第30回(R4年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前61~65】

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問題61 不整脈で予後が最も良いのはどれか。

1.心室細動
2.心房細動
3.上室性期外収縮
4.Ⅲ度房室ブロック

解答

解説
1.× 心室細動
心室細動とは、脈のかたちが一定ではなく不規則で、心室がけいれんを起こし1分間の脈拍数が300など数えられないくらい速くなった状態である。心室頻拍は血圧が保たれ、すぐには意識を失わないこともあるが、心室細動になると、発症から5~10秒で意識がなくなって失神し、その状態が続くとそのまま亡くなることが多い。心室頻拍の場合も、ほうっておくと心室細動に移行して、意識がなくなって突然死を起こすことがある。除細動の適応である。また、基礎心疾患を伴う場合は、植え込み型除細動器(ICD)の適応となる。

2.× 心房細動
心房細動は、心原性脳塞栓症の原因として最も多い不整脈である。心房細動は、心臓がこまかく震えている状態である。血栓ができやすいため脳塞栓の原因となり最多である。心房細動の特徴として、心房の興奮が形・大きさともに不規則であり、基線が揺れている(f波)。心房が正常に収縮しないためにP波が消失し、QRS波が不規則である。心房細動を洞調律に戻す非薬物療法には、カテーテルアブレーションのほかに電気的除細動という方法もある。電気的除細動を行うのは、心房細動が起こると①血圧が急に下がって強い症状のために動けなってしまうような場合、②抗不整脈薬が有効でない場合、③肥大型心筋症・心アミロイドーシスや心不全などがあるため抗不整脈薬を使うよりも電気的除細動の方が安全と判断される場合などである。

3.〇 正しい。上室性期外収縮は、不整脈で予後が最も良い。
上室性期外収縮は、洞結節の興奮よりも早期に心房から興奮が出現する不整脈である。つまり、先行するP波と本来より早いQRS波が特徴である。上室性期外収縮は、ほとんどの場合、治療は必要ない。

4.× Ⅲ度房室ブロック
房室ブロックは、心房まで伝わった心臓収縮のための正常な電気刺激が心室にうまく伝わらず、全身に血液を送る心室のリズムが遅くなったり、停止したりする状態である。房室ブロックは、その重症度によってⅠ度、Ⅱ度、Ⅲ度房室ブロックに分けられる。P波の後のQRS波の関連性がなく、両者がそれぞれに独立したリズムで出現している。

房室ブロックとは?

房室ブロックは、心房から心室への伝導障害をいう。第1度〜第3度に分類される。

・1度房室ブロック:心房から心室への伝導時間が延長するが、P波とQRS波の数や形は変わらない。

・2度房室ブロック

①ウェンケンバッハ型(モビッツⅠ型):PR間隔が徐々に延長してQRSが脱落する。

②モビッツⅡ型:心房から心室への伝導が突然途絶える。P波の後のQRSが突然脱落する。

・3度房室ブロック:心房からの刺激が途絶え、P波とQRSが無関係に生じるようになる。

 

 

 

 

 

問題62 我が国における後天性失明の原因で最も多いのはどれか。

1.加齢黄斑変性症
2.白内障
3.網膜剥離
4.緑内障

解答

解説

後天性失明の原因

1位:緑内障(21.0%)、2位:糖尿病網膜症(15.6%)、3位:網膜色素変性(12.0%)、4位:加齢黄斑変性(9.5%)、5位:脈絡膜萎縮(8.4%)

(※参考:日本眼科学会雑誌)

1.× 加齢黄斑変性症は、全体の9.5%である。
加齢黄斑変性とは、老化に伴い、眼の中の網膜というカメラのフィルムにあたる膜の中心に出血やむくみをきたし、視力が低下する病気である。放置すると進行して、視力の回復が不能になる。

2.× 白内障は、「その他」に分類されるほどわずかである。
白内障とは、水晶体が年齢とともに白く濁って視力が低下する病気である。主な原因は加齢である。他にも、糖尿病や妊娠初期の風疹ウイルス感染などにより生じる。

3.× 網膜剥離は、「その他」に分類されるほどわずかである。
網膜剥離とは、眼球の内側にある網膜という膜が剥がれて、視力が低下する病気である。網膜は眼球内の光を感知する部分であり、網膜が物理的に剥がれることで起こる。ちなみに、裂孔原性網膜剝離とは、様々な原因で生じた網膜の裂孔や円孔から液化した硝子体が網膜下へ流入することで、感覚網膜層と網膜色素上皮層との間が剥離した状態をいう。つまり、網膜の一部に裂孔と呼ばれる裂け目ができて、そこから網膜の裏側に水分が流れ込んで剥がれてしまった状態をいう。裂孔原性網膜剥離の手術には、強膜内陥術と硝子体手術がある。

4.〇 正しい。緑内障は、我が国における後天性失明の原因で最も多い。
緑内障とは、眼圧の上昇や視神経の脆弱性などにより視神経が障害され、視野障害をきたす疾患である。一般的な症状として、①見える範囲が狭くなる、②一部が見えにくくなる、③見えない部分が出現するなどである。病気の種類や進行度合いなどによって薬物療法、レーザー治療、手術などが検討される。一度悪くなった視界・視野の症状は改善されることはないため、早い段階で治療を受けることが大切である。

 

(※図:「看護師イラスト集」看護roo!様HPより)

 

 

 

 

 

問題63 Ⅳ型アレルギーはどれか。

1.アナフィラキシーショック
2.アレルギー性結膜炎
3.アレルギー性接触性皮膚炎
4.アレルギー性鼻炎

解答

解説

(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)

1.× アナフィラキシーショックは、Ⅰ型アレルギーである。
アナフィラキシーショックとは、アレルギー反応で起こるショックのことである。主にⅠ型アレルギー反応の結果、血管拡張や血管透過性の亢進による血漿漏出が生じ、循環血液量の減少をきたすことで起こる。アナフィラキシーショックの症状として(頻脈、血圧低下、意識障害、喉頭浮腫、呼吸困難)を引き起こす。

2.× アレルギー性結膜炎/アレルギー性鼻炎は、Ⅰ型アレルギーである。
アレルギー疾患とは、アレルゲンによる免疫反応によって引き起こされる、人体に有害な局所的または全身的反応に係る疾患のことである。アレルギー疾患には、主に6疾患(気管支ぜん息、アトピー性皮膚炎、アレルギー性鼻炎、花粉症、食物アレルギー、アレルギー性結膜炎)がある。

3.〇 正しい。アレルギー性接触性皮膚炎は、Ⅳ型アレルギーである。
アレルギー性接触性皮膚炎とは、皮膚に触れた物質に対して免疫系が反応を起こすことで発生する。 皮膚が問題の物質に最初に触れると、皮膚がその物質に対して敏感になる。これを感作という。 物質に一度触れただけで感作が生じることもあれば、何度も触れなければ生じないこともある。

Ⅳ型アレルギーとは?

Ⅳ型アレルギーとは、遅延型細胞性免疫やツベルクリン型とも呼ばれ、感作T細胞が関与するアレルギーである。感作T細胞と抗原の反応によって産生・放出されたサイトカインが局所の細胞性免疫反応を活性化し、炎症と組織障害が生じる。ツベルクリン反応、接触性皮膚炎などに関連する。

 

 

 

 

 

問題64 発達障害で不注意、多動性、衝動性の3つの特徴がみられるのはどれか。

1.ADHD
2.PTSD
3.発達性協調運動障害
4.自閉スペクトラム症

解答

解説
1.〇 正しい。ADHDは、発達障害で不注意、多動性、衝動性の3つの特徴がみられる。
注意欠陥多動性障害(ADHD)とは、発達障害の一つであり、脳の発達に偏りが生じ年齢に見合わない①注意欠如、②多動性、③衝動性が見られ、その状態が6ヵ月以上持続したものを指す。その行動によって生活や学業に支障が生じるケースが多い。対人関係面で周囲との軋轢を生じやすく、大人からの叱責や子どもからのいじめにあうことがある。

2.× PTSD
PTSD<外傷後ストレス障害>とは、極めて強烈なストレスを受けた後、数週間から数ヵ月を経て(6ヵ月以上潜伏期間があることはまれ)、再体験、回避、認知や気分の異常、過覚醒の各症状が4週間以上持続し、著しい苦痛や社会的障害を生じている状態をいう。

3.× 発達性協調運動障害
運動機能の特異的発達障害(発達性協調運動症/発達性運動協調障害)は、知能の遅れや神経障害では説明のつかない、協調運動の発達の重篤な機能障害である。【特徴】①生まれながらに不器用である。②動きがぎこちない。③書字、スポーツなども苦手である。

4.× 自閉スペクトラム症
自閉症スペクトラム障害とは、正常な社会的関係を構築することができず、言葉の使い方に異常がみられるか、まったく言葉を使おうとせず、強迫的な行動や儀式的な行動がみられる病気である。 自閉スペクトラム症の患者は、他者とコミュニケーションをとったり関係をもったりすることが苦手である特徴を持つ。

 

 

 

 

 

問題65 感染症と媒介生物の組合せで正しいのはどれか。

1.発疹チフス:ダニ
2.トキソプラズマ症:シラミ
3.デング:熱蚊
4.日本脳炎:ネズミ

解答

解説
1.× 発疹チフスは、「ダニ」ではなくシラミである。
発疹チフスとは、シラミによって媒介され、発疹チフスリケッチアという細菌によって引き起こされる感染症である。発疹チフスの症状は、体内に細菌が侵入してから7~14日後に突然起こる。症状には、発熱(39~40℃)、激しい頭痛、ひどい疲労感、悪寒、脱力感、悪心・嘔吐、手足の疼痛などがある。

2.× トキソプラズマ症は、「シラミ」ではなく寄生性原生生物(原虫)である。
トキソプラズマ症とは、トキソプラズマ(Toxoplasma gondii)による原虫感染症である。免疫不全によって生じやすい疾患で、後天性免疫不全症候群(AIDS)、臓器移植後などの免疫機能低下時に顕性化、日和見感染の代表疾患である。

3.〇 正しい。デング:熱蚊
デング熱とは、蚊(デングウイルス)に刺されることによって感染する疾患である。 症状として、急激な発熱で発症し、発疹、頭痛、骨関節痛、嘔気・嘔吐などがみられる。通常、発症後2~7日で解熱し、発疹は解熱時期に出現する。

4.× 日本脳炎は、「ネズミ」ではなくである。
日本脳炎とは、日本脳炎ウイルスにより発生する疾病で、蚊を介して感染する。以前は子どもや高齢者に多くみられた病気である。初期症状として、突然の高熱・頭痛・嘔吐などで発病し、意識障害や麻痺等の神経系の障害を引き起こす病気で、後遺症を残すことや死に至ることもある。

 

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