第32回(R6年)はり師きゅう師国家試験 解説【午後151~155】

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次の文で示す症例について、問題151、問題152の問いに答えよ。
「50歳の男性。主訴は食欲不振。急な腹痛や嘔気があり、病院で胃の出血性びらんを指摘され、飲酒を控えるように言われた。口が苦く、舌質は紅、舌苔は厚膩、脈は滑数を認める。」

問題151 腹痛が最も認められる部位はどれか。

1.心窩部
2.臍部
3.側腹部
4.下腹部

解答

解説

本症例のポイント

・50歳の男性(主訴:食欲不振)。
・急な腹痛や嘔気があり。
・病院:胃の出血性びらん、飲酒を控えるように言われた。
・口が苦く、舌質は紅、舌苔は厚膩、脈は滑数
→本症例は、脾胃湿熱が疑われる。脾胃湿熱は、上腹部膨満感、食欲不振、嘔吐、口苦、口粘、尿黄、舌質黄膩などがみられる。

1.〇 正しい。心窩部に腹痛が最も認められる部位である。脾胃湿熱は、上腹部膨満感、食欲不振、嘔吐、口苦、口粘、尿黄、舌質黄膩などがみられる。

2~4.× 臍部/側腹部/下腹部より優先されるものが他にある。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題151、問題152の問いに答えよ。
「50歳の男性。主訴は食欲不振。急な腹痛や嘔気があり、病院で胃の出血性びらんを指摘され、飲酒を控えるように言われた。口が苦く、舌質は紅、舌苔は厚膩、脈は滑数を認める。」

問題152 治療方針として最も適切なのはどれか。

1.肝気を通す。
2.湿熱を除く。
3.脾気を補う。
4.胃陰を補う。

解答

解説

本症例のポイント

・50歳の男性(主訴:食欲不振)。
・急な腹痛や嘔気があり。
・病院:胃の出血性びらん、飲酒を控えるように言われた。
・口が苦く、舌質は紅、舌苔は厚膩、脈は滑数
→本症例は、脾胃湿熱が疑われる。脾胃湿熱は、上腹部膨満感、食欲不振、嘔吐、口苦、口粘、尿黄、舌質黄膩などがみられる。

1.× 肝気を通す。
これは、肝気鬱結に対し行う。肝気鬱結とは、精神的ストレスによる症状をさす。気の巡りが悪く、イライラ、憂うつ、胸脇部の張り、ため息などの症状を呈する。女性では、生理時に乳房が張って痛む、生理痛、生理不順などの症状もみられる。

2.〇 正しい。湿熱を除く
湿熱とは、体内に余分な水分(湿)と熱が合わさり、ドロドロした状態になることである。自律神経や血液の巡りを邪魔し、体の様々な箇所で不調を引き起こすきっかけとなる。原因は暴飲暴食が多い。

3.× 脾気を補う。
これは、脾気虚に対し行う。ちなみに、脾気虚は、食欲不振、腹脹、大便溏薄、倦怠感、息切れ、自汗、面色萎黄などである。

4.× 胃陰を補う。
これは、胃陰虚に対し行う。ちなみに、胃陰虚は、食少、乾嘔、舌質紅絳、舌苔無などがあげられる。また、陰虚・内熱・気逆なども。陰虚に対し、陰を補う必要がある。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題153、問題154の問いに答えよ。
「45歳の女性。職業は美容師。主訴は右上肢全体の持続的なだるさ。腱反射は正常。ライトテストは陽性。ジャクソンテスト、アドソンテストはともに陰性。」

問題153 病態について最も適切なのはどれか。

1.血流障害はない。
2.握力低下はない。
3.髪をカットする姿勢で症状誘発。
4.空を見上げると症状誘発。

解答

解説

本症例のポイント

・45歳の女性(職業:美容師)。
・主訴:右上肢全体の持続的なだるさ。
・腱反射:正常。
ライトテスト:陽性
・ジャクソンテスト、アドソンテストはともに陰性。

Wright テスト(ライトテスト)陽性は、胸郭出口症候群において陽性となる。座位で両側上肢を挙上(肩関節を外転90°、外旋90°、肘関節90°屈曲)させると、橈骨動脈の脈拍が減弱する。

Jacksonテスト(ジャクソンテスト)は、頚部神経根障害(頚椎椎間板ヘルニア)を検査する。方法として、被験者は頸部伸展し、検査者が上から下に押し下げる。このとき肩や上腕、前腕、手などに痛みやしびれが誘発されるかどうかで神経根に障害が生じているか否かを診断する。

Adsonテスト(アドソンテスト)は、胸郭出口症候群誘発テストである。方法は、両手を膝に置き、頚椎を伸展し、患側へ回旋を加え、深吸気位で息を止めさせたときに、橈骨動脈の脈拍をみる。橈骨動脈が減弱もしくは消失すれば陽性である。

1.× 血流障害は「ない」のではなくある。なぜなら、ライトテスト陽性であるため。橈骨動脈の脈拍が減弱している。

2.× 握力低下はないと断言できない。なぜなら、胸郭出口症候群が疑われ、上肢のしびれや脱力感が症状として考えられるため。胸郭出口症候群は、胸郭出口付近における神経と動静脈の圧迫症状を総称したものである。症状として、上肢のしびれ、脱力感、冷感などが出現する。胸郭出口は、鎖骨、第1肋骨、前・中斜角筋で構成される。原因として、①前斜角筋と中斜角筋の間で圧迫される斜角筋症候群、②鎖骨と第一肋骨の間で圧迫される肋鎖症候群、③小胸筋を通過するときに圧迫される小胸筋症候群、④頭肋で圧迫される頸肋症候群などがある。

3.〇 正しい。髪をカットする姿勢で症状誘発。なぜなら、ライトテストは、座位で両側上肢を挙上(肩関節を外転90°、外旋90°、肘関節90°屈曲)させ症状を見るため。髪をカットする姿勢は、上肢挙上に該当する。

4.× 空を見上げると症状誘発「するとはいえない」。これは、ジャクソンテストが陽性の場合に考えられる。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題153、問題154の問いに答えよ。
「45歳の女性。職業は美容師。主訴は右上肢全体の持続的なだるさ。腱反射は正常。ライトテストは陽性。ジャクソンテスト、アドソンテストはともに陰性。」

問題154 罹患筋への局所治療を行う場合、適切な経穴はどれか。

1.中府
2.肩外兪
3.巨骨
4.扶突

解答

解説

胸郭出口症候群とは?

胸郭出口症候群は、胸郭出口付近における神経と動静脈の圧迫症状を総称したものである。症状として、上肢のしびれ、脱力感、冷感などが出現する。胸郭出口は、鎖骨、第1肋骨、前・中斜角筋で構成される。原因として、①前斜角筋と中斜角筋の間で圧迫される斜角筋症候群、②鎖骨と第一肋骨の間で圧迫される肋鎖症候群、③小胸筋を通過するときに圧迫される小胸筋症候群、④頭肋で圧迫される頸肋症候群などがある。

1.〇 正しい。中府に対し、罹患筋への局所治療を行う。小胸筋の治療穴として、中府(肺)、屋翳、膺窓、乳中(胃)、胸郷、周栄(脾)、天池(心包)があげられる。

2.× 肩外兪は、僧帽筋や肩甲挙筋の治療穴である。

3.× 巨骨は、僧帽筋の治療穴である。

4.× 扶突は、斜角筋や胸鎖乳突筋の治療穴である。

 

 

 

 

 

次の文で示す病証について、問題155、問題156の問いに答えよ。
「34歳の女性。不妊症で来院。月経量は少なく、経遅がある。少し動いただけで短気が生じ、四肢厥冷もある。最近は腰膝酸軟を伴う。舌は淡で胖大、脈は沈遅を認める。」

問題155 本病証に最も随伴しやすいのはどれか。

1.五更泄瀉
2.消穀善飢
3.項背強
4.目渋

解答

解説

本症例のポイント

・34歳の女性(不妊症)。
・月経量は少なく、経遅がある。
・少し動いただけで短気が生じ、四肢厥冷。
・最近:腰膝酸軟
・舌は淡で胖大、脈は沈遅。
→本症例は、腎陽虚が疑われる。腎陽虚は、腰膝酸軟、冷え、畏寒、陽萎、不妊、泄瀉、夜間尿、舌苔白などがみられる。

1.〇 正しい。五更泄瀉は、本病証に最も随伴しやすい。五更泄瀉は、脾腎陽虚にみられ、夜明け前:午前3~5時の下痢、鷄鳴下痢のものをいう。

2.× 消穀善飢(※読み:しょうこくぜんき)
消穀善飢とは、食欲旺盛で食べてもすぐに空腹感があるものである。胃実熱などにみられる。\

3.× 項背強(※読み:こうはいきょう)
項背強とは、首筋から肩、背中の筋肉が緊張してこりや痛みを感じる状態を指す。

4.× 目渋
目渋は、血虚・熱邪(陰液損傷)などでみられる。

泄瀉(下痢)

①五更泄瀉(夜明け前:午前3~5時の下痢。鷄鳴下痢)脾腎陽虚
②慢性の軟便・水様便で、軽度の腹痛・喜按を伴う:気虚
③急な下痢で、強い腹痛・拒按を伴う:実証
④泥状便・水様便で、食欲不振・身重感・倦怠感を伴う:脾虚湿盛
⑤黄色の水様便で臭いが強く、肛門の灼熱感を伴う:大腸湿熱

 

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