第32回(R6年)はり師きゅう師国家試験 解説【午前86~90】

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次の文で示す症例について、問題85、問題86の問いに答えよ。
「60歳の女性。数年前から左手の振戦を生じ、次第にすくみ足、寡動を認めるようになり、近医にて診断を受け投薬が開始された。」

問題86 歩行障害に対するリハビリテーションとして最も適切なのはどれか。

1.歩行速度を上げるように指示する。
2.メトロノームを用いた訓練を行う。
3.継ぎ足歩行をさせる。
4.坂道での訓練を行う。

解答

解説

本症例のポイント

・60歳の女性。
・数年前から左手の振戦を生じ、次第にすくみ足寡動を認める。
・近医にて診断を受け投薬が開始された。
→本症例は、パーキンソン病が疑われる。パーキンソン病とは、黒質のドパミン神経細胞の変性を主体とする進行性変成疾患である。4大症状として①安静時振戦、②筋強剛(筋固縮)、③無動・寡動、④姿勢反射障害を特徴とする。また、自律神経障害による便秘や起立性低血圧、排尿障害、レム睡眠行動障害などが起こる。レム睡眠行動障害とは、レム睡眠の時期に体が動き出してしまう睡眠障害の1つである。 睡眠時随伴症に分類される。

1.× 歩行速度を上げるように指示する優先度は低い。なぜなら、突進現象が助長され、転倒のリスクを高める可能性があるため。Parkinson病の歩行障害(小刻み歩行、突進現象、すくみ足など)の誘発因子は、狭路、障害物、精神的緊張などである。対応策として、①視覚(障害物を跨ぐ、床に目印をつける)、②聴覚(メトロノームなどのリズムや歩行に合わせてのかけ声)、③逆説的運動(階段昇降)である。

2.〇 正しい。メトロノームを用いた訓練を行う。なぜなら、パーキンソン病の歩行の特徴に、矛盾性運動があげられるため。矛盾性運動(逆説的運動)とは、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。すくみ足の症状があっても、床の上の横棒をまたぐことができること、リズムをとったり、視覚的な目標物を踏み越えさせたりすると、本来難易度が高いはずであるが、スムーズに足が出るといった現象である。ちなみに、階段昇降もこれに含まれ、平地歩行に比べて障害されにくい。階段昇降は、歩行の改善、下肢筋力強化の効果も期待される。

3.× 継ぎ足歩行をさせる優先度は低い。なぜなら、継ぎ足歩行とパーキンソン病の関連は低く、むしろ転倒のリスクを高める可能性があるため。継ぎ足歩行(タンデム歩行)とは、踵とつま先を交互に接触させて直線上を歩行することである。バランス能力の検査(体幹や下肢の運動失調の検査)で用いられることが多く、小脳障害の場合に、ふらつきが強く、一直線上をまっすぐ歩くことができない。

4.× 坂道での訓練を行う優先度は低い。なぜなら、突進現象が助長され、転倒のリスクを高める可能性があるため。Parkinson病の歩行障害(小刻み歩行、突進現象、すくみ足など)の誘発因子は、狭路、障害物、精神的緊張などである。対応策として、①視覚(障害物を跨ぐ、床に目印をつける)、②聴覚(メトロノームなどのリズムや歩行に合わせてのかけ声)、③逆説的運動(階段昇降)である。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題87、問題88の問いに答えよ。
「45歳の男性。長時間の座位により右下肢痛が生じるようになったため整形外科を受診し、腰椎椎間板ヘルニアと診断された。右の片脚立ちで踵の挙上ができなかった。」

問題87 感覚鈍麻が疑われる部位はどれか。

1.足底
2.足背中央
3.下腿内側
4.大腿前面

解答

解説

本症例のポイント

・45歳の男性(腰椎椎間板ヘルニア)。
・長時間の座位により右下肢痛が生じるようになった。
・右の片脚立ちで踵の挙上ができなかった。
→椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

1.〇 正しい。足底は、感覚鈍麻が疑われる部位である。なぜなら、本症例は、椎間板ヘルニアの障害レベルはL5‒S1間支配神経根S1)と考えられるため。これは、本症例の右の片脚立ちで踵の挙上(足関節底屈筋の低下:下腿三頭筋の筋力低下)ができなかったため。

2.× 足背中央の感覚は、主にL5神経根によって支配されている。

3.× 下腿内側は、主にL4神経根によって支配されている。

4.× 大腿前面は、主にL2~3神経根によって支配されている。

(※図引用:「看護roo!看護師イラスト集」より)

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題87、問題88の問いに答えよ。
「45歳の男性。長時間の座位により右下肢痛が生じるようになったため整形外科を受診し、腰椎椎間板ヘルニアと診断された。右の片脚立ちで踵の挙上ができなかった。」

問題88 早期に手術治療を要する病態はどれか。

1.尿閉
2.下腿後面のしびれ
3.夜間のこむら返り
4.アキレス腱反射消失

解答

解説

本症例のポイント

・45歳の男性(腰椎椎間板ヘルニア)。
・長時間の座位により右下肢痛が生じるようになった。
・右の片脚立ちで踵の挙上ができなかった。
→椎間板は、外縁部分を構成する線維輪という靱帯様の構造物と、中心部に含まれる軟らかい髄核という構造物から成り立っているが、外縁部分の椎間板の線維輪が弱くなって膨隆したり、線維輪が断裂して中心部の髄核が脱出したりすると、近傍にある神経を圧迫している状態のことを腰椎椎間板ヘルニアという。L4/5とL5/S1が好発部位である。

L3‒L4間(支配神経根L4):膝蓋腱反射低下、大腿~下腿内側の感覚麻痺、大腿四頭筋力低下。
L4‒L5間(支配神経根L5):下腿外側~母趾の感覚麻痺、前脛骨筋、長母指伸筋、長趾伸筋の筋力低下。
L5‒S1間(支配神経根S1):アキレス腱反射低下、足部尺側側の感覚麻痺、下腿三頭筋、長母指屈筋、長趾屈筋の筋力低下。

1.〇 正しい。尿閉は、早期に手術治療を要する病態である。なぜなら、椎間板ヘルニアの悪化(重症症状)が考えられるため。尿閉とは、膀胱内に貯留している尿を排泄できない状態である。尿閉患者は、膀胱破裂を来さないように強制的に排尿する必要がある。

2.× 下腿後面のしびれ/夜間のこむら返り/アキレス腱反射消失は、腰椎椎間板ヘルニアに伴う一般的な症状である。椎間板ヘルニアの治療では、まず薬やコルセットなど手術以外の方法が検討される。これらの治療でよくならない場合や悪化した場合、生命に影響を及ぼす緊急性が高い場合などに手術が行われることもある。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題89、問題90の問いに答えよ。
「18歳の男性。背が高く痩せている。突然、右胸の痛みと息切れを感じた。」

問題89 最初に行う検査はどれか。

1.血液生化学検査
2.呼吸機能検査
3.胸部単純エックス線検査
4.胸部単純CT検査

解答

解説

本症例のポイント

・18歳の男性。
・背が高く痩せている。
・突然、右胸の痛み息切れを感じた。
→本症例は、気胸が疑われる。自然気胸とは、明らかな原因がなく起こる気胸のことである。一般的な症状として、①突然の胸の痛み、②咳、③呼吸困難などがあげられる。自然気胸は20歳前後に多く、その次には60歳代によく起こる。若年者の特徴は、男性・長身・やせ型である。体質的に肺の表面を覆っている胸膜が弱いため発症すると考えられている。一方で高齢者の場合は、喫煙者で栄養状態の悪い方が多い。高齢の方は肺の状態が元来良くないために、治療に時間がかかったり、治療後に気胸が再発することもある。

1.× 血液生化学検査の優先度は低い。なぜなら、気胸の診断との関連が低いため。血液生化学検査とは、採血した血液中の成分を分析して、体の異常や疾患、炎症、栄養状態などを推測する検査である。

2.× 呼吸機能検査の優先度は低い。なぜなら、本症例は気胸が疑われ、呼吸機能検査で右胸の痛みを助長させるため。呼吸機能検査とは、肺の能力を評価する検査であり、肺活量、1秒量、肺拡散能などを測定する。喘息、慢性閉塞性肺疾患や間質性肺炎(肺線維症)など、呼吸の機能が異常になる病気の診断や評価に使用される。

3.〇 正しい。胸部単純エックス線検査は、最初に行う検査である。なぜなら、気胸の診断に有用であるため。気胸の場合、胸部レントゲンで肺の虚脱や空気の存在が確認できる。

4.× 胸部単純CT検査の優先度は低い。なぜなら、胸部単純CT検査は、胸部単純エックス線検査より時間がかかるうえ、高度の気胸のときは胸部CT検査を行っても、肺の情報が少ないため。まずは、気胸を診断するため、胸部レントゲン検査を行い、胸部レントゲン検査で気胸があることが診断できたら、胸部CT検査を行う(※参考:「自然気胸の基礎知識」柏病院様HPより)。

気胸とは?

【原発性自然気胸】
原発性自然気胸とは、肺疾患のない人に明らかな原因なく起こる気胸のこと。通常、肺のややもろくなった部分(ブラ)が破裂した際に発生する。特徴として、40歳未満で背が高い男性の喫煙者に最もよくみられる。ほとんどの人が完全に回復するが、最大で50%の人に再発がみられる。

【続発性自然気胸】
続発性自然気胸とは、基礎に肺疾患がある人に発生する気胸のこと。最も多いものは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のある高齢者である。他にも、嚢胞性線維症、喘息、ランゲルハンス細胞組織球症、サルコイドーシス、肺膿瘍、結核、ニューモシスチス(Pneumocystis)肺炎など、その他の肺疾患の患者でもみられる。特徴として、基礎に肺疾患があるため、原発性自然気胸に比べて症状や治療成績は一般に悪くなる。再発率は、原発性自然気胸と同程度である。

 

 

 

 

 

次の文で示す症例について、問題89、問題90の問いに答えよ。
「18歳の男性。背が高く痩せている。突然、右胸の痛みと息切れを感じた。」

問題90 血圧が下がり息切れが増した。
 最も適切な対応はどれか。

1.経過観察
2.鎮痛剤の投与
3.生理食塩水点滴
4.胸腔ドレナージ

解答

解説

本症例のポイント

・18歳の男性。
・背が高く痩せている。
・突然、右胸の痛み息切れを感じた。
血圧が下がり息切れが増した。
→本症例は、気胸が疑われる。「血圧が下がり息切れが増した」ことから、緊張性気胸が疑われる。緊張性気胸とは、胸壁と肺との間に空気がたまることで胸部への圧力が高まり、心臓に戻る血液が減少することである。症状には、胸痛、息切れ、速い呼吸、心拍数の増加などがあり、ショックに至ることがある。胸腔ドレナージにより、直ちに太い針を胸腔に刺し、空気を除去する必要がある。

1.× 経過観察は必要ない。なぜなら、緊張性気胸は、命に関わる危険な状態であるため。迅速な介入が必要である。

2.× 鎮痛剤の投与より優先度が高いものが他にある。なぜなら、本症例は、痛みが増しているわけではないため。胸の中にたまった空気を外に出す「胸腔ドレナージ」を緊急に行なう必要性がある。

3.× 生理食塩水点滴より優先度が高いものが他にある。なぜなら、本症例は、状態悪化は水分不足が原因で起こっているわけではないため。生理食塩水の点滴の主な適応は、外科手術などで水又は電解質が欠乏している脱水症のときに、有効細胞外液量の維持と循環機能の安定化を目的として使用する。

4.〇 正しい。胸腔ドレナージは、最も適切な対応である。本症例は、気胸が疑われる。「血圧が下がり息切れが増した」ことから、緊張性気胸が疑われる。緊張性気胸とは、胸壁と肺との間に空気がたまることで胸部への圧力が高まり、心臓に戻る血液が減少することである。症状には、胸痛、息切れ、速い呼吸、心拍数の増加などがあり、ショックに至ることがある。胸腔ドレナージにより、直ちに太い針を胸腔に刺し、空気を除去する必要がある。

気胸とは?

【原発性自然気胸】
原発性自然気胸とは、肺疾患のない人に明らかな原因なく起こる気胸のこと。通常、肺のややもろくなった部分(ブラ)が破裂した際に発生する。特徴として、40歳未満で背が高い男性の喫煙者に最もよくみられる。ほとんどの人が完全に回復するが、最大で50%の人に再発がみられる。

【続発性自然気胸】
続発性自然気胸とは、基礎に肺疾患がある人に発生する気胸のこと。最も多いものは、慢性閉塞性肺疾患(COPD)のある高齢者である。他にも、嚢胞性線維症、喘息、ランゲルハンス細胞組織球症、サルコイドーシス、肺膿瘍、結核、ニューモシスチス(Pneumocystis)肺炎など、その他の肺疾患の患者でもみられる。特徴として、基礎に肺疾患があるため、原発性自然気胸に比べて症状や治療成績は一般に悪くなる。再発率は、原発性自然気胸と同程度である。

 

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