第31回(R5年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前66~70】

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問題66 中殿筋機能が低下して起こるのはどれか。

1.アリス徴候
2.クリック徴候
3.ドレーマン徴候
4.トレンデレンブルグ徴候

解答

解説
1.× アリス徴候
アリス徴候は、背臥位で両膝を屈曲しながら、股関節を屈曲して両下腿をそろえ、左右の膝の高さを比べる診察法である。膝の高さに差があるときに陽性と診断し、股関節脱臼を疑う。これは、股関節の脱臼が生じると大腿骨頭が寛骨臼の後方に位置するため、左右差が生じる。一方、両側脱臼例や下肢に骨性の短縮が存在する症例の場合、有効ではないため注意が必要である。

2.× クリック徴候
クリック徴候とは、股関節の開排制限(股関節脱臼)の検査で、カエルのように股関節を広げた状態をとっても開き方に左右差があったり、両側とも完全に開ききれなかったりの場合、クリック音で陽性となる。

3.× ドレーマン徴候
Drehmann〈ドレーマン〉徴候とは、大腿骨頭すべり症を発症した際、股関節屈曲を行うと開排して患肢の大腿前面を腹につけられない状態のことをいう。

4.〇 正しい。トレンデレンブルグ徴候は、中殿筋機能が低下して起こる。
トレンデレンブルグ徴候とは、患肢で片脚立ちをしたとき、健肢側の骨盤が下がる現象である。

 

 

 

 

 

問題67 成人の気管支喘息について正しいのはどれか。

1.拘束性換気障害をきたす。
2.発作は昼間に起こりやすい。
3.血液検査では好塩基球が増加する。
4.吸入ステロイド薬が治療の中心である。

解答

解説

気管支喘息とは?

【症状】
喘鳴、呼吸困難、呼気延長など(1秒率の低下)、アレルギー反応やウイルス感染が誘引となる。

【治療】気道の炎症を抑えて、発作が起きない状態にする。発作を繰り返すと、気道の粘膜が徐々に厚くなり、狭くなった気道が元に戻らなくなるため治療が難しくなる。そのため、日頃から気道の炎症を抑える治療を行い、喘息をコントロールすることが重要である。

1.× 「拘束性換気障害」ではなく閉塞性換気障害をきたす。
閉塞性換気障害とは、気道が狭くなり、息を吐き出しにくくなる障害のことである。

2.× 発作は、「昼間」ではなく夜間・早朝に起こりやすい。
なぜなら、特定のトリガー(例えば、運動、冷たい空気、アレルゲン)によって引き起こされるため。したがって、夜間、特に早朝悪くなることが多く、日中は症状が良くなることが多い。また、風邪をひくと発作が起こりやすくなる。

3.× 血液検査では、「好塩基球」ではなく好酸球が増加する。
好酸球とは、主に寄生虫に対する免疫反応が役割である。ほかにも、アトピー性皮膚炎や薬剤アレルギー、気管支喘息などでも増加する。末梢血白血球の1~6%を占め、呼吸器や腸管などに存在する。一方、好塩基球とは、Ⅰ型アレルギー(即時型アレルギー)を引き起こす。末梢血白血球の0~2%を占める。ほかにも、好酸球や好中球の移動を助ける役割も担う。

4.〇 正しい。吸入ステロイド薬が治療の中心である
気道の炎症を抑えて、発作が起きない状態にする。発作を繰り返すと、気道の粘膜が徐々に厚くなり、狭くなった気道が元に戻らなくなるため治療が難しくなる。そのため、日頃から気道の炎症を抑える治療を行い、喘息をコントロールすることが重要である。

閉塞性換気障害とは?

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の最大の原因は喫煙であり、喫煙者の約20%がCOPDを発症する。慢性閉塞性肺疾患とは、以前には慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称である。他の特徴として、肺の過膨張、両側肺野の透過性亢進、横隔膜低位、横隔膜の平低化、滴状心などの特徴が認められる。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。

増加:残気量・残気率・肺コンプライアンス・全肺気量・PaCO2

減少:一秒率・一秒量・肺活量・肺拡散能・PaO2

(※引用:「アレルギー総論」厚生労働省HPより)

 

 

 

 

 

問題68 労作性狭心症と急性心筋梗塞で、最も違いが明確なのはどれか。

1.胸痛の持続時間
2.呼吸困難の程度
3.放散痛の部位
4.症状出現の時刻

解答

解説

MEMO

急性心筋梗塞とは、冠状動脈内に血栓が形成され、動脈を閉塞し心筋が壊死することである。リスクファクターとして、①高血圧、②喫煙、③糖尿病、④脂質代謝異常などである。合併症には、不整脈や心不全、脳梗塞がある。そのほかに重篤なものとして心破裂や心室中隔穿孔などがある。

労作性狭心症とは、心臓に栄養を送る血管である冠動脈の一部が動脈硬化によって75%以上狭窄し、血流の流れが悪くなってしまう状態である。症状として、胸痛発作の頻度(数回/周以下)、持続時間(数分以内)、強度などが一定であることや、一定以上の運動や動作によって発作が出現する。その4大危険因子は、「①喫煙、②脂質異常症、③糖尿病、④高血圧」である。そのほかにも、加齢・肥満・家族歴・メタボリックシンドロームなどがある。

1.〇 正しい。胸痛の持続時間は、労作性狭心症と急性心筋梗塞で、最も明確な違いである。
急性心筋梗塞は、冠状動脈内に血栓が形成され、動脈を閉塞し心筋が壊死することであるため、治療が施されない場合は胸痛は持続する。一方、労作性狭心症は、血流不足になっている状態であるため、胸痛の持続時間は数分以内である。

2.× 呼吸困難の程度
心臓の機能不全をきたすため、両者とも同程度の呼吸困難をきたす。

3.× 放散痛の部位
心臓の放散痛は左肩と左腕であり、両者とも心臓が障害部位であるため放散痛も同部位である。

4.× 症状出現の時刻
心筋梗塞や労作時狭心症が起こりやすい時間帯は、起床後の8時~10時頃と、疲労が蓄積されている20時~22時頃である。

 

 

 

 

 

問題69 疾患と症状の組合せで正しいのはどれか。

1.過敏性腸症候群:血便
2.急性胆囊炎:左季肋部痛
3.慢性膵炎:便秘
4.肝硬変:女性化乳房

解答

解説

下血とは?

下血とは、肛門から黒い血が出ることである。血便と下血は別のものであり、血便とは、赤い血が混じっている便である。一方、下血は黒い血が混じっている便のことをいう。赤い便(血便)は、下部消化管、すなわち回腸や大腸・肛門からの出血が原因である。一方、黒い便(下血)の原因は、上部消化管、つまり食道、胃、十二指腸などの上部小腸からの出血である。

1.× 過敏性腸症候群は、血便は起こりにくい
過敏性腸症候群とは、通常の検査では腸に炎症・潰瘍・内分泌異常などが認められないにも関わらず、慢性的に腹部の膨張感や腹痛を訴えたり、下痢や便秘などの便通の異常を感じる症候群である。腸の内臓神経が何らかの原因で過敏になっていることにより、引き起こされると考えられている。それぞれタイプが存在し、①下痢型(ストレスや緊張などのわずかなきっかけによって腹痛と激しい便意とともに下痢を生じる)、②便秘型(便秘に伴ってお腹の張りなどの症状が起こる)、③混合型(便秘と下痢が交互に繰り返すもの)がある。

2.× 急性胆囊炎は、「左」ではなく右季肋部痛である。
急性胆嚢炎とは、胆のうに炎症が生じた状態である。 胆のうがむくんで腫れ、炎症の進行とともに胆のうの壁が壊死していく。 症状は、初期には上腹部の不快感や鈍痛で、炎症の進行とともに右季肋部痛(右の肋骨の下あたり)になり、次第に激痛になる。原因の90%は、胆のうの中の胆石が胆嚢の出口に詰まることである。胆石は、脂質の多い食生活でみられやすい。

3.× 慢性膵炎は、「便秘」ではなく下痢である。
慢性膵炎とは、膵臓の正常な細胞が壊れ、膵臓が線維に置き換わる病気である。慢性膵炎になると、膵臓で分泌される消化酵素の量が減り、消化する力が弱まり、その結果、下痢や脂肪便(便器の中に油が浮くような便)がみられる。

4.〇 正しい。肝硬変:女性化乳房
肝硬変の合併症の1つに女性化乳房がある。女性化乳房とは、男性の乳腺が発達して乳房が肥大化する病気である。肝硬変では、肝機能が低下して女性ホルモンを分解できなくなるため、乳腺が発達して女性化乳房になる。ちなみに、肝硬変とは、B型・C型肝炎ウイルス感染、多量・長期の飲酒、過栄養、自己免疫などにより起こる慢性肝炎や肝障害が徐々に進行して肝臓が硬くなった状態をいう。 慢性肝炎が起こると肝細胞が壊れ、壊れた部分を補うように線維質が蓄積して肝臓のなかに壁ができる。

慢性膵炎とは?

慢性膵炎とは、膵臓の正常な細胞が壊れ、膵臓が線維に置き換わる病気である。
【原因】男性では飲酒が最も多く、女性では原因不明の特発性が多くみられる。膵液の通り道である膵管が細くなったり、膵管の中に膵石ができたりして、膵液の流れが悪くなり、痛みが生じると考えられている。
【症状】
・初期(代償期):膵臓の機能は保たれているが、腹痛がある。
・中期(移行期):次第に膵臓の機能が低下。
・末期(非代償期):膵臓の機能は著しく低下、消化不良をともなう下痢や体重減少、糖尿病の発症や悪化が生じる。
【治療】
・生活習慣の改善:禁酒、禁煙を行う。
・腹痛:鎮痛剤や蛋白分解酵素阻害薬を使用。
・手術が適応になることもある。①膵管ドレナージ手術と②膵切除術に分けられる。①膵管ドレナージ手術は、拡張した膵管を切開して腸管とつなぎ、膵液を腸管に流して膵管内の圧を下げる手術である。膵管の拡張がない場合は、膵管の狭窄が最も強い部位の②膵切除術を行う。

(※参考:「急性膵炎と慢性膵炎」日本肝胆膵外科学会様HPより)

 

 

 

 

 

問題70 かぜ症候群について正しいのはどれか。

1.ほとんどがウイルス感染である。
2.初期から呼吸音に異常がみられる。
3.主な感染経路は空気感染である。
4.抗菌薬を主に用いる。

解答

解説

溶連菌感染症とは?

溶連菌感染症とは、溶連菌(溶血性性連鎖球菌)という細菌に感染することによって、かぜ症候群と呼ばれる上気道感染症や皮膚の化膿を引き起こす感染症である。

溶連菌(溶血性連鎖球菌)は、細菌であり、
①化膿性連鎖球菌(A群β型連鎖球菌)は、猩紅熱、急性糸球体腎炎、リウマチ熱などの原因となる。
②B群連鎖球菌(GBS)は、新生児の髄膜炎、敗血症の原因となる。
③緑色連鎖球菌は、亜急性感染性心内膜炎(SBE)の原因となる。

1.〇 正しい。ほとんどがウイルス感染である
かぜ症候群とは、鼻やのど、気管支などにウイルスが侵入して感染し、急性の炎症を伴う病気である。症状として、くしゃみ、鼻水、鼻づまり、のどの痛み、咳、たん、発熱などの総称である。

2.× 初期から呼吸音に異常がみられにくい
喉の痛みは1~2日続き、鼻づまりや鼻汁の症状に移行する。発症後2~3日で症状がピークを迎え、7~10日経過すると症状が軽快することが多い。

3.× 主な感染経路は、「空気感染」ではなく飛沫感染である。
かぜ症候群は、患者のくしゃみなどで飛散する飛沫を介してウイルスなどの病原体が、気道内に入って気道粘膜に付着し、侵入と増殖することから始まる。

4.× 抗菌薬を主に用いない
かぜ症候群のほとんどはウイルス感染症であり、抗菌薬は効果がない。したがって、かぜ症候群は、安静、水分・栄養補給により自然に治癒する。

感染経路と感染症

感染には、①接触感染、②空気感染、③飛沫感染がある。

①接触感染(例:流行性角結膜炎、疥癬、ノロウイルス感染症など)
(1)直接接触感染:感染者の皮膚粘膜との直接接触による伝播・感染する。
(2)間接接触感染:感染者の微生物で汚染された衣類、周囲の器物、環境などとの接触による伝播・感染する。

②飛沫感染(例:風疹、流行性耳下腺炎、 インフルエンザ、マイコプラズマ、百日咳など)
咳やくしゃみなどに伴って発生する飛沫(粒径5μm以上の粒子)が経気道的にヒトの粘膜に付着し感染する。飛散する範囲は1m以内であることが特徴。

③空気感染(例:結核、水痘、麻疹など)
飛沫核 (粒径5μm未満の粒子に付着した微生物)が長期間空中を浮遊し、これを吸い込むことで感染が伝播・感染する。

(※参考:「医療施設等における感染対策ガイドライン」厚生労働省様HPより)

 

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