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次の文で示す病証について、問題155、問題156の問いに答えよ。
「34歳の女性。不妊症で来院。月経量は少なく、経遅がある。少し動いただけで短気が生じ、四肢厥冷もある。最近は腰膝酸軟を伴う。舌は淡で胖大、脈は沈遅を認める。」
問題156 本病証の治療穴として最も適切な背部兪穴の高さはどれか。
1.第3胸椎棘突起下縁
2.第9胸椎棘突起下縁
3.第12胸椎棘突起下縁
4.第2腰椎棘突起下縁
解答4
解説
・34歳の女性(不妊症)。
・月経量は少なく、経遅がある。
・少し動いただけで短気が生じ、四肢厥冷。
・最近:腰膝酸軟。
・舌は淡で胖大、脈は沈遅。
→本症例は、腎陽虚が疑われる。腎陽虚は、腰膝酸軟、冷え、畏寒、陽萎、不妊、泄瀉、夜間尿、舌苔白などがみられる。
1.× 第3胸椎棘突起下縁は、身柱、肺兪、魄戸が位置する。
2.× 第9胸椎棘突起下縁は、筋縮、肝兪、魂門が位置する。
3.× 第12胸椎棘突起下縁は、接脊、胃兪、胃倉が位置する。
4.〇 正しい。第2腰椎棘突起下縁は、本病証の治療穴として最も適切な背部兪穴の高さである。本症例は、腎陽虚が疑われる。したがって、腎兪が治療穴とある。腎兪は、腰部、第2腰椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方1寸5分に位置する。
次の文で示す症例について、問題157、問題158の問いに答えよ。
「52歳の男性。3週間前に風邪を引き、現在も咳と軽度な息切れが残っている。近医で喘息と言われ気管支拡張剤を処方された。」
問題157 気管支拡張剤が作用する受容体はどれか。
1.ニコチン受容体
2.ムスカリン受容体
3.α受容体
4.β受容体
解答2,4
解説
・52歳の男性。
・3週間前:風邪を引く。
・現在:咳と軽度な息切れが残っている。
・喘息:気管支拡張剤を処方された。
→気管支拡張剤とは、気管支を広げることで空気の通りを良くし、呼吸困難を軽減する薬である。喘息や気管支炎などによって気管支の炎症が引き起こされると気道が狭くなり、咳の発作や息苦しさなどの呼吸器症状が現れるが、気管支拡張剤で気道を広げることでこれらの症状を改善することができる。
1.× ニコチン受容体
ニコチン受容体は、アセチルコリン受容体の1種である。ニコチン性アセチルコリン受容体(ニコチン受容体)に作用してアセチルコリンと同様の効果をしめす。
2.〇 正しい。ムスカリン受容体は、気管支拡張剤が作用する受容体である。
アセチルコリン受容体には、①イオンチャネル型のニコチン受容体と②代謝型受容体であるムスカリン受容体がある。副交感神経性の反応に関与している。
3.× α受容体とは、神経伝達物質であるアドレナリンを受容するタンパク質の1つである。主に、平滑筋に存在するα1受容体(血管収縮、瞳孔散大、皮膚立毛など)と、中枢神経に存在するα2受容体(α1受容体の拮抗的な作用)に大別される。
4.〇 正しい。β受容体とは、カテコラミンの作用を発現するための受容体の1つであり、主に、平滑筋の弛緩や、心筋収縮を行っている。
・α1作用:主に血管収縮
・α2作用:ノルアドレナリン放出抑制によるネガティブフィードバック
・β1作用:心臓の陽性変性作用
・β2作用:血管、気管支の弛緩
次の文で示す症例について、問題157、問題158の問いに答えよ。
「52歳の男性。3週間前に風邪を引き、現在も咳と軽度な息切れが残っている。近医で喘息と言われ気管支拡張剤を処方された。」
問題158 本症例に対して奇穴を取穴する際、仮点を求めるために委中を用いるのはどれか。
1.四華
2.患門
3.定喘
4.夾脊
解答2
解説
委中(※読み:いちゅう)は、膝後面、膝窩横紋の中点に位置する。深部に脛骨神経が通る。
1.× 四華(※読み:しか)
四華は、紐を使い、背部に計4穴を取る。【主治】呼吸器疾患(特に肺結核・喘息)、心疾患である。
2.〇 正しい。患門(※読み:かんもん)は、本症例に対して奇穴を取穴する際、仮点を求めるために委中を用いる。
患門は、紐を使い、背部に計2穴を取る。【主治】呼吸器疾患(特に肺結核・喘息)、心疾患である。
3.× 定喘(※読み:ていぜん)
定喘は、上背部、第7頸椎棘突起下縁と同じ高さ、後正中線の外方5分に位置する。【主治】咳嗽、喘息、蕁麻疹、上肢麻痺
4.× 夾脊(※読み:きょうせき)
夾脊は、背部、第1胸椎棘突起~第5腰椎棘突起までの各突起下縁と同じ高さで後正中線の両外方5分
次の文で示す症例について、問題159、問題160の問いに答えよ。
「69歳の男性。主訴は両側の耳鳴り。3か月前から高音域の聴力低下を自覚。相手の言葉が聞き取りにくい。めまい、耳閉塞感、耳漏はない。」
問題159 難聴の程度を評価する検査はどれか。
1.リンネ検査
2.オージオメトリー
3.グリセロール検査
4.カロリックテスト
解答2
解説
・69歳の男性(主訴:両側の耳鳴り)。
・3か月前:高音域の聴力低下を自覚。
・相手の言葉が聞き取りにくい。
・めまい、耳閉塞感、耳漏はない。
→本症例は、高音域の聴力低下を自覚しているため、聴力検査にて評価することが望ましい。
1.× リンネ検査とは、伝音性障害や感音性障害を調べる聴力検査の一種で、音叉を使って空気伝導と骨伝導による聴力を比較する。
2.〇 正しい。オージオメトリーは、難聴の程度を評価する検査である。オージオメトリーとは、聴力検査を行うための装置「オージオメーター」を使用する検査法である。さまざまな音量や周波数(高さ)の音を出力でき、静かな環境(防音室など)でヘッドホンを装着して検査を行う。検査を受ける側は、音が聞こえてきたらボタンを押したりして、測定しているスタッフに知らせる必要がある。
3.× グリセロール検査グリセロール検査とは、メニエール病の主な病態である内リンパ水腫(内耳の膜迷路に過剰に内リンパ液が貯まって膨張している状態)を診断するための試験である。
4.× カロリックテストとは、温度刺激検査ともいい、耳に刺激をあたえてめまいを起こし、どちら側の耳に異常があるかを調べる。耳の中に冷たい水またはお湯を注入すると、体温との温度差によって内耳が刺激され、耳の機能が正常な場合はめまいが誘発される。主に、前庭神経炎の診断に用いる。
Ménière病とは、膜迷路を満たしている内リンパ液の内圧が上昇し、内リンパ水腫が生じる内耳疾患である。4大症状として、①激しい回転性のめまい、②難聴(感音難聴)、③耳鳴り、④耳閉感を繰り返す内耳の疾患である。主な原因は「内リンパ水腫」で、 その根底にはストレス・睡眠不足・疲労・気圧の変化・几帳面な性格などがあると考えられている。耳発作時では安静を第一に考えた指導を行い、間欠期では発作が起こらないようにするための指導をする。
次の文で示す症例について、問題159、問題160の問いに答えよ。
「69歳の男性。主訴は両側の耳鳴り。3か月前から高音域の聴力低下を自覚。相手の言葉が聞き取りにくい。めまい、耳閉塞感、耳漏はない。」
問題160 原因疾患として最も適切なのはどれか。
1.加齢性難聴
2.慢性中耳炎
3.突発性難聴
4.耳管狭窄症
解答1
解説
・69歳の男性(主訴:両側の耳鳴り)。
・3か月前:高音域の聴力低下を自覚。
・相手の言葉が聞き取りにくい。
・めまい、耳閉塞感、耳漏はない。
→本症例は、加齢性難聴が疑われる。
1.〇 正しい。加齢性難聴は、原因疾患である。加齢性難聴は『感音性難聴』という種類の難聴に分類され、『感音性難聴』は鼓膜より内側の「内耳」や内耳以降の神経回路の部分による障害によって発生する難聴をさす。そのため、高齢者には低めの声で話しかけるとよい。また、生理的老化による感音性難聴により、弁別能の低下や高音域の聞き取りにくさがみられ、人との会話が聞き取りづらくなる。これにより、人と会ったり、外出したりすることを避けるようになり、外部との交流が途絶え、孤立につながるため、この状態が続くと社会的フレイルを招きやすい。
2.× 慢性中耳炎は考えにくい。なぜなら、本症例は、耳漏はないため。慢性中耳炎とは、急性中耳炎が治らずに鼓膜に穴が開いたままとなり、中耳腔に慢性的な炎症状態が続く病気である。急性中耳炎とは、細菌やウイルスなどの病原体が鼻やのどから中耳へと耳管を通って侵入し、そこでも感染することで生じる病気である。症状は、中耳に膿が溜って腫れることで、ズキズキとした激しい耳の痛み、発熱、耳だれ(耳漏)、耳がつまった感じなどである。中耳炎は、純音聴力検査が実施される。純音聴力検査とは、どのぐらい小さな音まで聞こえるかということを測定するものである。
3.× 突発性難聴は考えにくい。なぜなら、本症例の主訴は、両側の耳鳴りであるため。突発性難聴とは、突然、片方の耳(ごくまれに両耳)の聞こえが悪くなる病気である。突然発症した感音難聴(音をうまく感じ取れない難聴)のうち、原因がはっきりしないものをいう。原因の説としては、①有毛細胞に血液を送っている血管の血流障害や②ウイルス感染、③生活習慣(ストレスや過労、睡眠不足など)が考えられている。
4.× 耳管狭窄症は考えにくい。なぜなら、本症例は、耳閉塞感はないため。耳管狭窄症とは、鼻の奥と耳をつなぐ耳管が狭くなってしまう病気である。耳管は耳の中の圧力を調整する働きを持っている。したがって、耳がつまった感じ(電車に乗ってトンネルに入った時の感じ、高い山に登った時の感じ)、自分の声がひびいて聴こえる、自分の呼吸の音が耳にひびくといった症状が起こる。
(※図引用:「耳の構造・説明図」illustAC様より)