第30回(R4年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前66~70】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

問題66 急性膵炎で最も多いのはどれか。

1.アルコール性膵炎
2.自己免疫性膵炎
3.胆石性膵炎
4.薬剤性膵炎

解答

解説

急性膵炎とは?

急性膵炎とは、膵臓の突然の炎症で、軽度のものから生命を脅かすものまであるが、通常は治まる。主な原因は、胆石とアルコール乱用である。男性では50歳代に多く、女性では70歳代に多い。症状として、飲酒・過食後に左上腹部痛・心窩部痛が発症する。悪心・嘔吐、悪寒、発熱、背部への放散痛もみられ、腹痛はアルコールや脂質の摂取で増悪する。
検査:膵臓の炎症・壊死により膵臓由来の消化酵素(アミラーゼとリパーゼの血中濃度)が上昇する。
【治療】
軽症例:保存療法(禁食、呼吸・循環管理、除痛 等)
重症例:集中治療[臓器不全対策、輸液管理、栄養管理(早期経腸栄養)、感染予防、腹部コンパートメント症候群対策]

(※参考:「急性膵炎」MSDマニュアル家庭版より)

1.〇 正しい。アルコール性膵炎は、急性膵炎で最も多い。
急性膵炎とは、膵臓の突然の炎症で、軽度のものから生命を脅かすものまであるが、通常は治まる。主な原因は、胆石とアルコール乱用である。

2.× 自己免疫性膵炎
自己免疫性膵炎とは、高齢の男性に多い免疫反応の異常で、膵臓が腫れる病気である。 お酒の飲み過ぎや胆石などが原因で発症する急性膵炎や慢性膵炎で見られるような激しい腹痛を起こすことは少なく、しばしば胆管が詰まって体が黄色っぽくなる黄疸が見られる。半数の例で糖尿病を合併する。

3.× 胆石性膵炎
胆石性膵炎は、急性膵炎のうち、画像検査で胆管結石が明らかなもの、血液生化学検査で肝胆道系酵素の上昇と胆管結石の間接所見(胆嚢結石、胆泥、胆管拡張など)を認めたものを指す。胆管と膵管の出口が共通の穴となっているため、胆管から落ちてきた胆石が膵臓の出口につまることで生じる。高齢者では男女問わず胆石性の割合が増加する。その他、薬剤性、内視鏡検査の偶発症、ウイルス感染症、脂質異常症などが原因になる。

4.× 薬剤性膵炎
薬剤性膵炎とは、治療目的で投与された薬剤が原因で生じた膵炎のことを指す。医薬品を服用しており、急に胃のあたりがひどく痛む、吐き気、おう吐がみられている場合に診断される。

 

 

 

 

 

問題67 予防接種が有効な感染症はどれか。

1.百日咳
2.腸チフス
3.C型肝炎
4.猩紅熱

解答

解説
1.〇 正しい。百日咳は、予防接種が有効な感染症である。
百日咳とは、特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴とする急性気道感染症である。百日咳の原因菌は、百日咳菌である。特有のけいれん性の咳発作(痙咳発作)を特徴とする急性気道感染症である。母親からの免疫(経胎盤移行抗体)が十分でなく、乳児期早期から罹患する可能性があり、1歳以下の乳児、特に生後6 カ月以下では死に至る危険性も高い。百日せきワクチンを含むDPT三種混合ワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風)あるいはDPT-IPV四種混合ワクチン(ジフテリア・百日咳・破傷風・不活化ポリオ)接種はわが国を含めて世界各国で実施されており、その普及とともに各国で百日咳の発生数は激減している。しかし、ワクチン接種を行っていない人や接種後年数が経過し、免疫が減衰した人での発病はわが国でも見られており、世界各国でいまだ多くの流行が発生している。

2.× 腸チフス
腸チフスは、チフス菌を原因とし、生命を脅かす感染症である。通常、細菌を含んだ食べ物や水を介して拡がる。潜伏期間は7~14日で発熱を伴って発症する。患者、保菌者の便と尿が感染源となる。39℃を超える高熱が1週間以上も続き、比較的徐脈、バラ疹、脾腫、下痢などの症状を呈し、腸出血、腸穿孔を起こすこともある。

3.× C型肝炎
C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染することによって起こる肝臓の病気である。C型肝炎ウイルスは、主に感染者の血液や体液から感染する。感染の危険性がある行為としては注射器の使い回しや剃刀(かみそり)の共用などがある。そのほか、妊娠中の母親から胎児への感染や性行為による感染もあるが、感染する確率は低いと考えられている。

4.× 猩紅熱(※読み:しょうこうねつ)
猩紅熱とは、A群溶血性連鎖球菌(A群溶連菌)という細菌による感染症である。猩紅熱の症状は、発熱、咽頭炎、扁桃炎、舌の赤い腫れ、全身に鮮紅色の発疹などである。発疹はかゆみを伴うことが多く、手触りはザラザラとしていて「紙やすり状」といわれる。

(※表引用:「予防接種スケジュール」日本小児学会より)

 

 

 

 

 

問題68 アデノウイルス感染症はどれか。

1.流行性耳下腺炎
2.流行性角結膜炎
3.伝染性単核球症
4.手足口病

解答

解説

アデノウイルスとは?

アデノウイルスとは、呼吸器、目、腸、泌尿器などに感染症を起こす原因ウイルスである。1953年に発見され、51の型に分類される。病気と関係が深いのは1~8型である。多くの型があるため、免疫がつきにくく、何回もかかることがある。

1.× 流行性耳下腺炎
流行性耳下腺炎とは、2~3週間の潜伏期(平均18日前後)を経て発症し、片側あるいは両側の唾液腺の腫脹を特徴とするウイルス感染症(ムンプスウイルス)である。通常1~2 週間で軽快する。最も多い合併症は髄膜炎であり、その他髄膜脳炎、睾丸炎(精巣炎)、卵巣炎、難聴、膵炎などを認める場合がある。流行性耳下腺炎の約20%に精巣炎を合併すると言われており、思春期以降に精巣炎を起こすと、男性不妊の原因となる。

2.〇 正しい。流行性角結膜炎は、アデノウイルス感染症である。
流行性角結膜炎(はやり目)は、アデノウイルスというウイルスの感染が原因となる病気である。まぶたは腫れ、結膜はむくみ、充血がみられる。

3.× 伝染性単核球症
伝染性単核球症とは、EBウイルスに感染することによって、熱が出たり喉が痛くなったりする病気である。4 〜6週間の長い潜伏期を経て発熱、咽頭扁桃炎、リンパ節腫脹、発疹、末梢リンパ球増加、異型リンパ球増加、肝機能異常、肝脾腫などを示す急性感染症である。

4.× 手足口病
手足口病とは、手のひらや足の裏、口の中などに小さな水ぶくれのような発疹ができるウイルス感染症である。原因はコクサッキーウイルスエンテロウイルスといったウイルスへの感染である。5歳までの子どもがかかることが多く、夏に流行のピークを迎える。

 

 

 

 

 

問題69 大腸癌について正しいのはどれか。

1.近年減少傾向である。
2.便潜血検査は死亡率減少に寄与する。
3.大部分が扁平上皮癌である。
4.血清CEAが早期診断に役立つ。

解答

解説

大腸がんの危険因子

大腸癌とは、大腸(結腸・直腸・肛門)に発生するがんである。この20年で大腸がんによる死亡数は1.5倍に拡大していてがんによる死亡数でも胃がんを抜いて第2位になっている。生活習慣に関わる大腸がんのリスク要因として、運動不足、野菜や果物の摂取不足、肥満、飲酒などが挙げられる。生活習慣の欧米化(高脂肪・低繊維食)が関与していると考えられている。

1.× 近年、「減少」ではなく拡大傾向である。
この20年で大腸がんによる死亡数は1.5倍に拡大していてがんによる死亡数でも胃がんを抜いて第2位になっている。

2.〇 正しい。便潜血検査は死亡率減少に寄与する
便潜血検査とは、便に含まれる微量の血液(ヒトヘモグロビン)の有無を調べる検査である。消化管からの目に見えない出血を見つけることができ、特に大腸がんのスクリーニング検査に有効である。

3.× 大部分が「扁平上皮癌」ではなく腺癌である。
大腸癌は、腺癌の好発部位である。腺癌とは、腺組織とよばれる上皮組織から発生するがんである。 胃、腸、子宮体部、肺、乳房、卵巣、前立腺、肝臓、膵臓、胆のうなどに発生する。なかでも、胃がんの90%以上は、胃壁の最も内側の粘膜上皮細胞から発生する腺癌である。

4.× 血清CEAが早期診断に役立つ。
血清CEAとは、大腸がん、胃がんなどの消化器系がんの腫瘍マーカーである。健康な人でも約3%の人は基準値を超える場合があるとされており、高齢や喫煙、肝硬変、糖尿病でもやや上昇する傾向がある。

上皮組織の形態による分類

・単層扁平上皮:薄いので物質の交換などに向く。
(胸膜、腹膜、血管内皮、肺胞など)

・単層立方上皮:甲状腺の濾胞細胞など。
(甲状腺の濾胞上皮、尿細管など)

・単層円柱上皮:吸収と分泌を行う場所に向く。
消化器系(胃、小腸、大腸)、卵管・子宮など

・重層扁平上皮:摩擦など機械的刺激に強い。
皮膚、口腔~食道、肛門、膣など。

・多列線毛上皮:表面に線毛があり、杯細胞が豊富。線毛と粘液で塵や異物をからめとる。
鼻腔~気管・気管支(気道)

・移行上皮:伸び縮みすることができる。
腎杯~尿管~膀胱(尿路)

 

 

 

 

 

問題70 ウイルス性肝炎と感染経路の組合せで正しいのはどれか。

1.A型:性行為
2.B型:獣肉摂取
3.C型:血液への曝露
4.E型:生鮮魚介類の摂取

解答

解説
1.× A型は、「性行為」ではなく便である。
A型肝炎とは、A型肝炎ウイルス(HAV)感染による疾患である。通常、感染した人の便で汚染されたものを摂取したときに感染する。初期症状は倦怠感や発熱、頭痛、筋肉痛等で、一過性の急性肝炎が主症状であり、治癒後に強い免疫が残る。治療は、通常、安静を含めた対症療法が中心となる。

2.× B型は、「獣肉摂取」ではなく血液や体液である。
B型肝炎とは、B型肝炎ウイルスに感染することによって生じる肝臓の病気のことである。B型肝炎ウイルスは主に感染者の血液や体液を介して感染する。たとえば、注射針を感染者と共用した場合や、感染者と性行為をした場合などに感染する。しかし、B型肝炎にはワクチンがあるため、適切にワクチンを接種することによって感染を予防することができる。

3.〇 正しい。C型:血液への曝露
C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)に感染することによって起こる肝臓の病気である。C型肝炎ウイルスは、主に感染者の血液や体液から感染する。感染の危険性がある行為としては注射器の使い回しや剃刀(かみそり)の共用などがある。そのほか、妊娠中の母親から胎児への感染や性行為による感染もあるが、感染する確率は低いと考えられている。

4.× E型は、「生鮮魚介類の摂取」ではなく獣肉摂取である。
E型肝炎とは、E型肝炎ウイルスに感染することによって起こる肝臓の病気である。E型肝炎ウイルスとは、急性肝炎の原因となるRNAウイルスである。水や豚・猪のレバーなど食物を介して経口感染する。従来、経口伝播型非A非B型肝炎とよばれてきたウイルス性の急性肝炎で、その病原体はE型肝炎ウイルス(RNAウイルス)である。E型肝炎の致死率はA型肝炎の10倍といわれ、妊婦では実に20%に達することがある。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)