第32回(R6年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前76~80】

この記事には広告を含む場合があります。

記事内で紹介する商品を購入することで、当サイトに売り上げの一部が還元されることがあります。

 

問題76 痙縮が出現するのはどれか。

1.ギラン・バレー症候群
2.被殻出血
3.腕神経叢麻痺
4.多発性筋炎

解答

解説

痙縮とは?

痙縮は、錐体路の上位運動ニューロン障害による損傷高位以下の脊髄前角細胞(下位運動ニューロン)の活動性が亢進し、麻痺筋の筋紡錘からの求心性刺激が増強することによって生じる。その結果、意思とは関係なく筋肉の緊張が高まり、手や足が勝手につっぱったり曲がってしまったりしてしまう状態となる。このため、前角細胞以下の障害では痙縮は出現しない。脳卒中の後遺症として起こる痙縮の治療にはボツリヌス毒素が用いられる。ボツリヌス毒素が神経終末の受容体に結合することで、アセチルコリンの放出を阻害し、アセチルコリンを介した筋収縮および発汗が阻害される。

1.× ギラン・バレー症候群とは、先行感染による自己免疫的な機序により、炎症性脱髄性ニューロパチーをきたす疾患である。一般的には細菌・ウイルスなどの感染があり、1~3週後に両足の筋力低下(下位運動ニューロン障害)や異常感覚(痺れ)などで発症する。感覚障害も伴うが、運動障害に比べて軽度であることが多く、他覚的な感覚障害は一般に軽度である。初期症状として、歩行障害、両手・腕・両側の顔面筋の筋力低下、複視、嚥下障害などがあり、これらの症状はピークに達するまでは急速に悪化し、時には人工呼吸器が必要になる。症状が軽い場合は自然に回復するが、多くの場合は入院により適切な治療(免疫グロブリン静注療法や血液浄化療法など)を必要とする。症状は6か月から1年程度で寛解することが多い。臨床検査所見として、①髄液所見:蛋白細胞解離(蛋白は高値,細胞数は正常)を示す。②電気生理学的検査:末梢神経伝導検査にて、脱神経所見(伝導ブロック、時間的分散、神経伝導速度の遅延、複合筋活動電位の低下など)がみられる。複合筋活動電位が消失あるいは著明な低下し、早期から脱神経所見を示す症例は、一般に回復が悪く機能的予後も不良である(※参考:「重篤副作用疾患別対応マニュアル ギラン・バレー症候群」厚生労働省様HPより)。

2.〇 正しい。被殻出血は、 痙縮が出現する。被殻とは、大脳の中央部に左右1対あり、身体の運動調節や筋緊張、学習や記憶などの役割を持っている。したがって、被殻出血とは、頭痛や麻痺(片麻痺や顔面神経麻痺)、病側の共同偏視、優位半球障害時に運動失語、劣位半球障害時に失行・失認などがみられる。

3.× 腕神経叢麻痺とは、腕神経叢が損傷することで、上肢のしびれや感覚障害、筋力低下になることである。つまり、下位運動ニューロン障害をきたす。原因として、オートバイ走行中の転倒、スキーなど高速滑走のスポーツでの転倒、機械に腕が巻き込まれたときなどがあげられる。腕神経叢は、後傾三角(胸鎖乳突筋後縁と僧帽筋前縁、鎖骨上縁で囲まれた部分)で触知できる。

4.× 多発性筋炎とは、自己免疫性の炎症性筋疾患で、主に体幹や四肢近位筋、頸筋、咽頭筋などの筋力低下をきたす。典型的な皮疹を伴うものは皮膚筋炎と呼ぶ。膠原病または自己免疫疾患に属し、骨格筋に炎症をきたす疾患で、遺伝はなく、中高年の女性に発症しやすい(男女比3:1)。5~10歳と50歳代にピークがあり、小児では性差なし。四肢の近位筋の筋力低下、発熱、倦怠感、体重減少などの全身症状がみられる。手指、肘関節や膝関節外側の紅斑(ゴットロン徴候)、上眼瞼の腫れぼったい紅斑(ヘリオトロープ疹)などの特徴的な症状がある。合併症の中でも間質性肺炎を併発することは多いが、患者一人一人によって症状や傷害される臓器の種類や程度が異なる。予後は、5年生存率90%、10年でも80%である。死因としては、間質性肺炎や悪性腫瘍の2つが多い。悪性腫瘍に対する温熱療法は禁忌であるので、その合併が否定されなければ直ちに温熱療法を開始してはならない。しかし、悪性腫瘍の合併の有無や皮膚症状などの禁忌を確認したうえで、ホットパックなどを用いた温熱療法は疼痛軽減に効果がある。(※参考:「皮膚筋炎/多発性筋炎」厚生労働省様HPより)

 

 

 

 

 

問題77 脊髄損傷で下肢に比べて上肢の障害が重度なのはどれか。

1.横断型頸髄損傷
2.中心性頸髄損傷
3.前脊髄動脈症候群
4.ブラウンセカール症候群

解答

解説
1.× 横断型頸髄損傷とは、頸髄が横断的に損傷を受けるため、通常は全ての下肢と上肢の運動・感覚神経の両方が障害される。

2.〇 正しい。中心性頸髄損傷は、脊髄損傷で下肢に比べて上肢の障害が重度である。中心性頚髄損傷とは、転倒などの頸椎の過伸展により発生する。したがって高齢者に多い。中心性とは脊髄の中心が主に受傷される。脊髄の解剖学的構造から、中心部を通る神経線維が主に上肢に関連しているため、下肢よりも上肢の障害が優位となる。四肢麻痺、手指の巧緻性低下などの運動障害、強いしびれなどの感覚障害、膀胱直腸障害を呈する。

3.× 前脊髄動脈症候群とは、脊髄前2/3の障害であるため、温痛覚の伝導路である脊髄視床路や錐体路が障害される。つまり、障害レベル以下の両側温痛覚障害と運動障害が生じる。

4.× ブラウンセカール症候群(Brown-Sequard 症候群、脊髄半側症候群)は、損傷髄節よりも下位の反対側に温痛覚障害が生じ、同側に触覚の低下・痙性麻痺・深部感覚障害が生じる。

 

 

 

 

 

問題78 下肢切断で断端包帯を用いた管理の目的として正しいのはどれか。

1.浮腫の予防
2.創部痛の軽減
3.患側の筋力強化
4.創部感染の予防

解答

解説
1.〇 正しい。浮腫の予防は、下肢切断で断端包帯を用いた管理の目的である。なぜなら、下肢切断は、筋組織、神経組織、骨全ての断裂を伴い、血流障害が起きやすいため。 そのため、術直後から弾性包帯を巻き、血流を促すことが重要である。断端包帯(弾性ストッキング)は、皮膚の表面から脚を圧迫することで、血管も圧迫することになるため、水分の漏れ出しを減少させることができる。

2.× 創部痛の軽減には寄与しない。創部痛の軽減は、主に痛み止めの薬や適切な傷のケアによって行われる。包帯による圧迫が適切でない場合、逆に負担(皮膚トラブル)となり、痛みを引き起こすこともある。

3.× 患側の筋力強化には寄与しない。筋力強化は、理学療法士による筋力増強訓練を通じて行われる。

4.× 創部感染の予防には寄与しない。下肢切断術後の創部感染を予防するには、毎日の消毒と包交、皮膚の観察を行い清潔に保つことが重要である。発熱や創部からの排膿、腫脹、発赤が見られた場合は、感染が起きている可能性がある。

浮腫とは?

浮腫とは、体液のうち間質液が異常に増加した状態を指す。主に皮下に水分が貯留するが、胸腔に溜まった場合は胸水・腹腔に溜まった場合は腹水と呼ばれる。軽度の浮腫であれば、寝不足や塩分の過剰摂取、長時間の起立などが要因で起きることがある。病的な浮腫の原因はさまざまだが、①血漿膠質浸透圧の低下(低アルブミン血症など)、②心臓のポンプ機能低下による血液のうっ滞(心不全など)、③リンパ管の閉塞によるリンパ液のうっ滞、④血管透過性の亢進(アナフィラキシーショックなど)に大別することができる。
【低アルブミン血症の原因】①栄養摂取の不足(低栄養状態)、②肝臓における蛋白質合成能の低下、③腎臓から尿への蛋白質の大量喪失(ネフローゼ症候群)など。

 

 

 

 

 

問題79 脳性麻痺について正しいのはどれか。

1.永続的な運動障害である。
2.最も多い病型はアテトーゼ型である。
3.アテトーゼ型では精神発達遅滞を合併することが多い。
4.受胎から生後1年間までに生じた脳病変を原因とする。

解答

解説

脳性麻痺とは?

脳性麻痺とは、お腹の中にいる間から、生後4週間までの間に発生した脳への損傷によって引き起こされる運動機能の障害を指す。痙直型のほか、失調型やアテトーゼ型などのタイプがある。

1.〇 正しい。永続的な運動障害である。1968年の厚生省脳性麻痺研究班の定義では、脳性麻痺は「受胎から新生児(生後4週以内)までの間に生じた、脳の非進行性病変にもとづく永続的な、しかし変化しうる運動および姿勢の異常」とされている。

2.× 最も多い病型は、「アテトーゼ型(約20%)」ではなく痙直型(約70%)である。アテトーゼとは、顔や手足をゆっくりと動かしてしまうものである。身体が突っ張ったり捻じれたりするジストニア、顔や手足をゆっくりと動かしてしまうアテトーゼ、踊るように身体を振ってしまう舞踏運動、上肢や下肢をいきなり大きく振り回してしまうバリズムなどがある。痙直型脳性麻痺の場合、股関節が屈曲・内転・内旋しやすく、尖足になりやすい。痙直型の特徴として、①機敏性の低下、②筋力低下、③脊髄反射の亢進などである。それらに加えて、脊髄レベルでの相反神経作用の障害として、動筋と拮抗筋が同時に過剰収縮を起こす病的な同時収縮や痙直の強い拮抗筋からの過剰な緊張性相反性抑制による④動筋の機能不全がみられる。

3.× アテトーゼ型では精神発達遅滞を合併することが多いとはいえない。むしろアテト―ゼ型や両麻痺型などは精神遅滞が少ない。運動麻痺の分布が広いと精神発達遅滞の合併率は高いことが指摘されており、痙直型や混合型の脳性麻痺で合併することが比較的多い。

4.× 受胎から「生後1年間」ではなく新生児(生後4週以内)までに生じた脳病変を原因とする。脳性麻痺は、発達中の脳に損傷が生じることで引き起こされる運動障害や姿勢の障害である。脳性麻痺の原因としては、未熟児、仮死、黄疸などが従来から考えられており、また、脳の奇形や脳損傷、妊娠中の感染症なども原因として考えられている。

 

 

 

 

 

問題80 心臓リハビリテーションにおける運動療法の禁忌はどれか。

1.NYHA心機能分類Ⅰ度
2.冠状動脈バイパス術後
3.末梢動脈閉塞性疾患
4.不安定狭心症

解答

解説

NYHA心機能分類

NYHA分類(New York Heart Association functional classification)は、自覚症状から判断する心不全の重症度分類である。

Ⅰ度:心疾患があるが、身体活動には特に制約がなく日常労作により、特に不当な呼吸困難、狭心痛、疲労、動悸などの愁訴が生じないもの。
Ⅱ度:心疾患があり、身体活動が軽度に制約されるもの。安静時または軽労作時には障害がないが、日常労作のうち、比較的強い労作(例えば、階段上昇、坂道歩行など)によって、上記の愁訴が発言するもの。
Ⅲ度:心疾患があり、身体活動が著しく制約されるもの。安静時には愁訴はないが、比較的軽い日常労作でも、上記の主訴が出現するもの。
Ⅳ度:心疾患があり、いかなる程度の身体労作の際にも上記愁訴が出現し、また、心不全症状、または、狭心症症候群が安静時においてもみられ、労作によりそれらが増強するもの。

心臓リハビリテーションの効果

①体力が回復し、スムーズに動けるようになる(運動耐容能の改善)。
②筋肉や骨が鍛えられ、疲れにくくなるとともに心臓の働きを助ける(心拍数減少)。
③動脈硬化のもととなる危険因子(高血圧、高脂血症、糖尿病、肥満)が軽減する(HDLコレステロール増加、中性脂肪の減少、肥満の改善)。
④血管が柔らかくなり、循環が良くなる(虚血徴候の軽減)。
⑤呼吸がゆっくりとして、息切れ感が軽減する(運動耐容能の改善)。
⑥自律神経を安定させ、動悸や不整脈が軽減する。
⑦不安やうつ状態が改善し気持ちが晴れやかになる。
⑧心筋梗塞の再発や突然死が減り、死亡率が減少する。

(参考:「心臓リハビリテーション(運動療法について)」神戸掖済会病院様HPより)

1.× NYHA心機能分類Ⅰ度は、運動療法が実施できる。なぜなら、NYHA心機能分類Ⅰ度は、「心疾患があるが、身体活動には特に制約がなく日常労作により、特に不当な呼吸困難、狭心痛、疲労、動悸などの愁訴が生じないもの」であるため。ちなみに、愁訴とは、患者の自覚的訴えのことで、その中心的なものを主訴という(※読み:しゅうそ)。

2.× 冠状動脈バイパス術後/は、運動療法が実施できる。なぜなら、適切な運動療法は心臓リハビリテーションの効果が期待できるため。ちなみに、冠状動脈とは、冠動脈ともいい、心臓を栄養する終動脈(細動脈で吻合をもたない血管)である。心臓自身を栄養するために、心拍出量の約1/20(250mL/分)の血液が冠動脈へ流れている。

3.× 末梢動脈閉塞性疾患は、運動療法が実施できる。なぜなら、適切な運動療法は心臓リハビリテーションの効果が期待できるため。適切な運動療法は血流を改善し、症状の軽減を図ることができる。ちなみに、末梢閉塞性動脈疾患とは、下肢の動脈がふさがったり狭くなったりする病気で、通常の原因は動脈硬化で、血流量が低下する状態を指す。

4.〇 正しい。不安定狭心症は、心臓リハビリテーションにおける運動療法の禁忌である。不安定狭心症とは、安定性狭心症と比べて発作の回数が増えたり安静時にも胸痛がみられる重症・増悪型の狭心症である。冠動脈内において動脈硬化に起因する不安定プラークの破綻などにより血栓が形成され、それによって急激に冠動脈内が狭窄し、心筋虚血に至った状態である。また、心臓の栄養血管である冠動脈の高度な狭窄を反映していることが多い。つまり、心筋梗塞の前兆で突然死に至る可能性があり、早急な対処が必要である。

リハビリテーションの中止基準

1. 積極的なリハを実施しない場合
[1] 安静時脈拍 40/分以下または 120/分以上
[2] 安静時収縮期血圧 70mmHg 以下または 200mmHg 以上
[3] 安静時拡張期血圧 120mmHg 以上
[4] 労作性狭心症の方
[5] 心房細動のある方で著しい徐脈または頻脈がある場合
[6] 心筋梗塞発症直後で循環動態が不良な場合
[7] 著しい不整脈がある場合
[8] 安静時胸痛がある場合
[9] リハ実施前にすでに動悸・息切れ・胸痛のある場合
[10] 座位でめまい,冷や汗,嘔気などがある場合
[11] 安静時体温が 38 度以上
[12] 安静時酸素飽和度(SpO2)90%以下

2. 途中でリハを中止する場合
[1] 中等度以上の呼吸困難,めまい,嘔気,狭心痛,頭痛,強い疲労感などが出現した場合
[2] 脈拍が 140/分を超えた場合
[3] 運動時収縮期血圧が 40mmHg 以上,または拡張期血圧が 20mmHg 以上上昇した場合
[4] 頻呼吸(30 回/分以上),息切れが出現した場合
[5] 運動により不整脈が増加した場合
[6] 徐脈が出現した場合
[7] 意識状態の悪化

3. いったんリハを中止し,回復を待って再開
[1] 脈拍数が運動前の 30%を超えた場合。ただし,2 分間の安静で 10%以下に戻らないときは以後のリハを中止するか,または極めて軽労作のものに切り替える
[2] 脈拍が 120/分を越えた場合
[3] 1 分間 10 回以上の期外収縮が出現した場合
[4] 軽い動悸,息切れが出現した場合

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)