝導で一次求心性神経線維のシナプスがある。
外側脊髄視床路(温痛覚・粗大触圧覚)は、「感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄側索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野」である。

MEMO

 体性感覚性神経系には、触覚・固有覚(位置覚と振動覚)を伝える後索・内側毛帯路と、温痛覚(温度覚と痛覚)を伝える脊髄視床路の二つの伝導路がある。どちらの伝導路も、感覚受容器から大脳皮質に情報が伝わるまでに3種類のニューロンがかかわっている。このニューロンを末梢から順に一次・二次・三次ニューロンという。

①一次ニューロンは、侵害受容器から、細胞体がある脊髄後根神経節を経由し、二次ニューロンとシナプスする後角の手前までのことをいう。

②二次ニューロンは、二次ニューロンの細胞体が主に存在する後角から脊髄を経由し、三次ニューロンとシナプスする視床の手前までのことをいう。

③三次ニューロンは、視床から頭頂葉の中心後回(ブロードマンの脳地図の3,1,2野)にある感覚野までをいう。(参考:Wikiより)。

 

 

 

 

 

問題178 施灸時の組織傷害によって放出されるアラキドン酸代謝産物はどれか。

1.ロイコトリエン
2.セロトニン
3.CGRP
4.ヒスタミン

解答

解説
1.〇 正しい。ロイコトリエンは、施灸時の組織傷害によって放出されるアラキドン酸代謝産物である。
ロイコトリエンとは、生理活性物質(ケミカルメディエーター)の一つである。役割として、好中球の走化性を活性化し、気管支収縮作用、血管拡張作用、血管透過性の亢進などを担う。

2.× セロトニン
セロトニンとは、うつ病と関連が深い神経伝達物質である。脳内だけに分泌される神経伝達物質で、交感神経を刺激し、血圧を上昇させる作用がある。ノルアドレナリンやドーパミンの暴走を抑え、心のバランスを整える作用のある伝達物質でもある。

3.× CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)
CGRPとは、カルシトニン遺伝子関連ペプチドのことで、片頭痛の痛みの直接の原因とされているタンパク質である。脊髄後根神経節で産生され、中枢および末梢の両側性に作用する。末梢血管を著しく拡張させ、血管透過性を亢進させる働きを持つ。

4.× ヒスタミン
ヒスタミンとは、胃酸分泌を促進する神経伝達物質である。胃酸の分泌を促進させる神経伝達物質として主にヒスタミン、アセチルコリン、ガストリンの3種類があり、これらの伝達物質が胃壁細胞にある各々の受容体に作用することで胃酸分泌への指令が伝わっていく。 ヒスタミンは自身のH2(ヒスタミンH2)受容体に作用し、H2受容体を活性化させ胃酸分泌を促進させる。

MEMO

ケミカルメディエーターとは、化学伝達物質ともいい、細胞間の情報伝達に作用する化学物質のことである。肥満細胞が放出するケミカルメディエーターは、さまざまなアレルギー反応(血管透過性の亢進、血流の増加、炎症細胞の遊走など)を起こす。

【例】
・ヒスタミン
・ロイコトリエン
・トロンボキサン
・血症板活性化因子
・セロトニン
・ヘパリンなど。

 

 

 

 

 

問題179 透熱灸による局所炎症反応で最も早期の反応はどれか。

1.好中球の活性化
2.血管透過性の亢進
3.リンパ球の浸潤
4.マクロファージの活性化

解答

解説

MEMO

透熱灸は、良質艾を米粒大前後で円錐形に捻り、経穴や圧痛点など皮膚上の治療点に直接施灸する。※糸状灸も含まれる。

1.× 好中球は、「活性化」ではなく血管外へ遊走が起こる。

2.〇 正しい。血管透過性の亢進は、透熱灸による局所炎症反応で最も早期の反応である。
炎症やアレルギー反応(アナフィラキシーショック)による浮腫の成因である。ほかにも、局所炎症反応として、①血管拡張、②血流増加、③血管透過性の亢進に伴う血漿成分の血管外への漏出、④白血球(赤血球)の血管外へ遊走などが主に生じる。

3.× リンパ球の浸潤は、全身性の炎症反応である。
リンパ球浸潤とは、リンパ球がさまざまな臓器に浸潤している状態のことである。細菌感染などから体を守る役割を担う免疫細胞である。

4.× マクロファージの活性化は、全身性の炎症反応である。
マクロファージとは、体内に侵入した細菌などの異物を食べる能力に優れた細胞である。単球から分化し、貧食能を有する。異物を貪食して抗原提示細胞になり、抗原情報がリンパ球に伝えられる。直径15~20μmの比較的大きな細胞で、全身の組織に広く分布しており、自然免疫(生まれつき持っている防御機構)において重要な役割を担っている。

 

 

 

 

 

 

問題180 熱刺激時のアドレナリン増加を説明する根拠として適切なのはどれか。

1.圧自律神経反射
2.広汎性侵害抑制調節
3.交感神経‒副腎髄質系
4.視床下部‒下垂体‒副腎皮質系

解答

解説

MEMO

温灸:艾を皮膚から距離を置いて燃焼させ、輻射熱で温熱刺激を与える方法。棒灸、温灸器、温筒灸、艾条灸などがある。

1.× 圧自律神経反射
圧自律神経反射とは、自律神経反射の一種である迷走神経反射のひとつで、身体の一部が圧迫されると、その刺激の信号が脊髄内の側索を上行して中枢に達し、中枢から興奮というかたちで末梢の器官へ及ぶ、一種の反射現象である。

2.× 広汎性侵害抑制調節
広汎性侵害抑制調節とは、侵害刺激が痛みを抑制する現象のことをいう。鎮痛効果は、刺激直後から全身に現れるが、刺激期間中に限られるという特徴をもっている。その発現には延髄の背側網様亜核が部分的に関与している。

3.〇 正しい。交感神経‒副腎髄質系は、熱刺激時のアドレナリン増加を説明する根拠である。
交感神経‒副腎髄質系は、交感神経が優位になると、副腎髄質がアドレナリンとノルアドレナリンを分泌するシステムである。ちなみに、アドレナリンとは、腎臓の上にある副腎髄質で合成・分泌されるホルモンである。主な作用は、心拍数や血圧上昇などがある。自律神経の交感神経が興奮することによって分泌が高まる。

4.× 視床下部‒下垂体‒副腎皮質系
視床下部‒下垂体‒副腎皮質系は、サーカディアンリズム(概日リズム)とも関係する視床下部と下垂体が神経内分泌機能を指令する経路である。概日リズムの障害とは、昼夜のサイクルと体内時計のリズムが合わないため、1日の中で社会的に要求される、あるいは自ら望む時間帯に睡眠をとることができず、活動に困難をきたすような睡眠障害のことをいう。

 

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