第31回(R5年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後166~170】

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問題166 痛みの識別に関与する中枢内伝導路はどれか。

1.後索路
2.新脊髄視床路
3.前脊髄視床路
4.脊髄網様体路

解答

解説
1.× 後索路は、深部感覚である。
後索路は、脊髄後角から同側の後索を通り、延髄でニューロンを換え、左右交差し、内側毛帯を通り、視床という経路となる。

2.〇 正しい。新脊髄視床路は、痛みの識別に関与する中枢内伝導路である。
新脊髄視床路(二次求心線維)は、脊髄から視床を通って大脳皮質に刺激を伝える速くて鋭い急性の痛みを伝達するものである。

3.× 前脊髄視床路
前脊髄視床路(粗大な触覚・圧覚)は、感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄前索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野である。

4.× 脊髄網様体路
脊髄網様体路は、脊椎動物の姿勢や歩行(移動)動作に関与する運動性下行路である。痛みに関しては、侵害刺激をポリモーダル受容器で受容→C線維(伝導速度0.5-2m/sec)→脊髄後角→前脊髄視床路・脊髄網様体→視床髄板内核・視床下部→大脳(辺縁)皮質である。

まとめ

聴覚:蝸牛神経→蝸牛神経核→上オリーブ核→中脳下丘→内側膝状体→上側頭回

視覚:視神経→視交叉→外側膝状体→視放線→視覚野

・外側皮質脊髄路 (錐体路・運動)
大脳皮質—放線冠—内包後脚—中脳の大脳脚—橋縦束―延髄で錐体交叉—脊髄の側索

・前皮質脊髄路(錐体路の一部・運動)
大脳皮質—放線冠—内包後脚—中脳の大脳脚—橋縦束—延髄—交叉せずに脊髄前索を下降(10~25%程度)
重要事項①延髄で交差せずに同側に下降すること、②支配はL2まで。

・前脊髄視床路(粗大な触覚・圧覚)
感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄前索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野

・外側脊髄視床路(温痛覚・粗大触圧覚)
感覚神経→脊髄後角→(交叉)→脊髄側索→視床→後脚→大脳皮質体性知覚野

 

 

 

 

 

問題167 四肢や体幹からの痛覚情報を伝える三次ニューロンが局在するのはどれか。

1.赤核
2.尾状核
3.レンズ核
4.視床後外側腹側核

解答

解説

MEMO

 体性感覚性神経系には、触覚・固有覚(位置覚と振動覚)を伝える後索・内側毛帯路と、温痛覚(温度覚と痛覚)を伝える脊髄視床路の二つの伝導路がある。どちらの伝導路も、感覚受容器から大脳皮質に情報が伝わるまでに3種類のニューロンがかかわっている。このニューロンを末梢から順に一次・二次・三次ニューロンという。

①一次ニューロンは、侵害受容器から、細胞体がある脊髄後根神経節を経由し、二次ニューロンとシナプスする後角の手前までのことをいう。

②二次ニューロンは、二次ニューロンの細胞体が主に存在する後角から脊髄を経由し、三次ニューロンとシナプスする視床の手前までのことをいう。

③三次ニューロンは、視床から頭頂葉の中心後回(ブロードマンの脳地図の3,1,2野)にある感覚野までをいう。(参考:Wikiより)。

1.× 赤核
赤核とは、不随意の運動の調節(赤核振戦:粗大な動作で誘発される振戦)を担う。赤核脊髄路とは、運動野と小脳からの求心性線維を受け取るため、間脳と運動ニューロンを通じて脊髄の活動に影響を与える錐体外路として機能するものである。

2.× 尾状核
大脳基底核の一部で、主に運動制御に関与している。大脳基底核は、①線条体(被殻 + 尾状核)、②淡蒼球、③黒質、④視床下核である。

3.× レンズ核
レンズ核(被殻と淡蒼球)とは、大脳基底核である。主に運動制御に関与している。

4.〇 正しい。視床後外側腹側核は、四肢や体幹からの痛覚情報を伝える三次ニューロンが局在する。
視床後腹側核は、知覚神経を、大脳皮質の体性感覚野に中継する核である。

まとめ

痛みの伝導路は、侵害受容器(神経細胞一次ニューロン)が痛み刺激を受けた後、 →脊髄後角(二次ニューロン)→視床(三次ニューロン)→大脳皮質へ伝導される。

 

 

 

 

 

問題168 刺鍼により起こる軸索反射について正しいのはどれか。

1.血漿が漏出する。
2.内因性オピオイドが関与する。
3.単シナプス反射によって生じる。
4.広作動域ニューロンが関与する。

解答

解説

軸索反射とは?

軸索反射とは、末梢神経の軸索上で起こる反射様現象である。神経末端に生じた興奮が神経の分枝に沿って逆行性に伝播する現象のことをさす。したがって、鋮刺激によりポリモーダル受容器が興奮すると、軸索反射によって受容器末端から神経伝達物質が放出され、コリン作動性神経の末梢血管に働いて(血管拡張(フレア)、膨疹(浮腫))が生じる。※神経伝達物質には(CGRP、サブスタンスP)が考えられている。

1.〇 正しい。血漿が漏出する
軸索反射により、神経ペプチドが放出され、皮膚発赤(血管拡張、血流増加)、平滑筋収縮(気管支収縮、気道収縮)、粘膜浮腫(血管透過性亢進による血漿蛋白漏出)、粘液分泌亢進が起こる。

2.× 内因性オピオイドが関与しない
内因性オピオイドは、体内で作られ、生理的な状況や危機が迫ったときに放出される物質され、脳や脊髄に存在するオピオイド受容体に作用し、鎮痛作用をもたらす。主に、エンドルフィン、エンケファリン、ダイノルフィン、エンドモルフィンなどあげられる。また、痛みによる不快な感覚の抑制、下降性抑制神経系の賦活化、恐怖という情動の抑制、脳内報酬系における重要な伝達物質でもある。

3.× 単シナプス反射によって生じない
なぜなら、軸索反射は、反射様現象であるため。通常、痛み刺激は、皮膚にある痛みセンサーから脊髄へ、そして脳へと伝わるが、信号が神経を逆行して末端に伝わる場合があり、これを軸索反射という。血管が広がって血行が促進したり、痛みが軽くなったりという反応が起こる。

4.× 広作動域ニューロンが関与しない
広作動域ニューロンとは、非侵害刺激を含めた色々の種類の刺激を受け入れるC線維(ポリモーダル受容器)が受けた刺激を脳へ中継する神経細胞のことである。脊髄Ⅴ層に存在する。一次感覚細胞から広作動域ニューロンへの痛みの信号はサブスタンスPやグルタミン酸などの興奮性アミノ酸によって伝達される。

 

 

 

 

 

問題169 広汎性侵害抑制調節の特徴について正しいのはどれか。

1.Ⅱ群線維の興奮で作動する。
2.効果発現に時間がかかる。
3.全身性に効果が出現する。
4.下行性ニューロンが脊髄前角細胞を抑制する。

解答

解説

広汎性侵害抑制調節とは?

広汎性侵害抑制調節とは、侵害刺激が痛みを抑制する現象のことをいう。鎮痛効果は、刺激直後から全身に現れるが、刺激期間中に限られるという特徴をもっている。その発現には延髄の背側網様亜核が部分的に関与している。

1.× 「Ⅱ群線維」ではなく、Ⅲ・Ⅳ群線維の興奮で作動する。
なぜなら、痛み刺激が必要となるため。

2.× 効果発現に「時間がかかる」のではない
鎮痛効果は、刺激直後から全身に現れる。

3.〇 正しい。全身性に効果が出現する
全身性鎮痛がみられる。

4.× 下行性ニューロンが脊髄「前角」ではなく後角細胞を抑制する。
痛みを痛みで抑える機序については、Le Barsらが1979年に、全身の皮膚、筋などに侵害刺激を加えることで、脊髄後角のニューロンの興奮が抑制されることを報告した(※引用:「はり師、きゅう師、あんま・指圧・マッサージ師のための痛み学習テキスト」より)。ちなみに、脊髄前角は、随意運動の伝導路(錐体路)に関与する。錐体路は、大脳皮質運動野―放線冠―内包後脚―大脳脚―延髄―錐体交叉―脊髄前角細胞という経路をたどる。

 

 

 

 

 

問題170 ストレス刺激による交感神経活動亢進反応はどれか。

1.深部体温上昇
2.気管支収縮
3.心拍数減少
4.血糖値低下

解答

解説
1.〇 正しい。深部体温上昇は、ストレス刺激による交感神経活動亢進反応である。
交感神経亢進により、皮膚血管の収縮、熱の放散が減少するため、新陳代謝の亢進、熱の産生が増加し体温が上昇する。

2~4.× 気管支収縮/心拍数減少/血糖値低下
これらは副交感神経亢進により起こる。

 

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