第32回(R6年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前31~35】

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問題31 脊髄に反射中枢が存在するのはどれか。

1.屈曲反射
2.嚥下反射
3.立ち直り反射
4.緊張性頸反射

解答

解説
1.〇 正しい。屈曲反射は、脊髄に反射中枢が存在する。屈曲反射とは、逃避反射ともいい、四肢の皮膚に強い刺激(痛み刺激)を加えると、その肢が屈曲する反射である。この時、反対側の下肢は身体を支えるために伸展することを交叉性伸展反射という。これは、刺激側の下肢が屈曲するとき、対側下肢が伸展して、体を支えられるように働くためである。

2.× 嚥下反射は、「延髄」に存在する。嚥下反射とは、食べ物を口に入れてから嚥下するまでの咽頭期の段階で起こる反射のことである。

3.× 立ち直り反射は、「中脳や脳幹」に存在する。立ち直り反射とは、姿勢反射の一つで、姿勢を保持するときに働く機能系である。例えば、①頸の立ち直り反射や②視性立ち直り反射などがあげられる。

4.× 緊張性頸反射は、「脳幹」に存在する。非対称性緊張性頚反射とは、背臥位にした子どもの顔を他動的に一方に回すと、頸部筋の固有感覚受容器の反応により、顔面側の上下肢が伸展し、後頭側の上下肢が屈曲する。生後から生後4~6ヵ月までみられる。

立ち直り反射とは?

立ち直り反射とは、姿勢反射の一つで、姿勢を保持するときに働く機能系である。例えば、①頸の立ち直り反射や②視性立ち直り反射などがあげられる。頸筋性や視覚性のほかにも、迷路性、体性があげられる。

①頸の立ち直り反応とは、背臥位の子どもの頭を一方に向けると、頸筋群の固有感覚受容器が刺激されて、肩・体幹・腰部がその方向に丸太様に全体的に回転する。4~6 ヵ月に出現し、5歳までに消失する。

②視性立ち直り反射とは、視覚刺激の誘発により、頭部の位置を正常に保持する反射のことで、例えば座位の場合、を座らせて左右に傾けると頭を垂直にしようとする。視性の刺激が立ち直りに関与する。腹臥位:3ヵ月、座位・立位:5~6ヵ月に出現し生涯継続する。

 

 

 

 

 

問題32 視床の外側膝状体で中継される感覚はどれか。

1.嗅覚
2.視覚
3.味覚
4.聴覚

解答

解説
1.× 嗅覚は、鼻腔上部の嗅部の粘膜上皮(嗅上皮)の嗅細胞で受容される。嗅細胞の中枢性突起が嗅神経となり、篩骨篩板を通って嗅球に入る。嗅球から後方に向かって嗅索が走り、その線維は大部分外側嗅条を通って海馬旁回の嗅覚野に達する。つまり、嗅覚の伝導路は、【①嗅細胞→②嗅神経→③嗅球→④嗅索→⑤嗅覚野(1次感覚野)】に達する。一次中枢:①嗅細胞→②嗅神経→③嗅球まで。二次中枢:④嗅索→⑤嗅覚野(1次感覚野)である。

2.〇 正しい。視覚は、視床の外側膝状体で中継される。視覚の伝導路は、【視神経→視交叉→視索→外側膝状体→視放線→後頭葉(視覚野)】である。

3.× 味覚の伝導路は、【味蕾(味細胞)→顔面神経(舌前2/3)、舌咽神経(舌後1/3)→延髄孤束核→視床→大脳味覚野】となる。

4.× 聴覚の伝導路は、【蝸牛神経→蝸牛神経核→上オリーブ核→中脳下丘→内側膝状体→上側頭回】である。

 

 

 

 

 

問題33 細胞老化で誤っているのはどれか。

1.DNA修復機能の低下
2.分裂能力の亢進
3.蛋白質合成の低下
4.異常蛋白質の蓄積

解答

解説

細胞老化のテロメア説

テロメアとは、染色体DNAの末端部分をいい、染色体の構造を安定化するなどの役割をもつ。細胞老化のテロメア説は、細胞分裂を繰り返すとテロメアが端から短縮し、細胞老化が生じるとする説である。老化細胞の特徴には、形態的な変化、代謝の変化、クロマチンの再構成、遺伝子発現の変化などが挙げられる。

1.〇 正しい。DNA修復機能の低下は、細胞老化である。これにより、DNA損傷が蓄積し、細胞の機能低下や老化が進行する。

2.× 分裂能力は、「亢進」ではなく低下する。なぜなら、細胞周期の停止やテロメアの短縮などによるため。他にも、老化細胞の特徴には、形態的な変化、代謝の変化、クロマチンの再構成、遺伝子発現の変化などが挙げられる。

3.〇 正しい。蛋白質合成の低下は、細胞老化である。これにより、細胞の機能維持や修復が難しくなり、老化が進行する。

4.〇 正しい。異常蛋白質の蓄積は、細胞老化である。なぜなら、蛋白質分解機能の低下や誤った蛋白質の合成が起こるため。

細胞死とは?

・ネクローシスとは、外部からの高度な傷害により細胞が破壊されて自己融解する病的・受動的な死のことである。壊死ともいい、局所の組織の不可逆的な障害による細胞死をさし、アポトーシスと完全に区別される。

・アポトーシスとは、発生段階などで生理的に生じる自発的な死がある。つまり、プログラムされた細胞死である。生体内のマクロファージに食べられる(apoptosis:アポプトーシス)。多細胞生物の体を構成する細胞の死に方の一種で、個体をより良い状態に保つために積極的に引き起こされる、管理・調節された細胞の自殺すなわちプログラムされた細胞死のこと。

 

 

 

 

 

問題34 女性に多い疾患はどれか。

1.痛風
2.橋本病
3.COPD
4.十二指腸潰瘍

解答

解説
1.× 痛風は、男性(男女比約20:1)に多い疾患である。ちなみに、痛風とは、体内で尿酸が過剰になると、関節にたまって結晶化し、炎症を引き起こして腫れや痛みを生じる病気である。風が患部に吹きつけるだけで激しい痛みが走ることから痛風と名づけられたといわれている。男性に頻発する単関節炎で、下肢、特に第1中足趾関節に好発する。尿酸はプリン体の代謝の最終産物として産生され、代謝異常があると尿酸の産生過剰・排泄障害が生じ高尿酸血症となる。高尿酸血症は痛風や腎臓などの臓器障害を引き起こすほか、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣を合併しやすい。

2.〇 正しい。橋本病は、女性(男女比約1:20)に多い疾患である。ちなみに、橋本病とは、甲状腺に炎症が引き起こされることによって徐々に甲状腺が破壊され、甲状腺ホルモンの分泌が低下していく病気のことである。慢性甲状腺炎とも呼ばれる。甲状腺機能低下症になると、全身の代謝が低下することによって、無気力、疲れやすさ、全身のむくみ、寒がり、体重増加、便秘、かすれ声などが生じる。

3.× COPDは、男性(男女比約3:1)に多い疾患である。慢性閉塞性肺疾患(COPD)の最大の原因は喫煙であり、喫煙者の約20%がCOPDを発症する。慢性閉塞性肺疾患とは、以前には慢性気管支炎や肺気腫と呼ばれてきた病気の総称である。他の特徴として、肺の過膨張、両側肺野の透過性亢進、横隔膜低位、横隔膜の平低化、滴状心などの特徴が認められる。進行性・不可逆性の閉塞性換気障害による症状が現れる。

4.× 十二指腸潰瘍は、男性(男女比約3:1)に多い疾患である。胃・十二指腸潰瘍とは、胃液という強い酸の刺激によって、胃・十二指腸の組織が剥がれ落ち、内部からえぐられた状態をいう。仕事、家庭などでの人間関係、過労や睡眠不足など、精神的・肉体的ストレスが自律神経を乱し、胃酸の分泌が過剰になることで、十二指腸潰瘍を引き起こす。

 

 

 

 

 

問題35 疾患と沈着物の組合せで正しいのはどれか。

1.痛風:シュウ酸
2.黄疸:ヘモジデリン
3.関節リウマチ:アミロイド
4.粥状動脈硬化症:グリコーゲン

解答

解説

痛風とは?

 痛風とは、体内で尿酸が過剰になると、関節にたまって結晶化し、炎症を引き起こして腫れや痛みを生じる病気である。風が患部に吹きつけるだけで激しい痛みが走ることから痛風と名づけられたといわれている。男性に頻発する単関節炎で、下肢、特に第1中足趾関節に好発する。尿酸はプリン体の代謝の最終産物として産生され、代謝異常があると尿酸の産生過剰・排泄障害が生じ高尿酸血症となる。高尿酸血症は痛風や腎臓などの臓器障害を引き起こすほか、糖尿病や脂質異常症などの生活習慣を合併しやすい。

1.× シュウ酸の増加は、「痛風」ではなく尿路結石症である。尿路結石症とは、尿路に、結石(尿に含まれるカルシウム・シュウ酸・リン酸・尿酸などが結晶化したもの)ができる病気である。結石のできる位置によって、腎結石(腎臓内にある結石) 、尿管結石、膀胱結石などと呼ばれる。結石ができる原因は明確に分かっていないが、リスク要因としては体質遺伝の他、生活習慣が大きく関わっているとされている。典型的な最初の症状は脇腹から下腹部にかけての突然の激痛である。 「動くと痛い」というのは結石の症状ではなく筋肉や骨からの症状のことが多いが、尿管結石の場合はじっとしていてももだえるほどの症状が出ることがある。 また、結石によって閉塞した部位の中枢側の尿路が拡張し、腰背部の仙痛発作が起こる。治療としては、①体外衝撃波腎・尿管結石破砕術、②経尿道的尿路結石除去術、③経皮的尿路結石除去術(もしくは②と③を同時に併用する手術)などがあげられる。

2.× 「黄疸」は、ヘモジデリンではなくビリルビンの増加である。黄疸とは、皮膚や粘膜が胆汁色素(ビリルビン)で黄色に染まることで、胆汁色素の血漿中濃度の上昇により生じる。原因としては、①溶血によるもの、②肝細胞の障害によるもの、③胆汁の流れの障害によるもの、④体質によるもの、などがある。胆汁は肝臓で作られ、胆管を通じて十二指腸に排出されるが、その流れが障害されたときに生じる黄疸のことを閉塞性黄疸と呼ぶ。多くは総胆管結石や腫瘍により、胆管が閉塞することが原因となる。随伴症状として、①腹痛、②発熱、③背中の痛み、④吐き気、⑤嘔吐、⑥腹部膨満、⑦皮膚の痒みなどである。ちなみに、ヘモジデリンとは、ヘモグロビンの鉄を含む色素である。成人男性は50mg/kg、成人女性は35mg/kgの鉄分を体内に持ち、そのうちの約2/3はヘモグロビンの構成成分として用いられている。残りの1/3のうちほとんどは、フェリチンやヘモジデリンといった貯蔵鉄として、脾臓、骨髄、肝臓中に含まれる。

3.〇 正しい。関節リウマチは、アミロイドが沈着する。関節リウマチに関して、下の記述参考にしてください。

4.× 「粥状動脈硬化症」は、グリコーゲンではなくコレステロールや脂肪である。粥状動脈硬化症とは、アテローム動脈硬化とも呼ばれ、動脈の内膜に粥状の病変(プラーク)と呼ばばれる病変が形成され、動脈が細くなるタイプの動脈硬化である。ちなみに、グリコゲーンとは、多糖類の一種で、エネルギーを貯蔵し人間の活動に欠かせないものである。普段は、肝臓や骨格筋等に蓄えられており、急激な運動を行う際のエネルギー源として、あるいは空腹時の血糖維持に利用される。

”関節リウマチとは?”

関節リウマチは、関節滑膜を炎症の主座とする慢性の炎症性疾患である。病因には、遺伝、免疫異常、未知の環境要因などが複雑に関与していることが推測されているが、詳細は不明である。関節炎が進行すると、軟骨・骨の破壊を介して関節機能の低下、日常労作の障害ひいては生活の質の低下が起こる。関節破壊(骨びらん) は発症6ヶ月以内に出現することが多く、しかも最初の1年間の進行が最も顕著である。関節リウマチの有病率は0.5~1.0%とされる。男女比は3:7前後、好発年齢は40~60歳である。
【症状】
①全身症状:活動期は、発熱、体重減少、貧血、リンパ節腫脹、朝のこわばりなどの全身症状が出現する。
②関節症状:関節炎は多発性、対称性、移動性であり、手に好発する(小関節)。
③その他:リウマトイド結節は肘、膝の前面などに出現する無痛性腫瘤である。内臓病変は、間質性肺炎、肺線維症があり、リウマトイド肺とも呼ばれる。
【治療】症例に応じて薬物療法、理学療法、手術療法などを適宜、組み合わせる。

(※参考:「関節リウマチ」厚生労働省HPより)

 

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